dream or Fact?
※甘(激)裏+ギャグ





チームのリーダー、リゾット・ネエロは恋人の名前に――簡潔して言うならば――≪ベタ惚れ≫である。

アジトでは彼が女を想い、ニヤニヤと硬い表情を解く瞬間が幾度も窺われた。


一方、彼女もその男を恋い慕っているが、なぜだろう。二人の間には妙な≪温度差≫がある。



「名前。……シないか」


「はい? なっ、何言って……昨日したばかりでしょ?」


「昨日は昨日、今日は今日だ。オレは毎日ででもお前と身体を重ねていたい」


「っ!」



胸を突き刺す真摯な眼差し。しかし、≪休日≫というモノは、ベッドで情交ゆえの痛みにうなされるためにあるわけではない。


視線を彷徨わせた名前がどう断ろうか迷いあぐねていると、椅子として腰を下ろしていたベッドへ不意に押し倒されてしまった。



「まったく。いつまで経っても恥ずかしがり屋だな、名前は」


「ちょ……! まだ何も言ってない!」


「沈黙は了承と捉えた」



――そんな横暴な。

彼女の視界に広がるのは、天井とリゾット。

彼がこうした質の悪い冗談をすることはない。だからこそ、嫌でも高鳴り始める心臓。


混乱、狼狽、困惑。そうこうしている間にも、端整な顔がキスを試みようとこちらに近付いてくる。



「名前……」



耳を通して自分を意のままにしてしまいそうなテノール。重なり合う二人の吐息。

ついに、≪プツン≫と何かが切れる音が女の脳内で響き渡った。



「〜〜っだから嫌って言ってるでしょ!」


「グッ!?」



手加減はしている――が、股座へ命中した鋭い蹴り。さすがにアジト1屈強と言えども、いわゆる≪男の弱点≫には免疫が他より低下しているのか、隣に転がり身悶え始める。


すると、罪悪感を抱きながらも、たたたっと早足で部屋を出て行ってしまう名前。


もちろん男も、今の性生活に不満があるわけではない。

それでも、もっと恋人と目交いたいという≪願望≫は確かに存在していた。










「……はあ」


任務からの帰宅。自然とこぼれては空気に滲んでいくため息。

扉を開ければ、リゾットを待っているのは誰もいない閑散とした部屋。

ストライプのズボンにハーネスベルト、そしてコートという独特の仕事着を脱ぐ気も起こらず、居残るのは疲労感とある想いのみ。



「(名前に会いたい……三つ隣の部屋だ。会いに行くか? いや、もうすでに眠っている可能性もある。……今日は控えよう)」



何気ないことを話したい、抱きしめたい、唇を重ねたい、そして――さまざまな欲求を断ち切る心。愛しい彼女の部屋へ押しかけるほど、堪え性のない男ではない。


とは言え、自身に言い聞かせる彼の背中は心なしか寂しそうである。



「……」


ドサリ。シーツの整ったベッドにうつ伏せで倒れ込む。

刹那、図らずとも襲い来る睡魔。


――なるほど。自分は相当疲れていたらしい。


自らのことに対して特に鈍感なチームリーダーは、ようやく疲労困憊であることを悟りつつ静かに瞼を下ろした。








コンコン、コン

数分後、その場にノック音が控えめに響き渡る。



「リーダー……いる?」


訪問者の正体である名前は、板越しから反応がないことにこてんと首をかしげた。

つい先程、見慣れた人影を窓辺から目撃したのだ。


本当にいないのか、居留守を使っているのか。どちらにしても、気力を失っているであろう恋人にせめて≪おかえり、お疲れ様≫ぐらいは言いたいと、右手でドアノブを回し――



「入るよ? お邪魔しま……あ」



扉を開いた先。そこには、熟睡するリゾットの姿が。

起こしてしまわぬようそっと歩み寄った彼女は、寝返りを打ち、横向きになる彼をまじまじと見つめる。


普段は物音一つで目を覚ますが――また、かなり根を詰めたのだろうか。

それとも自分には気を許してくれていると、少しだけ自負してもいいのだろうか。



「……」


ごろん。

不意に、逡巡した女が二人で並ぶには狭めの寝台に身を寄せた。


自然と密着する躯体に、頬が熱を帯びるのを自覚しつつ、改めて恋仲である男を観察する。



「(寝顔、可愛い……まつ毛もすごく長いし)」



さらさらと微かにそよぐ白銀の髪。耳を貫いていく寝息。

そうだ。前触れもなく胸中に芽生えた悪戯心。どうせなら起きてる時にはできないことをしよう――少なからずほくそ笑んだ名前はリゾットの首筋に鼻を寄せ、クンクンと嗅ぎ始める。



