無窮の末に
※20000hit『永遠はオドル』の続編(直後のお話)
※無理矢理に近い裏
※リーダーが病んでいる上に倫理的に残酷です、注意!





彼に裏切られるのは、三度目だった。



「やだ……っ、ぁ……リゾットやめて……!」


「? どうしたんだ、名前。≪いつも≫シていることだろう」



広いベッドの上で、男の逞しい身体に覆い被さられた、怯えと絶望を入り交わらせた表情の名前。


先程放たれたばかりの無慈悲な言葉。その衝撃に促されいつも以上に抵抗を示しながら、彼女はふと≪何事もなかった≫昔のことを思い出す。

そう。一度目は、いい意味の裏切りと胸を張って言える――告白の返事。



「り、リーダー。あの……」


「ん? どうした、仕事の報告はもう済んでいるぞ」


「ちが……報告じゃないの! 報告じゃなくて、ね? 私……、私……っリーダーが好き!」


「え」



不意を突かれたらしい。気の抜けた声を口からこぼし、黒目がちの瞳を少しばかり見開くリゾット。

一方、見る見るうちに顔を紅潮させた少女は、胸に迫り来る羞恥を振り払うようにペラペラと口を動かし続けていた。


「あ……べ、別にね? 返事がほしいとかじゃなくて……その、ただどうしても伝えたかったというか。めっ、めめ迷惑なのはわかってたんだけど――」


「……自己完結しているところ悪いが、オレも同じ気持ちだ」


「へ!?」



≪諦め≫から始まった恋が成就する瞬間。仕事とは別に共有していく時間。「二人でいるときぐらい名前を呼べ」と呆れ気味に言われ、少しずつ慣れていった呼び捨て。


青春という青春を経験していなかったチームの紅一点。あの頃ほど名前が≪幸せ≫を感じたことはないのかもしれない。

だがそれは、ある出来事によって突然終わりを告げる。

普段と一切変わらない様子の彼に、これといった説明もなく家へ連れてこられたあの日。



「リゾット? ど、どうしたの?」


「……名前、今日からここがお前の家になる」


「え……? 家って……ふふ、冗談はダメだよ。私びっくりして……」








「冗談だと思うか?」



表情を凍り付かせ、身体を硬直させる彼女を部屋へ招き入れた刹那、響くのは施錠のために尋常とは言えない数の鍵がカチャリカチャリと立てられる音。

しばらくして、扉を閉め終わった男がこちらを振り返り――優しく、狂気的に微笑んだとき、少女はようやく悟ったのだ。

近しいと信じきっていた自分の想う≪愛≫と、リゾットの≪愛≫がどこまでも遠いことを。



「生活も仕事も何も心配するな。すべてオレがやる……名前はただ、この部屋でオレを迎えてくれ。それだけでいいんだ、それだけでオレは心が救われる。……ん? どうした、怯えた表情をして……≪怖い≫? ふ、安心しろ。これからは男の汚い視線を浴びる必要も、血に汚れる必要もないんだからな。怖がらなくていい。ずっと考えていたんだ、もう優しいお前には暗殺をさせたくないと……ようやくその方法を思い付いた。ああ……名前、≪愛している≫」


たった数分。仲間と言葉を交わすたびに、仕事でターゲットや周囲の男に近付くたびに、覚えていた彼に対する≪違和感≫の正体を。





そして三度目が――



「やっ、ぁあああ!」


今、この瞬間だ。

胸板を押し返そうとする左右の手首を奪われたかと思えば、まるで自分を押し付けるように首筋に男の顔が埋められた。


リゾットが普段からする――≪開始≫を知らせるその合図に、名前は恐怖にひどく揺れる双眸に涙を湛えたまま、ひたすら身を捩らせる。



「はぁっ、ぁ……りぞ、と……っん、だめ、っ……いや、ぁ!」


「逃げるな」


「! ひぁ、っぁ、あ……や、んんっ」



紅い痕をくっきりと残すために啄まれていく柔肌。

手首を頭上にあるベッドの柵に拘束する、上体から剥ぎ取られた衣服。

ぶるんと持ち上げられる下着より露わになった、白い膨らみに這わされる手のひら。


あらゆる甘い痺れに彼女の肩が大きく跳ねると同時に、クシャリと音を立てて二人を包み隠すシーツが波打った。



「はぁっ、はぁ、はぁっ……おねが、ぁ……やだ……ッ、おねがい……っやめて、ぇ!」


「名前、オレたちは愛し合っているんだ。行為を拒む必要がどこにある? …………そうか」



――今日はそういった立場で行う性交がイイんだな?


