※年上ヒロイン
※甘裏
勢いよく扉が開けられる音。
彼の兄貴分特有の荒々しさに、これまた即座に顔を上げたペッシはワンコのように玄関へ駆け寄った。
「兄貴ッ! おかえりなさ――って、名前さん!? どうしたんすか!?」
ところが、彼は眼前で繰り広げられている光景にギョッと目を丸くする。
苛立った様子のプロシュートが、恋人でつい今しがたの仕事においてもタッグを組んでいたはずの名前を横抱きにしているのだ。
脳内に過ぎる不安。
もしかすると、彼女はターゲットに反撃されて――
「……ねえプロシュート。プロシュートったら! アジト前で下ろすって約束だったじゃない……!」
「おい名前。お前な……耳元でぎゃあぎゃあ騒ぐんじゃあねえよ。ホテルに直行しなかっただけ、マシだと思え」
とかなり動揺したが、意外にも一大事ではなさそうだ。
――あれ、名前さんが無事ならよかったけど……なんで兄貴は横抱きを?
弟分の不思議そうな顔に察したのか、プロシュートが足を踏み入れながら、クイクイと親指でふくれっ面の名前を指し示した。
「なあペッシ。このバカ、左足挫いてるくせに任務を遂行してたんだぜ? 信じられっか?」
「は、はあ……」
「つーわけだからよお。こいつの部屋に、冷却スプレー頼むぜ」
彼の背後に漂う禍々しいオーラ。
そして、≪離せ≫≪離さない≫と言い争いつつ部屋へ向かい始めた二人を、ペッシは正直生きた心地がしないまま見送る。
「(兄貴、めちゃくちゃ怒ってたな……)」
一方その頃、お姫様抱っこという羞恥プレイを強いられた名前は、嫌味なほどひどく安定した恋人の腕から逃れようと必死に身を捩っていた。
「プロシュート! お願いだから下ろしてよ……! なんでこの年で横抱きされなきゃいけないの!?」
「……」
「ちょっと! 聞いて――きゃっ!?」
「ったく、口の減らねえ女だな。オメーは」
刹那、ボフンと音を立てて、彼女の身体がベッドへ突き落とされる。
電気さえ点けられていない暗がりの中、その粗雑っぷりにすぐさま睨もうとするも、シーツに縫い付けられるかのように上から伸し掛られ、彼の視線の鋭さに喉を震わせることができない。
「っ……プロシュー、ト」
「あのなあ、名前。できる限りお前のプライドも生き方も理解してるつもりだ。が、少しは恋人であるオレの気持ちも考えろ」
怒りと憂慮が入り交じる蒼。
真摯な眼差しに高鳴り始めた鼓動。
今まで取ってきたすべてが、自分に対する思いやりゆえの行動だと理解しているからこそ、名前はただただ閉口してしまう。
「そ、れは……っその」
「それともなんだ? オレのこと、甲斐性のねえ男とでも思ってんのか? ≪好いた女の怪我に気付くことも、反撃を試みたターゲットから守ることもしねえ≫、ってな」
「! 別にそんな風には思ってない! ただ……」
心配をかけさせたくなかった。
胸の奥を埋め尽くす感情。
足は捻挫しただけなので簡単に治る――元々、周りを気遣っている分、自分のことになると高確率で顧みない節がある彼女。
さらに言えば、プロシュートが世話を焼いてくれるたびに自分の方が年下のように思えて悔しいのだ。
むしろ、それがもっとも本音に近いのは言うまでもない。
「……(だからってそんなこと言ったら、説教じゃ済まないだろうし……でも)」
「ただ? なんだよ」
「あ……えっと」
「言えねえなら、強引に聞き出しちまうぞ。さっさと――」
吐けよ。
細い両手首をしっかり捕らえながら、低く囁いた男が視線を彷徨わせる名前へ顔を寄せた――その瞬間。
コンコン、コン
「あ……兄貴?」
少し怯え気味の弟分の声が、一枚の板を隔てて届く。
ホッとおもむろに安堵する目前の恋人。
それを一瞥してから、彼はそのタイミングに少しばかりの舌打ち。
やおら彼女から距離を置き、ベッドを後にしたプロシュートは淡々と扉を開け放った。
「ご、ごめんよ兄貴。邪魔して……」
「いや、構わねえ。悪いな」
冷却スプレーを受け取ったのか、射すように部屋を照らしていた廊下の光をドアで遮り、こちらへ戻ってくる男。
だが、その出て行きそうにない気配に、名前は上体を少なからず起こしたまま首をかしげる。
「あの、プロシュート? なんでまだここに居座る気満々なの?」
「んなモン、お前が負った怪我の処置するからに決まってんだろ」
「……はい? いや、自分でできるから!」
「自分でやるっつって、今までやってねえからあえて言ってんだ。どうする? ここで大人しくオレに左足を差し出すか、オレがオメーを容赦なく襲って別の刺激――快感で痛みを忘れさせてやるか。選ぶのはお前だぜ」
究極の選択。とは言え、ただでさえ年下の彼氏に翻弄されていることを悔しがる彼女が、後者を選ぶわけもなく。
「〜〜っもう!」
渋々。
本当に渋々だが、ベッド上でボトムの裾を捲り始めた。
ところが、それを脇から見ていたプロシュートによって、呆れを表すように鼻で笑われてしまう。
「おいおい。名前よ〜! んなキツい裾、上げたら血止まっちまうだろうが。早くズボン脱げよ」
恥ずかしがるんじゃあねえぜ。オメーの裸なんざ数え切れないほど見てんだからな――そう言われてしまえば元も子もないが、眼前でしたり顔をする彼は恋人である以前に男だ。
もちろん、名前の胸中には羞恥だって燻っている。
「な……ッ、そ、そんなの嫌に決まって――」
「いいから早くしろ。無理やり身包み剥がされてえのか」
こちらを見下ろす双眸。
そのぎらついたブルーに彼女は悟る――≪ああ、本気だ≫と。
むしろ、プロシュートによる≪有言不実行≫という結果がこれまでにあっただろうか。
いや、ない。
「(っプロシュートのタラシ! 生ハム! ……すきっ歯!)」
ありったけの悪口を心うちだけで吐き出しながら、名前は左足首に負担をかけないようズボンを脱ぎ始めた。
