愛しのコニーリョ!
※幼馴染+同僚ヒロイン
※スタンド攻撃で、ヒロインがうさ耳を生やされたようです
※裏





――最悪だ。



コンクリートの夜道に轟く靴音。

名前はただひたすら足に≪走れ≫と命令しながら、心の中で舌打ちをしていた。


「はっ、はぁ……はぁっ、は……」



息が、乱れる。彼女は別に恋人と喧嘩したから家を飛び出したわけではない。そもそも彼氏たる者がいない。

かと言って、今しがた実行してきた任務に失敗したわけでもない。


そう。任務は成功した。任務≪は≫。


問題はその後。



「んっ……、ッは……はぁ……!(もう、どうしてこんなことに!)」


街頭に時折照らされる、歪な形に変形したニット帽。

情婦のクローゼットから拝借した、履き慣れない膝上15センチのスカート。さらにタイトなモノであることから、ますます扱いづらい。


だが、困難は依然として続く。



「(っいつもなら、こんな距離……平気で走れるのに……っ)」



肺活量。それが≪正常≫ではない。

正直、≪特異すぎる攻撃≫だと思う。

なぜなら、相手の命を奪った後でも、スタンドの影響は消えることがないのだから。


頭上。臀部。身体にひしひしと覚える違和感。


「(アジトまで、持つかな)」



厳しく言ってしまえば、これは最後の最後で油断したゆえに生まれた≪後遺症≫。自身の失態を理解しているからこそ、助けは呼びたくない――紅一点としてひたすら体力や精神力を蓄えてきた名前の意地だ。


しかしそれが、羞恥を伴って牙を剥くこともある。まさに今だ。



「……、あ」


覚束なくなり始めた足。

顔を歪めつつもう一度舌打ちした刹那、彼女はハッとあることに気が付いた。



そうだ、アジトより近くにあるではないか。

なんだかんだ言って腐れ縁で、現在も同じチームの暗殺者として働いている、幼馴染の隠れ家が。



「(いてくれたらいいんだけど……あ、でも)」


プロシュートと並ぶぐらい、女性関係が特に爛れているあの男のことだ。今日も≪お相手≫を連れ込んでいる可能性が高い。

ちくりと胸の柔らかい部分を突き刺す小さな針。とは言え、そろそろ転がる死体が発見される頃だと思われるので、道端や得体の知れぬ店で休憩するわけにもいかず。


行こう――微かに頷いた名前は、最後の力を振り絞って再び走り出した。








「ふ、っん……はぁ、っはぁ、はぁ……」


数分後、辿り着いたのは少々廃れたアパート。二階に登った彼女は、なんの迷いもなく名札のない部屋のインターホンを押す。

すると思ったより早く、扉越しから足音が鼓膜を劈いた、が。



「あっれー? おかしいな……今日はデリヘル頼んだ覚え、ないんだけど…………って、名前?」


「……サイッテー」


≪なんで頼っちゃったんだろ、よりにもよってこいつを≫。ドアが開かれると同時に、彼の発言が名前の心にさまざまな意味で後悔をもたらしたのは言うまでもない。

一方、仕事時の服ではなくラフな格好をしたメローネは、真夜中にも関わらず帽子を被っている幼馴染をじっと見つめた。

さらにそこはなぜか盛り上がっており、明らかに≪仕事で何かあったこと≫が予測できる。


しばらくして、翡翠をおもむろに細めた男は俯きがちの彼女に一言。



「ねえ名前。頭に何か、飼ってるのかい?」


「そ、そうじゃなくて……その、私今まで任務で……えーっと……あーっ! お願いだから、返しにくい質問しないで……!」


「あはは、そう怒らないでよ。お肌にディ・モールト悪いしさ」



言わずもがなこちらを射抜くひどく冷めた双眸。


だが、相手はあのメローネ。

彼は名前のその反応に内心悦びながら、中へ誘導するように扉に背を寄せた。



「さ、入って入って」


「えっ……いいの? なんていうか……お取り込み中、だったんじゃ」


「んんー? もしかして≪迷惑だったかな≫とか思ってんの? まだよくわかってないけど、名前は事情があるからオレん家に来たんだろ? つまり頼って来てくれたわけだ……オレ、ベリッシモ嬉しい」


