ビランチャに告ぐ
※同僚ヒロイン
※裏(いわゆる身体の関係)
※3Pです、注意!






「……ふう」


冷ややかさを宿した視線が見下ろす先、その床にはすでに事切れたターゲット。

職業病なのだろうか。絨毯を染め自分の服を汚す鉄の匂いが、鼻について仕方がない。



「(早く帰ってシャワーが浴びたい……)」


刃先から滴り続ける赤。鈍く光った鋭利なナイフを、名前が丁寧にハンカチで拭っていると。


グイッ



相棒1であるホルマジオに、するりと腰を抱き寄せられたのだ。

近付く距離。感じる吐息。刹那、右手で握っていたそれをジャケットの裏ポケットへ仕舞いながら、彼女はじとりと彼を睨みつける。



「ホルマジオ、何?」


「≪何?≫ってお前な……わかってんだろォ?」


「……」



お前ん家行こうぜ、とまるで遊びに来るかのように浮かべられた薄い笑み。


ちょっと、私の意見は――中央に向かって眉をひそめた名前がそう口を開くより早く、彼は彼女の相棒2であるリゾットとアイコンタクトを取ってしまう。

すると、今は無慈悲を貫いている双眸を一、二度瞬きさせてから、静かに頷いたチームのリーダー。



「ああ。……名前の家の合鍵なら≪先程≫生成した」


「……リーダー。ストーカーで訴えるわよ」



またメタリカを使ったのか。ガクリと落ちる女の華奢な肩。

眼前で首をかしげるこの男、他人の体内で人の家の鍵まで作ってしまうのだから本当に勘弁願いたい。(ちなみに今回の被害者は、言わずもがな命奪われたターゲットである。)


だが、本来の問題はその点ではない。彼らが自宅を訪問する目的だ。≪二人が嫌いってわけじゃないけど≫――互いにシャワーを浴び、誰からともなくベッドに雪崩込むという、ごく自然な流れ。名前は男たちと世間で言う、身体の関係を築いていた。


どうしたものか。疲労感を訴える心を優先すべきかと考えあぐねた瞬間、煮え切らない同僚に対し、苦笑に満ちた顔をグッと寄せるホルマジオ。



「おいおい、悩む必要なんてないじゃねーか。いつもオメーはそうやって渋りつつエロ可愛く乱れてんだし、何よりオレの息子がもうヤベー」


「〜〜っもう! そんな急かさないでよ、このスケベ親父! というか二人とも……さ、三人で何度もしてるんだから、私がこういうとき簡単に頷かないってわかってるでしょ!?」


「まったく……名前、そうイライラするんじゃあない。……ん? まさか生理中なのか? ならば気にするな……オレは別に構わない、というより歓迎に近いが――」


「黙らっしゃい。このむっつりド変態」



先程までの、仕事時の格好良さや威厳はどこへやら。妙に挙動不審になり始めた相棒二人を切り捨て、試みたのは悩ましい関係性の解決。

また一つ命を死へ追いやった直後に快楽を求めるなんて、ひどく爛れた繋がりであると、自覚はしている。しかし同時に、自分はもう恋だの愛だので騒ぐ年頃でもない。それでもやはり――



「……かなり疲れてるから、激しすぎるのは禁止ね」


なんだかんだ言って首を縦に振ってしまう私は、きっと快感や欲求がどうと言うより、この二人のぬくもりを手放したくないんだろう。








行為前のシャワー。三人で帰途に着いてから一人でいられる、唯一の時間。

彼らの手によってどれほど深い官能の淵に招き寄せられたとしても、この瞬間だけはどうしても慣れることができない。


≪乙女≫なんて言い張れるほど、初心でも清らかでもないのに。



「……お待たせ」


髪を乾かし、簡素なTシャツとショートパンツでリビングに踏み出せば、椅子から立ち上がったリゾットと勝手にミネラルウォーターを口に含んでいるホルマジオが、名前を妙に張り詰めた空気の中迎え入れる。


