マジワル異時間
※承太郎&花京院、ヒロインが暗チの元へトリップしたようです
※この話にイタリア語日本語の概念はありません
※オリジナルのスタンド名が出てきます
※ギャグ……?





「ここ……どこ?」



周りを囲む洋風な部屋。

いつも通り自分は、ポルナレフとのんびり遊んでいたはず。

そう。


≪対象を異空間へ飛ばす≫――名前のスタンド、アッシュ・コインで。



「え? えっ? 何、どういうこと? さっきまでと全然景色が違うんだけど……!」


「……名前」


「! 承太郎!」



背後から届いた低音。慌てて振り返れば、ようやくあいまみえた見慣れた顔。

パアッと瞳を輝かせた少女はくっつくな、と言いたげな承太郎を無視して、逞しい腕に抱きついた。


さらに、視界の隅で動いた≪赤毛≫を発見し、思わず声を上げる。



「てんめい!」


「名前。いつまで僕の名前を間違え続け……まあいいでしょう。二人共、無事そうで良かったです」



苦笑を漏らしながら近付いてきた花京院にますます笑顔を取り戻した彼女だったが、問題にきょろきょろと周りを見渡した。



「あああ、本当によかった。でも、ここって人様の家だよね……つまり私たち不法侵入で牢屋行き!? あ、承太郎は二回目か。てんめいと私の先輩だね……よ! 先輩!」



いや、問題はそこじゃねえだろ――なぜか尊敬な眼差しを向けてくる名前に少しばかり眉をひそめた承太郎が、すかさずツッコミを入れようとおもむろに口を開く。


そのとき。





「貴様ら、一体どこの組織の者だ」



カチャリ


後頭部へ添えられた黒い塊――拳銃。

産毛の一本一本すら動くことを許さない殺気。

眼前を埋め尽くす、まるでハロウィンといったイベントにこれから参加するかのような、鮮やかな衣装たち。


そして、こちらを射抜くいくつもの鋭い視線に、表情を固めたまま少女は冷や汗が頬を伝うのをひしひしと感じていた。










マジワル異時間
コインを弾けば、変わる換わる景色。








「オイ! テメーらなんとか言えよ! いつまでだんまり貫きやがる気だァアアアアッ!?」


突然の侵入者。

まったく口を割ろうとしない三人の様子に、赤い眼鏡越しの眼を光らせたギアッチョはいつも通り声を荒げる。


一方、承太郎たちはと言えば――



「(まさか囲まれてるとはな……気付かなかったぜ。こいつら、ただ者じゃねえ……)」


「(ずいぶん鮮やかな服装ですね。顔かたちからして、外国であることはわか……ハッ! あの車は……! 日本に輸入されている物とは異なった形……つまりここはイタリア、ということですか)」