紡がれたのは、思い違いと喜心を潜めた一言。それが耳を直接掠めた次の瞬間、驚愕ゆえに瞠目し、ただただ首を横へ振る少女。


「ちがっ、違うの……ぁ、はぁ……っそ、いうつもりじゃ……やっ、ぁ、あん」


「ふ……可愛い子だ。いいぞ。お前が望むのなら、オレもそれに付き合おう」


「ひぅ、っん、ぁっ……や、っぁ……はぁっ、はぁ、ん……そっ、じゃな……ひゃ、っぁああ!」


「……」



荒々しく、無遠慮にやわやわと乳房を揉みしだかれる。


身じろぎすら許されず、神経を震わす鋭い刺激や彼の手で形を変える双丘という視覚的な攻めに、自然と乱れ始めた吐息。

一方、嫌がりつつも淫らに喘ぐ名前に、彼も興奮を隠しきれないのだろう。いつもならぬ速い呼吸を首筋で感じたのか、彼女の肩が過敏に揺れた。



「名前……」


「っぁ……はぁ、っ、あん……はぁ、はぁ……っだめなの、ぉ」



鎖骨と胸元を行き来するリップ音。

快楽に引き寄せられるがまま浮き上がる腰。

止まることを知らない責め苦に、朦朧とした意識のなか少女が肢体を痙攣させた、そのとき。


不意に脇腹から腰にかけて、滑らかな肌を無骨な手のひらでねっとりとまさぐられていく。



「ッ!」


そして、内腿に覆われた下着越しの秘部を指の腹が掠めた。

刹那、ある感触ににやりと歪む男の口元。



「胸に触れただけのはずだが……」


「ひぁ……っ」


「なぜココは、こんなにも濡れているんだ?」



三半規管を劈いたのは、すべてを把握した低く楽しげな声色。

じわり。その色っぽい雰囲気に全身を支配され、嫌でも蜜壷から愛液が溢れ出る。


とは言え、ますます息を荒げた名前は≪認めたくない≫と首を小さく左右に振るばかり。



「はぁっ、はぁ……ちが……、ぁっ……ぬ、れてな、んかっ……や、ぁあん!」


「名前、嘘を言っても無駄だぞ。オレはすべて知っている」



そう囁いた次の瞬間、胸元でチュッと大きな音を立ててから、開脚によって晒された秘境へ顔を近付けるリゾット。

最後の砦であったショーツは哀れにも投げ捨てられ、指先がヒクヒクと蠢く膣口に宛てがわれた。



「中指の第一関節を入れた瞬間、お前が膣を嬉しそうに収縮させることも」


「んん……っや、ぁ……っぁ、っぁ……りぞ、と……はぁ、はっ、そこ触っちゃ――」


「包皮を剥き、親指でこうして弄るたびに、クリトリスが敏感になっていることもな」


「ひゃ、っぁん!?」



小陰唇から顔を出した陰核。

薄い笑みを表情に滲ませた彼にそれを指先で弄られながら、チュプリとナカから届いた水音が聴覚を通して彼女を攻め立てる。


無音に近い世界で響く、二つの吐息と女の甘やかな嬌声。

不規則にもたらされていく快感。弓なりになるしなやかな背中。


「はぁ、っは……ぁ、ッ、んっ……やら、ぁ……!」



そのとき、恥骨側の弱点を指の腹が擦ったことによって強烈な痺れが全神経を突き抜け、知らず知らずのうちに≪限界≫を悟った。

すると、ほぼ監禁と言ってもいい状況下で快楽を教え込まれてきた少女は、自ずと乞うような視線を向けてしまっていたらしい。太腿にも唇を寄せ、痕を刻んでいた男が静かに笑う。



