※天然お嬢様ヒロイン、敬語
※子どもが大人に尋ねる質問トップ3以内に入るであろうネタです。ベタです
※ギャグ甘
最近イタリアに越してきた資産家の娘、名前。
プロシュートが、まるで道端で拾った子猫のように飄々と彼女を連れて帰ってきたその日には、≪金づるの糸口が手に入った≫と皆が皆大いに色めき立った。
しかし、偶然拉致されたと言っても過言ではない当の本人はつぶらな瞳をキラキラと輝かせて、
「私、初めてです……!」
「≪お泊りパーティー≫!」
とどこまでも嬉しそうに微笑んだのである。
その瞬間、男たちは悟る。とんでもない娘を誘拐した、と。
結局、少女の天然っぷり(人はそれを、世間知らずとも言う)と可愛らしさに絆され、この件に関して≪悪≫にはなりきれなかった彼ら。
企てた人質大作戦はたった三日で終わり、名前も無事に帰宅したと思われた、が。
「おいおい。オメーの親はどういう神経してんだ……≪そちらに滞在させてもらいなさい≫、だなんてよお」
アジト内にプロシュートの呆れ声が響き渡った。
ところが、家のモノより明らかに柔らかくないであろうソファにちょこんと腰掛けた彼女は、眉間に向かって寄せられた彼の眉根を気にすることなく破顔している。
「両親はかなり教育は厳しかったですが、大抵のことは放任主義でしたから。でも、すごく嬉しいです。私、皆さんとこれからも一緒にいられるのですね……!」
「ああ、そうだな。オレたちの元でたくさんのことを学んでいくといい」
「「「「「「「「(誰か、この天然二人を早くなんとかしろ……!)」」」」」」」」
蝶よ花よと育ててきたに違いない親にどう説明すれば、ギャング――それも暗殺を生業とする自分たちの傍で過ごす≪お許し≫が出るのか。
こうしてイタリア一のギャング組織、パッショーネの暗殺チームと寝食を共にすることになったお嬢様。
今日は、そんな彼らが繰り広げる、騒がしい日常のごく一部を紹介しよう。
「あの、リゾット」
恐る恐る開けられた扉の向こう。
そこから見えたこのアジトにいる誰よりも小さな影に、ペンを動かす手を止めたリゾットは首をかしげた。
「名前……どうした」
「仕事の邪魔をしてごめんなさい。でもどうしても気になって……一つ質問をしても、いいですか?」
「質問? 構わないが」
こちらで生活するようになってから、少女はよく≪なぜ≫という疑問を自分たちに打ち明けてくる。
そのどれもが可愛いものだったので、彼は今回もそうだろうと二つ返事で頷いた。
すると、彼女の顔に咲き誇る可憐な笑み。
「ありがとうございます! ≪ぎゃんぐ≫の人って、本当に優しい殿方たちばかりなんですね(にこにこ)」
「……、名前。ギャングと言うのは……いや、まあいい」
質問があるんだろう――表情を少しばかり和らげた男がそう問えば、「そうでした……!」とそわそわしながら名前が口を開く。
「つい先程、あの応接間(リビング)にある、て……≪てれび≫を見ていたのですが」
「ふむ。何か面白いものでも見つけたのか?」
「……」
「?」
連行(拉致)した当初、少女はテレビの≪て≫の字も知らなかった。
言い慣れないのも無理はない。
ちなみに、見たいと思った番組は普段から自宅のスクリーンで鑑賞していたそうだ。
今回は、あの小さなブラウン管から一体何を吸収したのだろうか。
口角をそっと上げたリゾットが彼女からの言葉を待っていると、ふとどこまでも純粋なそれが自分を突き刺した。
「リゾット。子どもは……どのようにして、生まれてくるのですか?」
……。
…………。
「……すまない。もう一度言ってくれないか」
「え? 子どもは、どのようにして生まれてくるのですか?」
「(聞き間違いじゃあないんだな……)」
知らないのか――念を押す意味も込めて呟くと、名前は即座に頷き返してくる。
「はい。気になって両親に尋ねたこともあるのですが、二人は≪まだ知らなくていい≫の一点張りでした」
「……なるほど」
大体予想はつく。だが、彼女も子どもではないのだから、そろそろ知っていてもおかしくない年頃なのではないだろうか。
≪いや、資産家といった金持ちに常識は通じない≫。
彼のその確信に近い推測は、そういった金や権力のある者たちをターゲットとして見てきた経験によるモノとも言える。
もちろん、天然で知られる男の常識自体については、ここでは不問とする。
「……」
何も、少女の父親も含めた俗に言う≪富裕者≫が、これまで自分が始末してきたような奴らばかりではない(と信じたい)。
脳内で討論を重ねつつリゾットが黒目がちの瞳を前へ向ければ、先程とは打って変わって申し訳なさそうな名前がこちらを見据えていた。
「あの……リゾット」
「ん?」