「! ……ありが、と」



なんだかんだ言って、やはり持つべきものは幼馴染なのかもしれない。

後々、詳細を尋ねられることになるだろうが――今は聞かない男の優しさに頬が緩む。


必死に息を整えつつも、心を支配したのは安堵。

そして、気恥ずかしさが入り交じったのか、小声で感謝の気持ちを紡いでから彼女が一歩、玄関に足を踏み入れる、と。



「でも、こーんな夜中に来てくれたってことはイイんだよね!? しかも滅多に履かないスカートだし……! てかオレもう、ビンビンに期待しちゃってるよ!? 名前の生足ペロペロしてから、襲っちゃ――」


「前言撤回。やっぱくたばって」










簡素だが清潔感もあり、何より≪生活感≫がないリビング。

静寂の広がるその場に佇んだソファへ二人揃って腰を下ろした瞬間、メローネの行動は驚くほど早かった。


「さて、と。早速だけどその帽子、取ってもらうぜ」


「は!? それは……あ、後でもいいでしょ? 私、先にアジトに報告したいんだけど……。もう一人のスタンドのおかげでバッテリー切れちゃったからっ」


「……なーんか怪しいなあ」



ここまで頑なに拒まれると、逆に知りたくなるのが人間の性というモノで。


少しの間逡巡していた彼は、ソファの背と自分で幼馴染を挟み込むように細い両手首を唐突に掴む。

当然ながら、驚愕にギョッと目を見張る名前。



「ほらほら〜! 恥ずかしがることないじゃん。どうせアジトに帰っても、誰かに剥ぎ取られるんだし。取っちゃいなよ!」


「ちょっ、だから≪待って≫ってば……メローネ! いい加減に……っや――」



ピコン

次の瞬間、床に落ちたニット帽。そして眼前に現れたのは――彼女の黒い髪に合わせた色を帯びた、二つの長い≪耳≫。

天井を向くそれは持ち主の表情と同様に、ひどく恥ずかしそうに揺蕩っていた。


まず心中を埋め尽くしたのは物珍しさ。人間のモノではない耳をまじまじと見つめる男。



「……」


「スタンド攻撃のせいで……≪うさ耳≫が付いちゃったの……っ」


「…………」


「〜〜な、何か言ってよ!」



それか、どうせなら腹筋の筋肉痛が起きてしまうまで、盛大に笑い転げてほしい。


実は、今日に限って名前の息がすぐ上がることにも、こういった理由が関連していたのだ。

相変わらず捕らえられたままの手首。押し寄せるいたたまれなさで窒息してしまいそうになりつつ、メローネの反応をひたすら待つ。すると――









「勃った」


「……、何かの聞き間違いよね? ね……?(というか、お願いだからSiと言って!)」


「だーかーらー! あんたが可愛すぎてオレの息子が≪勃った≫んだよ……! うさ耳の名前だって!? 〜〜ッディ・モールト、ベネ! ナニこの美味しい展開ッ!」


忘れていた。相手が≪異変≫を好む変態であることを。

呆れ半分、安堵半分。眉根を寄せた彼女が呆気に取られていると、なぜか彼が距離を縮めてくるではないか。



「ハア、ッハア……というかさあ、しっぽもあるんだよな? もしかして、それが理由でスカート履いてるワケ?」


「っど、どうして迫ってくるのよ! スカートは確かにそう、だけど…………とにかく報告! アジトに報告させて? リーダーに一言でも連絡しとかないと……っメタリカは嫌なの!」