「ん……ああ、いいぞ。存分にイけ」


「ひぁあ! ぁっ……だめ、ぇ……ぁっ、あん……はぁっ、はっ、ぁ……っイ、ちゃ……ぁっ、ぁっ、ぁああ!」



背筋で言い知れぬ感覚が粟立つと同時に、性感の度合いを示すかのごとく尿道から半透明の体液が飛び散る。

全身を駆け巡った、どこまでも中毒性のある電流。

それに囚われ、小刻みに痙攣する下肢をベッドに投げ出していると、不意に拘束具となっていたシャツが手首から外された。



「はぁ、はぁっ、は……、?」


一瞬脳内を過る≪行為の終わり≫。希望、欲求、不安。そうした感情の狭間で首をかしげている、と。

ふと身体を抱え上げられ、四つん這いの格好にさせられてしまった名前。


不安定な予測から一つの確信へと変わる体位。


そして何より、恥ずかしげもなくリゾットに向かって曝け出しているであろう、薄紅色の花弁へ添えられた≪焦熱≫に瞳をひどく揺らす。



「! いやっ……りぞっと、っ、おねがい……だめなの、だめ……ッはげし、の、しちゃ……ん、ぁ、っぁあああっ!?」


「名前……ッ」


「や、っん……はぁ、っはぁ……ぁっ、あ、ひぁ……だめ、ぇ!」



背後から挿入される興奮に張り詰めた昂ぶり。何度も拒絶を示しつつ振り返ると、視界に映ったのは彼の傷ついた表情。


彼女はその面持ちにどこまでも弱い。男がそれをわかって自分に見せていると知っていても、心が自ら揺らいでしまうのだ。

そんな、優しさと微かに残る情愛でたじろぐ少女の子宮を、叩き起すように頭をもたげる陰茎が肉襞へ打ち付けられた。



「ひぁっ、ぁっぁっ、あっ……らめ、っん……おく、っ……たたかな、で……やっ、ぁ、ぁあ……!」


「ッ、は」


あまりにも強い快感に腕の力が抜け、恥丘を突き出す形で男根を受け入れる名前。

結合部で絡み合うさまざまな体液。

律動の激しさゆえに、出入りするたびそれらが泡立つ。


そして、背を反らす彼女に追い打ちをかけるかのごとく、肉棒が狭い最奥まで到達するよう腰をグリグリと密着させるリゾット。



「名前、ッ名前」


「ひぅ……ッ、やぁ……っぁっぁ、あん……はげし、っの……らめなのッ」


「ふ……何を言い出すかと思えば。名前はいつも激しいのが好きだろう。今も肉壁をビクビクと収縮させて」


「やっ、ぁあん! らめっ、らめ……りぞ、とっ……ひっ、ぁ、ん……赤ちゃ、ぁっ……あかちゃ、っ、しんじゃ……!」



胸中から飛び出た叫び。それが、今の少女にとってもっとも恐ろしいことだった。特に初期での激しい行為は危険だ。


ピタリ。不意に彼の動きが音もなく止まる。

もしかして――わかってくれたのだろうか、と少なからず心を占める期待。すると、耳たぶへ口付けるように唇を押し当てられ、劈いたのはひどく柔らかな声。



「なるほど。≪まだ≫子どものことを考えていたのか……優しいな、名前は」


「はぁ、はっ……んん、ふ、ぁっ……りぞ、っと……おねが……」


「……だが」












「言ったはずだ。お前を苦しめるモノは≪必要ない≫と」


突き落とされた先は、絶望。

自分を射抜く男の赤い目に孕むのはやはり≪妬心≫。

どうして――震えた唇が紡ごうとした問いなど、背後の人物には通用しない。


見開いた双眸から零れる自分の涙を名前が淡々と傍観していると、前触れもなく律動が再開された。



「ひ、っぁ……やらっ……やらぁッ、んっ、ふ……いや……りぞ、と……ぁっぁっ、ぁっ、ぁああ!」



動きに沿って揺蕩うシーツに、広がった水滴の跡。

息苦しさに呼吸がひどく乱れていく。唯一しか与えられない世界の中で、ようやく生まれたその≪小さな喜び≫も、自分を捕らえたリゾット本人の手によって今掻き消されようとしているのだ。


