――graduazioneの日は――01
※short『bloomer×harassment』続編
※裏
※リーダーが先生、連載ヒロインが生徒(=セーラー服コス)





まだ少し肌寒い2月某日。

学校の校門には、≪卒業式≫と刻まれた立て看板が。


とは言え、時間は午後二時を回ろうとしている。すでに人気のなくなった校内の体育教官室前で、ある男を待つ少女が一人。



「ど、どうしよう」


スティールブルーの襟や袖口。

動きで小さく震える赤いスカーフ。

白ラインが入ったグレーのプリーツスカート。

廊下を通り抜けていく爽やかな風によって、時折揺れるそれからスラリと伸びる黒タイツ。


焦げ茶色のローファーを履いた足は、ちょこちょこと扉の周囲を往復していた。



「うう……(さ、さすがにずっといたら怪しいよね。さっきプロシュート先生にも苦笑いされちゃったし)」



同じく体育担当である男の苦笑と、「今日こそ頑張れよ」の一言。


しかしその意味合いは彼女と、相手とで少し違っている。

実際プロシュート本人は、小さな唇をパクパクとさせ、火が出たかのように赤面する名前をからかっていただけなのだが。


一方、彼の思惑など知る由もない少女が一瞥したのは、カバンの中からちらりと顔を覗かせる、ラッピングされた小さな袋。



「(渡すの、諦めた方がいいのかな……。でも――)」









「名字?」


「っ! ネエロ先生……!」



突然届いた声に慌てて振り返れば、そこには今日が式典だったということもあり、灰色を帯びた黒のスーツを着こなしているリゾットの姿が。

かっこいい――首をかしげ、「どうしたんだ」と問いかけてくる彼に対し、彼女は頬を仄かに赤く染めながらおずおずと口を開いた。



「えと……その、っ……うう(き、切り出せない)」


「? もし君に時間があるのなら……今から戸締りをしに校内を回るんだが、歩きながら話すという形を取っても構わないだろうか」


「あ……私がついていっても……いいんです、か?」


確か生徒はもう校外に出なければならない時間だ。

申し訳なさそうにじっと見上げる少女を、男は静かに見つめ返す。


その視界に際立つ、名前の胸元にあしらわれた卒業生を示すバラのコサージュ。



「本来は≪早く出なさい≫と言うべきなんだが……名字、君は卒業生だ」


「!」


「今日でなかなか学校へは来なくなるだろう。ゆっくりしていくといい」


リゾットの赤い双眸に帯びる切なさ。

改めて悟った事実に息をのんだ彼女は、湧き上がる寂しさを胸にグッと押し込めつつ小さく頷いた。








それから、時折会話を重ねながら校内を回っていった二人。


廊下から窺える見慣れた景色は、なんら変わることはない。

そう、それは少女にとってもっとも印象の強い、体育館倉庫でさえも――


「どうした? ……ああ。ふ、確かにあの場所は思い出深いな」


「! うう……っ/////」



いつの間にか目線がそちらへ移っていたらしい。

ハッと我に返った名前は赤くなった顔を隠すように、部屋一つ一つの戸締りをしている彼を置いてスタスタと歩き始めてしまう。


だがその数秒後、華奢な背中を向けていたかと思えばこちらを気にするように足を止めちらりと振り返った彼女に、愛らしさで口端を少しばかり吊り上げる男。

その眼差しには、とある≪覚悟≫が浮かんでいた。









「すまない、ここが最後だ」



個性的な保健医で有名だった保健室。

そういえば――扉の前に立ったと同時に、教師の口から紡がれた一言。


きょとんと首をかしげた少女がそちらをおもむろに見上げると、リゾットが微かではあるが眉尻を下げていた。



「結局名字の話を聞きそびれてしまっていたな……入って話さないか?」