「もしかして私、いわゆる≪聞いてはいけないこと≫を聞いてしまったのでしょうか?」
「……そういうわけじゃあない。そういうわけでは、ないんだが」
ただ、面食らってしまっただけなのだ。
彼はもちろん、チーム全員がおそらく己の子どもを授かったことはない。
しかし今だけは、そうした気分を味わわざるを得なかった。
「名前……生命の誕生には、さまざまな方法があって、だな……」
「さまざま……! くっ、詳しく教えてください!」
「さ……さまざまはさまざまだ。ありすぎて数え切れない……人類の手には負えない量だ。名前もここのベランダから夜空を見上げたことがあるだろう? そう。星の数ほど方法があるんだ」
ああ、なぜ自分はポエマーのようになっているのだろうか。
正直胸が痛い。実際にある方法は唯一無二――己も生を受けて生まれたという本能がそう理解しているからだ。
当然ながら、彼女も今の解答では納得がいかないだろう。見切り発車で答えた張本人が、現在進行形で混乱しているのだから。
妙な罪悪感に苛まれたのか頭を抱えた瞬間、男は不意に嫌な予感を覚えた。
「……名前。まさか他の奴らに尋ねに行くんじゃあ――」
ないだろうな。
ところが、音を紡ぎつつリゾットが勢いよく顔を上げたそのときにはもう、少女の姿は忽然と消えていたのである。
ホルマジオの場合。
名前が最初に向かったのは、愛猫家である知識人の元だった。
「はァ? 名前……お前ってマジで突拍子もねェな」
「ごめんなさい。でも、どうしても知りたくて」
ホルマジオはご存じですよね?
どう返して良いかわからない質問とその期待に、彼は後頭部をガシガシ掻いたまま戸惑う。
正直、真実を伝える役には名乗り出たくなかった。
「なんつーか……そのォ……」
「(キラキラ)」
「……ッ」
話によれば、どうやらいつもは彼女の問いに対して丁寧に回答しているリーダーも誤魔化したらしい。と言っても、彼の放った≪さまざま≫という単語が自分たちにまで飛び火している、要するに尻を拭っているようなモノなのだが。
ついに、名前のどこまでもまっすぐな視線に耐え切れなくなったホルマジオは、咄嗟に思いついたことを話し始めた。
「ちっさな……ちっさな妖精さんがよ、選んだ夫婦に魔法をかけんだ。それで……、……しばらくしたらその夫婦の元に子どもは生まれるんだ。ま、魔法で俺たちゃ生まれたんだぜ!? すげェよな。ハッ……ハハハッ」
「まあ……! 素敵な方法なのですね!」
ありがとうございました――ぺこりと頭を下げて走り去っていく少女。
「おーう。…………ひっでェごまかし方だなァ、オイ」
これでよかったのだろうか。それにしても≪妖精≫や≪魔法≫はないだろう。
と、ホルマジオは少しの間自己嫌悪に陥るのだった。
ソルベとジェラートの場合。
「えー? 好きな人と一緒にいたら、自然と生まれるんだよ。ね、ソルベ!」
「ああ、そうだな。ジェラートの言う通りだ」
にししと楽しそうに笑うジェラートと、静かに頷くソルベ。
「好、き……」
首をかしげた彼女はぽつりと単語を反芻してみるが、その感情がわからない。
≪好き≫とはどんな気持ちなのだろう。
すると、二人が不思議そうに覗き込んでくる。
「名前には好きな男がいるのか?」
「私ですか? 私は……まだわかりません」
「そっかあ……いつかできるといいね! そいつに、今名前が気になってる詳細は教えてもらうといいよ」
だから、「恋人ができるそのときまでは、名前はオレたちのものー!」と驚く暇も与えずに少女を両側から強く抱きしめる男たち。
突然のことに目をぱちくりとさせた彼女は、頬を赤らめつつも嬉しそうに笑うのだった。
イルーゾォの場合。
「は? え、今なんて?」
「あの、イルーゾォにも質問なのですけど、子どもはどのようして――」
「わあああ! ストップ! もうわかった!」
廊下で出会った名前の笑顔に、今日も今日とて癒されていると、不意に繰り出された予想外の問い。
自然と、イルーゾォの脳は≪隠すこと≫を選んでしまう。
ひどく狼狽えた彼は、彼女の肩を掴みながら強い口調で話しかけた。
「名前! そういうことはまだ知らなくていいから……な?」
だが、返ってきたのはじとりとした少女の視線。
「イルーゾォ……貴方も、両親と同じことを言うのですね」
子ども扱いが嫌なのか、名前が不満そうに唇を尖らせている。
可愛い――と空気を読まぬ己の感情を慌てて振り払った男。当然、こちらにも譲れないものがある。
「いや、ごめん。でも……こういう話はデリケートというか、なんというか」
「デリケート……?」
「そッ……そう。デリケートで、聞く奴によっては間違った行動を取りそうな……ってオレは違うからな!? オレは別に名前と…………ぼ、煩悩は許可しないィィイイイ!」
