真っ赤な背景に黄色のМ字。
某ファーストフード店で、私は働いています。
そして最近、ある新人さん二人のトレーニングを任されたんですが……。
「成長しろ! ペッシ。成長しなきゃあオレたちは、この仕事で栄光を掴めねえ!」
「兄貴……ッ!」
「……」
な ん だ こ い つ ら。
いや、百歩譲ったとして――成長はわかるよ?
接客だってなかなか大変だし、秒数を気にしながら商品を作るのも苦労はする。
だから、精神的に成長できるだろうけど、さ。
『栄光』ってなんだよ。このバイト先でそんなこと言ってる人、初めて見たよ。
「あのー……二人とも」
「ああ?」
「(ひいいいっ、怖ッ)い、いや! 今日は、それぞれ違う仕事に就いてもらおうかなって思いまして……はい」
「え!? 兄貴と離れちゃうんすか?」
(´・ω・`)。
しょんぼりとした表情でがくりと項垂れるパイナップル……じゃなかったペッシくん。
「だ、大丈夫だよ、ペッシくん! 不安かもしれないけど、私がついてるから!」
それに、離れるって言ってもたったの数メートルだからね!
「さ、エプロン着けて!」
相変わらず不安そうな彼にキッチン用のエプロンを渡し、後ろへとぐいぐい押す。
よし。あとはもう一人――
「で? オレは何をすればいいんだ?」
「うわ!」
振り返れば、予想以上に近くでプロシュートさんが立っていた。
その整った顔に、嫌でも心臓が高鳴ってしまう。
というか、この人睫毛長いな……。
「ハン、どうしたシニョリーナ。オレの顔をそんなまじまじと見て」
「(し、しにょりーな……)ハッ、ごめんなさい! プロシュートさんはレジをお願いします」
「ふっ……Va bene(了解)」
一言。そう呟くと、ウィンクをしてカウンターに出るプロシュートさん。
ウィンクが似合う人なんて、日本人にはめったにいないよね……って。
「ちょっと! 何お客さん口説いてるんですか!」
「あ? なんだ、もしかしてヤキモry」
「仕 事 を し ろ」
その後、ペッシくんは元々料理の才能があるのかすぐに作り方を覚えてくれたし、プロシュートさんも順調に接客スキルを身に着けてくれた。
けれども。
「『揚がる』と心の中で思ったならッ!」
テレレン、テレレン
「その時すでにポテトは揚がっているんだッ!」
バサアッ
「す、すげーや、兄貴!」
「いや、すごくもなんともないからね!?」
いちいち叫びながらポテトを油から引き揚げるのだけは、本当にやめてほしい。
そしてペッシくんも、そんな夢を持った少年のような輝く瞳でプロシュートさんを見ないで。
「あの」
「ん? ああ、お前も見てくれたか? オレのこのポテトを揚げる手さばき!」
「(なんて残念なイケメン……)いや、見ましたけどね? そもそも、それに求められているのはスピードと的確さで、スタイリッシュさは求めてな――んぐっ!?」
突如、開いていた口に飛び込んできた、塩加減のよく効いたポテト。
勢いよく顔を上げれば、プロシュートさんが得意げに笑っているではないか。
「な、何するんですか……っんぐ」
「まあまあ。そんなカリカリすんなって。ほら、ペッシも」
「いただきやす!」
「いや、それ商品……んんっ」
「美味けりゃいいんだよ、美味けりゃ。どうだ? 無味すぎずしょっぱすぎず、いい感じだろ?」
そう言って、あまりにも彼が期待を込めた目で私を見つめるから――
「……(コクン)」
出来立てのポテトを咀嚼しながら、頷いてしまうのだった。
暗殺チーム×アルバイト
第二弾:プロシュート&ペッシ×マク○ナルド
「つーわけで、見つかったらお前も一緒に怒られろよ」
「……え」
>