――ああ、ダメ。やっぱり慣れない。



「次、借りるぞ」


「うん」



小さな頷きしか、できない。

浴室へ吸い込まれていく体格の大きな男の背を視界に収めつつ、ふらふらと彷徨ってしまう彼女の視線。


しばらくして、いたたまれなさもあるのか足をスリッパから解放し、裸足でストンとベッドの脇に腰を預けた小柄な身体。


すると、ペットボトルをテーブルに置いた丸刈りの男が、表情に心配とからかいを入り交じわらせて、女の隣に座ると同時に俯いた顔を覗き込んできた。



「名前? お前まさか……緊張してんのか?」


「! う、うるさいっ! 私だって……女としての恥じらいぐらいちゃんと持ってる、し」


「……ったく……俺らとセックス、しかも通常運転が3Pだぜ? マニアックなプレイを今まで数え切れねーほどしてんのによ、ビッチになる気配すら見せないとこがお前のいいとこだよなァ。可愛い可愛い」


「(どうしてそう、言葉の端々にセクハラぶっ込んでくるの)……子ども扱いするのはやめて」



つい今しがたブローしたばかりの髪を乱され、言い含められ、薄紅色の唇からこぼれたのは不満げな声色。様変わりしたその様子にホルマジオはただ喉をクツクツと鳴らす。



「クク、そりゃあ構わねェが……ガキ扱いが嫌いな名前≪ちゃん≫はどういう扱いしてほしいんだ? ん?」


「っだから、その頭をわしゃわしゃとかとかをやめてって言っ――んぁっ!?」



ぴちゃり。右耳が水音をはっきりと捉えた途端、脈を追うように首筋を伝ったぬるりとした感覚。

無防備な肌を掠める吐息。その荒々しさに跳ねた鼓動を名前は必死に隠しながら、まだ早いと微かに頭を振って拒絶を示した。



「っぁ……ほるま、じおっ……まだ……ぁ、んっ……り、だーが、もどって……ひゃう!」


「三人揃わねェと始められない、ってか? お前の期待を裏切って悪ィが、そりゃァ大間違いだな」


「え、っ? だって……ぁっ、ダメ……ほるま、じお、っそこは……や、ぁあん……!」



頸部から耳の裏へ。そして食まれた耳たぶ。

皮膚を舌先で転がすように愛撫され、息は快感ゆえにひたすら乱れていくばかり。


まるでその恥辱が、彼女の奥に潜む淫靡な姿を露わにさせるスイッチのようで。



「ひぁん、っふ……ぁ、だめな、のっ……まって、ま……っぁあ!」


さらにこれがトドメと告げるかのごとく、シャツの襟ぐりに沿って中へ五指が侵入し、動揺を帯びた女の嬌声が上がったことを合図に、ホルマジオの無骨な手が白い柔肌に這わされた――刹那。




「ホルマジオ」


少々怒気を含んだ低音。一瞬で室内を包む、殺気に似通った空気。

鋭いそれを送る正体――上半身裸のリゾットから眼差しをひしひしと受けた彼は片眉を吊り上げる。



そして、赤らんだ頬のまま自分を見つめる名前の頭をもう一なでしてから、男はゆっくりと腰を浮かせた。



「へいへい。抜けがけは許さねェってか……名前、今度は俺がシャワー借りるぜ?」


「はぁっ、はっ……う、ん」



入れ替わるように隣へ腰を据えた彼に対し、慌てて整えようとする息。

だがもちろん、彼女が今まで快楽に翻弄されていたという事実に、黒目がちの瞳を細めた男がスルーするつもりもなく。



「名前、顔が赤いぞ」


「!(わかってるクセに……)ちょっとシャワーにのぼせただけ!」


「ふむ……珍しいな。情事の前は大抵、低めの温度で済ませているだろう」


「…………あのさ、やっぱり訴えていい?」



なんで知ってるのよ――そう追及したくて仕方がなかったが、じとりと睨めつけたところでおそらく躱されるだけだと、これまでの経験から把握していたのでおずおずとその文句を飲み込む。