「あ、イルーゾォ! 待ってください……!」
照明で煌く鏡から、イルーゾォがしばらく出てくることはなかった。
プロシュートとペッシの場合
「イルーゾォ! どうか出てきてください……!」
「? 鏡の前で何してんだ、名前」
コツコツと必死な様子で鏡をノックするお嬢様。
そこへ現れたプロシュートとペッシに、彼女はハッと我に返る。
「ふ……二人とも……」
「私、悪いことを聞いてしまったみたいです」
かくかくじかじか――自分の胸に蔓延る疑問とイルーゾォが鏡に閉じこもってしまった経緯を話せば、二人の反応は当然、
「えっ……ええ!?」
「ペッシッ! 狼狽えてんじゃあねえ! だからオメーはいつまで経ってもマンモーニなんだ。んなことでいちいち驚いててどうする。仕事じゃそうは言ってられねえんだぞ! それにこのバンビーナの質問は、いつも突飛だってわかってんだろうが……!」
溢れ出した動揺と、延々と続く説教だった。
漂うなんとも言えない空気。
それを、おもむろに口を開いたプロシュートがバッサリと断ち切る。
「いいか、名前。耳かっぽじってよーく聞けよ? 子ども……いや、赤ん坊っつーのはな」
「は、はい……!(ドキドキ)」
「兄貴……(どう説明するつもりなんだろ……)」
固唾をのむペッシ。
それを一瞥した兄貴分は、深く息を吸い――
「行きは父親の中にいて、帰りは母親の中にいるモンなんだ」
正しくも、当たり障りのない解答を口にした。
プロシュートも、少女にはっきりと述べるつもりはなかったのである。
まさに苦渋の決断だった。
「なるほど……」
魔法とは違った方法。
ふむふむと頷きながら、頭に情報を刻んでいく。
「さ、さすが兄貴! 名前も(たぶん)納得してくれやしたよ!」
「ふ……正直に話すか迷ったのは事実だ。ペッシ、迷うことを恐れんじゃねえぞ。問題は迷って、その後どう行動するか、だ。わかったか? だが生命っつーのは神秘だよな。どうだ名前。今すぐにとは言わねえが、これからゆっくりオレと――」
「兄貴! 名前もういないっす……!」
「……チッ、マジかよ」
ギアッチョの場合
次に名前が向かったのは、最後の砦ギアッチョの元だった。
「あ……ギアッチョ!」
「ゲ」
あからさまに眉をひそめる男。
それに対して首をかしげつつ、彼女が質問を紡ぎ出せば、
「はアアアアア!? テメー、突然何を言い出すかと思えばよ――ッ! へ、変なこと聞いてくんじゃねえぞ! クソッ! クソが!」
もちろんキレられてしまう。
だが、少女もそれで引き下がるタマではない。
これまで教えてもらった情報を打ち明けると、彼の眼鏡越しの目が丸くなった。
「(ちょっと待て。そもそもどーして≪さまざま≫なんつー見解になってんだよ! おかしいだろ。実際は一つで……ってコイツのことだ。ぜってーその詳細を聞いてきやがる……!)」
なぜ自分のところへ訪れるまでに、誰も≪事実≫を明かしてくれなかったのか。
思わぬとばっちりに歯ぎしりをしつつ、ギアッチョは苛立った様子で口を開ける。
「〜〜ッコ」
「コ?」
「コ……コ……コウノトリが夫婦の元に運んでくんだよ! 知ってんだろ? コウノトリってよオオオオ! これでいいかッ! チクショウが……!」
リビングに、自暴自棄すれすれの叫びが響き渡った。
「コウ、ノトリ……」
「……オイ。なんか文句でもあんのか」
「いえ……、けど」
「少しおかしくはないでしょうか?」
ピキッ
彼の額に浮かぶ青筋。
しかし、名前はそれに気付くことなく話し続ける。
「コウノトリは空を飛んで、子どもを運んでくるのですよね? でも、私の見る限り空には他の鳥もいますし……風もありますし。とても安全とは…………、ギアッチョ?」
ブチッ
そこでようやく、彼女はその≪音≫に首をかしげたが、すでに遅かった。
「名前テメー! 変なとこで勘ぐるんじゃあねえエエエエエッ! クソ! ボケが! テメー、妖精の時はなんも言わなかったんだろうがアアアアア!」
「きゃあああ……!?」
鷲掴みにされた頭
ぐわんぐわんぐわん、と前後左右に揺さぶられる。
ああ、意識が――少女がぐるぐると目を回し始めたそのときだった。
「おいおい。まだやってたのか? しょーがねェな〜〜!」
次々と入ってくる男たち。
それに舌打ちをしたギアッチョが、ようやく手を離してくれる。
今までどういった話をしていたのか、それを忘れてしまいそうになるほどのダメージを食らった名前。
ふらふらとソファへ座り込んだ彼女に、その場にいる全員が少女の可愛くもえげつない追及から逃れたと胸をなで下ろした、が。
「名前ッ! ここにいたんだな? 探したぞ」
「リゾット……? どうしたのですか?」
問題は、いまだ立ち去っていない。