「……もー、ホントあんたってば真面目だなあ。横暴なところも含めて、昔から全然変わらないよね。……わかった、後でちゃーんと電話貸してあげる」


「本当……?(聞き捨てならない単語があったのはあえて無視だ、無視)」



男の物言いにもちろん頬は勝手にヒクついてしまう。

しかし現在、優先順位の第一位に君臨するのは任務完了の報告である。


ただ彼女は確認を取る前に、その胸中を悟るべきだった。


なぜなら――メローネはその瞬間、にやりと薄笑いを浮かべたのだから。



「ホントホント。オレが名前との約束を破ったことなんて、今までないだろ? オレって結構、あんたを優先して――隙アリ!」


「きゃあ!?」



ドサリ

刹那、背中一面に感じた衝撃。


まるで騙されたかのような不愉快さ。それにも相まって、名前は天井をバックに笑う幼馴染をキッと睨めつける。



「メローネ! あ、あんた……冗談はほどほどにして!」


「んふふ……まだ冗談だと思ってるの? でもすごく動揺してるってことは、≪これからオレがシたいこと≫をよーくわかってるってことか」


「なっ……だからそれを冗談だって言って……やんっ!?」



危機感で慌てて身を捩ろうとした途端、うさ耳が鮮明に捉える指の感触。

まるで電流のようなモノが背筋を駆け巡り、ビクリと腰が震える。


おかしい、身体に力が入らない――乱れる呼吸。火照り始めた白い肌。

一方、あっという間にとろんとなった彼女の瞳に、彼はねっとりと舌なめずりをしてみせた。


「へええ、想像してた通りうさ耳も性感帯なんだ? ッハア、ふさふさしててベネ……!」


「や、っぁ……だめ……んっ、ふ……くすぐっちゃ、ぁっ、ぁああ!」


見る見るうちに快感に翻弄されていく名前。ピコピコと揺れる可愛らしい耳。

すると、柔らかなそれをふにふにと指で擽りながら、男が覆い被さるかの如く彼女の上へ倒れ込み、薄らと脈の通う頸部へ舌先を這わせる。



「あと昔っから首筋をこうやって擽られるの、好きだよねえ。まあ今はじっくり舌で堪能してるんだけど」


「っはぁ、っは……すきじゃな……っめろ、ね……ぁっ……も、やめて、ってば……!」


「やめて? あはは、逆のこと言っても無駄だって……名前の胸、ドキドキしてるぜ?」


「ひゃんっ!? ちょ……やら、っぁ……あん、ッ、ふ……手、入れな、でよ……っんん!」



ピチャリ。三半規管を支配する、淫靡な水音。

さらに服の襟から手を差し込んだかと思えば、「んー、首筋のこの甘さ……あんたの健康状態は良好だッ!」とメローネは臆することなく言い放つではないか。


その瞬間、伸し掛られているにも関わらず、彼女は右足を闇雲に振り上げようとした。



「(っこの……!)」


「おっと。ハアハア……振動が、股間に当たって……すごく……ベリッシモ……ッイイ! ……まあオレは、そのスカートで足をジタバタさせない方がいいと思うけどなあ。あんまり暴れる意味もないし」