「(うわー……どうしよう私、すごく変態じみてる……でも、珍しく熟睡してるんだしいいよね)」


ベルトの交差する胸板に手を添えたまま、ここぞとばかりに働く嗅覚。

悪戯と言えども、自分の中で羞恥が高まっていくのは理解していた。が、止められそうにない。

じわりと滲んでいる汗。不思議と嫌悪感は湧かない。


それはやはり彼だからなのだろう。



「(そうそう、これこれ。香水を付けない、リゾット自身の香りが好き、なんだよなあ)」


しばらく男の匂いを至近距離で堪能していた彼女は、そろそろ離れようと顔を上げて――



「!?」



ハッと息をのんだ。

なぜなら、閉じていたはずの双眸が開いていたのだ。黒目がちの瞳が、瞬き一つすらせずにこちらを凝視している。


正直に言おう。――怖い。



「(えっ、ええ!? ままままさか起きてたなんて! 幻滅された、かな……というか! 起きてるなら何か言ってよ……!)」










一方、リゾットはひどく驚いていた。



「(なんだこれは……夢か、夢なんだな? まったく、夢の中でもオレをこんな風に誘ってくるとは……けしからん、もっとヤれ。……よし、せっかくの機会だ)」



ガバッ

次の瞬間、あっという間に腕の中に閉じ込められ、動揺と驚愕に目を見開く女。



「ちょっ、まさか抱き枕と間違えてるの!?」


「……」



このまま一晩過ごすのはごめんだと、名前が必死に身を捩る。


しかし、筋骨隆々としているだけあってなかなか解放されることはない。


どうすれば――そのとき、彼女の頭上でピコンと光る電球。

そうだ。こんなときにこそ≪魔法の言葉≫を使うべきなのだ。



「≪リゾット≫! いい加減にして! 疲れてるのはわかるけど、寝惚けてないでちゃんと寝た方がリゾットのためにな――」


「名前」


「!」



鼓膜を震わせたのは、普段通りはっきりとした声音。

ところが、どこか≪夢心地≫なのも否めない。


この人は≪リーダー≫より≪リゾット≫と呼ばれる方が好きだ――という、たった今口にした名前のことも忘れて、女は彼と視線を交わらせながら聞き返した。



「な、何……」


「……」









「子作りを、しよう」





……。






「……Come?(なんて?)」


「子どもを作ろうと言ったんだ」


「…………、はあ!? な、なんでそうなるわけ?」


「正直、お前がこんなにも誘ってくれるとは思わなかった。夢であっても今夜はいつも以上に激しくするからな」



≪夢≫。

その一言にクエスチョンマークを浮かべる名前をよそに、両手首はシーツに縫い付けられてしまう。



「夢……? 何言ってるのよ!」


「ふむ。現実と同様、抵抗をしようとしているのかもしれないが……可愛いだけだぞ」


「か……っうるさい! とにかく夢じゃないんだってば! とっとと目覚ましなさ――ひゃあ!?」



刹那、男の無骨な手によって捲くし上げられるキャミソール。

さらに鎖骨側へずらされるブラジャー。