リビングへ飛び込んできたリゾットの手にある一冊の本で、彼らはそう理解した。
「今……本を買ってきたんだ。ここに、名前が知りたいと言っていた答えが載っている」
本当ですか――これで新たな方法を知ることができる、と嬉しそうに彼からその代物を受け取る。
だが、どうしたことだろう。
表紙を見る前に、名前の手の中から重みが消えていたのだ。
「あら……?」
一方で、本を取り上げたイルーゾォも含めてリゾット以外の男はただただ頬を引きつらせていた。
妖精やらコウノトリやら、そうした回答にたとえ罪悪感はあれども、世の中には≪方便≫というモノがあるのだから。
タバコを口端に咥えたプロシュートが、やおら長い脚を振り上げる。
標的はもちろん、≪なぜ読ませてあげないんだ≫と怪訝そうな顔をしているリゾット。
「……イルーゾォ。それは名前に返して――」
「誰が返すかッ! ちゃっかりリアルに教えようとしてんじゃねえぞ、この天然野郎が……!」
天真爛漫Principessa
「あれ、誰か忘れてるような」――そんなことを思いながら、七人はリーダーをゲシゲシと足蹴にし始めるのだった。
〜おまけ〜
眼前の惨状をただただ眺めていると、名前の肩に誰かの腕が回った。
それは、
「なあんか騒がしいなって思いながら帰ってきたら……一体どうしちゃったわけ? そんなに暴れて……もしかしてみんな発情期?」
「あ……メローネ。おかえりなさい」
「んふふ、ただいま。オレには目もくれないあいつらと違って、名前はほーんとお利口さんだねえ……そんなお利口さんにはベリッシモいいモノを……おっと間違えた、このキャンディーをあげるよ」
そう言って、なぜかズボンのファスナーに手をかけようとしたメローネ。
だが、「間違えた」とわざとらしく彼が今度こそ取り出したのは、日本で言う駄菓子屋で売っていそうな棒付きキャンディー。
手渡されたそれに、彼女の鈴を張ったような双眸はより一層輝きを増す。
「わあ……! 美味しそう! いただきます!」
「どうぞどうぞ。(ハアハアッ……名前の赤くて可愛い舌がキャンディーを舐めて……! ベネ! そのおずおずとした感じがまたいいんだよ……ッハア、早くオレのも食べてほしい!)……で? こうなった経緯をディ・モールト詳しく聞かせてくれよ」
実は――とキャンディーを不慣れながらも食す少女から話された内容は、まさに自分の得意分野。
気が付けば、男はにやりとほくそ笑んでいた。
「……なるほど、ねえ」
これはチャンスだ。
それもとびきりイイ。
じわじわと攻めようと思っていたが、意外にも早く機会が巡ってきた――以前から企てていた計画とは裏腹に、あくまでも名前の前では優しいお兄さんを貫き通すメローネ。
「そっか……名前もお年頃だもんね。うんうん、ベリッシモわかるよ」
「メローネ……?」
「生命の秘密、知りたいよな?」
「!」
≪知りたいです≫。予想通りの答えに彼の心はますます小躍りする。
「ハアハア……名前、オレと一緒にじっっっくり時間をかけて、≪どうやって子どもが生まれてくるのか≫学んじゃおっか」
「? つまりメローネの部屋でお勉強、ですか?」
「あはは、違う違う。まあ確かにそれに近い……というか≪実践≫なんだけど、勉強っていうのはそもそも楽しまなくちゃあならない。そうだろ?」
辛いことより楽しいことの方がいい。
その直感に従い首を縦に振った彼女の頭を、男が流れるような手つきでなで始めた。
「いい子いい子」
「っ……、//////」
あれ――優しい手のひらがそっと添えられた瞬間、脳内に過ぎった≪感情≫にきょとんとする少女。
心が、少しだけ高鳴ったのである。
なんで、と新たな疑問にぶつかるものの、答えが見つかることはない。
その動揺が影響してかただただ頷くばかりの名前に、メローネはにんまりと笑みを深める。
「じゃ、リーダーたちに見つからないうちに行こうぜ」
そしてメローネは、なぜかほんのり顔の赤い彼女をソファから立ち上がらせた、が。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
その後、男たちから制裁を受けた変態に追い打ちをかけるように、≪名前の半径5メートル以内に接近することを禁ず≫という命令が三日ほど出たのは言うまでもない。
![](//img.mobilerz.net/sozai/1616_w.gif)
長らくお待たせいたしました!
暗チと、敬語&天然お嬢様ヒロインでギャグ甘でした。
リクエストありがとうございました!
なんと言いますか……オチをメローネにしてしまいましたが、よろしかったのでしょうか……。
感想&手直しのご希望はいつでも受付中ですので、よろしければ!
