uno

※連載「Uno croce nera...」の番外編
※単品でも読めます
※誰得? 感も否めない









その日、名前は料理本を片手に夕飯を作ろうとしていた。

「えっと……次はオリーブオイルで……あれ?」


塩、こしょう――その隣に置いてあったはずのオリーブオイルがない。



「?」


もしかすると、切れてしまったのだろうか――確認を取らなかった自分を叱咤しつつ、彼女が料理本と台所を交互に見つめていたそのとき。


ひょい



「!」


目の前に現れたオリーブオイル。


「あ、ありがとうございます……、?」


お礼を口にしながら、それを渡してくれた相手へ視線を移して――



「まあ!」


名前は大きく目を見開いた。



「……こんばんは、ザ・グレイトフル・デッドさん」


「……(コクッ)」

そう。自分の隣に並んでいたのは、プロシュートのスタンドであるザ・グレイトフル・デッド。


しかし、本体であるはずのプロシュートは、キッチンにいない。



「もしかして……手伝ってくださるんですか?」


縦に振られる首。


なんて優しいスタンドなのだろうか。



「ふふ、ありがとうございます」


嬉しそうに微笑んだ名前は、心に従うまま彼(?)へ手を伸ばす。


しかし。



ひょいっ


「あれ?」



頭を避けられてしまった。


「ご、ごめんなさい。嫌、でしたか?」


「!(ブンブン)」


今度は首が横に勢いよく振られる。

なでられるのが、嫌と言うわけではないらしい。



ではなぜ――思わず首をかしげていると、ザ・グレイトフル・デッドはわちゃわちゃと左手と胴体から出る触手のようなものを動かし始めた。



「え、えっと……?」


「(わちゃわちゃ)」


「……あ、老化……ですか?」


「!(コクコク)」



直接触れれば、彼は急激に老化させることができる。


それを心配している――らしい。



「大丈夫ですよ、ザ・グレイトフル・デッドさん」


「?」


「私、体温は低い……というより、ないようなものですから」


「!」



だから、貴方に触れられます。


心を通わせることができたのだろうか――真意はわからないままだが、名前はそっと彼の頭をなで始めた。


一方、いくつもの目を彼女へじっと向けるザ・グレイトフル・デッド。

そして、何を思ったのか大きな左手で自分を指差す。



「?」


もちろん、それで理解ができれば苦労はしない。


その懸命な動きに、少女は申し訳なさそうに眉尻を下げて言葉を紡ぎ出す。



「えっと……ザ・グレイトフル・デッドさん?」


「(ビシッ)」


「え!?」



名前を呼べば、それだと言うかのように指を差される。


彼の名前――確かに長くはあるが――



「……グレフルさん?」


「!(コクコク)」


「あ……グレフルさんと、呼んでいいんですね!」



頷くように目が瞬きされている。


どうやら、想像以上に人懐っこい子のようだ。



「ふふ、可愛い(なでなで)」


「……(すりすり)」


「(なでなで)……あ、お料理しないと」



彼とまだ交信を重ねていたいが、夕飯を遅らせるわけにもいかない。



「ごめんなさい。またお話ししましょうね」



ザ・グレイトフル・デッドことグレフルを一撫でした名前は、おもむろにまな板へと向き直った。


「……」


しかし、そんな彼女の横顔をただただ見つめ、キッチンから離れることのないグレフル。



「……」


すると、何を思ったのだろうか。



「オリーブオイルを入れたら、こしょうで味付けをして……」


名前の後ろにあるテーブル。


ちょうど少女の腰辺りの高さになるそれへと、グレフルがのそのそと上り始めたかと思えば――






「……ひゃっ!?」


腰、脇腹、そして腹部が捉えた違和感。

小さく悲鳴を上げて、名前がおもむろに視線を落とすと――



「え? え?」


紫の触手が、自分に巻きついているではないか。



「んっ……ぐ、グレフルさん?」


遊んでいるのだろう。

だが、かなりくすぐったい――料理中ということもあり危険を伝えるため、名前はテーブルに乗っている彼の方を振り向こうとした、が。




ギュウッ


「へっ!?」



前へと回される彼の両腕。


背後から抱きしめられている――その状態に、彼女は少なからずドキリとしてしまった。



「え、えっと……っ」


「……(じー)」



逞しい腕。そこから届くいくつもの視線に、名前がおろおろとしていると――









「起きろッ! プロシュートォォ!」


「ゴハッ」




「!?」



隣のリビングから聞こえた鈍い音と、聞きなれた声。


「……」


するり。


「あ……」



本体の異変に気が付いたのだろう。

グレフルが名前から離れたのと、プロシュートを叩き起こした張本人――リゾットがキッチンに現れたのはほぼ同時に近かった。



「名前ッ」


「あ、リゾットさん……」


きょとんとしている少女の顔を見た途端、自分の口元が緩むのを感じるリゾット。

そして、テーブルの横を通り過ぎ、彼女の元へと近付く。



「はあ、心配したぞ。料理なら、オレも一緒に…………そこを退け、ザ・グレイトフル・デッド」


「……」


ゴゴゴゴゴゴゴ



名前の前に立ち塞がるグレフル。


それは、本体がリゾットによって何かしらの傷を負ったからなのか、それとも――






「退けと言っているだろう……グッ!?」


「!? り、リゾットさん!?」



名前をリゾットに奪われたくないからなのか。


真実は彼にしかわからない。









交信
心があれば、通じ合える。





それから数日後。



「おい、仕事行くぞ……って、何してんだ」


「あ、グレフルさん。プロシュートさんですよ」


「……(首を横に振り、ぎゅううう)」


「え、っと……(なでなで)」


「(ブチッ)ザ・グレイトフル・デッド……テメー! さっさと名前から離れろッ! つか、オレと代われ!!」



本体に反抗期なスタンドが目撃されたとか。








明らかに私得な話を書いてしまいました。
すみません……(土下座)
しかし、懲りずにメタリカちゃんとの話も考えてしまったり、しなかったり。


ここまで読んでいただきありがとうございました!
感想などございましたら、ぜひお願いします!
polka





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