トリバディズムの骨頂
※連載「Uno croce nera...」の番外編
※裏
※リーダーが女体化、つまるところ女の子同士です、注意!
※連載ヒロインが攻めています





空一面が紺に染まった時間帯。

静寂を切り裂くかのように小さく音を立てた玄関。そこへ、すぐさま駆け寄る少女の姿が。



「おかえりなさい……っ」



今日も無事に帰ってきてくれた――宵闇の中佇むリゾットのそばに近付きながら、ホッと胸を撫で下ろす名前。

ところが、いつもは即座に返されるはずの反応と抱擁がない。


むしろ恋人は心なしか俯いているようにも見える。



「リゾット、さん?」



どうしたのだろう。先程とは一変して、心配を深紅に浮かべた彼女が彼の顔を覗き込もうとした瞬間。



「えっ!?」



突如引き寄せるように掴まれた右手。

そして、何かを告げることもなくスタスタと歩き始める男。



「……」


「(い、一体何が……?)」



かしげられる小首。細身に思える影と、手を包むいつもより柔らかくしっとりとした感触だけが、少女の胸中に≪しこり≫を残した。











「あ、あの……どうされたん、ですか?」


部屋に辿り着いた後も、終始無言の恋人。

何かを伝えようとしているのかもしれないが、名前もさすがにわからない。


そればかりか、リゾットは暗闇のもとで淡々と着替え始めている。



「?」



かち合わない瞳。まるで前方を見せまいと必死になっているようだ。

一歩、また一歩と、彼女がその背中との距離を縮めた――刹那、彼がこちらを振り返った。



「名前」


「! はい……、あれ?」



鼓膜を震わせた声、が普段と比べて高い。

テノールというよりアルト。

増えるはてなマーク。


すると、ついに決心がついたのか、男が少女の背後にある照明のスイッチへ指を添える。



「え……!?」



次の瞬間、光に照らされたのは――≪女性≫だった。細い輪郭。明らかにサイズの合っていない男物のシャツ。それに対して、動けばはち切れてしまいそうな胸元。少しばかり伸びた襟足。

いつもの荘厳なオーラは立ち消え、全体的に雰囲気が柔らかい。


思わぬ衝撃に双眸をぱちくりさせる名前。心が≪眼前で苦笑するのは彼だ≫と感じている。だが、一応確認の意を込めて、彼女は気難しい顔で自身を眺める恋人をおずおずと見上げた。



「リゾットさん、です……よね?」


「ああ。任務は完遂したものの、最後の最後に攻撃を受けてしまった。厄介にも本体の死後までスタンドの能力が残留する類らしい」


「スタンド……」



すべてオレの不始末が原因だ――そう柔和な声色で呟き、項垂れるリゾット。

ひどく落ち込んでいる。

よほど身体の変化がショックなのだろうか。


心中を占める心配。少女が瞳を不安げに揺らしていると、おもむろに吐き出されたため息。



「はあ。どうすれば」


「えと……げっ、元気を出してください! 確かに不便かもしれませんが……今のリゾットさんも大人っぽくて可愛らしい、ですよ?」


「……名前、仮にも男に可愛いはないだろう。可愛いというのは、君のような控えめで健気な子のことを言うんだ」


「うっ、本当のことなのに……」



じとり。物言いたげな視線に射抜かれ、萎縮する小柄な女体。

ちなみに彼の紡ぐ≪可愛い≫という言葉はもはや常套句になりかけているので、普段から名前は単なるリップサービスだろうと捉え、スルーしようと努めている節があった。(とは言え、実際に世辞として言ったことは一度もないのだが)。


