GIVE US CHILDREN!!
※新妻ヒロイン
※裏
※子作り







街灯に明かりが灯り始めた夕暮れ時。視界に現れたのはアジトとは別の、≪我が家≫。

まだ真新しいドアノブをそっと回せば、足音が慌ただしくこちらに近付いてくる。

リゾットは、自然とニヤついてしまう口元を引き締めた。



「っおかえりなさい、貴方」


「あ、ああ。ただいま」


結婚して、半年。

ここへ帰宅するたびに、こうして出迎えてくれる妻――名前。

微笑を表情に滲ませた彼女が身に付けるのは、誕生日に贈ったエプロン。


≪幸せ≫だと、今確かに感じている。



「……」


「?」


「名前。あとで話があるんだが」



普段以上に真剣みを帯びた夫の声色に、奥さんの頭上へついと現れたクエスチョンマーク。

双眸を少なからず丸くした名前はこてんと首をかしげながら、小さく了承を示した。



「うん、わかった。でも……晩ご飯できてるから、先に食べてほしいな」


「ふ……もちろんだ」


その瞬間、顔をほころばせた彼と共にリビングへ歩き出す。

いつもらしからぬ様子の男女。二人は、それぞれ別の意味で≪緊張≫していた。









まず、妻の緊張。

それは今しがた作ったばかりの≪料理≫にある。


食欲をそそる香り。食卓にて、慣れた手つきでフォークを扱い、無に近い面持ちのまま静かに咀嚼する男。


「ふむ」


「えっと……」


「そう不安がるんじゃあない。いい味付け具合だ、美味いぞ……ずいぶん上達したな」


「! よかったあ」



式は挙げられなくとも、婚姻を結んだ当初、料理が≪りょ≫の字も知らなかった、というよりアジトでさせてもらっていなかった少女。

オレがやるぞ――たどたどしい手つきの自分に対して、やきもきと見つめるリゾットに彼女は何度首を横に振ったことか。


≪喜んでもらいたい≫。その気持ちがただただ心を駆り立てていた。


対して夫の緊張。彼は細く白い左手に居を構えた、キラキラと光る銀の指輪を一瞥して、安堵と喜びが入り交じった笑みを浮かべた名前へ視線を移す。



「名前」


「あ……ごめんね、ついはしゃいじゃった。お話ってなあに?」


給料の話だろうか。それとも別件だろうか。

嬉しいことだといいけど――どこまでもまっすぐな赤からおずおずと目をそらしつつ、手元にあった湯呑に口を付けた瞬間。












「子どもがほしい」


「んぐ……!?」



緑茶が器官にするりと侵入しかけたのか、彼女が勢いよく咽せた。

もちろん、目を見開いた男は焦燥と共に立ち上がり、妻の背中をさする大きな手のひら。


その顔には心配がありありと宿っている。



「だ……大丈夫か?」


「ごほっ、んん……なんとか」


「それならいいんだが。突然どうした」



どうやらわかっていないらしい。

名前はその反応に唖然としながら、涙目でじとりと夫を見据えた。



「なっ、リーダーが唐突すぎること言うから……!」


「……旦那に≪リーダー≫はないんじゃあないか? 以前、そう言ったはずだが」


「!」


「なかなか慣れないようだな」



滞りなく進む会話。彼女の様子に安心したのか、席へ戻っていくリゾット。