寝る前だったからって、こんな格好しなければよかった――ぶるんと音を立てるかのように晒された乳房に、彼女は溢れ出る羞恥で恋人を睨みつけた。

だがそれは、リゾットには通用しない。むしろ――



「恥じらっているのか? 先程まで、恥ずかしげもなく首筋の匂いを嗅いでいたと言うのに」


「! ちがっ! それはちょっと悪戯しようとしただけで……っ誘ってない! 私はそんなつもりで来たわけじゃないんだから!」


「……いつも思うが、よく喋る口だ」


「んっ……!」



興奮を煽り立てるばかり。


一言と共に、すかさず奪われる女の唇。

息を吸おうと開いた隙間から、彼の舌が侵入していく。



「ふっ、ぅ……ん、はぁっ、はっ……りぞ、と……ン、っんん」


「は、ッ」



部屋を支配していく淫靡な水音。

クチュリピチャリと歯列の裏、舌下を執拗に舐られ、男女の間を銀の糸が引いたときにはすでに、名前の瞳はひどく快感に蕩けていた。



「ぁ、はぁ、はぁっ……」


「ふ……いやらしい顔になってきたな」


「っそ、なわけな……っ、あん!」


「……」



無言のまま、揉みしだかれ始める乳房。

ぐにぐにと手のひらで形を変える膨らみに、視覚的な快楽が彼女を攻め立てる。


しかし、いまだ羞恥が性感より勝つのか、小さく横に振られる首。



「ん、っひぁ……いや……ぁっ、ぁっ、むね……もみもみしちゃ、やぁあ……!」


柔肉から押し寄せる甘やかな快感の波。

じわじわと女体を侵食するそれが、痺れとなって神経を鈍らせていた。



「だめっ……んっ、ぁ……はぁっ、は、っふ……だめ、ぇ」


「≪ダメ≫? そうは見えないが……乳首が赤くなっているぞ」


「ひぁっ!?」



次の瞬間、果実を摘み取るかのごとく頂きを男の唇で食まれてしまう。

強烈な刺激に目が見開かれ、曝け出される白い喉。


肢体はピクリピクリと小刻みに震えていた。


女の淫蕩した吐息が、室内に滲んでいく。



「ん……」


「っぁ、はぁ……ぁ、んッ、やら……ぁっ、あっ、あん……っはぁ」



舌で巧妙に転がされる勃起した乳頭。

腰は性感を享受するように浮き上がるばかり。


はあ、はあと悩ましげな呼吸を繰り返した名前は、眼を涙で潤ませつつ胸元に顔を埋めるリゾットを見下ろした。



「やん、っぅ……りぞ、っと……りぞ、と、っぉ……はっ、はぁ、やらっ……ぁあ!?」



不意に、太腿へ這わされる手のひら。

次の展開を想像させるそれに、懇願するように漏れる彼女の艶めいた声。



「や、んっ……ぁ、っ、はぁ……だめ……っ」


「ん? どうした名前。オレはただ撫でているだけだぞ」


「っぁ、っぁ……だ、って……りぞっとのっ、さわり、方がやらし……っひゃん!」


「ふ……相変わらずお前は感度が高いな。あまりのいやらしさに、夢であることを忘れそうになる」



劣情に満ちた赤い眼。

目前の男はまだ勘違いしているらしい。そんな夢見られてたまるか――ショートパンツに伸びる彼の筋張った手を慌てて振り解こうとするが、強い快感に溺れた身体はなかなか言うことを聞かない。