しばらくして、再び嘆息が三半規管に届く。



「にしても≪元気≫、か……。どうせならベッドで元気づけてくれ、と頼みたいところだが、今のオレでは……」


「?」



徐々にしぼんでいった声色。

聞き返そうと彼女が身を寄せた矢先、すかさず伸びてきた腕に閉じ込められてしまった。


「きゃっ!?」



ぎゅううう。擬音語と共に強まる力。


トクトクと落ち着きを失う鼓動。

そのぬくもりを確かめた男ならぬ女性は、羞恥で視線を落とす照れ屋な少女の耳へそっと囁く。



「不測の事態には慣れている。だが名前、君と交われないことが何より辛い」


「え……?」


「この身体では、君をいつものように乱すこともできない」



つむじを突き刺す真摯な眼差し。言葉の意味を理解した途端、見る見るうちに赤く染まった顔。



「あ、えっ、う……その……っ/////」


「……」



恋人の悩みはそこにあったのか――ぷは、と窒息を危惧するほど谷間に埋まっていた口と鼻を離し、なんとか呼吸のできる場所を確保した名前。


そして不意に目線をリゾットの方へ移して、息をのんだ。



「っ、リゾットさん……」



時折甘えてくれる恋人。

自分の存在を確認するかのように抱きしめてくる彼を、温かな気持ちで迎えることはよく経験していたが、これほどまでに母性を掻き立てられることがあっただろうか。


気が付けば、白い手のひらは普段より幾分か届きやすい女の頭をなでていた。

細々とした指をすり抜けていく銀の髪。



「名前?」



そして不思議そうなリゾットもなんのその。


笑顔のままその女体をベッドの脇に座らせたのだ。

さらに、彼女に寄り添うように下ろされる名前の腰。



「どうした、突然――」


「……んっ」


「!」



安堵をもたらすことを願って、ちゅっと一瞬だけ重ねた唇。

普段から安心感を自分に与えてくれるリゾット。優しい彼がこんなにも頭を悩ませている。

――今こそ、≪なんとかしたい≫。溢れんばかりの情愛に心が駆られたのだ。


ぶかぶかなシャツの裾を握り締めつつ、稚拙なキスを贈った少女は少なからず狼狽する女を見つめた。



「リゾットさん……あの、心配しないでください! 私っ、少しだけ知っていて……」


「? 名前、すまない……話の流れが読めないんだが、何を知っているんだ?」


「その……女性同士の、せっ、≪せいこーの仕方≫を……です」


「なッ!?」



驚愕にこれでもかと言うほど目を見張る恋人。そう、名前はその≪方法≫をある人物に教えられたのだ。

時はかなり前に遡る。









「名前! 今時間あるかな!? あるよね!」


「? ありますけど……」



ある日、いつも通り荒い息をこぼしたまま声をかけてきたのは、言わずもがなメローネ。


脳内を過る疑問符。首をかしげながらも彼女はソファに座る彼の隣に並んだ。

男の手には何かの雑誌が抱えられていた。



「(ハアハアッ、ソファなんて襲う絶好の場所なのに、ほんと名前は無防備だなあ。まッ、そんなところがまたイイんだけど!)ハア……名前はさ、≪親子丼≫って知ってるかい?」


「はい、知ってますよ? みりんや醤油で味付けた鶏肉とふわふわの卵が絶妙で、美味しいですよね」


「うんうん。確かに美味しいけど残念! オレが言ってるのはね、こういうのだよ。じゃーん」


「!?」



突然、開かれた紙面。

そのあられもない内容に、ピシリと音を立てて硬直する少女に対して、メローネは飄々と説明を進めていく。


「あ、こっちは姉妹丼でこっちが母娘丼。要するに男が女二人を一緒に性的な意味でいただくことを言うんだぜ? まあ男を抜きにして、女の子同士のセックスで言うなら欠かせないのは≪貝合わせ≫だな! この箇所をよーく見てごらん。女のココとココを擦り合わせる、トリバディズムって呼ばれる奴なんだけど……、名前?」