「!」



残念。ターゲットなどには可能な攻撃が同じく暗殺者の彼には通用せず。


むしろプチ、プチと服のボタンを一つずつ外され、ついに肌蹴てしまった胸元。

ぶるん、とブラジャーの奥から顔を出した、ずいぶん誰にも触れさせていない乳房。

とは言え、これ以上快楽に囚われたくないと名前は首を横に振るばかり。


「やっ、ぁっ……おねがっ……めろ、ね……あんっ、はぁ、ひぁっ……やら、ぁ」


「なんでそんなに拒むかなあ。いいだろ? 名前も初めてじゃあないんだしさ」


「ん、っふ……そ、いう問題じゃ……ひゃ、っあん!」


「じゃあどういう問題なんだよ。うさ耳はディ・モールトピクピクしてるし、乳首だってこんなにぷっくりさせてるのに」



刹那、すでに腫れ上がっていた乳頭を指先で強く押し潰された。



「やっ、ぁああ!?」



すると、一際高く甘いモノに変貌した彼女の嬌声。

その乱れっぷりに自然と男の口端が歪む。


「だめ、っ……ひゃん……さきっぽ、ぁっ、ぁっ……はぁ、っはぁ……だめなの……っ」


「ホント名前って天邪鬼だなあ……にしてもこんなにあんたが淫乱だったなんて。ん? ≪先っぽ≫と言えば……こっちもあるよね」


「!? ちが……っえ? ……ひぁあッ!?」



生理的な涙を目尻に溜めた名前が小さく首をかしげると、捲し上げられてしまったスカート。

それに加えて、声を上げる間もなくショーツを奪われ、瞬時に顔が青ざめた。


恥ずかしくて彼女が見られたくなかったモノ。それは耳以外にもあるのだ。



「ぁっ、あっ……やら……ひぁ、めろーねっ、らめ……見ちゃ――」


「ベネ!」









「やっぱり、しっぽあるんだ」



――そう。尾骨の先端に沿って生えるのは、ふかふかとした小さなしっぽ。

ますます笑みを深めたメローネは、触れてほしそうに硬くしている陰核を視界に収めつつも、無言でその尾をクリクリと弄り始める。


「……」


「やぁあっ!? らめっ……ぁっ、ぁっ……しっぽ、っん、ふ……ひぁ、ん……触らな、でぇ!」


「へえ……こっちも性感帯なら大変だね。愛液、膣からかなり溢れ出てるよ」


「ひぅっ! やっ……うそ、っん、ぁ……あんっ……はぁっ、はぁ……っやらぁ」


ソファの色を変えていく蜜。

その事実は、今や二人にとって羞恥を高める材料でしかない。


絶え間なく名前を攻め立てる性感。

そうした中、相変わらず楽しそうな彼は小さく首をかしげた。


「ンん? 別に嘘じゃないんだけどなあ。オレってそんなに信用ないワケ?」


「はぁ、はっ……んっ、ふ、当たり前でしょ……!? あと、でっ……ぜ、たい、っなぐる……やっ、ぁああん!?」


「あー……エロい。名前はオレの前で絶対に乱れたくないからツンケンしてるけど、本当はもっと強い快楽に身を委ねたくて……葛藤してるその表情、ベリッシモイイよ」



別にそんなつもりは――≪ない≫と言えば嘘になるのだろうか。


当然、一度も身体を重ねたことはないのに、性感帯を掌握している男が彼女の動揺を見逃すはずもなく。赤くなった元の耳に寄せられた唇。



「だから……早く名前も曝け出して、淫乱ウサギちゃんになっちゃおうぜ」


「やんっ、ぁっ……ひぁ、っクリ、いじっちゃ……っぁっあ、らめ、ぇ!」


「あはっ、満更でもないクセに」


「ちがっ、あん、っふ……はっ、はぁっ……やら……ぁっ、おねが……やらなの、ぉっ」


しっぽから手が移動し、優しく剥かれた陰核を覆う包皮。

そして、ジュプジュプと淫らな音と共に、激しく掻き混ぜられる濡れそぼった膣内。

脳内で火花が散っては、消えていく。


「めろ、っね……ぁ、っらめ……わたし……わたひ、イ、っちゃ……!」



小刻みに痙攣を始める名前の身体。

おそらく本人は無意識なのだろうが、自ずと擦り合わせている内腿。


一方でメローネはますます息を荒げながら、収縮する肉襞へ快感を与え続けた。