「(わあ、服がすごいカラフル……なんだか見てるとお腹すいちゃったな……あ、後ろにパスタがある。もしかしてここってイタリア?)」



あまりにもバラバラなことを考えていた。

当然ながら、ギアッチョの次に短気と言われることもあるプロシュートが、額に青筋を浮かべたままチームのリーダーへ判断を委ねるように視線を向ける。



「チッ、このままじゃ埒があかねえ。……どうする」


「……」


静寂を貫くリゾット。

しかし、何が目的かは知らないがアジトへ足を踏み入れた侵入者を≪見逃す≫という選択肢は、彼の脳内にない。

それをチームメンバーもはっきりと理解していた。


とりあえず逃亡を図らせないために足を攻撃しよう。話はそれからだ――次の瞬間、ふと映り込んだ≪人影≫にペッシが大きく目を見開く。



「! 背後の……スタンドですぜ、兄貴! こいつら、スタンドを持っていやす!」


「……フン、こいつが見えてんのか。要するにテメーらもスタンド使いだってことだな……?」


「貴方たちのご自宅へ侵入したことは謝りましょう。けど僕たちにも、成し遂げなきゃあいけないことがあるんでね」



≪まだ死ぬわけにはいかない≫。出現した白金の星と法皇の緑。


とは言え、承太郎と花京院も相手が堅気ではないと直感でわかっていても、まさか暗殺を生業とする者たちとは考えていないだろう。


男二人、女一人。黒目がちの双眸を細めつつ三人を一瞥したリゾットが、六本の足首に通う血液を操ろうと手を微かに動かした――瞬間。



「待って!」


「! 名前……?」


「オイ。退け。テメーもぶっ飛ばされてえのか」



宛てがわれていた銃口も忘れて、名前は彼らの間に飛び出していた。




「死ぬ前に……お一つ、聞きたいことがあります!」


「……言ってみろ」



何を始めるかと思えば。

そして、挙手して矢継ぎ早に言葉を紡ぐ少女に若干呆気に取られながら、リゾットが首を縦に振る。



すると、


「貴方たちが何者かは知らない。でも! でも……! 後ろの二人は……そのー……いわゆる……で、できてるの?」



刹那、言うまでもなく沈黙の気まずさが覆った。


もちろん、侵入者である彼女に指名されたソルベとジェラートはゆっくりと顔を見合わせて、



「「どっちだと思う?」」


わざとらしく声を揃わせる。


「え? こっちが質問してるのに……! 気になる! これじゃあ死ぬに死にきれないよーッ!」



室内に響き渡る叫び。

こいつ、こんなときに何言ってんだ――思わず戦う気力も削がれて、承太郎はひっそりとため息を吐き出した。



さらに次の瞬間、失笑しゲラゲラと笑い始めたのは――言うまでもなくメローネ。



「あっははははは! イイ! ベリッシモイイよ! 死ぬ前とは思えないその思考! そのぶっ飛び具合! それらから判断して、君の健康状態は……良好だッ!」


「良好? 確かに、ここ最近は承太郎たちとの旅で体力が付いたのか、全然風邪引かないけどね!」


「……メローネ」


「ごめんごめん。あー笑った……でもリーダーも珍しく表情に色が出てるよ。もしかして珍獣すぎて驚いてる?」


まさに鳩が豆鉄砲を食らったような顔。

彼だけでなく仲間でさえ少なからず動揺した様子に、プロシュートが鼻で笑う。



「ハン! まあ確かにこの状況でその質問をする度胸は、並大抵のことがなきゃ培えねえ。つか女。オメー、元から死ぬ気ねえだろ」


「あちゃー、バレましたか」


「おう、バレバレだ。んな答え、最期に聞きたかねえからな」



うんうん、と頷く男たち。

ちょっとーみんなひどいな、と言いつつも相変わらず距離が近いソルベとジェラート。


それに名前が青ざめていると、不意にあくどい笑みを滲ませたメローネに肩を抱き寄せられた。



「そうだ、この子アジトで飼おうよ! もし余計なことしそうだったら、オレの母胎にすればいいだけの話だし」


「え、ちょ、母胎? あの、もしもーし。今物騒な言葉が聞こえ――」


「ふむ。ペットとしてならいいかもしれないな……早速ワクチンなどを調べなければ」


「はあ……リーダーの天然がここで発揮されちゃったな。ま、オレには関係ねえしいいんじゃない?」



遠い目をしたイルーゾォが一言呟いて、肩を竦める。


一方、和らいだ緊張に内心ホッと安堵を漏らす少女。

この人たち案外優しいし、なんとか生きていけるかも――なぜかさわさわと動かされるメローネの手から逃れながら、彼女が未来に希望を抱き直している、と。

今まで傍観に徹していたホルマジオが苦笑気味で口を開いた。



「つーかよォ」


「ん? なんでしょうか、丸刈りさん!」


「丸刈り……まァ確かにそうなんだが、改めてそう言われると……ってその話じゃなかったな。オメーの連れ、出ていこうとしてるけどいーのか?」


「え!?」



慌てて振り返れば、部屋を出ていこうとする大きな背中が二つ。


≪置いていかれる≫。そう脳髄が判断した途端、名前は二人の元へ駆け出す。



「承太郎! てんめい! ストップ!」


「「グッ」」



そして承太郎の学ランの鎖と、花京院の特徴的な前髪を両手で掴んだ。



「二人共! どうして先に行っちゃうの! というかどこ行くの!」


離せ、とこちらを突き刺す鋭い翡翠。

それにたじろいでいると、承太郎が淡々と声を上げる。



「現状の把握だ。おとなしくしてろ。まあテメーの場合、一人でも生きていけそうだがな」


「ちょ、か弱い乙女になんつーことを!」


「……名前。テメー、本気で言ってんのか」


「あはは、そうだね。名前は格ゲーで最難キャラ扱うぐらいだし、確かにか弱くはな――」


「ゲームの話じゃねえ。花京院、テメーは話をややこしくするな」


本日何度目かのため息をこぼす男。ずいぶん苦労性だ。

あまり顔色は変わらないが、実は急いている心。


だが、未知の世界で顔見知りが離れていく状況に、少女が納得するはずがない。



「二人共、世界をなめちゃあいかんよ! もし外に出て迷ったらどうするの! お兄さんたち、まさかとは思うけどまた野宿する気!? どこか、さらにいつかもわからない場所で……あ、一応聞きますけど、今って何年ですか?」