そして、抵抗もままならずズボンを剥ぎ取られると同時に、強引に内腿を割くかのごとく五指が差し込まれる。



「! ひぁっ、ぁ……んっ」


「ん? 胸を触っただけだと言うのに、下着がグショグショだ」


「っ……/////」



纏わりつく蜜に濡れた布。羞恥に苛まれる心。

慌てて視線をそらそうとすれば、それを阻むかのように指がバラバラと動かされ始めた。



「やっ、ぁっ、ぁっ……りぞっ、と……おねが……あん、っふ……やら、っはぁ、は……ぁっ、ぁああ!」


「名前。やだ、じゃあないだろう」



薄いショーツ越しに恥丘を撫で回すように愛撫していく。

垣根を越えて陰核に爪先が当たったのか、背中を弓なりに反らす女。


一際甘さを帯びた甲高い嬌声。

これ以上快楽に浸りたくないと、名前はガクガクと震える己の腰を引こうとするが、男が彼女を逃がすことは決してない。



「こら、逃げるな」


「ひゃう、っん……ぁっぁっ、あっ、ン……はぁ、っは……りぞ、と、っぁ……そこ、らめ、ぇっ」


「まったく……いやらしいな、名前は。オレをどれほど惑わせば気が済むんだ?」


「ぇ、っは、っはぁ……ん、なに言――ひぅっ!」



自嘲を潜めた言葉に小首をかしげた刹那、内腿を掠めたとある焦熱。

その、痛々しいほどズボンの下で膨張する欲の塊に、上がるのは衝撃と慚愧の入り交じった悲鳴。


おずおずと見上げれば、自分を見つめるリゾットの表情には興奮が宿っていた。



「ぁ……ンっ、ふ……わた、し、ぁっ……や、っんん……!」



するり。奪われる最後の砦。

ヒクついた膣内を占める生々しい感触。



「っやん……はぁ、はぁ……らめっ……ぁ……っかきまぜ、ちゃ……ひぁっ、ぁっ、ぁあんっ」


「ナカをこんなにも熱くして……」


「ぁっ、ぁっあっ……ん、っふぅ……ぁっ、や……いわなっ、でぇ!」



否定の意味も込めてふるふると頭を振るうが、恥肉は自ら中指と薬指を受け入れてしまう。

目尻から伝う生理的な涙。膣で無遠慮に動く彼のゴツゴツとした指。ズチュズチュと淫らな音を立てて、掻き混ぜられる粘膜。


ドプリとシーツに溢れ出てくる愛液を絡ませながら、男が蔑むかのように口端を吊り上げる。


普段とは違ったその色香に顔を赤らめ、思わず息を乱したまま目を伏せる女。



「ん、っはぁ、はっ……あんっ、ぁ……りぞっとらめ……ひぁ、っぁ、っぁ……らめ……っ」


「ふ……肉襞をうねせらせておきながら、よく言う」



わざと吐き出した嘲笑に、再び薄紅色の花弁が震えた。


秘部を覆い隠すように添えられた手のひら。何度も攻め立てられる、女性にとって弱い箇所である膣前壁。

そして、もうひとつの弱点である肉芽を包皮から剥き出しにされ、クニクニと捏ねくり回せば細い腰が一層ベッド上で跳ねる。



「名前。クリトリスとナカならどちらがイイんだ?」


「ひぁっ、ぁっ、ん……あん! ふ、ぁ……やっ、ン、ぅ……くりもっ……ナカ、っぁ、も……りょうほ、いいの、っぉ」


「……いい子だな」



よしよしと撫でられる頭。子ども扱いするな、と言いたいのに高鳴る鼓動。

だが同時に、もう片方の手に二つの性感帯を弄られることで絶頂へと導かれ、名前の甘美な喘ぎ声が連続的に響き渡った。



「ぁああ!? はっ、ぁ……っやら……おねが、っそこは……ひぅ、っふ……イ、ちゃ……んっ、ぁっ、ぁ……やっ、ぁあああん!」



足のつま先から旋毛までを突き抜けていく快感という名の電流。


「は、っぁ……ん……ひぁ、っ、ぁっ」


ビク、ビクと愉悦の余韻に浸り、不規則に痙攣する女の肢体。

意識を朦朧とさせた彼女がただただ力も入らず、四肢を投げ出していると、ベッドから離れたリゾットが自身の服を脱ぎ捨てている。