「あ……ご、ごめんなさい。私が早く切り出せばよかったのに」


「いや、君が謝る必要はない。……それと安心しろ」



保健室の前はなかなか≪人も通らない≫――まさか彼が最後に吐き出した言葉が意味深だとも知らずに、名前は「失礼します」と恐縮しながら室内に足を踏み入れる。

鼻腔を鮮明に突き抜けていく、アルコールの独特な匂い。


「(メローネ先生のこと、友達は≪危ない≫って言ってたけど、何が危なかったんだろう……)」


彼女にとって、そこまで≪危険≫ではなかった保健医メローネ。

もちろん、彼からあの破廉恥な下着を推奨されたことを省くのが前提なのだが。

頭上に浮かぶ、いくつものはてなマーク。


そして、白を基調とした室内を見渡し、一人感傷に浸ろうとしていた少女は、気付いていなかった。



「……」


背後で、カチリと扉の鍵が回されたことを。

入口の窓を塞ぐようにカーテンが閉められたことを。




「さて、名字の話なんだが――その前に」


「ネエロ先生?」


「……少し待っていてくれ」



次の瞬間、ふと視線を外したリゾットが、鋭い眼差しで整頓されたデスクに歩み寄っていく。

ずらした回転式の椅子。机の下に設置されたコンセント。そこに刺さった、黒い小さな機械――おそらく盗聴器だ。


バキッ



「? 今何か、音が……」


「いや、気にするな。大したことじゃあない。(メローネ……お前という奴は)」



それより君の話だ――何かを粉々にしつつ、優しさと申し訳なさを交えた表情で彼が謝罪を紡ぐ。

すると、慌てて首を左右に振り、静かに息をのむ名前。

胸の前でぎゅうと組まれる両手。動悸は、なかなか収まってくれない。


しばらくして腹を括った彼女は男を見上げ、おずおずと口を開いた。



「実は……に……〜〜にっ、二週間遅れなんですけれども!」



時は午後三時。電気すら必要のない部屋に響き渡ったのは、今にも裏返ってしまいそうな音。

少女がこれほど声を張り上げるのは珍しいとリゾットが目を見張っていると、学生カバンから眼前に現れる可愛らしい小袋。


中身はチョコレートのようだが、一体どうしたのだろうか。



「? 名字、これは――」


「……その、え、っと……バレンタイン、になります」


「ば…………、バレンティーノ? オレに、か?」


「はい……! 当日はタイミングを逃してしまったんですが……やっぱりネエロ先生に受け取ってほしくて」



そう。あの日、今眼前でひどく驚いている彼を、たくさんの女子高生や食堂のおばさんが贈り物を手に囲んでいるところを見かけたため、話しかけそびれてしまったのだ。

担任であるホルマジオにも、偶然会った(実は待ち伏せしていた)メローネにも、教官室にて言葉を交わしたプロシュートにも食べてもらったが、恋慕の感情を抱く相手とはもちろん別。


しょぼんと肩を落とし、やはりやめようかと迷いあぐねていたが――先生はこの感情を抜きにしても、三年間ことごとくお世話になった人だ。≪うん≫と小さく意気込んだ名前はチョコレートを改めて作り直し、直接手渡そうと考えたのである。


一方リゾットは、バレンタイン当日、帰宅時まで追われるという疲労感に囚われただけでなく、翌日「名字からチョコを貰った」と口々に言う同僚三人による自慢攻撃が相まって、一日中意気消沈していたのは言うまでもない。



「〜〜(まさか卒業式にこのようなサプライズが待っていたとは。このチョコレートは永久保存……いや、それはせっかく作ってくれた名前の気持ちを踏みにじってしまうことになる。だからと言ってあっさり食べてしまうのも……どうせならじっくり味わry)ゴホン。こんなことを言うのは教師失格だが、君から貰えたことが何より嬉しい……ありがとう」