しかし、先程の発言が消えることはない。


むしろ撤回するつもりもないのだが。


一方、少々唇を尖らせた奥さんは、突飛な話に吹き出さないよう今度は恐る恐る液体を嚥下する。



「だって、私にとってリーダーはリーダーで……ってそうじゃなかった。リゾッ、トは……ほしい、の?」


「お前に結婚を申し込むときからずっと考えていた。逆に、名前はほしくないのか?」


回答に付属した質問。

すると、ギョッと瞠目した名前は首が取れてしまうのではないかというほど頭を振った。



「もちろんほしいよ! ただ、その……改めて言われると照れちゃうだけで……っ」


「ふっ、照れる必要はない。今日は幸運にも排卵日の前日だ。子作りのタイミングとしては適していると言えるだろう」


「……なんていうか、ちょっと詳しすぎない?」



無関心よりはありがたいが、何か違和感という名のしこりが胸に残って仕方がない。

怪訝そうな視線が旦那を突き刺す。


だが、発言者本人は不思議そうに首をかしげるばかり。



「? 自分も含めて、家族の体調を管理するのは当然だと思うが」


「そ、そうかもしれない……けど」


「とにかく、この≪排卵日検査薬≫を使ってみるといい。前日あたりから陽性が出るそうだ。メローネからもらってきた」


「!?」


≪メローネ≫。その単語にヒクリと引きつる彼女の頬。完全に怪しすぎるだろう。

寝室で待っている――そう呟きおもむろに立ち上がった彼は、食器をシンクに置いてから部屋を出て行ってしまった。


検査薬を手に一人残される名前。


とは言え、決して≪嫌≫なわけではない。照れ臭さとムズ痒さをまぜこぜにした表情で彼女がトイレへ向かうべく腰を上げると、入口から顔だけを覗かせる男が。



「名前? やはり戸惑っているのか? 何かオレに手伝えることがあれば――」


「結構ですっ!」











白に吸い込まれていく水。しばらくして、現れた結果は≪陽性≫。

夫の予測に改めて微かな恐怖を抱きつつ寝室へ足を踏み入れれば、なんとリゾットが布団を首元まで被り就寝の体勢に入っているではないか。



「や、やっぱり寝ることにしたの?」


「違う。ベッドが冷たかったので温めていたんだ」


「そう、なんだ。へえ……(これなんて≪ヒデヨシ≫……)」



次の瞬間、上司のために草履を温めたという日本の歴史人物に、≪絶対にボスのモノは温めたくない。むしろ冷えて腹でも壊せ≫とチーム内で盛り上がったのを思い出す。

同時に、当時からチームのリーダーに絶賛片思い中だった名前は、≪リーダーの靴下なら喜んで温めるのに。仕事のときは履いてないけど≫と恋心を燻らせていたものだ。


その体験をまさか、自分がしてもらう立場になるとは。



「あったかい」


「! そうだろう。冷えは厳禁らしいからな」


「……(そういえば、一緒に寝られるときはいつも先にリゾットがベッドに入ってたけど、ずっと気を遣ってくれてたのかな……?)」


「名前?」



ベッドの脇に腰を据え、ぽつりと音を紡いだ途端、少なからず嬉しそうに眉を上げる男。振り返ると、ここ数日性交のアプローチがなかったことも子作りに関係するのかもしれない。