「っ……」



三半規管を貫く金属が擦れ合う音。

蛍光灯に照らされ、露わになる肉体美。

凝視しようとしていた自分に叱咤しつつ、慌ててあらぬ方へ外した双眸。


すると、彼がそれを悟ったのかゆっくりとこちらに近付いてきた。



「……ぁっ、?」



いとも簡単に横向きに動かされた自分の身体。

ギシリ、とスプリングが鳴いたかと思えば、背後から右足の膝裏を抱えられてしまう。


扉の方へ潤った秘境を晒しているという恥ずかしさも忘れ、頭上に蔓延ったはてなマーク。



「ん、はぁ……りぞ、と……?」


「妊娠を促す体位の一つである側臥位というモノだ。まあ、この体位が子作りにどうという話は、都市伝説程度のモノだろうが……実際に行ってみる価値はある」



そのような知識、一体どこで覚えたのだろうか。


「ひゃん……っ」



疑問の解決を図ろうとした次の瞬間、双丘を掻き分けるように擦りつけられる、ひどく張り詰めた陰茎。

二人の間を縫うようにぴたりと背中に合わさった胸板。恋人の荒い吐息交じりの声が、狼狽える名前の耳たぶを掠めた。



「はっ、ぁ、や……ぁっ、あん」


「名前……いつもの≪お強請り≫はどうした?」


「!」



ぴしりと硬直するしなやかな裸体。


恋人は、普段からそういったことに自分が躊躇っているのを知っているはずだ。

やはり意地が悪い。心の中だけでつく悪態。


ところが、渋る心を急かすかのごとく、柔肌へ熱を持った男根をさらに押し付けられてしまう。



「ひ、ぁあっ!」


「……」



甘やかな悲鳴に似た嬌声が空気に滲んだ。


ひどく熱いそれにこれから起こりうることが頭を過ぎり、子宮が疼いて仕方がない。焦らされている――もどかしさで自然と揺蕩う腰。

気が付けば、彼女はリゾットを振り返りながらおずおずと口を開いていた。



「〜〜なかに……んっ、ぅ……りぞ、との……っぁ、あつく、て……ふと、いの……ちょうら……っ」


「く、ッ……上出来だ」


「んん……ぁっ、ぁああ……!」


「ッ……は」



刹那、いつの間にか膣口へ宛てがわれていた肉棒が、徐々に膣を犯していく。

独特の圧迫される感覚に囚われていると、おもむろに開始された律動。


さらに、膨張した亀頭で内壁を的確に掻き撫でながら、色めいた息をこぼした彼が眼前のきめ細やかな白い肌に咲かせる紅い華。


肉と肉が打ち付け合う淫らな経過音に交じったリップ音。首筋、肩、そして背中に帯びる小さな痛みの理由を察知した女は、何かを訴えるように婀娜やかな視線を背後へ向けた。



「っひぁ、っぁ、っあ……りぞ、と……ぁっぁっ、らめっ! そこ見えちゃ……っ」


「ああ。見せつければいい……いや、むしろ他の男にできる限り肌を見せるな」


「ふ、っぅ……はぁっ、はぁ……ン、っ……や、ぁっ、ぁあ!?」



狭道をミチミチと埋め尽くせば埋め尽くすほど、性感を覚える陰茎は質量と硬さを増す。

苦悶に眉をひそめた男は、もう一度弱点をこそぐように会陰の方から腹部へと、赤く腫れた根元まで捻じ込んだ。



「……やはりここがイイのか」


「きゃうっ……ぁっ、あっ……りぞ、っと、おねが……そこっ、はっ、ぁ……前、いやぁ」


「お前の≪いや≫は≪いい≫の間違いだと知っている。……ところで名前、部屋の鍵は閉めていないんだろう?」


「!」


問いにヒュッと嫌でも鳴る喉。

記憶として脳内に残る、≪用事はすぐ終わるだろう≫からと放置したドアノブ――失念していた。


その場を覆う溢れんばかりの動揺。性感で白く霞んだ視界も相まって、瞳を彷徨わせる名前の右耳にリゾットは低く囁きかける。