ついでに堅苦しいシャツもやめようとキャミソール姿になってから、彼の待つ寝具の脇で足をぶらつかせれば、まるでどこぞの王子様のように跪き、そっと優しい手つきで足を取る恋人。
様になるその仕草に思わず薄闇で顔を赤らめたが、そんな自分をよそにふと襲った冷たさが、彼女の肩をビクリと震わせる。
「! や、ぁ……冷た……っ」
「ハン、ずいぶんとやらしい声だなあ、おい」
「うるさ、い、っん……は、ぁ……」
「……ところで、さっきの話の続きだがよ」
声を出さないよう必死になっていると、不意にゆっくり紡がれた言葉。
いくら待てども一向に届かない続きに、気が付けば名前は不思議そうに彼の顔を覗き込んでいた。
「ん、っ……ぁ、プロシュート……?」
「……オレのこと、見くびってんじゃねえぞ」
「え……、何言っ――ひぁああっ!?」
刹那、かかとから膝裏にかけて這わされた手。
その撫で回すような感覚に、≪突然何するの≫と動揺を胸に彼女が男を睨みつける。
が、残念ながら名前の照れ隠しを潜ませた拒否に、プロシュートは揺らぐタマではない。
むしろ動きは当人にとって悪くなるばかり。
「どうせ、≪心配かけたくない≫やら≪自分の方が年下みてえで悔しい≫やら思ってたんだろ?」
「!」
慣れ始めた暗闇で揺蕩う瞳。
どこまでもわかりやすい反応――彼はあからさまにため息をついた。
「……はあ。やっぱりな」
「っはぁ……、その、えっと」
「自律心と我慢強さ。お前のそういうとこ、オレァ立派だと思うぜ。お前のその凛とした姿から、教わったことも多いしな……だが」
「プロシュ、ト」
「≪テメー自身を大事にしないこと≫だけは許せねえ」
部屋に滲む熱っぽい息。
いつの間にか、再び組み敷かれている身体。
冷却スプレーをベッドの端へ放り投げると同時に、彼女を閉じ込めるように躯体を重ねた男が、3センチにも満たない距離で想いを呟く。
「名前。この身体はお前一人のモンじゃねえんだ。ちったぁ気を付けろ」
「……」
突き刺す視線が逃亡を、拒絶を許すことはない。
名前は感情の赴くまま頷いて――はてと≪ある違和感≫に首を捻った。
「ん? ちょっと待って」
「どうした、人がキスしようってときに」
「いや……、……普通に聞き流しそうだったけど、あんたのその表現おかしいでしょう!」
甘みを帯び始めた雰囲気。
それに危うく流されるところだった、と項垂れる自分はやはり目の前の恋人に絆されているらしい。
ところが、片眉を吊り上げたプロシュートはそんなことかと言いたげにあっけらかんと答える。
「そうだな。今は≪まだ≫違え」
……。
「は?(まだ、って何! まだって!)」
これではまるで――かと言ってはっきり述べることもできず、ゴニョゴニョと言い淀んでいると、ふと下着しか身に付けていない腰元へ移った手のひらに彼女は目を見開いた。
ぞわりと快感に沸き立つ産毛。
「ひゃ……っん! な、にして……ぁっ」
「何って、細っこい見た目のクセして意外に肉厚のある名前の腰触ってんだろうが。あとは……太腿だな」
「や、やだ……やめてよ……っシャワーも浴びてないのに……!」
子宮をじわじわと攻め立てる快楽。
だが、今度こそ流されまいと必死に身を左右へ捩れば、動きを止めた彼の左手。
諦めてくれたか――自然と強く目を瞑っていた名前は、おもむろに安堵の息を唇から吐き出した、が。
次の瞬間、いとも簡単にキャミソールを鎖骨あたりまで捲し上げられてしまう。
「!?」
「お、今日は≪前≫か。なんだよ、お前も≪仕事の後≫を期待してたんじゃねえか」
露わになったのは、月明かりに映えるきめ細かい柔肌とフロントホックのブラジャー。
一応、本人の名誉に関わるので訂正しておくが、彼女が今日その下着を選んだのは偶然である。
「ぁっ……ちょ、プロ、シュート……んっ、ぁ、やぁあ!」
男の大きな手のひらが歪な形を作り出す、陶器のように白い乳房。
それが時折胸の飾りを掠めるのか、乱れ始める婀娜っぽい息。
頬を火照らせた名前は懸命に首を横へ振り、ひたすら行為の中止を懇願していた。
「あん、っ……はぁ、っは……ぁ、おねが、ッ……ひゃんっ」
「……ククッ、どうした?」
「ッ、や……ん、ぐにぐ、にするの……はっ、ぁっ……やめ、てぇ!」
「ハッ! それがやめてほしいっつー顔かよ」
刹那、枕側へ逃げようとする細い腰を左手で掴みながら、プロシュートはちょこんと実った先端を指先で摘む。
「ひぅっ! んっ、ぁ……ダメ、つまんじゃ、や……ぁっ、ぁあッ」
一際甲高い嬌声と共に弓なりになった背中。
いやいやと首を小刻みに振るが、彼女の赤く腫れ上がるばかりか、熱を帯び硬くなっていく一方。
それをじっと薄闇の中で見下ろしていた彼は、皮肉げな笑みで口を開いた。
「っぁ、ん……いや、っ、ぁ……はぁっ、はっ……あんっ、そこ、いやぁ」
「おいおい。こんだけ乳首勃たせてる奴が放つ言葉か? ……にしても美味そうだな」
「ぇ、っ? あっ、や……ひぁ、っ、ぁあん……!」
ざらついた舌先で乳頭を丹念に転がされ、時折赤子のように強く吸いつかれ――あらゆる神経が翻弄されていく。
自然と、全身を捕らえる快感に名前は酔いしれてしまっていた。
「ふ、ぅ……ぷろしゅ、と……ぁっ、はぁ、は……んっ」
「ったく……エロい表情だぜ。男の誘い方を知ってやがる」
ため息交じりに吐き出された感想。
その瞬間、羞恥によって心が覆い尽くされた彼女は、紅潮した顔で≪否定≫を示そうとする。
ところが。
なぜか身体を下へずらした男。その意図を白く霞んだ脳内で悟り、慌てて伸ばした両腕。
「! ぁっ、やら、っ……そっちは、だめ、ぇ……ひぁ、っぁあん!」
と言っても、植え付けられた性感に力が入らないのか、プロシュートの髪をくしゃりと柔く掴むだけに留まってしまう。
乱れるプラチナブロンド。
「っぷろ、しゅーと……ぁ、見ちゃ、やぁ」