お触り禁止令を施行しようかと悩むほど普段から彼に迫られる分、≪どうしたのだろう≫と不安も彼女の胸の奥を掠めたが、ようやく合点がいった。

命を奪う重さ、辛さ、苦しさ。それを知っているからこそ、リゾットが大切にしている命の尊さ。


――嬉しい。そう、素直に思う。



「(不器用だけど、温かい優しさがあって……ほんと、旦那様らしいよね)」


思わず破顔してしまう名前。

そして、気恥ずかしそうに眉尻を下げた彼女は、同じエンゲージリングが煌く彼の左手にそっと己のモノを添えた。


「ありがとう、リゾット。陽性……だったよ?」


「そう、か」








「名前。オレとの子を産んでほしい」


男の真摯な眼差しが、心を貫く。

トクトクと速いテンポを刻み始める鼓動。


涙として込み上げる感情を必死に抑え付けた名前は大きく頷いてから、両腕を広げるリゾットに勢いよく抱きついた。









「ぁっ……りぞ、と……あんっ」


「それにしても。チームに参入したときに比べると、胸もかなり成長したな」



床に散らばった彼女の衣服。

ベッドの上でそれらを剥ぎ取られてしまった名前は今、一糸まとわぬ姿。


彼の手のひらの中で、いとも簡単に形を変える柔らかな膨らみ。


筋骨隆々とした身体の下に閉じ込められ、ムニムニと堪能するように揉みしだかれながら、思わず恨みがましげな音を口にする。



「ん、っぁ……やだ……っ、ふ、ぅ……なんか、っ……ぁっ、はぁ、はぁっ……親父くさ……っきゃ!」


「まったく、失礼なことを言うんじゃあない。オレは一感想を述べただけだ。……しかし――」


「ひぁあっ!?」


赤く充血し始めた乳頭。

それを爪先によって弾かれた瞬間、ヒクリとしなやかな背中が反らされる。


いやいやと名前が懇願を交えた瞳で見下ろすが、硬くなった頂きを相も変わらず指の腹で押し潰す男。



「出産後は、名前のここから母乳が出るのか……」


「ぁ……っん、はぁ……やら……りぞ、っと……おねが、っ……はじいちゃ、っぁ、っぁ……や、ぁあん!」


「女体というのは不可思議なモノだ」


「ひぅっ、ふ……ぁ、あんっ……だめ……さき、ぽ……だめ、ぇっ」



寝室の空気に滲む、快楽に乱れた甘い吐息。

尖端から子宮にかけて走る電撃。

トロンと揺蕩う彼女の眼。


刹那、不意に乳首を濡れた粘膜に覆われ、ビクンと細い腰が大きく跳ねた。



「ひゃん……!? ぁっぁっ、ぁ……りぞ、とっ……そこ、っ、なめちゃ……やらっ、ぁああ!」


羞恥ゆえの拒絶を聞き流しつつ、荒い息をこぼすリゾットが恥肉を舌先で弄ぶ。

爪先からつむじまで。全身で泡立つ痺れ。甲高くも、気恥ずかしさが打ち勝ってしまう喘ぎ声。


しかし、躯体はさらなる強い快感を求めているのだろう。気が付けば、逞しい胸板に両手を添えた名前はもじもじと内腿を擦り合わせていた。



「はぁ、っは……あん、っ……ふっ、ぅ、んん……あの、りぞっと……」


「……ッ、どうした?」


陶器のように白い乳房へ所有印を付けていた彼が、その声にふっと顔を上げる。

すると劣情を帯びた瞳とかち合う、潤んだ双眸。


小刻みに震える薄紅色の唇。



「っ、ふ……ぁっ、ぁ……はぁっ、おねが、い……っ下も……さわ、てほしいな」


「! ……なるほど、お強請りか。教え込んだ覚えはないんだが」


「そ、そういうつもりじゃ……ぁっ」



次の瞬間、彼女の生足は秘境を晒すかのごとく、するりと膝裏を持ち上げられてしまった。

男の眼前に広がる、ヒクヒクと物欲しそうに蠢いた花弁。

それをしばらく凝視したリゾットは、躊躇うことなく外陰部へ口を寄せる。


ピチャリ。膣口からこぼれた愛液と絡まる舌。


「ん」


「やっ、ぁあん!? ぁっ、ぁっ……あん、っん、はぁッ……りぞ、と……おと、でちゃ、っぁあ……!」



二人だけの空間。そこに、男の興奮気味の吐息と女の甘やかな嬌声が響き渡った。

指先で包皮を剥かれ、擽るようにいじられる勃ち上がった肉芽。


「はぁ……はっ、はぁ……くりやら……っぁ、っぁ、ひぁっ……らめなの、ぉ!」


「ッ、ん……いやらしい香りが増してきたな」


