uno

※ギャグ(?)
※安定の変態






「ねえ、名前〜」


「……」



私のベッドに寝転がりながら、メロンが話しかけてくる。


でも、そんなの無視だ。


私は今、雑誌を読んでいるのだから。




「ね〜え〜!」


「……」


「名前ー、名前名前名前、名前ってばー」


「……(うるさい)」


「あ、思ってたんだけどさ。名前の下着、ピンクや水色もベネだけど、たまには扇情的な黒や赤ってのも……グハッ」



刹那、宙を舞う分厚めの雑誌。


変態に使うなんてもったいないけど、仕方ない。



「……外でやってな、くそ野郎」


「あはっ! 外でヤろうだなんて、名前意外に積極的ゴハァッ!!」


もう、嫌だ。


頭から血を流しながらも、グッと親指を立ててくるこの男に、ため息しか口から出てこない。


……というか、私のベッドを血で汚すな。



「あのさ、ここ私の家ってわかってる?」


「もちろん! この香水を使ってない自然な香り、少しだけ乱雑に畳まれた洗濯物、実はこだわりを持ってるリビングに日本式の風呂……こんなの、名前の家以外ありえねえぜ!」


「……私の家にえらく詳しい理由は聞かないでおくけど、あんたはくつろぎすぎ――」


「あっ、名前が絹のような柔肌を毎晩預けているベッド……ベネ……ッ!」


「聞けよ」




恍惚とした表情で、ナニかを敷布団へ擦りつけている変態。


……ナニかが何かなんて、聞かないで。



「そもそも、何しに来たわけ?」


「……わかんないの?」


「あんたの思考なんて、わかりたくもないわ」


「ほんとに?」


うるりと潤ませた瞳で、彼がこちらを見上げてくる。






う っ と う し い 。


もう放っておこう。夕方になったら帰るだろうし。



本日何度目かすらわからないほどついた、ため息をもう一度吐いて、部屋を出ようとした、ら――



グイッ



「……わっ」


気が付けば、ベッドから抜け出していたメローネにしっかりと抱きしめられていた。


「ちょっ、やめてよ……何、いきなり!」


必死に暴れても、その真っ白な腕が離れることはない。



見た目はびっくりするぐらい細いくせに……やはりこいつも男なのだ。



「名前……肌がずいぶん荒れてるし、ここんところ仕事ばっかなんだろ? つまり、君は疲れてるわけだ」


「! そういうわけじゃ」


どうしてそれを知っているのだろう。


口では否定を紡ぎつつ、彷徨ってしまう視線。



すると、頭上から小さな笑い声が降ってきた。


「……何よ」


「ふふ、ふふふ……あはははッ! いや、君のそういう素直じゃないとこも可愛いなあって」


「……」


「ねえ、名前」







「なんでも、八つ当たりでもいいから打ち明けてくれていいんだぜ? オレは名前の味方」


「!」



心へすんなりと溶け込んでくる彼の言葉。


この男、実はとんだペテン師なのかもしれない。



「八つ当たりなんてしないし、あんたをあてにも絶対しない……でも、その気持ちだけ受け取っておく」


「うんうん! さすがオレの恋人だッ!」


「……」


これでもかと言うほど頷き、腕の力をメローネは強めた。


かなり苦しいが、なぜか嫌悪感は湧き上がってこない。





たまには、こうされるのも悪くないかも。









けど、一つだけ。


一つだけ――どうしても気になることが、ある。





「……おい変態。誰がいつ、あんたの≪恋人≫になった?」


「んー? あれっ? オレたちは出会ったときから、恋人で――」


「その出会い自体も、三日前のことじゃぁぁあああッ!!!」


バキィッ



「グエッ! ベ、ベネ! 名前、君の健康状態はディモールト良好だッッ! というわけで、オレと愛を育も――」


「だが断る」


「ガハッ!」




私は決めた。

家のセキュリティー体制を徹底的に考え直そうと。


セ○ムにもお願いしようかな、ほんと。








理想? 現実?
――いいえ、ただの(こいつの)妄想です。











初メローネさん、やってしまいましたね。
この話、最初はmiddleで書こうかと考えていたのですが、短編にしました。
中編だと私自身、いつの間にかこの変態さんに絆されてしまう、というリスクがあるので(笑)。


感想などございましたら、clapへお願いいたします!
ありがとうございました!
polka





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