Grazie mille!!
polka
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※子どもが大人に尋ねる質問トップ3以内に入るであろうネタです。ベタです
※ギャグ甘
最近イタリアに越してきた資産家の娘、名前。
プロシュートが、まるで道端で拾った子猫のように飄々と彼女を連れて帰ってきたその日には、≪金づるの糸口が手に入った≫と皆が皆大いに色めき立った。
しかし、偶然拉致されたと言っても過言ではない当の本人はつぶらな瞳をキラキラと輝かせて、
「私、初めてです……!」
「≪お泊りパーティー≫!」
とどこまでも嬉しそうに微笑んだのである。
その瞬間、男たちは悟る。とんでもない娘を誘拐した、と。
結局、少女の天然っぷり(人はそれを、世間知らずとも言う)と可愛らしさに絆され、この件に関して≪悪≫にはなりきれなかった彼ら。
企てた人質大作戦はたった三日で終わり、名前も無事に帰宅したと思われた、が。
「おいおい。オメーの親はどういう神経してんだ……≪そちらに滞在させてもらいなさい≫、だなんてよお」
アジト内にプロシュートの呆れ声が響き渡った。
ところが、家のモノより明らかに柔らかくないであろうソファにちょこんと腰掛けた彼女は、眉間に向かって寄せられた彼の眉根を気にすることなく破顔している。
「両親はかなり教育は厳しかったですが、大抵のことは放任主義でしたから。でも、すごく嬉しいです。私、皆さんとこれからも一緒にいられるのですね……!」
「ああ、そうだな。オレたちの元でたくさんのことを学んでいくといい」
「「「「「「「「(誰か、この天然二人を早くなんとかしろ……!)」」」」」」」」
蝶よ花よと育ててきたに違いない親にどう説明すれば、ギャング――それも暗殺を生業とする自分たちの傍で過ごす≪お許し≫が出るのか。
こうしてイタリア一のギャング組織、パッショーネの暗殺チームと寝食を共にすることになったお嬢様。
今日は、そんな彼らが繰り広げる、騒がしい日常のごく一部を紹介しよう。
「あの、リゾット」
恐る恐る開けられた扉の向こう。
そこから見えたこのアジトにいる誰よりも小さな影に、ペンを動かす手を止めたリゾットは首をかしげた。
「名前……どうした」
「仕事の邪魔をしてごめんなさい。でもどうしても気になって……一つ質問をしても、いいですか?」
「質問? 構わないが」
こちらで生活するようになってから、少女はよく≪なぜ≫という疑問を自分たちに打ち明けてくる。
そのどれもが可愛いものだったので、彼は今回もそうだろうと二つ返事で頷いた。
すると、彼女の顔に咲き誇る可憐な笑み。
「ありがとうございます! ≪ぎゃんぐ≫の人って、本当に優しい殿方たちばかりなんですね(にこにこ)」
「……、名前。ギャングと言うのは……いや、まあいい」
質問があるんだろう――表情を少しばかり和らげた男がそう問えば、「そうでした……!」とそわそわしながら名前が口を開く。
「つい先程、あの応接間(リビング)にある、て……≪てれび≫を見ていたのですが」
「ふむ。何か面白いものでも見つけたのか?」
「……」
「?」
連行(拉致)した当初、少女はテレビの≪て≫の字も知らなかった。
言い慣れないのも無理はない。
ちなみに、見たいと思った番組は普段から自宅のスクリーンで鑑賞していたそうだ。
今回は、あの小さなブラウン管から一体何を吸収したのだろうか。
口角をそっと上げたリゾットが彼女からの言葉を待っていると、ふとどこまでも純粋なそれが自分を突き刺した。
「リゾット。子どもは……どのようにして、生まれてくるのですか?」
……。
…………。
「……すまない。もう一度言ってくれないか」
「え? 子どもは、どのようにして生まれてくるのですか?」
「(聞き間違いじゃあないんだな……)」
知らないのか――念を押す意味も込めて呟くと、名前は即座に頷き返してくる。
「はい。気になって両親に尋ねたこともあるのですが、二人は≪まだ知らなくていい≫の一点張りでした」
「……なるほど」
大体予想はつく。だが、彼女も子どもではないのだから、そろそろ知っていてもおかしくない年頃なのではないだろうか。
≪いや、資産家といった金持ちに常識は通じない≫。
彼のその確信に近い推測は、そういった金や権力のある者たちをターゲットとして見てきた経験によるモノとも言える。
もちろん、天然で知られる男の常識自体については、ここでは不問とする。
「……」
何も、少女の父親も含めた俗に言う≪富裕者≫が、これまで自分が始末してきたような奴らばかりではない(と信じたい)。
脳内で討論を重ねつつリゾットが黒目がちの瞳を前へ向ければ、先程とは打って変わって申し訳なさそうな名前がこちらを見据えていた。