「ふっ……そうは言ってもな……この部分だけ布の色が濃くなってるぜ。これはどう説明すんだ? あ?」
「〜〜っあ、ん……やら、言わな、で……っ」
どれほど阻止しようとしても、まじまじと恥ずかしいところを見られ、心とは裏腹に反応していく正直な身体。
ふと、肌から布が消えた感覚。
名前が気が付いたときには、彼の手によってショーツがするりと奪われていた。
「ひゃっ……ぁ、あんッ」
「まあ淫乱なオメーのことだ。処置のときから喘ぎ声出して、感じてたんだろ」
「ちが……ぁっ、はぁ……ん、っちがう、のぉ!」
「違う? ククッ、そうは思えねえがな」
せめて隠そうと内腿を擦り合わせるも、あっという間に掴み上げられる膝裏。
逃亡を図り腰を揺らす仕草は、傍から見ればまるで誘っているかのようだ。
男も彼女の淫靡な動きにそう感じたのだろう。
眼を生理的な涙で潤ませた名前がもう一度首を横へ振った刹那、薄紅色の陰唇に覆われた膣へと何かが侵入した。
「ぁっ……ひぁ、ぁあああ!?」
背筋を反らせながら、室内に轟かせる喘ぎ声。
無遠慮に荒らされていく、快感に熟れて紅くなった肉襞。
クチュリピチャリと淫らな水音が響き渡る。
「ん、やらっ……ぁっぁっ、やら、っ……ぐちゅぐちゅ、らめぇ……!」
「ハッ……拒めば拒むほど、蜜はどっぷり溢れ出てくるぜ? どうなってんだよ」
「ひゃんっ、ん……言っちゃ、っぁ、やぁあッ」
敏感な粘膜を容赦なく掠める、プロシュートの荒々しい吐息。
今起きていることしか考えられなくなるほど、激しく背徳的な痺れ。
≪こちらも忘れるな≫。そう言いたげに時々舌先で突かれるぽってりと腫れた陰核。
立て続けに甘い快楽をもたらされ、身体の奥底から徐々にせり上がってくるあの終末感。
「ぁっ、あっ……ひぁ、あん、っ! や、ぁ……、?」
だが次の瞬間だった。
彼の顔が秘部から離れて行ったのだ。
すると、名残惜しさが頭を過ぎり、思わず恍惚とした表情のまま、彼女は最初とは異なる欲求を乞うように恋人を見つめてしまう。
「はぁっ、ぁっ……ぷろしゅ、と……んっ、ぁ……はぁ、なんれ、ぇ」
「ふっ……んなモン、こっちでイかせてえからに決まってんだろ」
そう音を紡ぎ出したかと思えば、服をすべて脱ぎ始めた男。
細身に見えるがなんだかんだ言って逞しい裸体に、無防備に肩へ垂れる美しい髪。
何度目にしても凄まじいその色香に、名前は視線をそらそうとするが、そのときにはもうプロシュートの指先が顎をしっかり捉えていた。
そして、愛液が零れ落ちる蜜壷に添えられた焦熱。
「ひぅっ……ぁ、はっ、ん……ぷろしゅー、とぉ」
「ッ……もう挿入れるぜ」
「え? らめ、っ……ぁ、まだ待っ――ひぁあああッ!?」
刹那、彼女は思わぬ刺激に襲われる。
爪先から旋毛を電撃のようなモノが駆け巡り、ピンと張り詰めた後、ゆっくり弛緩していく筋肉。
まさか――息を乱しつつ目をぱちくりとさせる名前に彼はにやりと笑ってみせた。
「亀頭押し込んだだけで、達したみてえだな。ったく、弱点擦られんのがそんなに好きか? え?」
「はぁ、はぁっ……ぁ、ん、あっ……ひゃん、っ」
もはや、否定する気力すらない。
申し訳程度に首を小さく左右へ動かしていると、男が膨張した性器を奥へと進めず、ゆるゆると入口あたりで前後させながら、顔を近付けてくる。
「名前。いい加減素直になれよ、身も心もな」
素直――繰り返すように彼女が紡いだ途端、塞がれた唇。
舌を貪られ、吸い上げられ、ねぶられ――意識が朦朧としてしまいそうなほど深い口付け。
気が付けば、プロシュートの首へと縋るかのごとく回る両腕。
「んっ……ふ、ぁっ……ぷろしゅ、と、っ……ン、っぅ」
「はッ、……そうだ。もっと積極的になってみろ」
「んん……!」
自分と彼を繋ぐ銀の糸が視界に映り込み、見る見るうちに上気した頬。
しかし、名前がそれに気を取られたそのとき、グチュンと卑猥な音と共に、肉棒がヒクヒクと蠢いた膣内へ押し込まれた。
「ひゃ、ぁああん!?」
グチグチと狭い壁が押し広げられていく。
奥をノックするように先端で囚われ、再び体内を駆け上がる甘美な絶頂感。
またこの感覚――肢体を痙攣させつつ、下唇を噛み締めた刹那。
「このまま始めちまいてえが……ちょっくら、姿勢変えんぞ」
「きゃ……!?」
小首をかしげた彼女が尋ねるより先に、男が自分を抱え上げてしまう。
座り込んだ名前に対して、ベッドへ寝そべったプロシュート。
「ぁっ、ん……はぁ、はぁっ、ぁ……ぷろ、しゅーと……?」
「……名前、そう物欲しそうな顔すんなよ……ただ、いつもと趣向を変えてお前が自分で動けばイイって話なだけだ」
「え、っ!? や、やら……っそ、なの、できな……あんっ!」
一度だけ下から突き上げられる胎内。
ビクビクとなす術もなく震えてしまう粘膜。
彼女が息を上げながら視線を落とせば、彼は小さく口元を歪めていた。
「オレより年上だって証明してえんだろ? 未経験の少女じゃあるめえし……そんなに悔しいなら、オレから余裕なくしてみろよ」
「っ……」
やるしかない――そう思わされるのは、途方のない快感を男に教え込まれているからか。
それともプロシュートを想い慕っているからか。
いや、両方なのだろう。
ただただ疼く身体に、じっと彼と目を合わせた名前は小さく腰を上下に揺蕩わせ始めた。
「はっ、はぁっ……ん、ぁっぁっ、あ……」
チュプチュプと響く音が恥ずかしく感じられて耳を塞ぎたくなるが――男に両手首を掴まれ、それは許してもらえそうにない。
自然と激しく、速くなるスピード。≪いい子≫と言いたげに頭を撫でられる。
「やればできんじゃねえか」
「ぁ、ふ……んっ、あん、ぷろしゅーと……っぷろしゅーと、ぉ!」
「く、ッ……、……だからってお前な。余裕なくしてみろとは確かに言ったが、んな風に誘われたら我慢できなくなっちまうだろう、が!」