うさ耳を左手で弄ったまま、指の腹が捉えたのはGスポットと呼ばれる恥骨側の弱点と尿道のすぐ上にある小さな突起。



「いいよ、イって」


「ぁっ……あんっ、ふ、ぅ……そこばっかり、や、っぁ……あっ、ぁっ……らめ……ひぅ、っん、ぁ……ひゃ、っぁああ!」



しなやかに跳ねる肢体。


背筋を反らせつつ、白い喉を晒した彼女はビクリビクリと快感を胎内で享受している。



「ん……はぁ、っはぁ…………あ、っ!?」


刹那、なんの前触れもなく抱え上げられ、四つん這いにさせられた名前。


彼が離れていく気配。そして、鼓膜を震わせた金属音に彼女は不安を覚えてしまう。

すると、愛液で潤った蜜壷に突然焦熱が押し付けられた。



「ぁんっ! はぁっ、はぁ……めろ、ね……?」


「オレさ、憧れてたんだよ。名前に≪オネダリ≫されるの」


「!」



この姿でさえひどく恥ずかしいと言うのに――この男はこれ以上何を望むのだ。



「ば、ばか! そん、なのっ……できるわけ……!」


「……ねえ名前。できる、できないじゃなくてさ……≪やってくれる≫よね?」


「っひぅ……や、っぁ……さき……擦っちゃ、やら、ぁっ」


「んふふ。(俯いちゃって……ホント可愛いんだから!)」


どうやら元より自分に≪選択肢≫はなかったらしい。

だが、強請り方がわからない。


とりあえず悩みあぐねた名前は、羞恥が胸に蔓延るのも承知で、メローネを誘うように振り返ったままその小さな尻尾を自在にふりふりと動かしてみる。

そして――


「めろーね、の……、…………っちょう、だい?」


「ディ・モールト良しッ! でもさ、名前のどこにオレのナニが欲しいんだい?」


「〜〜っばか! そんなこと……いわせな、っで――や、っぁああ!?」



次の瞬間、グチュリと一層大きな音を立てて、熟れた膣内に捩じ込まれた陰茎。

侵食される感覚。今にもはち切れんばかりのそれに目を白黒させていると、彼が腰をゆるゆると動かしながら囁き声で話しかけてくる。


「はッ、ベネ……ところで、ウサギの交尾ってすぐ終わっちゃうって知ってた? けどせっかく可愛い名前ウサギとのセックスだし……≪激しく長ーく≫シたいよね」


「ひぁんっ、んっ……やら……はぁっ、ぁっ、めろーね……はげし、くしちゃっ……ぁっぁっ、あっ……あん!」



パンパン、と肉がぶつかり合う音。

さらに、まるで交尾のような体位が羞恥心を刺激して仕方がない。


しかし自然と応えてしまう彼女の躯体。自分自身に狼狽していると、男がおもむろにうさ耳をもう一度擽り始めた。



「や、っぁあ! だめっ……おねが、っぁっあ……あん、っふ、ぅ……みみ、らめぇ!」


「ふーん」


「ぇ……ひゃああっ!?」


「そんなに嫌なら、しっぽを弄ろうかな」



開こうとする子宮口を犯し続ける亀頭。メローネは細い腰に指を食い込ませたまま、蠢く肉襞に苦悶の表情を浮かべる。



「ッ、は……ベネ。膣肉、きゅうきゅうとこんなに締め付けて、つまり淫乱名前ウサギはオレのペニスを気に入ってくれたってことかな?」


「! ちがっ……ぁっ、あん……はぁっ、はっ、ぁ……ちが、のぉ」


「んふふ、違わないクセに」



快感に囚われた名前。形振り構わずリビングに響き渡る喘ぎ声。

ふと、何を思ったのか彼が声を上げた。


「あ、そうだ。忘れるところだったよ、≪約束≫」



――約束……?

覚えがあるようなないような。

言わずもがな彼女は耳の生えた頭上に、はてなマークを宿す。


すると――






「――もしもし、リーダー?」


「!?」



その瞬間、全身から血の気が引くのを感じた。

つまり男は今、自分の背後で電話をかけているのだ。だが相変わらず腰は激しく打ち付けられ、強い快楽に喘いでいた名前は慌てて口を噤む。


とは言えそれを目敏く見つけてしまったメローネ。大体の説明はしてくれたのか、しばらくして携帯電話を握らされてしまった彼女は残された片腕に力を込めつつ、恐る恐る受話器に耳を添えた。