「! ど、どういたしまして……です」



約一秒の間に男の脳内を駆け巡った思考。

しかしそれを知る由もない彼女の口元からは、照れ臭さが入り交じった柔らかい笑みがこぼれる。


「……えへへ/////」


ふわりと朱に染まった淡雪のように白い頬。羞恥で自然となる伏せ目がちな瞳。微かに開いては閉じる桜色の唇。


怒涛のごとく胸に押し寄せる、掻き抱いてしまいたい衝動。

だがまだ早い――湧き立つ心中に対する叱咤と共に小さく咳払いをしてから、小袋をそっとデスクに置いたリゾットはおもむろに声を震わせた。



「ところで、ホルマジオから進学すると聞いたが……大学は近いのか?」


尋ねたというよりは、≪言わせた≫の方が正しいのだが、この際彼の脅迫疑惑は無視しよう。

一瞬驚きで双眸を丸くさせた少女は、先生が自分のことを知ってくれていた嬉しさを胸に大きく頷く。



「はい。これまでと同じように、近くのおじ様の家から通うつもりです」


「そ、そうか。(本当に安心した……もし名前が遠くの大学へ行ってしまうのなら、オレは――)ん? 名字、今≪おじ様≫という単語が聞こえた気がするんだが」


「え? えと、言いました。おじ様は両親のご友人の方で……あ、息子さんが4人いるんですが、一人はここの一年生なんですよ?」


「……ちなみに名前は」


眉をひそめた男に、ありありと浮き出た警戒の色。


ところが、その質問が興味ゆえと思い違いをしているのだろう。

≪身内≫とも呼べる人物の姿を頭に宿しながら、名前はにこりと微笑んだ。



「汐華くんです。あの子、なんだかいろいろあってここで有名らしいんです……けど」


「しおば、な…………、ッ!(突然転入してきたかと思えば、『この学校を乗っ取る』などと自己紹介したことで有名な、あの一年生か……!)」



なんたることだ。想像もしなかった伏兵に、気が付けばリゾットは彼女のたおやかな肩を強く掴んでいた。



「名字。そいつ――ゴホン、その少年とはよく会うのか!?」


「(あれ? どうしてそんなに慌てていらっしゃるんだろう……?)部活の関係もあって頻繁ではありませんが……そのっ、昔からの顔なじみなので……きょ、今日も卒業式の後にお祝いしてくれたんです」


「お祝い、だと?」


ますます眉根を寄せた彼に対して、もう一度首を縦に振った少女は、不意にスカートのポケットからあるものを取り出す。

窓を塞ぐ淡い色のカーテン。その隙間から届く日差しによって煌めいたのは、小さな手のひらに佇む≪制服のボタン≫。



「最初は……まだ二年あるんだからって断ったんですが、『お守りになる』ってこの制服の第二ボタンを私に――」


「今すぐ返してきなさい……!」


「え!?」


「ハッ!? す……すまない」


まるで捨て犬を拾ってきた子供に対して叱る母のような図。

言うまでもなく、目を白黒させる名前。


今のは稚拙だった――己が放った発言に反省しつつも、男には気になることがまだ一つ。



「やはり≪卒業式に第二ボタン≫という概念は、今でもあるんだな……名字は他にも貰ったのか?」


「えと……同じクラスの男の子三人が、『卒業した後は、この部分がない方がかっこいい』という理由でくれました」


「……(ああ、どうしてそいつらの言った理由が≪口実≫だと気が付いてくれないんだ……。その天然なところがまた可愛いんだが)」



六つに結われた黒髪が特徴で美意識の高い友人。キレやすくも実は優しい眼鏡をかけた友人。親切でプロシュート先生に憧れている友人。脳内を過ぎっていくその一人一人に、自ずと彼女は破顔していた。