「? ぁっ、どうい、う……ひゃ、っあああ!?」
己の動きと呼応するように、ますます膨らんだ一物で蹂躙される肉襞。
ナカを連続的に突き上げられ、ふと顔を見せる羞恥と幸福感。
導かれるまま彼と視線を交わらせたときにはもう、普段はあまり口にできない想いの丈を吐き出していた。
「ぷろ、しゅーと……っ好き……ぁっぁっ、あん……すき、なの……!」
「ッ、……何が好きなんだよ。オレの≪これ≫がか?」
「!? ちが……やっ、ぁ……いじわる、しなっ、でぇ!」
そうじゃなくて――慌てて否定しようと彼女が見下ろせば、プロシュートの瞳に浮かんでいたのは喜びと慈しみ。
「わーってる。名前、お前の気持ちはちゃんとわかってるぜ」
刹那、腕をグッと引き寄せられ、彼の元に倒れ込む。
快感に蕩けた顔であることも厭わず、名前が苦し紛れに非難の意を伝えようと視線を移した途端、穏やかな蒼とかち合った。
「オレも愛してる」
「っ//////ぁ、わたしは……愛し、てるとは、言――ぁあ!? やっ、いきな、り……ぁっぁっ、激し……!」
「ナカきゅうきゅう締め付けといてよく言うぜ。……そういや、小刻みに揺さぶられんの好きだったな。あと子宮の入口をこうやってゴツゴツ突き上げられるのもよ……ま、お前がオレのペニス美味そうに咥え込んでんのを見られねえのは、残念だが」
「! バカ……っぁ、あ……ばか、ぁあんっ!」
今できる精一杯の罵倒。
しかし、それすら言えなくしてしまおうと、より激しくなる律動。
その甘やかな刺激に、彼女はひたすら男へしがみつきつつ喘ぐ。
「ッ……名前、名前……、ク」
「ひぁ、っぁっぁ……らめ、っ……ソコば、かり、や……ぁっ、ぁあああ!」
だが、不意にプロシュートからもたらされる動きが止まった。
「ん、っふ……はぁ、はっ……、?」
「なあ名前。どこに注いでほしいんだよ」
「え……!?」
意地悪な質問。
言えるわけがない――と名前は小さく頭を振るう。
「ふっ、言えないってか? まあオレは別に、シーツでもイイんだけどな」
「! やら……ぁ、んっ……そ、その、っ」
グプと音を立てて抜かれようとする、あらゆる体液に塗れた男性器。
離したくない、と無意識のうちに締め付ける肉壁。
もはや、≪言わざるをえないのだ≫。
「や、っぁ……おねが……お、おく……奥におねが、っ……きゃ、ぁああん!?」
次の瞬間、ガツガツと抉るように激しく襞を荒らされていく。
さらに劈く甘い嬌声。
これでもかと言うほど密着した互いの粘膜。
肉と肉をぶつけ合いながら、少しばかり苦悶の表情を浮かべた恋人。
「なるほどな。可愛い恋人のおねだりか……いいぜ、名前。お望み通り、先っぽ子宮口に押し付けてたっぷり注いでやるからな」
「ひゃっ、ぁっぁっ、ぁっ……ぷろ、しゅーと……やら……イっちゃ、っ……あん、イっひゃ、ぁ……っあ、っぁ……ひぁ、ぁあああ……!」
「く……ッ」
ビュクリと爆ぜた灼熱に内側から侵され、白濁液で満たされていく胎内。
同時に心を埋め尽くした安らぎ。
なぜだろう。このときは甘えられるのに――≪今だけ≫という己がかけた暗示に引き寄せられるように、名前はそっとの胸板へ頬を寄せ、睡魔に誘われるがまま瞳を閉じた。
深愛と溺愛の境界線で
彼は今日も、彼女を守り(激しく)愛していく。
〜おまけ〜
「なあ名前。足治ったら今度……って、寝ちまったのか」
「……すう」
天井を見上げながら口遊もうとした誘いの言葉。
だが、右隣から届いた穏やかな寝息に、プロシュートは苦笑と反省を表情に滲ませる。
「(今日こそ話っつーモンをしようって思ったのによお)」
毎回こうしてピロートークを試みるのだが、どうも激しくシてしまうらしい。
身体的にはもちろんだが、心からここまで恋うてしまうのは名前が初めてだった。
いや、最初で最後だ。
もはや、彼は彼女の隣に居座る権利を誰かに譲る気も、自ら手離す気もないのだから。
「……ふっ」
寄り添うように己の肩に預けられた恋人の頭。
それをそっと右腕で抱き寄せて、額に贈るキス。
ん、と身じろぎする名前に口元を緩ませた男は、そのまま鼓膜を揺らすように囁きかける。
「名前。案外オレには余裕なんてモンはないんだぜ? お前が考えてる以上にな」
むしろ、彼女が仲間を含めた男と仲良く会話するのを見かけるたびに、自分は気が気ではないと言うのに。
「すー……すー……、んっ」
「……」
とは言え、そんなことは一切気付かない名前は、これからも己の行動に照れながら不満げになるのだろう。
その状況があっさり脳内に浮かんだのか、寝顔をじっと胸に焼き付けていた彼が不意に笑った。
「ったく。情事後とは思えねえ、とぼけた寝顔しやがって」
形の良い唇を歪ませて悪態を付きつつも、その眼差しは愛しさに満ち溢れている。
指先で確かめるように撫ぜる柔らかな頬。
彼女とこうして何気ない日常を感じるときだけは、≪兄貴≫ではなく、一人の男として過ごすことのできる自分。
「(あー抱き枕にして寝てえ。が、こいつのことだ。朝ぜってえ怒るだろうな……けど、普段は年相応のくせに、オレのことでいちいち百面相するお前が可愛くてたまんねえんだよ。)つーわけで悪いな、名前)」
一生をかけても伝えきれないであろうこの想いは、まさに溺愛。
骨抜きにされた己に対してくつくつと喉を鳴らしながら、プロシュートは名前の真っ赤になった顔で朝を迎えようと、恋人を胸元に閉じ込めて、静かに意識を闇へと委ねてしまうのだった。
大変長らくお待たせして申し訳ございません!
プロシュート兄貴で、甘裏でした。
凛様、リクエストありがとうございました!
かなり意地悪(?)な兄貴になってしまった感も否めませんが、気に入っていただけると嬉しいです。
感想&手直しのご希望がございましたら、clapか〒へお願いいたします!