一方、気を利かせてわかりやすい箇所にドライヤーを置いておいたのに、タオルだけで済ませたのか生乾きでふわりと揺れる銀髪。名前は隣のそれを一瞥したかと思えば、不意にガッシリとした上腕二等筋へこてんと頭を預けた。


その瞬間、ようやく驚愕を滲ませたリゾットの赤い眼。



「どうした? お前はただ眠くてその行動を取っているのかもしれないが、今のオレには≪誘っている≫という答え以外を導き出す余裕はないぞ」


どうやら誤解を招いたらしい。


押し寄せた焦りと共にすかさず弁明しようとしたが、ふと考え直してみると、そういった思惑も内心少しはあったのかもしれない。

なら――≪自分は二人に振り回されているだけじゃない≫。それを証明する好機を得たと考えよう。

惜しげもなく晒される、屈強な腕に添わせた細く白い手。その滑らかな肌をそっと指先でなぞれば、こちらを向く熱を孕んだ彼の目を彼女は自然と潤んだ双眸で見つめ返す。



「さ……誘ってると、したら?」


「……ふ、乗るほかないな」



鼓膜をひどく震わせたテノール。男の言葉を理解したときには、すでに女の躯体は白いシーツの上に組み敷かれていた。

再び交差する視線。まだかまだかと餌を待つ、まさに目の前にある欲に忠実なリゾットの普段らしからぬ面持ちに、全身はドクドクと火照り始める。


震える声帯。それが届くより先に、剥ぎ取られたショートパンツ。



「っ! ぁ………りー、だー……」


「≪リゾット≫。行為のときはそう呼べと言っているだろう」


「! そ、なこと……言われても、っん、ふ……名前、慣れな……ひゃあっ」



口答えはするな――そう言いたげな眼差しに圧倒された名前は、知らぬ間に大きな手のひらによる内腿への侵入を許してしまった。

布越しの秘境。指先が鮮明に覚える、濡れた触感に彼は唇をこれでもかと言うほど歪める。



「ずいぶん下着が湿っているな……シャワーへ行ったときから期待していたのか? それとも――」


「ちが……やっ、ぁ……ダメ、ぇ、っ……くり、ばっかこすっちゃ……っふ、ぅ!」


もう一人の男の手によって生まれた≪期待≫なのか。

その疑問をあえて口にはしない男。


しかし、無関与とは裏腹に徹底して攻め立てられていく陰核周辺。薄いショーツが反応し始めた突起を刺激してたまらないのか、彼女が甘い喘ぎ声と共に白い喉を反らした。


「ぁっ、はぁ……だ、め……ひぁっ、ん、りぞっと……や、っぁあ」



どれほど拒めど、もたらされるふしだらな痺れ。

骨盤の奥に焚き付けられた快感。ちらついた絶頂によってしなやかな女の肢体が小刻みに震え出す。


そのとき。





室内に一つの足音が広がった。


「おいおい、もうおっぱじめてんのかよ。≪抜けがけ≫してんのはどっちなんだか……しょーがねェな〜!」



ホルマジオ――とろんとした名前の視線の先には、これまた上半身裸で苦笑をこぼす男が。

そして、こちらへ近付きベッドに乗り上げた彼は、ここまで一切触れられていなかったシャツの裾を背後から勢いよく捲くし上げてしまう。



「!? やっ……」


「ハハッ、可愛い反応。リーダーが下なら、俺ァこっちを触らせてもらうぜ」


服と共に持ち上げられたブラジャー。


ぶるんと下着からこぼれ出た乳房。