「今? 1999年だよ」


「そうそう! 12年も違う世界で……、え?」


「1999年だって……!?」



なんということだろう。自分たちがいたのは1987年だ。

ギョッと見開いた花京院を横目に、承太郎は今もこちらを引きとめようと必死な彼女を静かに見据えた。


「……そういやテメー、ここに来る直前スタンド使ってたよな?」


「ッ、ひぃぃぃ! た、確かに≪可能性としてはあるかなー?≫なんて思ったけど! そっ、そもそも! 傷とかを異次元に飛ばすことは知ってたけど人間は初めてだし、この子気まぐれだから私の意志で戻れな……きゃー!? 承太郎のオラオラいやーッ!」



慌てて後退る名前。

人様の家とは思えない暴れっぷりに、自然と暗殺チームの面々の頬が引きつる。


一方で、少女も伊達に数十日旅を続けていたわけではない。承太郎の≪焦り≫にはしっかり気付いていた。



「だ……大丈夫! もし私のスタンドが原因なら、あっちの時間は動いてない……ジョセフさんたちのところへ帰るにも衣食住が揃わなきゃできないよ! ここに住まわせてもらって、帰り方を探そう?」


「……。珍しくまともな意見出しやがって」


「な! 承太郎! 私だって聖子さんを助けたいんだから……!」



≪そうかよ≫≪そうだよ≫と重なる応酬。

その最中、帽子のつばを指先で捉えた腕の奥で、小さく微笑んでいる男に胸中でクスリと笑う花京院。



「(名前の決意を聞けて嬉しいはずなのに、素直じゃないなあ……)」


こうして、改めて対面する男たち。



「しばらく世話になるぜ」


「……ああ」



相変わらず威圧を放つ承太郎と、恒例のポーズを取るリゾット。

その異様な雰囲気に、彼女が興奮で喉を震わせる。



「おお……! 承太郎に対抗して(何のリーダーか正直わからないけど)リーダーさんが変なポーズしてる!」


「リーダー人見知りだからねえ……初対面の奴には特にあんなんだよ。あ、そういえば君の名前は?」


「名前って言います! これからよろしくお願いしますね、変態マスクさん!」








そんな感じで、最初は互いに警戒していた彼ら(少女一名を除く)だった、が。



「あ、そうだ! 買い物行かなきゃ……でも一人じゃ迷子になるし……ハッ! そこのムキムキ二人!」


「!? 名前、テメーはいちいち鎖を引っ張んじゃねえ」


「ッ、何を……」


「承太郎はムキムキだし、リーダーさんは土地勘ある上にムキムキ! だから買い物に付き合って!」



一番寡黙で気難しそうな男二人をお供にしたり。



「氷の人! お腹すいちゃった、かき氷作って! かき氷!」


「はアアアッ!? テメッ、俺をなんだと思って……クソッ! ンな目で見んじゃねえよ、ボケがッ! ちょっと待ってろ!」


「やったー! でも味何にしよう。迷っちゃうなあ」


「じゃあ僕はメロン味で」


「あ、オレもオレも! 思ったんだけど花京院クン、意外にあんたと趣味合うねえ」


「テメーら何便乗してんだァアアアア!」



ギアッチョ、花京院、メローネとかき氷を共に食したり。

さらには、


「なんだ? 猫……?」


「ほんとだ猫さん! 足元に擦り寄って……承太郎が好きみたいだね! あ、丸刈りさん」


「どこに行ったかと思えば、お前らのとこだったか。しっかしずいぶん懐いてるなァ……どうせなら抱き上げてみっか?」


「お……おう」


猫と承太郎。

といった思わぬショットが見られたり。


また、


「うわあ……! 鏡の中って初めて入った! すごいね!」


「鏡の世界……本当にあったなんて(衝撃)」


「だろ? 名前がそんなに喜ぶなら、もっと早く見せておけばよかったな」


「……う、嘘だ。ありえませんよ……鏡の世界なんて、ファンタジーやメルヘンじゃあるまいし(ブツブツ)」


「ちょ、お前今メルヘンって言ったな!?」



一悶着ありつつも、なんだかんだ言って仲良くなったり。



「パイナップルくんはどうして金髪イケメンさんを兄貴って呼ぶの? 本当に兄弟なの?」


「そ、そんな! 兄貴はオレを時に厳しく、時に優しく(?)導いてくれる、心の兄貴なんす。だから兄弟じゃないっすよ」


「へえ……いいなあ。私も兄貴って呼びたい! 呼んでいいですか!?」


「あ? まあ、別に構わねえが。弟分に妹分、一人増えたからって困るこたァねえからな」


「わーい! あ、でも私が一番下の妹分なら……パイナップル、じゃなかった。私にとってはペッシくんもペッシ兄貴だね!」


「!?」



新たな妹分、兄貴が発生したり。

極めつけは――


「承太郎、てんめい……ッあれから時々観察してるんだけど、決め手がなくてわからないんだ。二人はどう思う?」