Grazie mille!!
polka
>
※甘裏
勢いよく扉が開けられる音。
彼の兄貴分特有の荒々しさに、これまた即座に顔を上げたペッシはワンコのように玄関へ駆け寄った。
「兄貴ッ! おかえりなさ――って、名前さん!? どうしたんすか!?」
ところが、彼は眼前で繰り広げられている光景にギョッと目を丸くする。
苛立った様子のプロシュートが、恋人でつい今しがたの仕事においてもタッグを組んでいたはずの名前を横抱きにしているのだ。
脳内に過ぎる不安。
もしかすると、彼女はターゲットに反撃されて――
「……ねえプロシュート。プロシュートったら! アジト前で下ろすって約束だったじゃない……!」
「おい名前。お前な……耳元でぎゃあぎゃあ騒ぐんじゃあねえよ。ホテルに直行しなかっただけ、マシだと思え」
とかなり動揺したが、意外にも一大事ではなさそうだ。
――あれ、名前さんが無事ならよかったけど……なんで兄貴は横抱きを?
弟分の不思議そうな顔に察したのか、プロシュートが足を踏み入れながら、クイクイと親指でふくれっ面の名前を指し示した。
「なあペッシ。このバカ、左足挫いてるくせに任務を遂行してたんだぜ? 信じられっか?」
「は、はあ……」
「つーわけだからよお。こいつの部屋に、冷却スプレー頼むぜ」
彼の背後に漂う禍々しいオーラ。
そして、≪離せ≫≪離さない≫と言い争いつつ部屋へ向かい始めた二人を、ペッシは正直生きた心地がしないまま見送る。
「(兄貴、めちゃくちゃ怒ってたな……)」
一方その頃、お姫様抱っこという羞恥プレイを強いられた名前は、嫌味なほどひどく安定した恋人の腕から逃れようと必死に身を捩っていた。
「プロシュート! お願いだから下ろしてよ……! なんでこの年で横抱きされなきゃいけないの!?」
「……」
「ちょっと! 聞いて――きゃっ!?」
「ったく、口の減らねえ女だな。オメーは」
刹那、ボフンと音を立てて、彼女の身体がベッドへ突き落とされる。
電気さえ点けられていない暗がりの中、その粗雑っぷりにすぐさま睨もうとするも、シーツに縫い付けられるかのように上から伸し掛られ、彼の視線の鋭さに喉を震わせることができない。
「っ……プロシュー、ト」
「あのなあ、名前。できる限りお前のプライドも生き方も理解してるつもりだ。が、少しは恋人であるオレの気持ちも考えろ」
怒りと憂慮が入り交じる蒼。
真摯な眼差しに高鳴り始めた鼓動。
今まで取ってきたすべてが、自分に対する思いやりゆえの行動だと理解しているからこそ、名前はただただ閉口してしまう。
「そ、れは……っその」
「それともなんだ? オレのこと、甲斐性のねえ男とでも思ってんのか? ≪好いた女の怪我に気付くことも、反撃を試みたターゲットから守ることもしねえ≫、ってな」
「! 別にそんな風には思ってない! ただ……」
心配をかけさせたくなかった。
胸の奥を埋め尽くす感情。
足は捻挫しただけなので簡単に治る――元々、周りを気遣っている分、自分のことになると高確率で顧みない節がある彼女。
さらに言えば、プロシュートが世話を焼いてくれるたびに自分の方が年下のように思えて悔しいのだ。
むしろ、それがもっとも本音に近いのは言うまでもない。
「……(だからってそんなこと言ったら、説教じゃ済まないだろうし……でも)」
「ただ? なんだよ」
「あ……えっと」
「言えねえなら、強引に聞き出しちまうぞ。さっさと――」
吐けよ。
細い両手首をしっかり捕らえながら、低く囁いた男が視線を彷徨わせる名前へ顔を寄せた――その瞬間。
コンコン、コン
「あ……兄貴?」
少し怯え気味の弟分の声が、一枚の板を隔てて届く。
ホッとおもむろに安堵する目前の恋人。
それを一瞥してから、彼はそのタイミングに少しばかりの舌打ち。
やおら彼女から距離を置き、ベッドを後にしたプロシュートは淡々と扉を開け放った。
「ご、ごめんよ兄貴。邪魔して……」
「いや、構わねえ。悪いな」
冷却スプレーを受け取ったのか、射すように部屋を照らしていた廊下の光をドアで遮り、こちらへ戻ってくる男。
だが、その出て行きそうにない気配に、名前は上体を少なからず起こしたまま首をかしげる。
「あの、プロシュート? なんでまだここに居座る気満々なの?」
「んなモン、お前が負った怪我の処置するからに決まってんだろ」
「……はい? いや、自分でできるから!」
「自分でやるっつって、今までやってねえからあえて言ってんだ。どうする? ここで大人しくオレに左足を差し出すか、オレがオメーを容赦なく襲って別の刺激――快感で痛みを忘れさせてやるか。選ぶのはお前だぜ」
究極の選択。とは言え、ただでさえ年下の彼氏に翻弄されていることを悔しがる彼女が、後者を選ぶわけもなく。
「〜〜っもう!」
渋々。
本当に渋々だが、ベッド上でボトムの裾を捲り始めた。
ところが、それを脇から見ていたプロシュートによって、呆れを表すように鼻で笑われてしまう。
「おいおい。名前よ〜! んなキツい裾、上げたら血止まっちまうだろうが。早くズボン脱げよ」
恥ずかしがるんじゃあねえぜ。オメーの裸なんざ数え切れないほど見てんだからな――そう言われてしまえば元も子もないが、眼前でしたり顔をする彼は恋人である以前に男だ。
もちろん、名前の胸中には羞恥だって燻っている。
「な……ッ、そ、そんなの嫌に決まって――」
「いいから早くしろ。無理やり身包み剥がされてえのか」
こちらを見下ろす双眸。
そのぎらついたブルーに彼女は悟る――≪ああ、本気だ≫と。
むしろ、プロシュートによる≪有言不実行≫という結果がこれまでにあっただろうか。
いや、ない。
「(っプロシュートのタラシ! 生ハム! ……すきっ歯!)」
ありったけの悪口を心うちだけで吐き出しながら、名前は左足首に負担をかけないようズボンを脱ぎ始めた。