刹那、前触れもなくそれを鷲掴みにされ、新たな快楽の出現に彼女はふるふると首を横へ振った。



「んんっ……はぁ、はぁっ、おねが……っりょうほ、やだぁ」


「そう言いながら、ココすげェ尖らせてんじゃねーか。摘ままれんのとか、好きだろ?」


「っバカ! ぁっ、すけべ……ひぅっ、ふ、ぁ……ほる、まじおの……へんた、っあん!」


「クク……オメーのそういう威勢のいいとこも、好きだわ」



今できる精一杯の罵倒をしようとするも、性感に阻まれ言わせてもらえない。


円を描くように揉みしだかれる魅惑的な膨らみ。

グニグニと変幻自在に、己の手の中で形を変える柔肌。


名前のあまりにも婀娜やかな表情にありありと喉を上下させたホルマジオは、取り憑かれたように――突然肩口から顔を覗かせ、赤くなった乳頭を唇で挟み込んだ。



「ん……、ますます硬くなってきやがったな」


「ひゃ、っん……だめなのっ……ぁ、ふっ……噛んじゃ、やっ、ぁああ!」


「おーう、言っとけ言っとけ」



吸いつかれ、舌で転がされ、甘噛みされ、ことごとく翻弄される胸の先端。


ポロポロと生理的な涙を流したまま、彼女が溢れる吐息に色めいた声を滲ませている――と。





「名前。快感に耽っているところ悪いが、こちらも忘れるな」


突然、下肢あたりから届いた低音。

冷気を帯びる秘部。ショーツすら取り払われた感覚に、ギョッとそちらを見下ろす名前。


すると、目が合った瞬間、リゾットは固定するように左右の膝頭を掴みながら舌先を膣口に挿入したのだ。



「ぁっ……! やぁ、ッ……りぞ、っと、ひぁあ……だめ、ぇっ」


「お前の≪ダメ≫は、≪いい≫んだろう?」



だが、残念ながら責め苦から解放されることはない。


自然と揺れてしまう腰。


ますます瞳を潤ませた彼女は、官能の泥濘に嵌った己を隠し通すため弱々しく下方を睨みつける。

もちろん、平然と陰核へ快感を与えるリゾットには通用しないのだが。



「ふ、っぁっぁ……んんッ……おねがっ、はぁ、はっ……くちゅくちゅしちゃ、っやあ!」


「嘘を付くんじゃあない。≪仕置き≫が必要か?」


「! そ、な……いや……っだめ、ぁっ、ひゃあんっ!」


「ふ……本当にお前は、天邪鬼だな」



ひたすら性の悦びを拒みつつも、舌をきゅっと締め付けてくる狭い膣穴。

トプリと蜜壷からシーツに零れた愛液。

これでもかと言うほど蠢く膣穴。


限界は、来ていた。

相変わらず腫れ上がった乳首を爪先で弾いていたホルマジオは、震える名前を見つめにやりと笑う。



「なんだ? もうイきそうなのかァ?」


「っ! ちが、っ……違うの……んっ、ぁ、はぁ……そう、じゃなっ」


「そんなことを言っていると、また≪以前≫のように手を止めるぞ。……イけるときにイっておけ」



リゾットの紡ぐ≪以前≫。実は、彼女が素直に快感を求めるまで、焦らされ続けたことがあったのだ。

彼らがサドなのは熟知していたが、あのときは本当に――思い出したくもない記憶に遠い目をした瞬間。


上と下から迫り来る快楽。痙攣と共に彼女の腰が一段と跳ねた。



「ひぁっ……ん、ふぅ……っらめ、いじらな、で……ぁっあっ、あん……やっ……〜〜っ!」



次の瞬間、下唇を噛んだことで溢れる声なき声。