しかし返答を聞いた途端、真顔で黙り込んでしまったリゾットに、前触れもなく不安が靄のように少女の心を支配していく。



「あ、あの……ネエロ先生」





「私……先生のご気分を害すことを、何かしてしまったのでしょうか」


「!」


耳を劈いた弱々しい声音に彼がハッと我に返った。


音もなく落とした視線。自分を真摯に見つめる名前の眼は、ひどく不安に満ちている。

何をしているんだ、オレは――焦燥と共に否定を示す首。



「いや、違う。君のせいじゃあない」


「っでも――」


「本当にすまない。実は……、妬いたんだ」


「え……?」



≪やく≫。

きょとんとした彼女が、すぐさまその単語を該当する漢字に変換しようとしていると――




突然、スッポリと抱き竦められてしまった身体。


ドキリ。もたらされた強い抱擁に心臓が大きく脈打つ。



「きゃ!? ああああのっ! ネエロ先生――」


「≪名前≫。君が『先生以上として見ている』とオレに言ってくれたあのときから、こうしてしまいたくて仕方がなかった」


「!」


かち合ったのは、深い色を帯びた黒目がちの瞳。

男の眼差しから垣間見えた≪愛しさ≫に、少女の顔はますます赤らんでいた。



「//////」


密着する二つの身体。分け合うぬくもり。感じる心音。

このときを、どれほど待ちわびていたのだろう。


今日は卒業式だ。


帰宅するまでが卒業式とはよく言うが――恥じらう名前を前に余裕を保っていられるほど、この感情は生易しくない。


「――好きだ」



不意に鼓膜を揺らした低い囁き。

鼓動は落ち着くことを知らず、むしろ高鳴っていくばかり。


込み上がる気持ちとナミダを必死に堪えながら、彼女は恐る恐る唇を動かした。



「っ、ネエロ先生は……初めて補習をしてくださったときからずっと私の憧れで、少しお話ができるだけでも幸せだったんです」



淡い初恋。それ以上でも、それ以下でもない。

だが、リゾットと顔を合わし言葉を交わすたびに、水に落ちた絵の具のように広がっていった慕情。

これ以上想いが膨らまないよう、≪叶う≫ことを願ってしまわないよう、ただひたすら諦めようと抑えていたのかもしれない。


≪でも≫――溢れたのは逆説。



「今日で、先生と会えなくなってしまうんだって思ったら……っ私」



細く白い指先がそっと掴んだことで、彼のスーツに微かなシワを作る。

滲むのは不安と羞恥。少女の双眸は潤んでいた。



「これからも……≪リゾット先生≫のこと、想い続けてもいいですか?」



許可など必要ないのに。

それでも、遠慮がちに尋ねるあたりがこの子らしくもある。


当然だ――そう一言紡いだと同時に、艶やかな黒髪へ寄せた鼻先。ふわりと擽るその繊細な香りが、男の胸をこれまでにないほど揺さぶっていた。









その後、会話もなくしばらくの間抱き合っていた二人だが、ふと現状を実感し恥ずかしさゆえに身動ぎする名前。

一方、照れながらも彼女がしてくれた告白が状況に重なって、易々と外れてしまう本能の箍。



「名前」


「///////……せ、先生? そろそろ離し――んっ!」


「……残念だが、そうするつもりはない」


刹那、顔を上げた少女の唇をリゾットのそれが塞いだ。


最初は重ねるだけだったモノが、徐々に濃厚な口付けへと変貌を遂げていく。

酸素を求めて、息を乱した名前が口を開けたその隙を狙って、ぬるりと侵入した舌。

口内の粘膜を丹念に舐られ、荒らされ、翻弄される身体の芯。



「ん……はぁ、っせんせ……ふ、っぁ……そと……見えちゃ、っ、ン」


「は、ッ……安心してくれ、すでに鍵は閉めてある」



いつの間に――尋ねようと試みるも、考えはクラリとする脳内でたちまち掻き消されてしまう。

全身を囚われる感覚。無意識のうちに彼女が後退ろうとした瞬間、グッと引き寄せられた腰。