「//////」



ふと彼がそちらを振り向けば、視界に映るゆでダコのように真っ赤に染まった名前の顔。

あまりの衝撃に、微動だにしない双眸。


どうやら彼女の中で処理に時間がかかっているらしい。


もちろん、すべて≪計算済み≫なのだが。



「あはっ、ごめんごめん。ディ・モールト初心な≪名前ちゃん≫には刺激が強かったみたいだね」


「うう……強すぎます。〜〜メローネさんの、ばかっ!」


「ハッ!?(え、ちょ、何今の!? ベリッシモ可愛いんだけど! どうしよう、もっと言ってほし――)って、そうじゃなかった。オレ、こういうの見かけるたんびに≪女になってみたい≫と思うんだよねえ」



だって女の身体って男より感度がディ・モールトいいらしいからさ。

顔色一つ変えずにそう呟く男。一方少女は疑問に照れ臭さも相まってきょとんとする。



「そ、そうなんですか……?」


「んんー? もしかして自覚してないタイプ? そうだろうなあ……君みたいな子ほどじわじわと気付かぬまま快楽に犯されちゃうんだよ。リーダーが名前を≪リーダーなしじゃ生きていけないよう≫に開発してるみたいにね! というわけで、君も自分の感度を確かめるためにどう? これからオレと――「おい変態! 名前に変なこと教えてんじゃねえッ!」グハッ!」