つけっぱなしの明かりに照らされる、弓なりになった背中。

力の抜けてしまった身体。ビクビクと肢体が震えている。



そうした色めいた空気が充満する中、リゾットは白い太腿の付け根を赤を残そうと啄みながら、おもむろに口を開いた。



「名前。なぜ声を我慢したんだ」


男の言葉にホルマジオも反応したことから、彼も気になっていたらしい。

なぜか鋭くなった二つの視線に射抜かれ、萎縮した名前は息を荒げたままおずおずと呟く。



「はぁっ、ぁっ……ら、って……こえ、きこえ、ちゃ……」


「ハハ、いいじゃねーか、聞かせてやれよ。それに……大抵はお前の家でヤってんだし、今更だろ?」



そういう問題じゃ――勢いよく顔を上げた彼女は、その瞬間ボトムと下着を脱ぎ捨てた丸刈りの男に目をぱちくりとさせた。


ふつふつと湧き上がる羞恥。とは言え、休ませてくれるつもりはないのか、そそくさと寝転んだ彼の膝上に女は招かれる。

いわゆる騎乗位の体勢。


俯き気味でこちらを見下ろしてくる名前。「絶景」と内心呟いてから、ホルマジオは細めた目をいまだファスナーに手をかけていないリゾットへ移した。



「じゃ、リーダー。お先に」


「ああ。しばらく視姦させてもらう」


「!?」



なぜ、この男たちはとんでもないことを普通に会話しているのだ。


ひしひしと感じた熱視線に慌てて振り返ろうとしたが、こちらに集中しろ、と言いたげに骨盤を掴まれる。

すると外陰部が捉えるひどく高ぶった熱。自身に蔓延る欲求に急かされ、もはや従わざるをえない。


「ん、っ……はぁっ」



さらに頬を赤く染めた彼女は、ついに決意したのだろう。己の柔らかな膣口を探り当てつつ、ゆっくりと腰を落とし始めた。

ところが、まだ半分しか飲み込めていない状況に、ホルマジオはわざと眉を動かしてみせる。



「おいおい、名前。オメー……俺を焦らしてそんなに楽しいかよ」


「はぁ、っは……ん、じらして、なんか……っな――」







刹那。女を支えていたはずの手が離され、重力ゆえにズブズブと膣肉の最奥まで膨大した陰茎が一気に捩じ込まれてしまった。



「ひぁ、っぁああ!?」


響き割った、高く甘い嬌声。

焦熱の塊にまざまざと絡みつく襞。


その食いちぎられそうなほどキツいナカに、男は苦悶で眉をひそめる。



「ッ……すげー締めつけ……ケツの方からリーダーに挿入シーン見られて興奮してんのか?」


「ぁあっ……らめ、っおねが……ぁっぁっ……ん、りぞ、とっ……みな、っでぇ!」


「ふ、無理だな。……わかるか? 美味そうに深く咥え込んでいるぞ」


「ひぅ、っ……やらっ、ぁ……あん、っはぁ、は……やら、ぁ!」



想像した以上に近くから届いたリゾットの声。そのことから結合部を食い入るように観察されているのがわかった。

すると、嬉しいはずがないのに名前はきゅうきゅうと収縮させてしまう。


どうして――狼狽を露わにする視線。


一方、このまま留まっておけるはずがないと、ホルマジオは下から膣奥を突き上げ始めた。



「ん、っぁあ! ぁっ……ぁっぁっ、ほるま、じお……はぁ、っあん……はげし、のっ、いやぁ」


「クク……≪イヤ≫、なァ? お前のナカ、物欲しそうに常にヒクヒクしてっけど」


「や……ちが、そ、じゃな……あん、っん……らめ……らめなの、ぉ!」



