「? これが気になるのか?」
驚きと図星によってビクッと震える肩。
≪そうだ≫と言えば恥ずかしくてたまらないが、≪違う≫と言えば嘘になる。
しばし悩みあぐねた少女が決めたのは、ふるふると否定を示すこと――だがリゾットはすべてお見通しのようだ。
ちょいちょい、と彼の元へ手招きされた名前を待っていたのは――
「名前、これも勉強だ。……ゴムを陰茎につけてくれ」
「!? 〜〜っ//////」
思わぬ命令だった。
とは言え、≪勉強≫だと告げられたうえに、期待の眼差しを向けられてしまえば従う他ない。
自分を包む羞恥に堪えつつ、彼女はすでに袋から取り出された避妊具――すなわちコンドームを恐る恐る受け取る。眼前には、天井に向かって勃ち上がったグロテスクな代物。
「いいか? まずは、手で包皮を根元に押し下げるんだ」
「は、い……こっ……こう、ですか?」
「……ッああ。そうしたらゴムの先端を持って、亀頭の部分に固定させてくれ」
「っ」
次は――と耳を劈いていく的確な指示。
手のひらが直接感じた熱に、激しくなる心音。
スルスルと根元まで行き届いたゴム。
このとき、本当に授業を受けているような錯覚に陥っていた少女は、確認の意を込めて豊潤な唇を開いた。
「り、リゾット先生? えと……し、しし下、まで……っできました」
「ッは……いい子だ」
「//////」
苦悶と慈愛の入り交じった表情。
よくよく考えれば、かなり肌蹴た服装のまま男のそばに近寄っていた名前。今更ではあるが、照れ臭さで頬を赤らめた――刹那、トンと再び優しく肩を押される。
「さて――」
「ひゃっ」
「名前。次に行うことは、わかっているな?」
「(コクン)」
白いシーツに組み敷かれた彼女の頷き。その艶めかしさに喉を上下させざるをえない。
膨張していく欲求。
ゴム越しと言えども、以前より秘部が鮮明に捉えた焦熱にピクリと少女の産毛が揺れた。
次の瞬間、蠢いていた外陰部を割くように、赤黒い亀頭がゆっくりと押し込められていく。
「ッ! ひ……っ」
「くッ」
想像以上に襲い来る激痛。拡げられる感覚。じわりと目尻に浮かんだ水滴。
けど≪やめてほしい≫とは絶対に言いたくない――と静かに歯が噛み締められた。
それでも口から溢れてしまうのは痛みゆえの悲鳴ばかりで。
「いッ……ぁ……やっ……はぁっ、はぁ、っ……ぁあ!」
身体を自分の元に寄せて、頬に雫を伝わらせる名前。
必死に堪えようとするいたいけな姿。
己がもたらす鈍痛に歪んだ顔に、リゾットの胸は切なさとやるせなさでひどく締め付けられる。
そこで掠めた一つの想い。
「名前……、少し力を抜けるか?」
「ふっ、ぅ……んん、ぁっ、はぁ……ひぅッ」
「……(やはり……今日は≪やめよう≫)」
彼女が反応することすら難しい状況だからこそ、取った決断。
だが、決して薄れることはない、むしろ膨らむばかりの彼の情欲。
たとえそうであっても、何より大切なのは、今こうして下唇を噛んで処女ゆえの痛みを懸命に堪えようとしている少女自身だ。
完全にその鈍痛をなくすことは難しくとも、≪せめて甘やかな快感が勝るよう優しくしたい≫。そのためには、何度も狭い膣を慣らしていくべきなのだ。
一方、ごちゃまぜになる感情にただ喘いでいた名前は、生理的なナミダをぽろぽろと零したまま、圧迫が消えた秘境の感覚におずおずと男を見上げた。
「? ぁっ、はぁ……っん……りぞ、とせんせ……? ど、して」
「……すまない、名前。オレの配慮が足りなかった。……君は初めてなんだ。その思い出を、≪痛み≫だけで埋め尽くしたくはな――」
「や……っ」
「!?」