「あの……リゾット」
「ん?」
「もしかして私、いわゆる≪聞いてはいけないこと≫を聞いてしまったのでしょうか?」
「……そういうわけじゃあない。そういうわけでは、ないんだが」
ただ、面食らってしまっただけなのだ。
彼はもちろん、チーム全員がおそらく己の子どもを授かったことはない。
しかし今だけは、そうした気分を味わわざるを得なかった。
「名前……生命の誕生には、さまざまな方法があって、だな……」
「さまざま……! くっ、詳しく教えてください!」
「さ……さまざまはさまざまだ。ありすぎて数え切れない……人類の手には負えない量だ。名前もここのベランダから夜空を見上げたことがあるだろう? そう。星の数ほど方法があるんだ」
ああ、なぜ自分はポエマーのようになっているのだろうか。
正直胸が痛い。実際にある方法は唯一無二――己も生を受けて生まれたという本能がそう理解しているからだ。
当然ながら、彼女も今の解答では納得がいかないだろう。見切り発車で答えた張本人が、現在進行形で混乱しているのだから。
妙な罪悪感に苛まれたのか頭を抱えた瞬間、男は不意に嫌な予感を覚えた。
「……名前。まさか他の奴らに尋ねに行くんじゃあ――」
ないだろうな。
ところが、音を紡ぎつつリゾットが勢いよく顔を上げたそのときにはもう、少女の姿は忽然と消えていたのである。
ホルマジオの場合。
名前が最初に向かったのは、愛猫家である知識人の元だった。
「はァ? 名前……お前ってマジで突拍子もねェな」
「ごめんなさい。でも、どうしても知りたくて」
ホルマジオはご存じですよね?
どう返して良いかわからない質問とその期待に、彼は後頭部をガシガシ掻いたまま戸惑う。
正直、真実を伝える役には名乗り出たくなかった。
「なんつーか……そのォ……」
「(キラキラ)」
「……ッ」
話によれば、どうやらいつもは彼女の問いに対して丁寧に回答しているリーダーも誤魔化したらしい。と言っても、彼の放った≪さまざま≫という単語が自分たちにまで飛び火している、要するに尻を拭っているようなモノなのだが。
ついに、名前のどこまでもまっすぐな視線に耐え切れなくなったホルマジオは、咄嗟に思いついたことを話し始めた。
「ちっさな……ちっさな妖精さんがよ、選んだ夫婦に魔法をかけんだ。それで……、……しばらくしたらその夫婦の元に子どもは生まれるんだ。ま、魔法で俺たちゃ生まれたんだぜ!? すげェよな。ハッ……ハハハッ」
「まあ……! 素敵な方法なのですね!」
ありがとうございました――ぺこりと頭を下げて走り去っていく少女。
「おーう。…………ひっでェごまかし方だなァ、オイ」
これでよかったのだろうか。それにしても≪妖精≫や≪魔法≫はないだろう。
と、ホルマジオは少しの間自己嫌悪に陥るのだった。
ソルベとジェラートの場合。
「えー? 好きな人と一緒にいたら、自然と生まれるんだよ。ね、ソルベ!」
「ああ、そうだな。ジェラートの言う通りだ」
にししと楽しそうに笑うジェラートと、静かに頷くソルベ。
「好、き……」
首をかしげた彼女はぽつりと単語を反芻してみるが、その感情がわからない。
≪好き≫とはどんな気持ちなのだろう。
すると、二人が不思議そうに覗き込んでくる。
「名前には好きな男がいるのか?」
「私ですか? 私は……まだわかりません」
「そっかあ……いつかできるといいね! そいつに、今名前が気になってる詳細は教えてもらうといいよ」
だから、「恋人ができるそのときまでは、名前はオレたちのものー!」と驚く暇も与えずに少女を両側から強く抱きしめる男たち。
突然のことに目をぱちくりとさせた彼女は、頬を赤らめつつも嬉しそうに笑うのだった。
イルーゾォの場合。
「は? え、今なんて?」
「あの、イルーゾォにも質問なのですけど、子どもはどのようして――」
「わあああ! ストップ! もうわかった!」
廊下で出会った名前の笑顔に、今日も今日とて癒されていると、不意に繰り出された予想外の問い。
自然と、イルーゾォの脳は≪隠すこと≫を選んでしまう。
ひどく狼狽えた彼は、彼女の肩を掴みながら強い口調で話しかけた。
「名前! そういうことはまだ知らなくていいから……な?」
だが、返ってきたのはじとりとした少女の視線。
「イルーゾォ……貴方も、両親と同じことを言うのですね」
子ども扱いが嫌なのか、名前が不満そうに唇を尖らせている。
可愛い――と空気を読まぬ己の感情を慌てて振り払った男。当然、こちらにも譲れないものがある。
「いや、ごめん。でも……こういう話はデリケートというか、なんというか」
「デリケート……?」
「そッ……そう。デリケートで、聞く奴によっては間違った行動を取りそうな……ってオレは違うからな!? オレは別に名前と…………ぼ、煩悩は許可しないィィイイイ!」