こうして、メローネの後頭部に繰り出されたプロシュートの蹴りによって事なきを得たが、名前の脳髄には会話が≪知識≫として吸収されてしまうわけで――











今、事態を把握している自分が動かずして、誰が動くのだろう。

妙な緊張が走る中、リゾットは胸に押し迫る動揺に黒目がちの瞳を文字通り白黒させていた。



「(名前はなぜそういったことを知っているんだ? そもそもそれは詳細を聞いていいモノなのか……?)」


「えっと……(ど、どどどうしよう。思わず言っちゃったけど驚かれてるよね……でも、せっかくだから――)」



彼女の胸に宿った決意。華奢に変じた肩へそっと乗せられた少女の両手。



「ん?」


「えいっ」


「!?!?」



刹那、女は油断していたこともあり、あっという間にベッドの上へ押し倒されてしまう。

矢継早にやってくる衝撃。自分の上に乗った名前の浮かべる微笑がひどく優しいだけでなく、なぜかひどく妖艶に見えるのは気のせいだろうか。



「今日は私に身を委ねてくださいね?」



透き通るような声で紡がれた一言。

対して、相も変わらず放心気味のリゾット。


しかし白いシャツの襟に手をかけられた瞬間、彼女はハッと我に返った。



「な、何を言っているんだ、名前。ここはオレが――ぁっ!?」


「ダメです。大人しくしないと……その……きっ、きすしちゃいますよ?」


「〜〜ッ」


「(まずは……)」



拗ねた表情でじっと見下ろす少女。

キスだと、むしろ大歓迎だ――そんな本音を今打ち明ければ、おそらく怒られてしまうだろう。

女が葛藤に胸を焦がす最中、名前は多少まごつきつつもボタンを一つずつ外していく。


すると、解放を待ちわびていたかのように現れるたわわな果実。



「/////(うう……さすがリゾットさん、ボリュームが)」



その自分より一回り、二回りはある豊乳になんとも言えない複雑な気持ちを抱いたまま、乳房に添えた両手。


容易に形が変わるそれを徐々に揉みしだいていけば、彼女の産毛がぴくりと震えた。



「! はっ、はぁ……名前……く」


「なんだかマシュマロみたい……」



柔らかく弾力のある膨らみ。

まるでパンやクッキーの生地を捏ねるように、強弱を付けて五指を扱う少女。


その程よい手つきがたまらない。



「はぁ、っは……ん……、ッく、ぁ」


「……」


「名前……ッ」



名前の耳を貫く余裕のない声色。

自分を呼ぶ恋人の表情がまた、彼女の子宮をきゅんと疼かせるのだ。


慈愛に焚きつけられふと指先で摘んだ胸の頂き。すると、悔しさと狼狽を赤い視線に入り交じらせながら、リゾットが瞠目する。



「! ッな、にをして……はぁっ」


「え? 私はただ……リゾットさんが普段私にされてることを、してるだけですよ?」



はあ、はあと断続的にこぼれる吐息。

微かに反らされる女のしとやかな背中。甘さを帯びた喘ぎ声が空気に滲んでいた。



「っん……はぁ、はッ」


「ふふ、リゾットさん……可愛い」


「ッ! い、っ加減にしな、さい……!」


「ひゃん!? ……もう、今日は私がって言ってるのに」