眼前で動揺を眼に滲ませる教え子に囁きかけるというよりは、自身の心に言い聞かせていたリゾット。
しかしその瞬間、彼女が自分へ縋るように両腕を背中へ回し、ぎゅうと抱きついたのだ。
三分の一は侵入していた男根を離さまいと絡みつく肉襞。予想だにしない締めつけに顔を苦悶に歪めながら、彼は少女を宥めるように頭をそっとなでる。
「ッ名前? どうしたんだ、そうされては抜けないだろう」
「いやっ……ぬ、ぬいちゃ、だめ……です」
どういうことだろうか。あまりの衝撃に黒目がちの瞳を丸くする男。
もちろん名前も、恥ずかしくてたまらないことを口にしていると自覚はしていた。それでも――
「はぁ、っはぁ……んっ、せんせ、い」
「わ、私の≪初めて≫…………もらって、ください……っ」
「!」
――≪この人が好きだから≫、こうした大胆な感情が生まれるのだろう。
とは言え、最後の最後に羞恥が勝ったのか、徐々に尻すぼみになる声音。
その覚悟を耳に受け止めたリゾットは、しばらくの間呆然としていたものの、突如彼女の口元を首筋に埋めさせる。
当然、頭上にいくつものクエスチョンマークを浮かべ、きょとんとする少女に対して、彼は穏やかに微笑んだ。
「名前。首に噛みついても、背に爪を立ててもいいからな」
見る見るうちに大きく開かれた、鈴を張ったような双眸。
そんなこと、できるはずない――焦燥を表情にありありと宿しつつ、首を勢いよく左右に動かす名前。
どこまでも優しい彼女に、感じるのは溢れんばかりの愛おしさ。男は柔らかな額にキスをし、もう一度スカートを捲し上げるために膝裏を抱えた。
「名前……ッ」
「っ……い、っぁ……んん、っふ、ぅ……はぁ、っはぁ……ひ、ぁっ、ぁああ!」
「ッ、は……ゆっくりと、深く息を吸え」
「はぁっ、ぁっ……あん、っん、ぁ……りぞ、とせんせい……っ」
最奥まで捩じ込まれた熱の塊。
次々に襲い来る破瓜ゆえの痛み。
それをも簡単に飲み込む甘く切ない恋情。
恥じらいながらも、嬉しそうに至近距離のリゾットを見上げると、少女の上唇を食むように口付けが贈られる。
「……よく頑張ったな。わかるか? 全部入ったんだ」
――ああ、胸に溢れるこれを、幸せと呼ぶのだろうか。
彼の言葉に、改めて熟れた襞が包むはち切れんばかりの肉棒を認識した名前は、嬌声を漏らしたままコクリと首を縦に振った。
「ひゃんっ……ぁ、っあ……せんせ、っの……ん、ぁっ、はぁ……はぁっ、ふ……んん、あつい、ぃ」
「ッ……煽るようなことを言うんじゃあない」
「っはふ、ぅ……あん、っん……ッ、あおってな、んか……いませ、っ……ぁっ、ぁあ!」
ズチュリ
一度だけ奥から入口まで抜き差しされた陰茎。
恨みがましげに彼女が肩口から見上げると、苦笑を浮かべた男の謝罪が届く。
「ふ……すまない。というわけで名前……そろそろ動くぞ」
「///////んっ、はぁ、はっ……ぁ……おねが、いします」
そして、緊張ゆえに身体をより密着させると、少しばかり膨張した男根がゆるゆると動き始めた。
とめどなく分泌される愛液が潤滑油となっているのか、増していくスピードにうねる膣内。
「ぁっぁっ、ぁっ……せん、せいっ……ひぁ、っぅ……あん、っりぞ、とせんせ……っ」
「はッ……いやらしいな。初めてだと言うのに、恍惚とした顔をして……ッく」
「ひぁあん!? ぁっ、らめ……んっ、ぁっあっ、あん……そこやらっ……はぁ、っはぁ……おねが、っ……やっ、ぁっ、ぁあ!」
「≪いや≫ではなく、ここがいいんだろう?」
もはや鈍痛は消え、快楽に神経すべてを支配されてしまったのだろう。ズプズプと垂直に腰が落とされることで、常に弱点へ与えられる性感がたまらない。