クチュリ――直接耳へその淫らな水音が届いたと同時に、躯体が強い快感に震えた。


「はぁ、っはぁ……、ひぁっ」


「ふ……蕩け切った顔をして。今からこうでは最後まで持たないぞ」


「ふ、ぁっ……ん、っ……さい、ご?」



トロンとした瞳。頬をゆるりと彼になぞられ反応する神経。酸素不足の脳。もう、ダメ――目尻に水滴を浮かべつつ、少女の頭の中が白く霞み始めた瞬間。


ドサリ



「ぁ……っ」


背中を柔らかな衝撃が襲ったと同時に、視界を埋めた天井と男。そしてベッド一つ一つに設置されたカーテンが、独特な音を立てて閉められる。

まるで、完全に二人の世界だと言うかのように。


枕に散らばった漆黒の髪。

じっとこちらを見下ろしてくるリゾットのぎらついた、野獣のような眼差しに自然と視線を彷徨わせる名前。


「はっ、はぁっ……ん、せん、せい……?」


不安げで、いたたまれなさを浮き彫りにした双眸。

うっすらと脈の通う白い首筋。


全体を心に焼き付けながら、しばし黙っていた彼は不意に口を開く。



「思えば、君の制服姿も今日で見納めになってしまうんだな……至極残念だ」


「! そっ、そんなに……見な、いでくださ、い……」


ふるふると首を横に動かす可愛らしい教え子。

それは無理な相談だ――内心で呟いてから、勢いよくセーラー服の裾を捲し上げる男。

さらにリゾットは晒け出されたブラジャーまでも鎖骨側へ持ち上げ、二つの膨らみを同時に揉みしだき始めたのである。


もちろん、突然の出来事に驚愕で瞠目していた彼女は、大きな手のひらで包まれたふくよかな乳房に背を仰け反らせた。


「ひぁあ!? ぁっ、や……りぞ、とせんせ、いっ……んん、ふ……だ、ダメ、です……っ」


「どうした? この感覚は以前経験しただろう」


「でもっ……はぁ、っぁ……ン……ふっ、ぁ、あん!」


弄ばれ、グニグニと容易く形を変えられてしまう柔肌。

どれほど身を捩れども、白く魅惑的な果実は手の中でたわわに揺れるばかり。


自分を見上げる少女の官能的な表情。そうした情欲をそそる姿に――ズボンの下ではっきりと捉えた昂ぶりをひたすら抑えつつ、静かに言葉を紡ぎ出す。



「以前から――あの倉庫での行為のときから考えていたんだが……いやらしく誘惑的な胸だ」


「ひぅっ! ん、だめっ……はぁっ、はぁ、ッ……いや、ぁっ/////」


荒くなる一方の吐息。拒絶を示しながらも蕩けた瞳に滲む≪期待≫。

だが、名前を襲うのはどうやら快楽だけではないらしい。まるであの日の情事を思い出すかのような面持ちに、彼は考え込むような仕草を見せた。



「ふむ……名前の身体は≪体育館倉庫≫などキーワード一つ一つに反応してしまうのか。たとえば……そうだな、≪紐≫はどうだ?」


「! ひぁ……りぞ、とせんせ……んっ、ふ……はぁ、いじわる言っちゃ、っぁ……やぁあッ」


「ふ、すまない。君を前にすると、どうも加虐的になってしまう性分のようだ。……それにしても、触れるだけでこんなにも乳頭を硬くさせるとは」


「へ……、っひゃあん!? やらっ……ぁっぁっ、あん……はぁっ、先吸わな、でぇ!」



後半の言葉に対して不思議そうに首をかしげた瞬間、豊満な胸の先端を覆う、柔らかく湿った触感。

さらに、もう片方はクリクリと指の腹で押し潰されてしまう。

あらゆる手段でますます赤く腫れぼったく変じた乳首。


官能の淵へと追い詰められ、そこから抜け出せなくなる恐怖に、もう一度≪いや≫と拒否を口にすれば、男がこれでもかと言うほど眉をひそめた。



「こら、嘘をつくんじゃあない。嫌だと言いながら腰が動いているぞ」


「ぁっ……ん、ちが、はぁっ……や、っぁあ……ちが、っの、ぉ!」


頂きを咥えたまま話すリゾットから吐息をまざまざと感じたのか、より高く甘やかになる彼女の喘ぎ声。