胸を追い詰める快楽とは違う≪限界≫。ついに開かれた口。



「っ…………こ、して」


「名前?」


「〜〜っ」



いくつもの雫を目尻に浮かべた彼女は、自覚せざるをえなかった。


もうここ以外では生きていくことができない、と。

自分は無意識のうちに、彼に依存していたのだ、と。

だが同時に、精神による≪自己防衛≫ではなく、自らの意志でこの人の元に堕ちていく自分が許せない。もはや、抜け道すら存在しないこの暗闇から解放されるには――



「も、っ……もう、……≪ころして≫……っ」



≪この道≫しかない。


それは、心の奥底から漏れた言葉だった。

恋い慕っていた相手だからこそ、確かに想いがあったからこそ――こぼすことができた≪悲鳴≫なのかもしれない。



「……」


「ぁ……」


その場を支配していた沈黙。しばらくして、少女の喉全体を包むように、首へそっと大きな手のひらが後ろから回される。

力を込められたが最後、細いその箇所は簡単に折れてしまいそうだ。



「っ、ぅ……ぁっ、はぁっ、はぁ……りぞ、と……」



このまま言葉もなく、静かに締め殺されるのだろうか。

それとも、メタリカでカミソリや釘を吐かされるのだろうか。


仕事において失敗は一度もない。男はチームの誰よりも殺しのプロだ。酸素を求め喘ぐ己を予知しながら、名前が覚悟ゆえに目を瞑った、その瞬間。









「ふざけるな」



怒気を含んだテノールが、室内に轟いた。

吐き出された単語の意味を理解した途端、彼女がこれでもかと言うほど目を見張る。


そして、前後左右へと揺れ始める腰。

より快感を引き出そうと肉襞を容赦なく穿つ男根。



「! ぁっ……ひぁああん!?」


「ようやく名前のすべてがオレのモノになったんだ……なぜそんなことを言う? 何かがお前を不安にさせたのか? なんだそれは、言ってみろ。名前にとって不安を煽るモノなど絶対に在ってはならないからな……それとも。名前、まさかオレのことをまた試しているのか? まったく……これでも気持ちをかなり伝えているつもりだったんだが、まだ足りていなかったらしい」


「やっ、ぁ……あんっ、ふ……らめっ、らめ、ぇ……はげし、っ……の、ッや、ぁああ!」


「お前は誰にも……何物にも、決して渡しはしない。それは≪死≫も同様だ」






「オレたちを邪魔するモノは消えてもらおう」



抑揚なく囁かれたそれは、ある意味本当の死より残酷な、死刑宣告なのかもしれない。

いつか、少女はこの生活が≪当たり前≫だと思う日が来てしまうのだろう。


名前にとって、自分の心から≪現状に対する違和感が消え失せること≫がひどく怖かったのに――



「ぁっぁっ、あ……りぞ、っと……あん、っふ、ぅ……」


「は、ッ」


「ひぁっ、ぁああん……!」



リゾットは、私に足掻くことすら許してはくれない。

熟れた子宮口を、ゴリゴリと容赦なく刺激する腫れ上がった亀頭。


「っん……やら、ッ……っぁ、っあ、らめ……しきゅ、っおさな、でぇ……ぁ、んっ」


「ふ、違うぞ名前。押されているのではなく、お前の子宮が下りてきているんだ。わかるか?」



グチュン、と一際突き上げられた裸体。

驚愕と快感。瞳を見開いた彼女が淫らに腰をくねらせつつ、甲高い喘ぎ声を上げた。


その淫靡な姿に助長され、鋭さと速さを増す生々しい音。



「名前、名前、名前、名前、名前……安心しろ、オレは何があってもお前を手離さないからな。愛し合っている二人が離れるなんて、おかしいだろう?」


「ん、ぁっ、ぁっ……りぞ、とっ……りぞ、と、ぉっ……はぁ、っはぁ、っぁあ!」


「ッ、そろそろ出すぞ。名前の胎内に……」


「! や……っんん、ぁ……はっ、はぁっ、ふ……おねが……っぁ、っぁ……なか、だしちゃ、っ」



唇の端から唾液が滴るのも厭わずに、少女が首をふるふると横へ振る。

しかし、彼が自身の意志を変えることはなく――


「く……ッ」


「やあ!? ぁっぁっ……あんっ、ふ、ぅ……やら、ぁ……らめ、っイきたくな……ぁっ、あっ……ん、っぁ……ひぁ、っぁあああん!」



子宮を満たしてしまうのではないかと危惧するほど、陰茎が脈打ったかと思えば膣内で爆ぜ、ドクリと注がれる白濁液。

その熱に促されるがまま、甘受した絶頂によって蠢く秘肉。

力の抜けた名前の躯体が仰向きに転がされると同時に、そっと頬へ添えられた手のひら。


いまだ空気に溶けることのない荒い吐息。視線が、否応でも重ね合わされた。



「はぁ……はっ、ぁ、はぁっ……、ん」


「名前、愛している」


「……っ」







「これからも一緒だ。……共に死ぬまで」



容量オーバーと告げるかのように、彼女の目尻から溢れた涙の一粒が男の親指で止まる。

今までも、そしてこれ以降も、リゾットは信じて疑うことはないのだ。少女に対するこれが、この想いこそが≪愛≫なのだと。


鳥の鳴き声すら届かない静かな空間。≪二人きり≫だと無垢な笑みを浮かべながら、身体を優しく包み込むその温もりに、少しでも安堵を見出してしまう自分を呪うことしか名前にはもうできなかった。












無窮の末に
望んでいたのは、曖昧な≪解放≫。それを阻むように男が彼女の手を掴んだ。












すみません、大変長らくお待たせいたしました!
リーダーで『永遠はオドル』の続編でした。
カリン様、リクエスト並びにお祝いのお言葉、ありがとうございました!
ついにリーダーにここまでさせてしまいましたが……いかがでしたでしょうか?


感想&手直しのご希望がございましたら、clapもしくは〒へお願いいたします!
Grazie mille!!
polka



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