「やはりそうか。今ドアを開けられれば、あいつらに間違いなく名前がオレの陰茎を咥え込んでいる姿が目撃されてしまうぞ」


「ひ……! やら……んっ、ふぅ……そ、っなの……はぁっ、やら、ぁっ」



いやいやとすぐさま拒絶を示す首。

だが、≪もしも≫の状況を思い浮かべた途端、充血したナカがヒクリと蠢いた。



「ッ……どうした。興奮したのか?」


「ちが……っぁ、っぁ、っあ……ひぁ、んん!」


「仲間に見られる瞬間を想像して膣肉を収縮させるとは……ずいぶん淫乱だな」



≪違う≫――焦燥と共に紡ごうとした否定をさせないためだろう。

彼の恋人へ快感をもたらす動きに激しさを帯びる。


パンパン、と体液が絡み合う中、部屋に響き続ける肌の叩きつける音。


そして何より、最奥を貫かんとしている鈴口に彼女は驚きで眼を揺らした。



「あんっ! や……りぞっと、っん……はぁ、っぁ、らめ……しきゅ、こっ……ぐりぐりしな、っでぇ」


「? なぜだ。この子宮口に先を押し当てることが目的なんだが」


「へ? んっ、ぁ……っ、ぁあああ!?」


「く……ッ」



子宮への道を包む熟れた肉に男根が微かにめり込む。

その息が止まるほどの圧迫感に不安が走るが、徹底的に快楽を植え付けられた身体は悦びに震えるばかり。


だから、この人と交わるときはいつも戸惑うのだ。



意図せず乱されてしまうから。

リゾットのことを、ますます好きになってしまうから。



そのとき。相変わらず弱点を攻めていた欲の塊がドクリと脈打ち、絶頂をその感覚で察知すれば、彼が女の華奢な肩口に顔を埋めてきた。



「名前。中に、いいか?」


「っは、ぁ、はぁ……いつ、もっ……もんど、むようで……ぁっ、ん……だす、くせに、ぃ」



半ば睨めつけるように見つめ返す名前。

すると、なぜか男が嬉しそうに口元を緩めるのだ。



「ふ、確かにそうだな。名前の子宮にある限りの子種を注ぎたい」



夢の中でも、愛している――そんな一言が胸に届いた瞬間、中毒性の高い快楽が彼女のすべてを支配する。



「ぁっ……りぞっ、と……あん、っふ、ぅ……りぞ、と……イっちゃ……!」


「名前……名前……、ッぅ」


「んん、っぁ、っあ……はぁ、はっ……あつ、いのきて、っ……ぁっぁっ、ぁっ……ひゃっ、ぁっ、ぁあああん!」



張り詰め、弛緩する筋肉。

胎内に向けて注ぐ熱。注がれる熱。


重なる心臓の音。視線を交わらせる二人は、確かに今このとき、この瞬間を共有していた。










dream or Fact?
「これが夢でなければどんなにいいか」。彼が、少しだけ苦笑を漏らした。




〜おまけ〜




都市伝説(仮)に付き合わされ、約30分もの間その状態を維持していた二人。


そして快感からようやく解放された瞬間、赤らんだ顔で背後を振り返った名前は、弱々しくも鋭い拳を恋人の鳩尾へお見舞いしていた。

一方赤い瞳を見開いたリゾットは若干たじろぎながらその不意打ちを受け止める。


しかし、そこで彼の脳内に留まる違和感が一つ。



「ッ、……? おかしい。いつも通り微かな痛みが……夢では痛覚がないはずだが」


「〜〜だから最初から≪夢じゃない≫って言ってるじゃない!」



羞恥と怒りが入り交じった彼女の一声。

刹那、打ち明けられた真実が男の脳髄に時間差で到達し、



「!? ゆ、夢じゃあないのか……?」



さらにギョッと瞠目した。


まさか本当に≪夢≫だと信じきっていたとは。一体いつもどのような夢を見ているのだ。さまざまな感情が蔓延るのか、頬を引きつらせた女からもたらされる、じとりとした視線。