「あん、っ……らめっ……ふ、んん、ぅ……しゃべらな、っでぇ」



耳を劈く淫らな水音。

舌が侵入したかと思えば、粘膜を舐られる蜜壷。


あられもない声。そして連続的な責め苦に彼女の白い喉が曝け出される。


「……名前」


「ぁ、やんっ、ぅ……ぁっ、あっ……わた、しっ……もう、っひゃ、ぁ……りぞ、とっ……りぞっと、ぉ」


「ふ……ああ、いいぞ」


「らめっ、ぇ……ひ、っぁっぁ、っあ……イっちゃ……あん、ッふ……や、っぁああん!?」


刹那、叫声に近い喘ぎ声が唇から溢れたと同時に、強烈な快感を全神経で享受する名前。


浸る絶頂の余韻。だがどうやら、疲労で満ちた女体に休む暇は与えられそうにない。


カチャリという金属が擦れ合う音。視界の隅で、シャツやズボンを無造作に捨て去るリゾット。

再び上がるスプリングの悲鳴。一度だけ、喉を上下させた彼女は自分に覆い被さる妖艶な彼を懸命に見上げた。


「はぁ、っ……はぁ……ん、ぁっ……き、て?」


「ッ名前。お前はそうやって、すぐ煽るんじゃあない」



苦笑と共に太腿が感じる焦熱。


こうして性交と向き合うたびに、妻の瞳に過る微かな不安。

夫はそれを掻き消すため、唾液で潤った赤い唇に己のそれを重ねる。


「ん……っ、ぁ……ふっ、ぅ……はぁっ、はっ、ぁ……りぞ、と」


「はッ……もっと舌を出せ」


「っう、ん……ン、ぁ……んっ、ゃ……んん……ッ」


甘く濃厚なキスを交わしながら、目を強く瞑った名前はぎゅうと縋り付くように男の大きな背中へ両腕を回した。

粘膜を犯され、ゾクゾクと押し寄せる官能的な服従感。

ただただ痙攣する肢体。


性に翻弄されていく意識。それが白み始め、脳内で火花が散った瞬間、靄を掻き消すかのごとくリゾットは一気に情欲を主張した男性器を膣内へ挿入する。


「や……ぁっ、ぁ、ぁあああ!?」



グッと押し進められることでうねる、熟した肉襞。

生々しい音が響く接合部。より密着しようとする性器に応える律動。互いの肌に激しさゆえの汗が伝った。


「くッ、は……名前、名前……ッ」


「ぁっぁっ、ぁっ……りぞ、と……っや、はげし、の……あんっ、ん……ひぁっ、ぁ……!」


パチュパチュと脈打った肉同士が淫らにぶつかり合う。

自然と己の弱点へ性感をもたらそうと、鋭く揺れる彼女の腰。

さらに、陰茎を肥大させた彼がヒップに指を食い込ませつつ悟った、ある≪感覚≫。


本来の目的。その達成の尾が見えた男は口元を歪めたまま、泣き喘ぐ名前の額へ口付ける。



「子宮が下りてきているな……準備万端ということか」


「ぇ、っ? やっ、ぁっ、あん……ひゃ、っぁあ!? らめっ……そこ、らめぇ!」


「お前もわかるだろう。子宮口が亀頭にこんなにも吸い付いて……」


「ひぅ、ッ……はぁ、っぁ……っぁっぁっあ、おねが……ふ、っん……ぐちゅぐちゅ……しちゃ、や、っぁ……!」



胎内の入口が歓迎するように、硬く張り詰めた亀頭の先を飲み込んだ。

ひどく掠れた意識の隅に、確かに佇む絶頂。


ふっと表情を柔らかくしたリゾットは、ゆっくりと紅潮した耳元に囁いた。


「……いいか?」



何を、だなんて聞かなくともわかってしまう。

子宮を改めてくねらせた彼女は顎先へ淫靡に流れる唾液も厭わず、何度も首を縦に振った。



「ん、はぁ、はっ……ぁっ、うん……りぞ、との……っちょうら、ぁっ、ぁあっ」


「名前、ッく……!」


「っやぁ、あん、っ……ぁっぁっ、ぁっ……あッ、ん……らめ……ひぁっ、ふ……あつ、いのきちゃ……ぁっ、ひゃ、っぁあああん!」


子宮にめがけて吐き出される彼の子種。

粘膜の壁に叩き付けられる熱、注ぎ込まれる感覚に酔いしれつつ、ひたすらそれらを受け入れる。

しばらく微動だにしなかったものの、ふと身体を離し隣へ寝そべった男。すると、肉棒が抜き取られた瞬間にすら反応する躯体。


それに小さな笑みをこぼしてから、リゾットは名前の上気する頬へ手を添えた。



「……名前」


「ぁっ……ん、はぁっ、はぁ……っ、なあに?」


「明日はアジトをあいつらに任せて……つまり休みを取ってあるんだ」