ついでに堅苦しいシャツもやめようとキャミソール姿になってから、彼の待つ寝具の脇で足をぶらつかせれば、まるでどこぞの王子様のように跪き、そっと優しい手つきで足を取る恋人。
様になるその仕草に思わず薄闇で顔を赤らめたが、そんな自分をよそにふと襲った冷たさが、彼女の肩をビクリと震わせる。
「! や、ぁ……冷た……っ」
「ハン、ずいぶんとやらしい声だなあ、おい」
「うるさ、い、っん……は、ぁ……」
「……ところで、さっきの話の続きだがよ」
声を出さないよう必死になっていると、不意にゆっくり紡がれた言葉。
いくら待てども一向に届かない続きに、気が付けば名前は不思議そうに彼の顔を覗き込んでいた。
「ん、っ……ぁ、プロシュート……?」
「……オレのこと、見くびってんじゃねえぞ」
「え……、何言っ――ひぁああっ!?」
刹那、かかとから膝裏にかけて這わされた手。
その撫で回すような感覚に、≪突然何するの≫と動揺を胸に彼女が男を睨みつける。
が、残念ながら名前の照れ隠しを潜ませた拒否に、プロシュートは揺らぐタマではない。
むしろ動きは当人にとって悪くなるばかり。
「どうせ、≪心配かけたくない≫やら≪自分の方が年下みてえで悔しい≫やら思ってたんだろ?」
「!」
慣れ始めた暗闇で揺蕩う瞳。
どこまでもわかりやすい反応――彼はあからさまにため息をついた。
「……はあ。やっぱりな」
「っはぁ……、その、えっと」
「自律心と我慢強さ。お前のそういうとこ、オレァ立派だと思うぜ。お前のその凛とした姿から、教わったことも多いしな……だが」
「プロシュ、ト」
「≪テメー自身を大事にしないこと≫だけは許せねえ」
部屋に滲む熱っぽい息。
いつの間にか、再び組み敷かれている身体。
冷却スプレーをベッドの端へ放り投げると同時に、彼女を閉じ込めるように躯体を重ねた男が、3センチにも満たない距離で想いを呟く。
「名前。この身体はお前一人のモンじゃねえんだ。ちったぁ気を付けろ」
「……」
突き刺す視線が逃亡を、拒絶を許すことはない。
名前は感情の赴くまま頷いて――はてと≪ある違和感≫に首を捻った。
「ん? ちょっと待って」
「どうした、人がキスしようってときに」
「いや……、……普通に聞き流しそうだったけど、あんたのその表現おかしいでしょう!」
甘みを帯び始めた雰囲気。
それに危うく流されるところだった、と項垂れる自分はやはり目の前の恋人に絆されているらしい。
ところが、片眉を吊り上げたプロシュートはそんなことかと言いたげにあっけらかんと答える。
「そうだな。今は≪まだ≫違え」
……。
「は?(まだ、って何! まだって!)」
これではまるで――かと言ってはっきり述べることもできず、ゴニョゴニョと言い淀んでいると、ふと下着しか身に付けていない腰元へ移った手のひらに彼女は目を見開いた。
ぞわりと快感に沸き立つ産毛。
「ひゃ……っん! な、にして……ぁっ」
「何って、細っこい見た目のクセして意外に肉厚のある名前の腰触ってんだろうが。あとは……太腿だな」
「や、やだ……やめてよ……っシャワーも浴びてないのに……!」
子宮をじわじわと攻め立てる快楽。
だが、今度こそ流されまいと必死に身を左右へ捩れば、動きを止めた彼の左手。
諦めてくれたか――自然と強く目を瞑っていた名前は、おもむろに安堵の息を唇から吐き出した、が。
次の瞬間、いとも簡単にキャミソールを鎖骨あたりまで捲し上げられてしまう。
「!?」
「お、今日は≪前≫か。なんだよ、お前も≪仕事の後≫を期待してたんじゃねえか」
露わになったのは、月明かりに映えるきめ細かい柔肌とフロントホックのブラジャー。
一応、本人の名誉に関わるので訂正しておくが、彼女が今日その下着を選んだのは偶然である。
「ぁっ……ちょ、プロ、シュート……んっ、ぁ、やぁあ!」
男の大きな手のひらが歪な形を作り出す、陶器のように白い乳房。
それが時折胸の飾りを掠めるのか、乱れ始める婀娜っぽい息。
頬を火照らせた名前は懸命に首を横へ振り、ひたすら行為の中止を懇願していた。
「あん、っ……はぁ、っは……ぁ、おねが、ッ……ひゃんっ」
「……ククッ、どうした?」
「ッ、や……ん、ぐにぐ、にするの……はっ、ぁっ……やめ、てぇ!」
「ハッ! それがやめてほしいっつー顔かよ」
刹那、枕側へ逃げようとする細い腰を左手で掴みながら、プロシュートはちょこんと実った先端を指先で摘む。
「ひぅっ! んっ、ぁ……ダメ、つまんじゃ、や……ぁっ、ぁあッ」
一際甲高い嬌声と共に弓なりになった背中。
いやいやと首を小刻みに振るが、彼女の赤く腫れ上がるばかりか、熱を帯び硬くなっていく一方。
それをじっと薄闇の中で見下ろしていた彼は、皮肉げな笑みで口を開いた。
「っぁ、ん……いや、っ、ぁ……はぁっ、はっ……あんっ、そこ、いやぁ」
「おいおい。こんだけ乳首勃たせてる奴が放つ言葉か? ……にしても美味そうだな」
「ぇ、っ? あっ、や……ひぁ、っ、ぁあん……!」
ざらついた舌先で乳頭を丹念に転がされ、時折赤子のように強く吸いつかれ――あらゆる神経が翻弄されていく。
自然と、全身を捕らえる快感に名前は酔いしれてしまっていた。
「ふ、ぅ……ぷろしゅ、と……ぁっ、はぁ、は……んっ」
「ったく……エロい表情だぜ。男の誘い方を知ってやがる」
ため息交じりに吐き出された感想。
その瞬間、羞恥によって心が覆い尽くされた彼女は、紅潮した顔で≪否定≫を示そうとする。
ところが。
なぜか身体を下へずらした男。その意図を白く霞んだ脳内で悟り、慌てて伸ばした両腕。
「! ぁっ、やら、っ……そっちは、だめ、ぇ……ひぁ、っぁあん!」
と言っても、植え付けられた性感に力が入らないのか、プロシュートの髪をくしゃりと柔く掴むだけに留まってしまう。
乱れるプラチナブロンド。
「っぷろ、しゅーと……ぁ、見ちゃ、やぁ」
「ふっ……そうは言ってもな……この部分だけ布の色が濃くなってるぜ。これはどう説明すんだ? あ?」