より足を開かされたうえに、晒け出されたクリトリスをひどく熱い側面で擦られ、言わずもがな反らされた少女の喉からは甘い悲鳴が上がる。
一方、表情はあまり変わらないものの少々息の荒いリゾットは、襟から覗く名前の白い柔肌をおもむろに啄み始めた。
すると、時折彼からもたらされる小さな痛みによって、かしげられる首。
「? あんっ、ぁっ……ひぁっ、あの、っ……な、にして……」
「……ふむ。マーキング、だと言えばわかりやすいか?」
「!」
首筋から鎖骨にかけて広がった赤い痕。
これでは見えてしまう――だが胸に現れた焦りは、より鋭さを帯びた律動によって一瞬で掻き消えていく。
自然と快感を乞うように揺れ始めた彼女の細い腰。今の自分がどれほど淫らか想像すらしていない少女が無意識のうちに女体を揺らしていると、ふと胎内から駆け巡ってきた先程と同じ、いやそれ以上に強い感覚。
「っぁあ、んッ……はぁっ、はぁ、っ……りぞ、とせん、せい……ひゃう、っぁ……ん、っふ……わ、わた、し……っ」
収縮を繰り返す火照った膣壁。
性感の極みへ導こうとひたすら秘豆を掠めては、粘膜の弱点を集中的に己の昂ぶりで擦り付ける男。
激しい挿入によって飛び散る体液。
刹那、名前の情欲に満ちた視線を頷きで応えたリゾットは、亀頭を膣口あたりまで引き抜き――
「や、ぁっ……あんっ、んっ……らめ、ぇ、っそこ……ぁっぁっ、ぁっ……らめ……ぐりぐり、しちゃ……やら、っ……ひぁ、っぁ、っぁあああ!」
「ッ……く」
ゴムの中で脈打つ陰茎。
その痙攣をまざまざと感じるのか、彼女は投げ出した肢体をピクリピクリと震わせていた。
「はぁ、っぁ、はぁ……っ、あん」
「……名前」
躯体が離れてもなお、乱れたままの二つの呼吸。
少女の潤んだ瞳と、彼の細められた双眸が重なり合う。
愛を深めた行為。ところが、男にとって秘めていた想いを伝えるにはまったく足りなかったらしい。
「! ぁ、んっ……ふふ、せんせい……ちょっと、ぁ……ん、っくすぐ、たいです」
名前を何度も呼ぶテノールと共に降ってきたのはキスの雨。
真面目な顔でそれを行うにリゾット対して、名前はひどく恥ずかしそうに、そしてひどく幸せそうに身を捩らせるのだった。
――graduazioneの日は――
≪終わり≫と≪始まり≫の二つを同時に迎える節目。
〜おまけ〜
独特の香りが漂う情事後。
シーツを替えたベッドの上で、制服を着直した名前は同じく寝そべったシャツ姿のリゾットをちらちらと見上げては、すぐさま俯き頬を赤らめていた。
「/////」
「名前? どうしたんだ、先程から」
「い、いえっ……(うう、顔がすごく熱い)」
彼との年齢の差、およそ十。
さすがというべきか判断しかねるが、仕草の一つ一つを取っても、大人の余裕が醸し出されている。
だが、それを打ち明ければ、自分が子どもであると改めて自覚してしまう――やるせなさと照れ臭さで下唇を噛んだ彼女が、そそくさと背を向けた瞬間。
服越しの肌をぬくもりが覆った。
「ひゃ……先生? どうされたんです、か?」
目をぱちくりとさせた少女が慌てて振り返ると、口元に浮かぶのは穏やかでありつつも意地悪な笑み。
「いや、行為を思い出し赤くなっている恋人を抱きしめたくなった。ただそれだけだ」
「!(こ、こここっ……!)」
プシュー
ゆっくりと放たれた言葉と色気に、突然頭上から蒸気を立ち上らせた名前。
一方、ますます朱を帯びた小さな耳に、男はわざと唇を近付けながら吐息と共に囁きかける。
「ふ……本当に可愛いな、君は」