ふとした瞬間、パジャマ越しの乳房を鷲掴むリゾットの手のひら。逆転の機会を、彼女は虎視眈々と狙っているのかもしれない。

驚きに小さく肩を揺らし、少しばかり桜色の唇を尖らせた少女は、より身体を密着させるようにふくよかな胸元へ顔を寄せる。


そして、相変わらず片方を転がす一方で、ぽってりと充血した先端を咥えてしまった。



「ぁ……!? ッ、く……」


「んっ」


「っは、ふ……はぁっ、は……名前ッ」



時に吸い付き、時に――恥ずかしくてたまらないが――唾液と舌を酷使し乳頭をしゃぶる。

迫り来る性感に歪んだ赤。不意に目と目を合わせたまま、名前がぽつりと呟いた。



「えへへ。なんだか……赤ちゃんになった気分です」


「!」



献身的な彼女の愛撫と表情、背徳感に高まる興奮。


しかし、普段天井に向かってそびえ立つはずの≪自身≫は、今は跡形もない。

それにも関わらず女の息はひどく乱れ、腰も快楽に揺蕩うばかり。



「……はッ、ぅ……はぁ……ン、はぁっ」


「ん……んんっ(そろそろ、かな?)」


「く、っ名前? ……ん!?」



刹那、舌先を乳首へ這わせた状態で、脇腹を伝っていくしどろもどろな手に、黒目がちの瞳がドキリと見開かれる。

カチャカチャと音を立てて解かれるベルト。自然と張り詰めていた足先を通って自分の元を離れていく白黒のボトム。


男とは感じ方に差異のある快感の痺れ。それに耐えるため奥歯を噛み締めるリゾットが今できること。それは、抵抗することでもなく、少女を退け逆に自分が組み敷くことでもなく――ただ漏れ出る声を必死に抑えることだけだった。

一方名前は露出させた下着におずおずと手を伸ばして、ある感触に気付く。



「あ……濡れてます、よ?」


「ッ」


「リゾットさん……か、感じてくれたんですか?」


「……」



決まりが悪そうに黙り込む女。


もちろん少女はこれまで女性を性的に攻めたことはない。自分の拙い愛撫に性感を覚えてくれたのか、と胸に広がっていく嬉しさ。顔を綻ばせた彼女は部分的に色の変わったトランクスの中へすっと指を差し入れた。

当然ながら、慌ててそれを阻もうとする恋人。



「っ……名前。もう、いいだろう……はっ、はぁ……ん、ッ……オレに、代わるんだ」


「いいえ。女性として先輩である私が、最後までやってみせます!」



首をぶんぶんと横に振り、名前が改めて意気込む。

可愛い――宥めようとしていたことも忘れて、思わず頬を緩ませていると、突如指先が秘部の中でもっとも過敏な箇所を掠めた。



「んん……!? はっ、ぁ……なんッ、だ……今のは、っはぁ、っは」


「(やっぱり、突起がいいんだ……)」


「く、っ……名前、やめ、ッぅ」


「/////」



女体というのは、こんなにも感じるモノなのか。

剥ぎ取られた下着。泌尿器といった他の役割は一切なく、感度は陰茎の二倍だと言われるクリトリス。


どこまでも反応の良い神経に狼狽するリゾットに対して、自身のモノですらまじまじと見つめたことのない女性器に、肌をほんのりと紅潮させつつ少女は薄紅色の襞を左右へ開くように押さえ、包皮を剥いた陰核に触れるか触れないかの絶妙な場所で、指の腹を動かし始める。