「あ、イルーゾォ! 待ってください……!」
照明で煌く鏡から、イルーゾォがしばらく出てくることはなかった。
プロシュートとペッシの場合
「イルーゾォ! どうか出てきてください……!」
「? 鏡の前で何してんだ、名前」
コツコツと必死な様子で鏡をノックするお嬢様。
そこへ現れたプロシュートとペッシに、彼女はハッと我に返る。
「ふ……二人とも……」
「私、悪いことを聞いてしまったみたいです」
かくかくじかじか――自分の胸に蔓延る疑問とイルーゾォが鏡に閉じこもってしまった経緯を話せば、二人の反応は当然、
「えっ……ええ!?」
「ペッシッ! 狼狽えてんじゃあねえ! だからオメーはいつまで経ってもマンモーニなんだ。んなことでいちいち驚いててどうする。仕事じゃそうは言ってられねえんだぞ! それにこのバンビーナの質問は、いつも突飛だってわかってんだろうが……!」
溢れ出した動揺と、延々と続く説教だった。
漂うなんとも言えない空気。
それを、おもむろに口を開いたプロシュートがバッサリと断ち切る。
「いいか、名前。耳かっぽじってよーく聞けよ? 子ども……いや、赤ん坊っつーのはな」
「は、はい……!(ドキドキ)」
「兄貴……(どう説明するつもりなんだろ……)」
固唾をのむペッシ。
それを一瞥した兄貴分は、深く息を吸い――
「行きは父親の中にいて、帰りは母親の中にいるモンなんだ」
正しくも、当たり障りのない解答を口にした。
プロシュートも、少女にはっきりと述べるつもりはなかったのである。
まさに苦渋の決断だった。
「なるほど……」
魔法とは違った方法。
ふむふむと頷きながら、頭に情報を刻んでいく。
「さ、さすが兄貴! 名前も(たぶん)納得してくれやしたよ!」
「ふ……正直に話すか迷ったのは事実だ。ペッシ、迷うことを恐れんじゃねえぞ。問題は迷って、その後どう行動するか、だ。わかったか? だが生命っつーのは神秘だよな。どうだ名前。今すぐにとは言わねえが、これからゆっくりオレと――」
「兄貴! 名前もういないっす……!」
「……チッ、マジかよ」
ギアッチョの場合
次に名前が向かったのは、最後の砦ギアッチョの元だった。
「あ……ギアッチョ!」
「ゲ」
あからさまに眉をひそめる男。
それに対して首をかしげつつ、彼女が質問を紡ぎ出せば、
「はアアアアア!? テメー、突然何を言い出すかと思えばよ――ッ! へ、変なこと聞いてくんじゃねえぞ! クソッ! クソが!」
もちろんキレられてしまう。
だが、少女もそれで引き下がるタマではない。
これまで教えてもらった情報を打ち明けると、彼の眼鏡越しの目が丸くなった。
「(ちょっと待て。そもそもどーして≪さまざま≫なんつー見解になってんだよ! おかしいだろ。実際は一つで……ってコイツのことだ。ぜってーその詳細を聞いてきやがる……!)」
なぜ自分のところへ訪れるまでに、誰も≪事実≫を明かしてくれなかったのか。
思わぬとばっちりに歯ぎしりをしつつ、ギアッチョは苛立った様子で口を開ける。
「〜〜ッコ」
「コ?」
「コ……コ……コウノトリが夫婦の元に運んでくんだよ! 知ってんだろ? コウノトリってよオオオオ! これでいいかッ! チクショウが……!」
リビングに、自暴自棄すれすれの叫びが響き渡った。
「コウ、ノトリ……」
「……オイ。なんか文句でもあんのか」
「いえ……、けど」
「少しおかしくはないでしょうか?」
ピキッ
彼の額に浮かぶ青筋。
しかし、名前はそれに気付くことなく話し続ける。
「コウノトリは空を飛んで、子どもを運んでくるのですよね? でも、私の見る限り空には他の鳥もいますし……風もありますし。とても安全とは…………、ギアッチョ?」
ブチッ
そこでようやく、彼女はその≪音≫に首をかしげたが、すでに遅かった。
「名前テメー! 変なとこで勘ぐるんじゃあねえエエエエエッ! クソ! ボケが! テメー、妖精の時はなんも言わなかったんだろうがアアアアア!」
「きゃあああ……!?」
鷲掴みにされた頭
ぐわんぐわんぐわん、と前後左右に揺さぶられる。
ああ、意識が――少女がぐるぐると目を回し始めたそのときだった。
「おいおい。まだやってたのか? しょーがねェな〜〜!」
次々と入ってくる男たち。
それに舌打ちをしたギアッチョが、ようやく手を離してくれる。
今までどういった話をしていたのか、それを忘れてしまいそうになるほどのダメージを食らった名前。
ふらふらとソファへ座り込んだ彼女に、その場にいる全員が少女の可愛くもえげつない追及から逃れたと胸をなで下ろした、が。
「名前ッ! ここにいたんだな? 探したぞ」
「リゾット……? どうしたのですか?」
問題は、いまだ立ち去っていない。
リビングへ飛び込んできたリゾットの手にある一冊の本で、彼らはそう理解した。