「〜〜っ」
「……名前」
手放せない、手放したくない雰囲気。繰り広げられる百面相をしばらく覗き込んでいたリゾットは、ふと一つは11文字の数字、もう一つは少々長めの英数字が羅列されたメモを眼前の彼女に差し出した。
すると、最初はこてんと首をかしげていたものの、その文字の正体が連絡先であると把握した途端、驚きゆえに瞳を揺蕩わせる少女。
贈り物にしては私欲の詰まった紙切れであると、自ら認識している。
たとえそうだとしても――
「こ、れ……」
「どうやらオレは、あらゆる形で君との繋がりを保っていたいらしい」
「! えっ、あ、う……」
「……、迷惑だっただろうか」
普段から同僚に突飛な発言、行動が多いと指摘を受けている教師、28歳。
たが、次の瞬間名前が取った行動は慌てて頭を振るうという、なんとも喜ばしい反応だった。
「違います! す、すごく嬉しくて……そのっ……かけても、いいんですか?」
「! ……もちろん。むしろ名前、君からの連絡を≪待っている≫と言った方が正しいかもしれない」
彼が口にした本音に、見る見るうちに表情は綻んでいく。
そして、感謝の言葉を呟いた彼女はこくりと頷いてから、「えと……ではお言葉に甘えて、土日にかけます……っ」と桜色の唇で静かに、だが確かに紡ぎ出した。
春に似た少女の暖かな微笑み。それを視界に映した瞬間、男の胸に溢れるのは二つの気持ち。
「(……困った。これでは、オレ自身への褒美でしかないな)」
歓心と自嘲。そこに乱入してくる≪不安≫。
「(よくよく考えてみれば、大学は高校以上に危険なんだ。肉食獣のような輩がこの子に近付くと思うと、気が気じゃあな――)」
「り……リゾット先生」
「ん? ああ、すまない。……そうだ、できれば君の連絡先も――」
チュッ
刹那、開きかけたリゾットの唇をふにと掠めた、柔らかな感触。
一瞬の間を置いて、彼は理解する――教え子が可愛い口付けをしてくれたのだと。
衝撃が入り交じる赤い視線の先には、はにかんでいる名前が。
「えへへ……大好き、です/////」
「!?」
ガタッ
ガンッ
ゴドン
「ぐッ……!」
「先生!?」
「ッ大丈夫、だ……(名前の言葉に思わず気が高ぶったとは言えない)」
「で、でも……っ頭をぶつけられていましたし、たんこぶができてないか見た方が――ひゃっ」
少しばかり意識していた大人の威厳はどこへやら。大きな音を立ててベッドから床へ転げ落ちたリゾット。
言うまでもなく動揺の声を上げ、大急ぎで寝台を降りた彼女がこちらに駆け寄ってくる。
その瞬間、小さな身体をすかさず腕の中に閉じ込めれば、ズキズキと痛みに疼いていた身体を甘やかに覆い尽くしていく幸福感。
のどかな二人の空間。これほど痛い幸せもない――羞恥で狼狽える少女をよそに、男は苦笑を滲ませたまま抱き入れる力をますます強めるのだった。
to be continued……?
いいえ、続きません。
大変長らくお待たせいたしました!
リーダーで『bloomer×harassment』の続編裏でした。
蓮様、リクエストありがとうございました!
タイトルは「卒業」という意味となります。現パロ・学パロはまた新鮮で……卒業後も、ヒロインちゃんがリーダーの住むアパートへせっせと通い妻になっている姿が目にはっきりと浮かんでおります(笑)。
感想&手直しのご希望がございましたら、ぜひclapや〒へよろしくお願いいたします^^
Grazie mille!!
polka
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