「……り、だー? あの……っん、ごめん……めろ、ねから……聞い、たとおもう、っん……けど」


『いや、完遂しただけで十分だ。ご苦労だったな。耳や尾がどうこうと聞いたが……ウサギ化とやらは直に終わるだろう』


「うんっ……ぁ、ありがと……ひ、っ!」


『? 声が掠れているようだが、大丈夫か?』



突如、指先で翻弄されたクリトリス。性感を焚き付けられた骨盤が震える。


「〜〜っだいじょ、ぶだか、ら……っぁ、んん!」


『名前? 本当にどうしたんだ、まさかその攻撃は体調にも異常を――』


「だいじょーぶ! ベリッシモ健全だぜ! じゃ、オレたち≪お取り込み中≫だからもう切るよ」



するり、と取り上げられた電話。


これで満足だろうか。

≪なぜか≫はわからない。

もう声を抑える必要がないと安堵した瞬間、名前の心には甘い痺れと共に悔しさが湧き上がっていた。



「ハアハア……堪えてる名前もベリッシモ可愛かったよ。多分、相手はリーダーだし気付いてないだろうなあ」


「っ……はぁ、はっ……ぁ、どっ、して……」


「ん?」


「あんっ、ふ……どうし、て……こ、なことする、のっ……?」



どうせロクでもない理由だろう、と恨みも込めて紡いだ疑問。しかし、おずおずと振り返った彼女はすぐさま後悔する。

いつもヘラヘラと表情を綻ばせている彼が、笑みを消していたのだ。



「はぁっ、はぁ……あ、あの……っ、めろ、ね? わからな……やっ、ぁああ!?」


「あーもう。名前ってホント鈍すぎでしょ……ッ」


「ひゃ、っぁっぁ……らめ……ん、ふっ、ぅ……や、ぁん……っは、やら……イっちゃ、ぁ、っああん!」



強制的に迎えさせられた絶頂。

しかし、休みは与えないと言いたげに男は苛烈な律動を続けるばかり。



「ぁ……っ、おねが……めろ、ねっ、ぇ……ん……ぁっぁっ、あっ……またイ、っちゃ……!」


「んふふ……いいじゃん、イき続けなよ。……≪どうしてこんなことするの≫だって?」


「あんっ、ふ……やっ、ぁ……はぁっ、はっ、はぁ……らめっ、らめぇ!」


「そんなのさ――」











「≪あんたが特別だから≫に決まってるだろ?」


「ぇ、……?」


漂う無言の空気。先程とは一変して笑みを滲ませた顔を寄せながら、首をかしげるメローネ。



「んー? なんでそんなに意外そうなの?」


「え、あっ、う……だ、って……」


「それとも……特別の意味、ちゃーんと言った方がいい?」


「〜〜っ」



そそくさと拒否を示す首。憎まれ口を叩きつつも名前が昔から好意的なのは、頭と言うよりは心で理解していた。

だからこそ、自分が隣にいることを≪当たり前≫にして、想いを打ち明けさせたかったのだ。


ところが今日、扉を開けてみれば彼女が、助けを乞う眼差しで立っている。

さらに、現れたうさ耳という非常事態に――数年以上、珍しく彼の中で育まれていた≪我慢の牢≫は崩れてしまった。



「あはっ、やっとわかってくれた? じゃあさすがにこのままは……いや、ある意味焦らしプレイでベネなんだけどさ、やっぱりキツいからまた動く――」


「ま、待って……!」



刹那、男の耳を貫いた鈴を転がしたかのような声。



「?」


「……あの、なんていうか……うう」


「ディ・モールト珍しいな……あんたがそこまで≪しどろもどろ≫なのは。ナニナニ? もしかして後ろの孔にもナニか刺激が欲しい? んもー、名前ったら、へ・ん・た・い!」