彼女の行動を止めたいはずが、その耽溺性に囚われ、自ずと痙攣してしまう腰。



「はぁっ、はっ……んっ、ぁ……く……名前……!」


「はい、ここがいいんですよね?」


「っ、ぁあ!」



身を捩ることで乱されるシーツ。


ひたすら右の人差し指で勃ち上がった突起に刺激を与えれば――ベッドへ添えていた左手にふと女の手のひらがきゅっと重ねられた。

その力強さに察する絶頂への予感。そして、喜びとぬくもりに包まれた心に従うまま名前は可愛い恋人の頬へキスを贈り、小さく微笑んだ。



「えっと……り、リゾットさん、イっていいですから……ね?」


「!」



彼女が鈴を転がすような声で囁いた次の瞬間、しなやかな背筋に途方もない電流が走り――

「〜〜ッ!?」



声にならない声を上げ、オーガスムに達する成熟した身体。


筋肉を弛緩させると同時にただただ全身をゾクゾクと震わせるリゾット。吐き出されては消える艶めいた息。その自分にはない色気に、少女は知らぬ間に喉を上下させてしまう。



「(リゾットさん、すごく色っぽい……////)」



再び上昇していく心拍数。だが、彼女に恥じらう猶予は与えられていなかった。まだすべきことが残っているのだ。


「っ」



しばらく熱欲に浸る女を尻目に、パジャマのズボンとショーツを恐る恐る脱ぎ去っていく。

数十秒後、ぐいぐいと下に伸ばしたシャツで素足を隠した状態のまま、ベッドに乗り上げる名前。


想像以上の快楽ゆえに放り投げていた片足を取られ、疑問ゆえに瞬きを何度か繰り返すリゾットの赤い双眸。

半ば意識が朦朧としているらしい。



「名前……?」


「女性同士の仕方……って言いました、よね?」


「!?」



刹那、互いの右足が左足の上に覆い被さるよう、彼女が太腿を交差させた。


クチュ、と愛液が音を立てるほど密着する女性器。

松葉崩し――確かメローネは、そう言っていたような気がする。



「ッ、待て! 名前、このような体位や行為……一体どこで覚えてきたんだ」


「え? 紹介してくださったのはメローネさんです。このまま、二人で腰を揺らすらしく、て/////」


「(やはりそうか! あいつは名前に何を教えているんだ……!)」


「このお話を聞いたときは、まさかこんな状況になると思わなかったし、とっても恥ずかしかったんです、けど……リゾットさんにもっと気持ちよくなってほしいから」



蔓延るのはあくまで献身。

柔らかな笑みを浮かべた少女は、今から行うことにはにかみながら動きを開始した。



「ん……ッ」


「ひぁんっ……は、っぁ」



ベッド上で女体を揺蕩わせる二人の女。



「名前、っはぁ……っぁ……、んッ」


「ふ、っん、ぅ……ごめ、っなさ……りぞ、とさんに……かんじてほしっ、のに、私……っぁっぁ」


「っは、ぁ……いい……オレだけ、より……ッく、ふたりのほ、うが……ん……い、っだろう」



荒い呼吸によって途切れ途切れになる言葉。

吐息と蜜壷から溢れた体液の交じり合う生々しい音色。

さらなる快感を求めるために弱点を探ることで、自然と淫らな腰使いになるのだろう。硬さを持った肉芽が擦れるのか、互いの躯体がビクビクと跳ねた。


ピチャリ、チュプと経過音が、静けさを保った密室を突き抜ける。



「っひぅ、ん……はぁ、っはぁ……っ」


「んん……く、っ……ン……はっ、ぁ!」


「や、ぁっ……りぞ、っとさ……りぞ、とさ……ぁっぁっ、あん!」


「……名前っ、名前……ッ、は……ぅ」



開かれた新たな扉。

同じ快感を分かち合う悦び。


躍動的な肌には、玉のような汗が滲んでいた。



「名前ッ……ぁっ、ふ……すまない、そろそ、ろ……ッ」


「は、っい……ひぁ、っ……はぁっ、はっ、ぁ……い、しょに……んっ」



差し迫る限界。高ぶる感情に促され、情交が激しさを増していく。


「「ぁっ、ぁああ……!」」



薄らとした眼前を火花が散り、脳内が白く霞んだと同時に重なる嬌声。

小刻みに震える互いが、互いによってもたらされた性的快感を一身に受け止めた。


事後特有の雰囲気が漂う無音の世界。乱れた息をしばらく整えつつ、不意にぶつかった視線。



「名前……」


「りぞっ、とさ……っん」


「ん」



名前がごろんと隣に寝そべった瞬間、二人は引き寄せられるように何度も口付けを交わす。

シーツの上でもつれ合うしなやかな女体。彼女たちのひどく蠱惑的な面持ちと仕草が、背徳と呼べる雰囲気をさらに醸し出すのだった。










トリバディズムの骨頂
たとえ普段通りではなくとも、彼らは互いをさらに愛していく。




〜おまけ〜



「……予想外だ。まさか名前がこのようなことを実践するとは」


「/////」



慕情に満ちた自室にて、前触れもなく唐突に呟いたリゾット。

天井へ目を向ける顔に滲んだ、微かな悔しさ。


いくら予期せぬ出来事だったとは言え、自分が受身であったというその事実が許せないのだろう――しかし、届いた声音を別の意味として捉えた名前は、自身の行動に赤面したまま彼女の方をじっと見上げる。



「えと、っ……リゾットさんはあまり気持ちよく、ありません……でした?」


「いや……そんなことはなかったぞ。当然、それなりの羞恥はあったが……それ以上にいい勉強になった。女体を体験することで、名前がより悦ぶであろう性感帯が把握できたからな」


「そ、そうですか……(よかった……。それにしても勉強だなんて、リゾットさんは真面目だなあ――)って! 私につなげないでくださいっ!」



恥ずかしさと懇願の入り交じる叫び。ぽかり、と彼女が弱々しいパンチを女体と言えども自分よりは逞しい女の腕に繰り出せば、やおら寄せられる眉根。


繋げるな、そう君は言うがむしろこの知恵を誰に繋げろと言うんだ。

オレは名前以外、他に繋げる気もないぞ。


湧き上がってやまない想いをリゾットが改めて真顔で――あくまで真剣なのだ――告げると、少女は≪冗談ではない≫という絶望に口をパクパクとさせながら、咄嗟に≪話を変えること≫を試みた。



「(どうしよう。あれ以上なんて、私どうなっちゃうんだろう……。)そっ、そそそういえば! リゾットさんのお身体、いつ戻るんでしょうか。さすがにこれ以上続くと、生活にも支障が出てしまいます」