なんならビンタの一つや二つかましてあげるけど――おもむろに紡がれた、明らかに優しさだけではない声色に、リゾットは慌てて首を横へ振る。



「そうか……先程までのことも夢じゃないんだな。よかった」


「っもう! 何ヤりきった、みたいな顔してるの!? ……ほ、本当にできたら、どうするわけ……?」


「名前?」



後半になるにつれしぼんでいく言葉。

自然と下腹部へ向かう白く細い手のひら。不思議に思った彼がじっと見つめれば、名前はしばらく言い淀んでいたが、意を決したのかおずおずと口を開いた。



「私は嬉しいよ? なんだかんだ言って、リゾットは私にとって、さっ……ささ最愛の人の子だし。でも、リゾット……ううん、≪リーダー≫は何よりこのチームのリーダーで、これ以上――」


「ふ……バカだな、名前は」


「なっ! 失礼な! 私はただ、財政とか上からの圧力とかで今にも過労死しそうなリゾットを心配して……!」


「安心しろ、オレはそんな柔じゃあない。それに……愛しいお前との子どもだぞ? 嬉しいに決まっているだろう」



紡ぎ出したのは、かけがえのない本心。


すると、彼女の表情に滲んでいた不安がふっと掻き消える。

意外に心配性な恋人――眼前の滑らかな頬に手を添えつつ、男が眉尻を微かに下げた。



「確かに、名前が言うようにオレたちは暗殺者だ。嫌でも人の死が纏わりつく。世の中で言う一般的な夫婦の生活を送ることは、おそらくできない」



≪それでも≫、とリゾットは自分たちと共に闘う細身な身体を、お互い一糸纏わぬ姿であることも顧みずに強く抱き寄せる。



「お前が望むのなら、今すぐにとは行かないが指輪を一緒に選ぼう。あまり豪勢なモノは難しいが……式も、小さな教会で挙げよう」


「っ」



降り注ぐのは暗殺者とは一見思えない優しい眼差し。なんて思慮深い人だろう――喜びと照れ臭さに囚われた女は、紅潮する肌を隠すように屈強な首へそっと腕を回した。


そして、耳元で想いを呟く。



「ううん。結婚式も指輪も、何もいらないよ」


「? だが……いいのか? 以前、メローネとウェディングドレスの話で盛り上がっていただろう」


「……そりゃあ、10代の頃は憧れたりもしたけど、それはあくまで昔の話だし。……ただ」



かち合う男女の双眸。一番大切なのは≪誓い≫でも≪格式≫でもなく、愛する人と共にいられることだ。その≪証≫がほしいわけではない。だが――





「婚姻届ぐらい……ちゃんと出させて、よね」



彼と自分。二つの名前が紙面に並ぶ瞬間をできれば目にしたかった。


あとは、今までのように時折小っ恥ずかしくなってしまうほど、愛してくれれば十分なのだ。

当然、それ以上に自分がこの人を愛するつもりではあるのだが。


垣間見えた名前のはにかんだ微笑。男の表情筋が、少しばかり動く。



「ああ、もちろんそのつもりだ。どうせなら、今から役所へ出しに行くか?」


「! ……ほんと、気が早い旦那様なんだから」



≪善は急げ≫と言うだろう――抱き竦めたまま上体を起こすリゾット。

このことを伝えれば、チームメイトである彼らはきっと驚くに違いない。だが同時に、祝ってもくれるだろう。


次の瞬間。ぱちりと瞬きをした己の瞼へ柔らかな口付けをして、普段より手早く着替え始める猛々しい恋人の背中を視界に入れながら、彼女はただただ小さく顔を綻ばせていた。













大変長らくお待たせいたしました!
仕事で疲れ、眠ってしまったリーダーにヒロインがいたずらを仕掛けたところ、目覚めたリーダーが夢だと勘違いし、ヒロインといつも以上に激しい夜を試みるギャグ交じりの甘激裏でした。
リクエストありがとうございました!
相変わらずリーダーに暴走していただいましたが、いかがでしたでしょうか?


感想&手直しのご希望がございましたら、お願いいたします。
Grazie mille!!
polka



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