「〜〜っあ、ん……やら、言わな、で……っ」
どれほど阻止しようとしても、まじまじと恥ずかしいところを見られ、心とは裏腹に反応していく正直な身体。
ふと、肌から布が消えた感覚。
名前が気が付いたときには、彼の手によってショーツがするりと奪われていた。
「ひゃっ……ぁ、あんッ」
「まあ淫乱なオメーのことだ。処置のときから喘ぎ声出して、感じてたんだろ」
「ちが……ぁっ、はぁ……ん、っちがう、のぉ!」
「違う? ククッ、そうは思えねえがな」
せめて隠そうと内腿を擦り合わせるも、あっという間に掴み上げられる膝裏。
逃亡を図り腰を揺らす仕草は、傍から見ればまるで誘っているかのようだ。
男も彼女の淫靡な動きにそう感じたのだろう。
眼を生理的な涙で潤ませた名前がもう一度首を横へ振った刹那、薄紅色の陰唇に覆われた膣へと何かが侵入した。
「ぁっ……ひぁ、ぁあああ!?」
背筋を反らせながら、室内に轟かせる喘ぎ声。
無遠慮に荒らされていく、快感に熟れて紅くなった肉襞。
クチュリピチャリと淫らな水音が響き渡る。
「ん、やらっ……ぁっぁっ、やら、っ……ぐちゅぐちゅ、らめぇ……!」
「ハッ……拒めば拒むほど、蜜はどっぷり溢れ出てくるぜ? どうなってんだよ」
「ひゃんっ、ん……言っちゃ、っぁ、やぁあッ」
敏感な粘膜を容赦なく掠める、プロシュートの荒々しい吐息。
今起きていることしか考えられなくなるほど、激しく背徳的な痺れ。
≪こちらも忘れるな≫。そう言いたげに時々舌先で突かれるぽってりと腫れた陰核。
立て続けに甘い快楽をもたらされ、身体の奥底から徐々にせり上がってくるあの終末感。
「ぁっ、あっ……ひぁ、あん、っ! や、ぁ……、?」
だが次の瞬間だった。
彼の顔が秘部から離れて行ったのだ。
すると、名残惜しさが頭を過ぎり、思わず恍惚とした表情のまま、彼女は最初とは異なる欲求を乞うように恋人を見つめてしまう。
「はぁっ、ぁっ……ぷろしゅ、と……んっ、ぁ……はぁ、なんれ、ぇ」
「ふっ……んなモン、こっちでイかせてえからに決まってんだろ」
そう音を紡ぎ出したかと思えば、服をすべて脱ぎ始めた男。
細身に見えるがなんだかんだ言って逞しい裸体に、無防備に肩へ垂れる美しい髪。
何度目にしても凄まじいその色香に、名前は視線をそらそうとするが、そのときにはもうプロシュートの指先が顎をしっかり捉えていた。
そして、愛液が零れ落ちる蜜壷に添えられた焦熱。
「ひぅっ……ぁ、はっ、ん……ぷろしゅー、とぉ」
「ッ……もう挿入れるぜ」
「え? らめ、っ……ぁ、まだ待っ――ひぁあああッ!?」
刹那、彼女は思わぬ刺激に襲われる。
爪先から旋毛を電撃のようなモノが駆け巡り、ピンと張り詰めた後、ゆっくり弛緩していく筋肉。
まさか――息を乱しつつ目をぱちくりとさせる名前に彼はにやりと笑ってみせた。
「亀頭押し込んだだけで、達したみてえだな。ったく、弱点擦られんのがそんなに好きか? え?」
「はぁ、はぁっ……ぁ、ん、あっ……ひゃん、っ」
もはや、否定する気力すらない。
申し訳程度に首を小さく左右へ動かしていると、男が膨張した性器を奥へと進めず、ゆるゆると入口あたりで前後させながら、顔を近付けてくる。
「名前。いい加減素直になれよ、身も心もな」
素直――繰り返すように彼女が紡いだ途端、塞がれた唇。
舌を貪られ、吸い上げられ、ねぶられ――意識が朦朧としてしまいそうなほど深い口付け。
気が付けば、プロシュートの首へと縋るかのごとく回る両腕。
「んっ……ふ、ぁっ……ぷろしゅ、と、っ……ン、っぅ」
「はッ、……そうだ。もっと積極的になってみろ」
「んん……!」
自分と彼を繋ぐ銀の糸が視界に映り込み、見る見るうちに上気した頬。
しかし、名前がそれに気を取られたそのとき、グチュンと卑猥な音と共に、肉棒がヒクヒクと蠢いた膣内へ押し込まれた。
「ひゃ、ぁああん!?」
グチグチと狭い壁が押し広げられていく。
奥をノックするように先端で囚われ、再び体内を駆け上がる甘美な絶頂感。
またこの感覚――肢体を痙攣させつつ、下唇を噛み締めた刹那。
「このまま始めちまいてえが……ちょっくら、姿勢変えんぞ」
「きゃ……!?」
小首をかしげた彼女が尋ねるより先に、男が自分を抱え上げてしまう。
座り込んだ名前に対して、ベッドへ寝そべったプロシュート。
「ぁっ、ん……はぁ、はぁっ、ぁ……ぷろ、しゅーと……?」
「……名前、そう物欲しそうな顔すんなよ……ただ、いつもと趣向を変えてお前が自分で動けばイイって話なだけだ」
「え、っ!? や、やら……っそ、なの、できな……あんっ!」
一度だけ下から突き上げられる胎内。
ビクビクとなす術もなく震えてしまう粘膜。
彼女が息を上げながら視線を落とせば、彼は小さく口元を歪めていた。
「オレより年上だって証明してえんだろ? 未経験の少女じゃあるめえし……そんなに悔しいなら、オレから余裕なくしてみろよ」
「っ……」
やるしかない――そう思わされるのは、途方のない快感を男に教え込まれているからか。
それともプロシュートを想い慕っているからか。
いや、両方なのだろう。
ただただ疼く身体に、じっと彼と目を合わせた名前は小さく腰を上下に揺蕩わせ始めた。
「はっ、はぁっ……ん、ぁっぁっ、あ……」
チュプチュプと響く音が恥ずかしく感じられて耳を塞ぎたくなるが――男に両手首を掴まれ、それは許してもらえそうにない。
自然と激しく、速くなるスピード。≪いい子≫と言いたげに頭を撫でられる。
「やればできんじゃねえか」
「ぁ、ふ……んっ、あん、ぷろしゅーと……っぷろしゅーと、ぉ!」
「く、ッ……、……だからってお前な。余裕なくしてみろとは確かに言ったが、んな風に誘われたら我慢できなくなっちまうだろう、が!」
「? ぁっ、どうい、う……ひゃ、っあああ!?」