「ふむ。多少気がかりではあるが……相手はもはや死人だ。能力にも限界がある。いずれ戻るだろう」



頭を優しくなでられると同時に返ってきたのは冷静な分析。

今や恋人との夜の営みを憂慮し、ひどく落ち込む姿は見る影もない。


よかった、と和やかに微笑んだ名前が安堵ゆえの息をこぼした――そのとき。




「だがその前に、やることがある」


「? ひゃっ」


「……」


「り、リゾットさん? あのっ、何を……っやぁあ!?」



おもむろに上体を起こしたかと思えば、抵抗する間もなく彼女とベッドに挟まれる身体。

そして、唯一包んでいたパジャマのボタンを、繊細な手つきで無遠慮に剥ぎ取られてしまう。

小さな悲鳴と共に露わになる十分たおやかな膨らみ。たゆんと合わさった二人の乳房がこれまた淫靡な形を作った。


額を寄せたまま、紡がれるのはある種の死刑宣告。



「どうやらオレの可愛い恋人には、≪主導権≫というものを思い出してもらわなければならないらしい」


「しゅ、主導権……? ぁっ」


「その名の通りだ。女という感覚にも慣れてきた……今日は朝まで、名前のこの柔らかな肢体に改めて快感を刻み込むからな」



静かに輪郭をなぞられ、彷彿とさせられる情事の再開。慌てて押し返そうとした少女の両手を捕らえ、離さないようしっかりと絡ませる指。

当然、色欲を帯びた女を映した眼には焦燥ばかりが宿る。



「そ、そんな……主導権なんて、私はそういうつもりじゃ……っんん!」


「ふ……その無自覚も治す必要がありそうだ」



卑猥な水音が支配する中、耽美なキスにピクピクと時折跳ね上がる腰。しばらくして、リゾットは今にも窒息してしまいそうな恋人をようやく解放した。


名残惜しさと愛情。それを伝えるように、小刻みに震えた可愛らしい上唇を食む。一方、口端からこぼれる唾液を拭う余裕もなく、深紅の瞳をとろりと潤ませた名前の表情にありありと浮かぶ≪恍惚≫。

あどけない彼女の扇情的な様子にただただ生唾を飲みつつ、ほくそ笑んだ女は滑らかな脇腹に手を這わせようとした、が。


バンッ



「リーダー! 帰ってる? まあ帰ってないなら帰ってないで熟睡してるであろう名前を美味しくいただくけど……って、ん? ンンっ!?」


「……」


「ん、っはぁ、は……めろ、ねさん……?」



鍵を閉め忘れていたらしい。もちろん照明も。ノックもなしに突如現れた男をすかさず射抜く赤と紅。

一方でメローネの眼前に佇むのは、さらなる非日常への入口。肉感的と呼んでも過言ではない絶景に掻き立てられ、深夜であることも厭わず喉から飛び出した歓声。


「ちょっ、ベネ! ディ・モールトベネ――――ッ! なんてイイシチュエーションなんだッ! ハア、ハァハァ……名前! せっかくだからリーダーのこと≪お姉様≫って呼んでみてくれよ! ほら、一気に疚しさと興奮が増すだろ……? あとついでに二人のプレイをぜひ見た「メタリカッ!」ブベネ……!」



邪魔をするなと言いたげに、そして「よくも名前に度の過ぎた知識を植え付けたな」と制裁の意味も含まれているのか、忌々しいモノを見るかのような眼差しを湛え、きめ細やかな皮膚から離した右手をそちらへかざす屈強な女。


床に叩きつけられる金属の音や愉悦の潜んだ雄々しい悲鳴をバックに、ぎゅうと強められる腕の力。

どうやらリゾットには、自分たちの他に入り込む隙間を与えるつもりは一切ないらしい。ピタリと重なり合う白い柔肌。少女の華奢な躯体をますます抱き包めてしまう彼女に、やはり性別が変わってもリゾットはリゾットなのだと、頬を朱に染めながら名前は珍しく甘えるように首筋へ擦り寄るのだった。












すみません、長らくお待たせいたしました!
敵のスタンド攻撃で女体化したリーダーと連載ヒロインの裏で、連載ヒロインが主導権を握るお話でした。
冬子様、リクエストありがとうございました!
主導権と言いつつ最後はやはり逆転してしまいました。百合は初めて書いたのですが……新しい扉、ちゃんと開けていたでしょうか? 基本的にマニアックな裏大歓迎ですので、また機会がありましたらぜひ/(^p^)\


感想&手直しのご希望がございましたら、clapもしくは〒へお願いいたします!
Grazie mille!!
polka



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