ズプリ、パチュンと熟れた肉が打ち付けられる音。荒々しい吐息。淫らな喘ぎ声。


「あんっ、ふ……はっ、はぁっ、ぁ……、ひゃうっ」


「……乳ぷるんぷるん揺らして、エロすぎだろ……あんたもそう思わねェ?」



ふと肩越しの遠くを見据えた彼が、変化した光景に攻め立てたまま笑っている。

どうしたのだろう。少しばかり息を整えた彼女が首だけでそちらを振り向けば――



「名前」


「ぁ、っんん……はぁ、ッ、りぞっと……っ?」


「……≪奉仕≫、してもらおうか」


「!」



眼前に現れたのは、興奮を滲み出した男根。


見る見るうちに、名前の胸を襲い来る気恥ずかしさ。

リゾットが日常生活においてもストイックなだけあって、その姿に≪男≫の部分をまざまざと感じてしまうからだ。


しばらく溢れていた戸惑い。だが、不意に彼女は鈴口へ引き寄せられるように唇を寄せた。


「っ……ん」


「くッ、……ちゃんと手も使え」


「は、ぁっ、ふ……んぅ……わか、てる」



艶めかしさ漂う命令口調。

おずおずと両手で包めば、嫌でも伝わってくる熱。


鼓動は自然と速まってしまう。



「んん、ふっ……ぅ、っ」


「ッは……」


苦しげな、性感を秘めた彼の息遣い。


もっと感じてほしくて――名前は喉を開け、なんとか赤黒い亀頭を頬張った。

咽喉の奥まで犯される感覚に、じわりと目尻に浮かんだ涙。


一方で、淫らな光景にしばらく見入っていたホルマジオは、ハッと我に返って笑みを交えたまま言葉を紡ぐ。



「ガチで絶景だな……けど、こっちも忘れんな――よ!」


「んんんっ!?」


「うッ!? 名前、ッいきなりそう吸い付くな」


穴という穴を埋め尽くされる感覚。さらに鋭い水音が部屋中に鳴り響いた。

ギシギシ、と途絶えることのないスプリング音。



「は……ッ」


「っん、ぁ、はぁ……ン、ふ」


「たくよォ〜、いちいちそういう顔すんなって。……歯止め効かなくなっちまうだろ?」


「や、っふ……らめぇ……ぁっぁっ、あんっ……ひぁ、むね、もんじゃ……!」



脇腹から乳房へ。持ち上げるように這わされる手のひら。


本人はいやいやと頭を振っているが、気付いてないのだろう。自分の腰が上下に激しく揺れていることを。

羞恥すら構わずシーツに飛び散った愛液。


そのあまりにも淫靡な動きに、言わずもがな二つの焦熱がムクムクと質量を増す。



「ひぁあ!? ぁっあっ、あっ……はぁ、はぁ……ん、っ?」


なぜ――交互に一瞥すれば、細められる加虐的な4つの瞳。


そして背筋を駆け巡る電流。弱点を確実に捉えていく突き上げに思わず身じろいでいると、不意に口内の肉棒がビクリと一際震える。



「名前ッ……出すぞ」


「ぁ……ふ、んぅっ!」



掛け声が耳を劈いたと同時に、おずおずと差し出した赤い舌。

躾、というよりは性交を行っていくうちに自然と身に付いてしまった。


ドクリと広がる体液。躊躇いと共に喉をゆっくりと上下させる。



「ん……ん……、んっ」


「ッ、いい子だ」


「クク……そのエロい顔、名前本人に見せてやりたいぜ。初めて会った頃、まさに処女だった頃の面影がねェっつーか……もう、≪ごっくん≫なんてするようになっちまったもんな」