「……できてるだろ」


「できている、と結論付けた方がいいでしょうね」



三人で円を作り、いつもくっついている男二人について話すこともあった。

答えは≪できている≫に傾きつつあるが、証拠を掴めていない状況である。


ちなみに、



「ねえねえ。あんたがディ・モールトいいと考える名前との体位は?」


「そうですね、僕は――」


「やかましいぞ、この変態共ッ!」


「「ガフッ」」


名前は事情を知らないが、リビングに足を踏み入れた瞬間、メロン二人が床に倒れ込んでいることもあったらしい。







しかし、そうした騒がしくも長閑な日常に突如終止符が打たれようとしていた。



「え? 日本に、行ってみる……?」


普段以上に真剣な眼差しの二人。

表情を一切変えない承太郎に対して、花京院が穏やかに頷く。



「ええ。とりあえず帰るきっかけを探す第一歩として、日本に戻ります。12年後なんて想像もつきませんが」


「テメーも付いてくるんだろ?」


「う、うん。そうだね……(寂しいけど)私も行――」







「おっと、そうはさせねえぞ」


刹那、グイッと腕を引かれ、辿り着いた背中を覆うぬくもりに少女は目を白黒させていた。



「ええっと……兄貴? 私はどうして、抱き寄せられているのですか?」


「ふっ、んなモン決まってんだろ? オメーを行かせたくねえからだ。オレの可愛い妹分をな」


耳元を掠める滑らかな低音と吐息。

それに思わず顔を赤くすると、彼女は気付いていないが承太郎の眉間にしわが一本増える。


さらに、淡々と話し始めるリゾット。


「お前たちを止めはしない。意志は固いようだからな……だが、名前は置いていってもらう」


「なんてったって、オレたちのかんわいいペットだからね!」


「あのー……やっぱりそれ人権無視じゃry」


「ったく、やれやれだぜ。いいか、名前はこっちが先に連れてたんだ。そうとなりゃあオレたちに返すのが筋ってモンじゃねえのか」



緊迫した空気。

出逢った当初と同じ、いや、それ以上に張り詰めた世界の中で、男は背後に己の化身を出現させた。


「スタープラチナ!」


彼の臨戦状態に応えるかの如く、それぞれ構えを取る暗殺チーム。

続く睨み合い。


その室内、かなり不穏である。

何がなんだかわからないがやばい――血の気が引いていく感覚を捉えた名前は慌てて傍観体勢の花京院に駆け寄った。



「て、てんめい! どうしよう!」


「何がです?」



ぶっ飛んだ発言の多さで有名な少女でさえも、やはりこの状況の危険性は理解しているのだろうか。


≪大丈夫です、僕も戦いに臨む心づもりはできているので≫。

そのような返事を用意して、彼は彼女の口から溢れる音を待った、が。



「今こそ! みんなに≪私のために争わないで≫って言いたい!」


ああ、やはり名前に常識を求めてはいけなかった。

一瞬遠い目をした花京院は、そこから眼前へ視線を移し、あえて微笑みながら発言を促す。



「言ったらいいじゃないですか。たぶん承太郎もリーダーさんも喜びますよ(さらに白熱するかもしれませんが)」


「ううっ、言いたい! 確かに言いたい……けど」


「けど?」







「いざやってみようって思うと……恥ずかし、くて……」


ほんのり紅潮した耳。少女のそれを見据えて、今度こそ男は実際に苦笑を顔に滲ませる。



「(まったく。そうやって時々可愛いこと言うんですから……困りました)」



鼓膜を揺らしていく喧騒。

彼らの戦いは、まだ終わりそうにない。


ふと彼の脳内に浮かぶのは、遥か昔に別れたかのような気分に陥る、仲間の面持ち。



「(ジョースターさん。アヴドゥルさん。イギー。あと……忘れました。みんな、元気にしているでしょうか)」


「ちょ、寒ッ! 氷の人! ギアッチョくん! その猫耳スーツだけは寒いからほんとやめてー!」



響き渡る悲鳴に近い怒声。

ひたすら下がっていく室温と崩壊寸前の部屋に名前がキレ、双方に≪もう少しだけ滞在≫という妥協案が出されるまで、あと――











大変長らくお待たせいたしました!
暗チと、彼らの元へやってきた承太郎、花京院、ヒロインが互いに警戒しつつも、最終的にヒロインを取り合いするお話でした。
リクエスト、そして激励のお言葉ありがとうございました!
滅多に3部メンバーを書かないので口調に迷いましたが、いかがでしたでしょうか?


感想&手直しのご希望がございましたら、お願いいたします!
Grazie mille!!
polka



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