我慢ならずに白い喉が晒け出された途端、不意に消えた舌と指の感覚。


解放された、と信じ胸を撫で下ろした少女。しかし次の瞬間、スカート裏へ差し込まれ――下肢にピタリと密着していた黒タイツが無遠慮に剥ぎ取られていく。



「ひゃう……っ」


ゆっくりと太腿に這わされる手のひらに、ゾクゾクと言い知れぬ痺れが名前の下腹部に潜む子宮を攻め立てた。


ベッドの脇に放られたタイツ。

そして露わになるパステルカラーのショーツ。

そのイメージ通りである清純な下着をも奪い、滑らかな足をM字に開脚させた彼はあえて口元を歪ませる。



「名前。もうあの下着は付けていないのか? 捨てたわけではないだろう」


「〜〜っ//////」


「……冗談だ」



――本当は冗談ではないが。

内心そう呟いた男はヒクついた蜜壷をまじまじと凝視しつつ、すでに潤った秘裂を人差し指で下から上へなぞり始めた。



「きゃあ!? ひぁっ、ぁっ……りぞっと、せんせ、っん……はぁ、っぁ……だめ、ぇっ」


「ダメ? そうは言うが、ナカを解さなければ名前が辛いだけだぞ……この前以上のことをするんだからな」



この前以上のこと――発せられた表現から脳内を掠めた≪性交≫の二文字に、恐怖すると同時にきゅんと疼いた胎内。

色香が増した彼女の顔つき。


その少女とは思えない姿にゴクリと静かに生唾を飲み込むリゾット。収まることを知らない≪欲しい≫という感情を精神の最奥に押し込んでから、わざと嘲るような笑みを口端に宿す。



「どうした、名前? これから行うことに期待でもしたのか?」


「!? そ、じゃなっ……ひぁ、っぁ、あんっ……ふ、ぅ……らめっ……らめな、のぉ!」


「ふ……こんなにも蜜をこぼしておいてよく言う」


「ぁっ……やっ、ぁあ!? そこ、っやら……りぞ、とせん、せっ……そこいじっちゃ、ぁっぁっ、あん……!」



優しく剥かれた包皮から顔を出す陰核。

それを親指で転がすと同時に、さらなる快感を求めて蠢いた膣内を蹂躙していく繊細で無骨な指。


グチュリ、ジュプと室内に響き渡る淫猥な音。

不意にここが保健室であることを思い出した名前が、慌てて声を抑えようとするが――すでに性感の頂点は迫っていた。


「はぁっ、はぁ、ん……っぁっぁ、っあ……らめ……わた、しっ……ひゃう……ッん、また、っ……ぁ!」



電流のように駆け上ってくる強い痺れ。完全に彼がもたらす官能の沼に囚われた彼女は、目元にナミダを溜めたまま悲鳴に近い声色で叫ぶ。

すると、いつの間にか三本に増やした指で、少女の弱点である粘膜の箇所を擦りながら、男はゆっくりと口角を上げた。



「……名前、前に教えただろう? それがイくということだ、と」


「ひぁ、っん……ぁっ……はっ、はぁっ……わたし……イ、ちゃ……?」


「そうだ。もっとも敏感だと言われるクリトリスを弄られて、君は淫らに絶頂を迎えるんだ」



平然と放たれた卑猥な言葉に、首の上はますます熱を帯びる。

紅潮した頬。ダメだと何度も繰り返す半開きの唇。

恥ずかしいと言いたげな表情とは裏腹に、名前は己を絶頂へ導こうとするリゾットを自然と物欲しそうに見上げていた。



「そ、っな……ぁあっ! あん、っふ……りぞ、とせんせっ……らめぇ……ぁっ、あっ……わたし、イっ、ちゃ……ひゃ、っぁあああん!」


ビクン、と一際痙攣する腰。

弓なりになった背中。

荒々しい吐息。


今もオーガズムの余韻で小刻みに震える躯体をベッドに預けていた彼女は、ふと視界を過ぎった光景に息をのむ。



「ぁ……」


二度目となる彼の裸体。

その屈強な躰つきにそそくさと目線をそらすものの、不運にもそれは男の持つ避妊具を見つめるという結果になってしまった。




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