「ひ……っそ、そんなんじゃない! ただ……その、えっと」









「できれば……はぁっ、ぁ……キス、したい、な……って思ったって言うか」


「え……」


「むっ! むむ無理ならいい……けど」



心が揺らぐ。相手はあのメローネ。自分をまたからかっているに決まっている、と信じたかった。

それでも、冗談だと信じ切ることができない。真剣な眼差しに、どうしても胸の奥底が燻ってしまうのは――





名前も彼を、幼馴染以上に想っているからなのだろう。



「(何言ってるんだろ、私。なんか乙女チックだし……! 恥ずかしくなってきた!)ご、ごめん、やっぱり前言てっか――」





チュッ

至近距離で響いた軽やかなリップ音。柔らかな感触を唇で捉えた彼女は、驚きゆえに何度も目をぱちくりさせる。


「! っめろ、ね……?」


「≪Va bene(もちろん)≫。名前が望むなら、何度でもするよ。というわけで残念だけどさ、あんたのその前言撤回はなかったことになっちゃったね」



その瞬間、名前は本当に悔しくて仕方がなかった。――よりによってこの変態を、一瞬でもかっこいいと思ってしまったのだから。



「//////」


「あれ? あれあれー? もしかして名前ちゃん、照れてる?」


「っうるさい! 大体、あんたはいちいち不意打ちが――ひゃ、っぁあ!」


「くッ……あんたのそういう、強情なところもベネ!」



腹部を抱えられたまま、肉棒の根元から先端を奥までギチギチと埋め込まれる。


激しいグラインドに飛び散る愛液。

「や、っぁ……はっ、ぁっ、あん……いきな、りしちゃ……っぁ、あんッ」


あまりにも鋭い痺れに、カクンと彼女の腕の力が抜けてしまい、さらに挿入が深くなった。


「名前のナカ……話してる最中も、ずっと絡み付いてくるし……もう我慢の限界ッ!」


「っひぁ、あん……っぁ、はげし、のらめ……んっ、ぁ……めろ、ね……めろーね、ぇっ!」



野獣のように貪り合う行為。

息を荒げながら、うなじに唇を押し当てた男はにやりと口元の形を歪に変える。


「ふー。あ、このうさ耳、息もダメなんだ」


「ひゃうっ、ん……やらっ……ぁっあっ、ぁ……息、吹きかけちゃ……はっ、ぁっ、ん……っやぁあ!」


「わかった……とはさすがになってあげないぜ? もっとヨガっちゃっていいんだからさ」



押し広げるように膨張を続ける男根。

それに応えてうねる、熟した粘膜。


背中を弓なりにし、ビクビクと腰を揺らす名前の後ろ姿をしっかり双眸に焼き付けたまま、メローネは改めて口を開いた。



「そう言えば、知ってた? ウサギのメスってさ……交尾が刺激になって排卵するんだぜ。繁殖を確実にしてるんだって」


「ん、っ……今、っぁっぁ……はな、さなくて……あんっ! い、でしょ……!?」


ただただ快感を全身に受け入れつつ、叱咤の言葉が飛ぶ。

ところが、彼は≪今≫だからこそ話したのだ。


半開きの唇から顎にかけて淫らに伝う唾液。

脈打つ焦熱の、その膨大すぎる感覚に、彼女の嬌声がより甘やかに変わる。


「やっ、ぁっ……はぁっ、ん……めろ、ね、っ……ぁっあっ……わたし……んんッ、もう……っ」


「うん。オレもそろそろ……は、ッ……名前。可愛い子ウサギ、産もうね」


「ぇ、っ……? っぁっぁ、っぁ……そ、っな……あんっ……ふ、ぅ……らめ、っ奥ついちゃ……ぁっあっ……ひっ、ぁっ、ぁああん!」


「ッく……」



刹那、胎内に向けて放たれる白濁液。

注ぎ込まれていく熱にただただ肢体を痙攣させていると、再びうさ耳に触れ始める男。


ビクン。今しがた得た官能的な恍惚に重なって、その刺激に過敏な反応を示さざるをえない躯体。もう一度膣肉を収縮させた名前は、背後でにやにやと笑っているであろうメローネに、本日何度目かの冷ややかな視線を送るのだった。










愛しのコニーリョ!
≪想定外の出来事≫が、二つの想いを結びつける。




〜おまけ〜



夜明け前のリビング。

どうやら二人とも、ソファの上で微睡んでいたらしい。

おもむろに瞼を上げた名前はふと右手を頭に寄せて、ホッと胸を撫で下ろす。


「消えてる……」



そう。頭上と臀部から≪違和感≫が消失しているのだ。


一体なんだったんだろ――これでもかと言うほど深いため息を吐き出しながら、彼女は狭い空間にも関わらず身体ごと振り返り、幼馴染に声をかけた。



「メローネ?」


「……」


「(ほんと、寝るか黙ってるかしてたら文句なしなのに)」



微風でふわりと揺れるハニーブロンドの髪。

あの性癖がなければ、女性が騒ぐだけのことはある整った顔。

そっと耳を近付けてみると、届いたのは寝息。


しばらくメローネを凝視していた名前は、不意に自分たちが幼かった頃を脳内に蘇らせる。



「(そういえば、小さい頃は女の子に間違えられたりしてたっけ。結構泣き虫だったし)」


「(≪転んだ≫って、怪我した膝を示しながら号泣するこいつの手を引いてた私の方が、むしろ男の子って勘違いされて)……ふふ」



だが、いつの間に≪違い≫が出てきてしまったのだろう。


はっきりと現れた体格差。≪仕事仲間≫か≪幼馴染≫として近寄ることしかできなかった自分。意外に逞しいよね――淀み始めた心を切り替えるため、目の前にある彼の胸板を観察した彼女が悪態をつくように呟いた、そのときだった。