己の動きと呼応するように、ますます膨らんだ一物で蹂躙される肉襞。
ナカを連続的に突き上げられ、ふと顔を見せる羞恥と幸福感。
導かれるまま彼と視線を交わらせたときにはもう、普段はあまり口にできない想いの丈を吐き出していた。
「ぷろ、しゅーと……っ好き……ぁっぁっ、あん……すき、なの……!」
「ッ、……何が好きなんだよ。オレの≪これ≫がか?」
「!? ちが……やっ、ぁ……いじわる、しなっ、でぇ!」
そうじゃなくて――慌てて否定しようと彼女が見下ろせば、プロシュートの瞳に浮かんでいたのは喜びと慈しみ。
「わーってる。名前、お前の気持ちはちゃんとわかってるぜ」
刹那、腕をグッと引き寄せられ、彼の元に倒れ込む。
快感に蕩けた顔であることも厭わず、名前が苦し紛れに非難の意を伝えようと視線を移した途端、穏やかな蒼とかち合った。
「オレも愛してる」
「っ//////ぁ、わたしは……愛し、てるとは、言――ぁあ!? やっ、いきな、り……ぁっぁっ、激し……!」
「ナカきゅうきゅう締め付けといてよく言うぜ。……そういや、小刻みに揺さぶられんの好きだったな。あと子宮の入口をこうやってゴツゴツ突き上げられるのもよ……ま、お前がオレのペニス美味そうに咥え込んでんのを見られねえのは、残念だが」
「! バカ……っぁ、あ……ばか、ぁあんっ!」
今できる精一杯の罵倒。
しかし、それすら言えなくしてしまおうと、より激しくなる律動。
その甘やかな刺激に、彼女はひたすら男へしがみつきつつ喘ぐ。
「ッ……名前、名前……、ク」
「ひぁ、っぁっぁ……らめ、っ……ソコば、かり、や……ぁっ、ぁあああ!」
だが、不意にプロシュートからもたらされる動きが止まった。
「ん、っふ……はぁ、はっ……、?」
「なあ名前。どこに注いでほしいんだよ」
「え……!?」
意地悪な質問。
言えるわけがない――と名前は小さく頭を振るう。
「ふっ、言えないってか? まあオレは別に、シーツでもイイんだけどな」
「! やら……ぁ、んっ……そ、その、っ」
グプと音を立てて抜かれようとする、あらゆる体液に塗れた男性器。
離したくない、と無意識のうちに締め付ける肉壁。
もはや、≪言わざるをえないのだ≫。
「や、っぁ……おねが……お、おく……奥におねが、っ……きゃ、ぁああん!?」
次の瞬間、ガツガツと抉るように激しく襞を荒らされていく。
さらに劈く甘い嬌声。
これでもかと言うほど密着した互いの粘膜。
肉と肉をぶつけ合いながら、少しばかり苦悶の表情を浮かべた恋人。
「なるほどな。可愛い恋人のおねだりか……いいぜ、名前。お望み通り、先っぽ子宮口に押し付けてたっぷり注いでやるからな」
「ひゃっ、ぁっぁっ、ぁっ……ぷろ、しゅーと……やら……イっちゃ、っ……あん、イっひゃ、ぁ……っあ、っぁ……ひぁ、ぁあああ……!」
「く……ッ」
ビュクリと爆ぜた灼熱に内側から侵され、白濁液で満たされていく胎内。
同時に心を埋め尽くした安らぎ。
なぜだろう。このときは甘えられるのに――≪今だけ≫という己がかけた暗示に引き寄せられるように、名前はそっとの胸板へ頬を寄せ、睡魔に誘われるがまま瞳を閉じた。
深愛と溺愛の境界線で
彼は今日も、彼女を守り(激しく)愛していく。
〜おまけ〜
「なあ名前。足治ったら今度……って、寝ちまったのか」
「……すう」
天井を見上げながら口遊もうとした誘いの言葉。
だが、右隣から届いた穏やかな寝息に、プロシュートは苦笑と反省を表情に滲ませる。
「(今日こそ話っつーモンをしようって思ったのによお)」
毎回こうしてピロートークを試みるのだが、どうも激しくシてしまうらしい。
身体的にはもちろんだが、心からここまで恋うてしまうのは名前が初めてだった。
いや、最初で最後だ。
もはや、彼は彼女の隣に居座る権利を誰かに譲る気も、自ら手離す気もないのだから。
「……ふっ」
寄り添うように己の肩に預けられた恋人の頭。
それをそっと右腕で抱き寄せて、額に贈るキス。
ん、と身じろぎする名前に口元を緩ませた男は、そのまま鼓膜を揺らすように囁きかける。
「名前。案外オレには余裕なんてモンはないんだぜ? お前が考えてる以上にな」
むしろ、彼女が仲間を含めた男と仲良く会話するのを見かけるたびに、自分は気が気ではないと言うのに。
「すー……すー……、んっ」
「……」
とは言え、そんなことは一切気付かない名前は、これからも己の行動に照れながら不満げになるのだろう。
その状況があっさり脳内に浮かんだのか、寝顔をじっと胸に焼き付けていた彼が不意に笑った。
「ったく。情事後とは思えねえ、とぼけた寝顔しやがって」
形の良い唇を歪ませて悪態を付きつつも、その眼差しは愛しさに満ち溢れている。
指先で確かめるように撫ぜる柔らかな頬。
彼女とこうして何気ない日常を感じるときだけは、≪兄貴≫ではなく、一人の男として過ごすことのできる自分。
「(あー抱き枕にして寝てえ。が、こいつのことだ。朝ぜってえ怒るだろうな……けど、普段は年相応のくせに、オレのことでいちいち百面相するお前が可愛くてたまんねえんだよ。)つーわけで悪いな、名前)」
一生をかけても伝えきれないであろうこの想いは、まさに溺愛。
骨抜きにされた己に対してくつくつと喉を鳴らしながら、プロシュートは名前の真っ赤になった顔で朝を迎えようと、恋人を胸元に閉じ込めて、静かに意識を闇へと委ねてしまうのだった。
大変長らくお待たせして申し訳ございません!
プロシュート兄貴で、甘裏でした。
凛様、リクエストありがとうございました!
かなり意地悪(?)な兄貴になってしまった感も否めませんが、気に入っていただけると嬉しいです。
感想&手直しのご希望がございましたら、clapか〒へお願いいたします!
Grazie mille!!
polka
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