「今……本を買ってきたんだ。ここに、名前が知りたいと言っていた答えが載っている」
本当ですか――これで新たな方法を知ることができる、と嬉しそうに彼からその代物を受け取る。
だが、どうしたことだろう。
表紙を見る前に、名前の手の中から重みが消えていたのだ。
「あら……?」
一方で、本を取り上げたイルーゾォも含めてリゾット以外の男はただただ頬を引きつらせていた。
妖精やらコウノトリやら、そうした回答にたとえ罪悪感はあれども、世の中には≪方便≫というモノがあるのだから。
タバコを口端に咥えたプロシュートが、やおら長い脚を振り上げる。
標的はもちろん、≪なぜ読ませてあげないんだ≫と怪訝そうな顔をしているリゾット。
「……イルーゾォ。それは名前に返して――」
「誰が返すかッ! ちゃっかりリアルに教えようとしてんじゃねえぞ、この天然野郎が……!」
天真爛漫Principessa
「あれ、誰か忘れてるような」――そんなことを思いながら、七人はリーダーをゲシゲシと足蹴にし始めるのだった。
〜おまけ〜
眼前の惨状をただただ眺めていると、名前の肩に誰かの腕が回った。
それは、
「なあんか騒がしいなって思いながら帰ってきたら……一体どうしちゃったわけ? そんなに暴れて……もしかしてみんな発情期?」
「あ……メローネ。おかえりなさい」
「んふふ、ただいま。オレには目もくれないあいつらと違って、名前はほーんとお利口さんだねえ……そんなお利口さんにはベリッシモいいモノを……おっと間違えた、このキャンディーをあげるよ」
そう言って、なぜかズボンのファスナーに手をかけようとしたメローネ。
だが、「間違えた」とわざとらしく彼が今度こそ取り出したのは、日本で言う駄菓子屋で売っていそうな棒付きキャンディー。
手渡されたそれに、彼女の鈴を張ったような双眸はより一層輝きを増す。
「わあ……! 美味しそう! いただきます!」
「どうぞどうぞ。(ハアハアッ……名前の赤くて可愛い舌がキャンディーを舐めて……! ベネ! そのおずおずとした感じがまたいいんだよ……ッハア、早くオレのも食べてほしい!)……で? こうなった経緯をディ・モールト詳しく聞かせてくれよ」
実は――とキャンディーを不慣れながらも食す少女から話された内容は、まさに自分の得意分野。
気が付けば、男はにやりとほくそ笑んでいた。
「……なるほど、ねえ」
これはチャンスだ。
それもとびきりイイ。
じわじわと攻めようと思っていたが、意外にも早く機会が巡ってきた――以前から企てていた計画とは裏腹に、あくまでも名前の前では優しいお兄さんを貫き通すメローネ。
「そっか……名前もお年頃だもんね。うんうん、ベリッシモわかるよ」
「メローネ……?」
「生命の秘密、知りたいよな?」
「!」
≪知りたいです≫。予想通りの答えに彼の心はますます小躍りする。
「ハアハア……名前、オレと一緒にじっっっくり時間をかけて、≪どうやって子どもが生まれてくるのか≫学んじゃおっか」
「? つまりメローネの部屋でお勉強、ですか?」
「あはは、違う違う。まあ確かにそれに近い……というか≪実践≫なんだけど、勉強っていうのはそもそも楽しまなくちゃあならない。そうだろ?」
辛いことより楽しいことの方がいい。
その直感に従い首を縦に振った彼女の頭を、男が流れるような手つきでなで始めた。
「いい子いい子」
「っ……、//////」
あれ――優しい手のひらがそっと添えられた瞬間、脳内に過ぎった≪感情≫にきょとんとする少女。
心が、少しだけ高鳴ったのである。
なんで、と新たな疑問にぶつかるものの、答えが見つかることはない。
その動揺が影響してかただただ頷くばかりの名前に、メローネはにんまりと笑みを深める。
「じゃ、リーダーたちに見つからないうちに行こうぜ」
そしてメローネは、なぜかほんのり顔の赤い彼女をソファから立ち上がらせた、が。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
その後、男たちから制裁を受けた変態に追い打ちをかけるように、≪名前の半径5メートル以内に接近することを禁ず≫という命令が三日ほど出たのは言うまでもない。
![](http://img.mobilerz.net/sozai/1616_w.gif)
長らくお待たせいたしました!
暗チと、敬語&天然お嬢様ヒロインでギャグ甘でした。
リクエストありがとうございました!
なんと言いますか……オチをメローネにしてしまいましたが、よろしかったのでしょうか……。
感想&手直しのご希望はいつでも受付中ですので、よろしければ!
Grazie mille!!
polka
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