ぱちり。こちらを見下ろす翡翠と視線が重なったのは。



「ベネ。オレの身体が、そんなに気になるのかい?」


「! びっくりした……起きてるなら言ってよ」


「……」


「?」



もしかすると、ずっと男は起きていたのかもしれない。

眉をひそめた名前がじとりと睨みつけるが、なぜか瞳をかち合わせたまま黙り込んでしまうメローネ。


どうしたというのだ。


先程まで胸中を蔓延っていた羞恥も忘れ、ただただ首をかしげていると、前触れもなく彼の唇がゆっくりと動く。


「ところで、すぐ不安がる名前に先に言っとくけど……オレが今まで女を連れ込んだりしたのは大体が仕事のため。わかるよね?」


「はあ……」


「そう、多くはベイビィ・フェイスが≪母胎≫にしたんだよ。だからさ――」









「名前。あんたは、オレだけの母胎になって」


「…………、……それ、もうちょっとどうにかならないの?」



告白のつもりなのだろうか。

突如ゲスい発言と共に放たれた、ネジが数本外れていると言っても過言ではない≪懇願≫。

呆れた様子でため息を吐きつつ彼女が頬を引きつらせれば、男はなぜか不満げに唇を尖らせている。



「えー? 幼稚園のとき、≪一生私の家畜にしてあげるから、メローネ結婚して≫って言ったのは名前じゃん。ディ・モールトお互い様だと思うけど」


「はあ!? 何それ、覚えてない……というか! 絶対言ってない!」


「いいや、言ったね! オレが名前の言葉を聞き間違えると思う? 物心付いた頃から、一音一音ちゃんと記憶してるんだぜ!?」


「ちょっと! 妙に自信満々な顔で気持ち悪いこと言わないでよ……!」


それでも。

それでも――胸の隅でほんのちょっぴり嬉しいと感じてしまうのは、やはり腐れ縁であるこの≪変態≫の影響かもしれない。いや、きっとそうだ。



「だからっ、言ってないってば!」


「ぜーったい言った! オレ、≪さっき実は行為中に撮った、名前の写真≫にかけて誓うよ! ところでその写真、あとでデータ化するんだけどあんたもどう?」


「……メロ〜〜ネ〜〜〜? あんた……ッ何、人の許可なくハメ撮りなんてしてくれてんのよ! いらないに決まってるでしょ!? この変態ド腐れ野郎!」


「ゴフッ!? ……あ〜っベネ! ハアハアハア、名前のその態度、ベリッシモたまらないよ……あ、ねえねえ! 今度はさ、鞭とか用意しておくからオレを存分に甚振ってほし――ゲフッ!」



荒くなる息。両腕を広げ、裸のまま密着しようとするメローネを足でソファの背に押しやってから、名前はそそくさと身体を元の向きに戻した。

しかし――恥ずかしくももはや強制に近い形で、行為の最中に一応≪任務完遂≫の報告は行ったが、おそらくアジトに帰宅した途端自分たちは≪別件≫の報告をすることになるだろう。


一度服に張り付くとなかなか取ることが困難なひっつき虫、いわゆるオナモミのように背中へ抱きついてきた彼が耳元でずっと囁き続けるセクハラ発言を淡々と聞き流しながら、男が見えない角度で彼女は密かに口元を緩ませたらしい。



「(≪結果オーライ≫かな。怖くて聞けてなかったメローネの本音、やっと聞けたし。…………ウサギはもうたくさんだけど!)」






終わり







すみません、大変長らくお待たせいたしました!
メローネで、敵のスタンド攻撃によってうさ耳が生えてしまったヒロインとの裏でした。
リクエストありがとうございました!
ちなみに、タイトルの≪コニーリョ≫はイタリア語でウサギを意味するそうです。


感想&手直しのご希望がございましたら、お願いいたします。
Grazie mille!!
polka



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