飲み切ることができなかったのか、口端を伝う≪白≫。

卑猥なそれをしっかり目に焼き付けながら、ホルマジオが呟いたからかいにポッと赤らむ顔。


もちろん、この行為を自ら進んでしたいわけではない。


でも二人のモノだったら――そう、彼女が普段は言えないことを口にしようとした瞬間、落ち着いた様子のリゾットを横目に律動が再開した。



「ぁあ!? やら……ぁっぁっ、あん……いきなり、っしな……でぇ!」



一心不乱に揺すぶられ、揺れる腰。

恥骨側の弱点を擦っていったかと思えば、ふと亀頭が標準を定めたのか執拗に刺激を与えられる子宮口。



「しょーがねェだろ? そろそろ、ラストスパートだからな……ッ」


「ひぁっ、ぁっ……らめ……っぁっぁ、はぁっ……ほる、まじおっ……ん、っあ、はぁ……ッ、んん……!」


「名前……はッ、名前」


「っ……ふ、ぅ……あっ、あんっ、は……ひゃあっ」



絶えず響いては消える、情欲をそそらせる嬌声。


押し寄せる波のように現れた一種の終末感。火花のごとく脳内を過ぎっていくそれを感じながら、ビクリと膣道をくねらせる。


そして、胎内の入口を覆う果肉が歓迎を示すため、張り詰めた陰茎の先端へ吸い付いた――瞬間。



「くッ」


「や、っあん……はぁ、はぁっ……ん、ぁっぁっ、あっ……イっちゃ、っ……ひぁ、ぁああん!」



最奥で爆ぜる熱の片鱗。それらを奥へ奥へ取り込もうと、うねる子宮は疑いもなく飲み込んでいく。



「……っはぁ、はぁ……」


「は、ッ……名前。腰、上げんぞ」


「ひぁっ、あ……、ん」



しばらくして、疲労に身体を支配された名前は、今もなお快感の余韻に浸ったままベッドへ直接座り込んだ。


すると、男の精悍な胸板によって背後から優しく支えられた。

かち合うのは、情欲に浮かされた女の悩ましげな瞳と深い色を帯びた赤の眼。



「……名前」


「っ/////(け、結局≪激しい≫のするんじゃない……っ)」



おいおい、そんな睨むなって――ゆるりと上体を起こし、豪快に笑って見せるホルマジオ。

名前が誘ったんだ。激しくもなる――と真顔で呟いて、眼前の頭に手を寄せるリゾット。

開き直らないでよ――さらに視線を鋭くさせつつ、頬を朱に染め掛け布団を胸に手繰り寄せる名前。



「〜〜っ」


視界に映る二人の男と、自分。歪な三人のバランス。


それを、居心地がいいと少なからず感じている自分は、いつからおかしくなってしまったのだろう。



「(絆されたつもりはなかったんだけど)」



でも結局、絆されたということになるのかもしれない――≪しょうがない≫で済ませてしまう自分に対して、口元をほんのりと緩ませた彼女は、気付いていなかったのである。

ヒクついた秘裂から、先程最奥に受け入れたばかりの白濁液がコポリと溢れ出したことを。



さらに、意識が上半身に集中して、自然とМ字開脚に似た姿勢のまま隠そうとすらされていないそこを、男たちがまじまじと見入っていたことを。


バサリ。なんの前触れもなく奪われた布団に、女はギョッと目を見開いた。


「!? ちょ、ちょっと……何す――」


「オメーが無防備にしてんのが悪い。わかるよな? ……まだまだ足んねェんだよ。リーダーもそう思わねーか?」


「えっ」


「ああ。名前にあれほどいやらしく乱れられてはな……一度限りで満足するはずがない」



色香がこぼれ落ちる彼らの眼差し。それらに応えるように疼く躯体の奥底。

言うまでもなく顔を出した気恥ずかしさといたたまれなさに、名前はふいと目をそらす。


それでも、忙しなくベッドから抜け出すことをなぜかできない――否、自分はしようとしないのだ。



「(ほんと、おかしいわよね。……火遊びに似たモノへ固執する年齢でもないのに、こんなにも酔いしれてしまうなんて――)」


彼女を占めるのは恋情か、快楽か。

ただ唯一、依然として変わらないのは、前から背後からと強く自分を抱き寄せる二つのぬくもり。


その火照った肌越しから伝わってくる彼らの心音に、名前もまた左胸をトクリと高鳴らせていた。




夜はまだ、始まったばかり。









ビランチャに告ぐ
その≪天秤≫には、掛けられも掛けさせもしない。




〜おまけ〜



「なァ、リーダー」


「どうした」


「いやー、今日も失神しちまうぐらい名前を余すことなく食べただろ? だから――」








「あんたと俺。なるなら、どっちが≪パードレ≫になんのか、ってふと思ってよ」



そう、名前の自宅を訪れるたび激しく求めてしまうといった≪情欲≫とは裏腹に、二人の胸に拡大し続けているのは≪情愛≫。

男たちは本心を隠しているわけではない。むしろ、気付いていないのは、狭いベッドの上で猛獣二人に挟まれているにも関わらず、意識は戻ったのかぐっすりと眠り込んだ、強者と呼べる女だけだろう。