「?」


次の瞬間、下腹部へ優しく置かれたもう片方の手のひら。

肌が確かに感じる温もり、存在。


彼の言動に小首をかしげた彼女が不思議そうに見つめ返せば、不意に情愛を秘めた赤がすっと細められる。


「ゆっくり過ごしながら、今日のようにシよう」


「ぁ……う、ん///////」



なるほど、そういうことか。

明日も≪忙しない≫日になりそうだ。おもむろにはにかんだ名前は、しばらくはベッドから出られない未来を覚悟しつつ、すんなりと了承を示すのだった。











GIVE US CHILDREN!!
二人から三人。三人から――そうなることを願って。




〜おまけ〜



「ふふ」


「機嫌がいいな」


「そりゃあ……私だってすごく嬉しいんだよ? リゾットに言われたときは驚いちゃっただけで」



夜更け。一つの布団にくるまる新婚夫婦。

そっと下腹部に手を当て、静かに微笑む名前。

リゾットの胸板に頬を寄せた彼女は、自分たちの元で生まれてきてくれる子が≪幸せ≫だと感じてくれることを願っている。


ちなみに、イタリアにおける出生率は日本とほぼ並ぶらしい。一人っ子も多いのだと言う。



「案外、その子が≪弟か妹がほしい≫って言ってくれたりするのかも。(出産は鼻からスイカって聞くし……絶対痛いけど、この人との子どもだもんね)」


脳内に宿る家族団欒の図。

彼がいて、子どもたちがいて、自分がいて――形になる温かな未来にくすりと笑声をこぼせば、愛しの旦那様が不思議そうにこちらを覗き込んできた。


そして一言。



「? 名前、それは二人目の催促と捉えていいのか? ずいぶん気が早いようにも思えるが」


「へ? ち、違うったら! どうしてそういう発想に至っちゃうの!?」



天然なのか、変態なのか。

目を剥きながら名前が慌てて否定を紡ぐと、少々眉を八の字にしたままリゾットは口を開く。


「違うのか? ふむ……だが安心しろ」


「あの、安心するって何を?」


「男女混合バレーボールのチームを作ること――オレ≪たち≫があのとき決めた目標はしっかり覚えているからな」


「え……」



先程説明した通り、イタリアの出生率は日本とほぼ並ぶか、それ以上に低い。

バレーボールは六人制。

要するに彼が目指すのは、八人家族。それはなかなか見られない光景だろう。


鼓膜を震わせた宣言を頭の中で整理すると同時に、彼女はブンブンと首を横へ振り始めていた。



「ッムリムリムリムリ! 経済的にも考えてよ! それに≪オレたち≫って……どういうこと? 私、聞いてないんだけど」


「ん? 家族論としてオレがお前に語ったとき、お前は笑顔で同意してくれたぞ。(酒の場で告げたこともあるので、名前は酔って覚えていないかもしれないが……言わないでおこう)」


「そんな……(一体いつ? 全然覚えてない)」


神経を尖らせても、記憶は一切蘇ってこない。

いつ、どこで――なぜこのような大事なことを覚えていないのだ、と自分を叱咤する名前。


はてなマークがその場に蔓延する一方で、妻をさらに強く抱き寄せた男は、期待が胸を掻き立てるのか少しばかり口元を緩ませている。



「というわけで、オレも頑張らなければな」


「……」



――ああ、可愛い我が子へ。バレーボールをプレイする貴方たちを想像して、貴方のお父さんの目はこんなにも爛々と輝いているよ……あはは、は。

一種の現実逃避。髪、額、瞼、唇とあらゆる箇所に口付けをしてくるリゾットを「擽ったいよ」と言いたげに見上げつつ、彼女はまだ見ぬ己の子どもへなんとも言えない想いを馳せるのだった。












長らくお待たせいたしました!
新婚のリーダーと子作りに励むお話でした。
リクエストありがとうございました!
相変わらず性の化身と言いますか、変態気味なリーダーでしたが……いかがでしたでしょうか。


感想&手直しのご希望がございましたら、お願いいたします!
Grazie mille!!
polka



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