と、そんな事情はさておき、ホルマジオが放った意味深な一言に訝しさを帯びるリゾットの瞳。



「なんだ薮から棒に。…………オレに決まっているだろう」


「うっわ、どこから来んだよその自信は」


あくまで真顔で自己主張を行う我らがリーダー。

律儀というべきか、天然というべきか――彼の反応に男は思わず目を剥く。


図らずとも、≪宣戦布告≫のムード。


肩を竦めたホルマジオはよく紡ぐ口癖を胸中で吐いてから、自分を親指で差し示した。



「むしろ……今回のことだけで言えば俺の方が先に出したし、ありえない話じゃねーよなァ?」


「……ホルマジオ。こんなときに巫山戯たことを言うんじゃあねえ」


「ッいやいや! リーダー、あんたがまず名乗り出てきたんだろうが……!」




確率は五割五割。自分だけ≪冗談≫と受け止められる筋合いはないはず。今度こそあからさまに頬を引きつらせた彼が枕元に肘を寄せ叫んだ、そのとき。



「んん……」


「「!」」



自分たちの間で身動ぎをした、一糸纏わぬ姿の可愛い同僚。


リゾットはおもむろに左を、ホルマジオは苦笑気味に右を一瞥して、彼らは互いに顔を見合わせる。

そして、ばつが悪そうに丸刈りの頭を掻いた男は「――正直複雑だが」と前置きした上で、先程より遥かに小声で呟いた。



「そうなったらなったで、もういっそのこと≪三人暮らし≫もアリだと思わねェ?」


「……なるほど。その手があったか」


「な? 名案だろ? ま、どちらにしてもよ……歳、あんま変わんねークセに、こいつを妹みたいに可愛がってる≪プロシュート兄ィ≫からアッパーの一発や二発食らうのは、間違いねェけどな」


「はあ……それだけで済めばいいが。あいつの……その、≪ミスコン≫とやらにも困ったものだ」



いや、それを言うならシスコンだろ――なぜこの男は仕事以外になると、ここまで≪決まらない≫のだ。呆れゆえに溢れるため息。


まさか自分を囲んで未来の話をしているとは、一切知ることなく熟睡する名前。気持ちは二人のどちらかに傾いているのか、はたまた別に心惹かれる男がいるのか。どちらにしても、彼らは彼女に決まった選択肢しか与えるつもりはないのだが。



「Buona notte。名前、いい夢見るんだぜ?」


「おやすみ、名前」


「……、っん」



とは言え、女を愛おしげに見つめる男たちの表情に滲み出るのは、微かな焦燥を含んだ本音。

――できれば、名前を≪独り占め≫したい。


そんな、胸に溢れんばかりの≪欲望≫の意を伝えるようにホルマジオは左、リゾットは右と各々に掴んだ彼女の細い手首へそっとキスを贈るのだった。











大変長らくお待たせいたしました!
任務後、リーダーとホルマジオと同僚ヒロインの三人で、身体の関係のお話でした。
リクエスト、そしてお祝いのメッセージだけでなく感想のお言葉まで……ありがとうございます!
アラサー(一人は確実、一人は推測)たちとの関係ということもあり、大人の雰囲気を目指しましたが……いかがでしたでしょうか?


感想&手直しのご希望がございましたら、clapもしくは〒へお願いいたします!
Grazie mille!!
polka



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