三毛猫のタンゴ
※アジトの近所に住む一般人ヒロイン
※甘裏





「んん〜?」



ある日のこと。ホルマジオはペット(彼のみがそう思っている)をアジトの隅々まで探し回っていた。

何が気に入らないのか、その猫はよく部屋を飛び出し――こうして捜索のため右往左往するのがもはや男の日課である。




「ったく、あのワガママ猫め。どこ行ったんだよ……しょォがねーな〜!」



思わず口から溢れ出す文句。

≪まさか外に出たのだろうか≫。もしそうならば探しようがない、と致命的な痛手にホルマジオが首筋へ手のひらを添えた。


そのとき。



「ホルマジオーッ!」


不意に遠くから届いた叫声。

その音に潜んだ焦燥。


心当たりがないため彼が首をかしげながらそちらへ向かうと、玄関に仲間三人が屯っているではないか。

彼らの瞳には、理由はわからないが途方もない羨望と興味。



「おいおい……お前らこんなとこに集まって、一体どうしたよ」


「それはこっちのセリフだよ! 抜けがけは許可しねえぞ!」


「いやー……あんたのタイプとは思えないけど、ディ・モールト可愛いじゃん!」


「はァ? 何言ってんだ」



イルーゾォが怒りで眉を吊り上げるのに対し、メローネはいかにもあくどいことを考えていそうな薄い笑みを浮かべている。

≪抜けがけ≫がどうとか、≪タイプ≫がどうとか――なんだと言うのだ。



そんな感情を胸に蔓延らせたまま、男たちの視線の先へ右足を一歩踏み出せば、



「あ」



今しがた探し求めていた猫が、そこにいた。


だがどこか男の様子がおかしい。当然、無事アジトへ帰ってきたペットに安堵してはいるのだが――



「よかった……飼い主さんが見つかって。ね? ねこさん」


「にゃーん」



ホルマジオの目は、自分の猫を抱き抱える女性に釘付けだった。


透明感のある白い肌。

微風で静かに揺れる黒髪。

猫に向けられた鳶色の優しい眼差し。


その色合いはさながら、とある猫の一種。



「……可愛い三毛猫がいる」


「…………ホルマジオ。テメー、ついに目ェおかしくなったのかよ」



その場にいたうちの一人である、ギアッチョの蔑むような視線がこちらを鋭く突き刺すが、今はそれにツッコミを入れる余裕も情感もない。


――おかしい。

自分は確か、お色気たっぷりのナイスバディーがタイプだったはずだが、こうして鼓動を速まらせているのはアジア系らしい童顔で、いまだ≪少女≫の香りが残るシニョリーナ。



「あの……?」



いつまで経っても動かない彼に、不思議に思ったのだろう。おずおずと口遊まれた可愛らしい声にハッと我に返った男が彼女の元へ近付く。

表情に入り交じったのは、感謝と苦笑。



「ハハッ、ありがとな! ちょうど≪いない≫っつって探してたから助かったぜ。あと悪かったな……こんなとこまで、ずいぶん歩かせちまったんじゃねェのか?」


「……ふふ、いいえ。数十歩しか歩いていないので、大丈夫ですよ」


「? 数十歩?」


二人の頭上に浮かぶクエスチョンマーク。

廊下の影からひょこりと顔を出し、彼らの様子を窺う仲間。

しばらくして、女性は自分たちの間にある≪ズレ≫に気が付いた。


ぺこりと繰り出す会釈。



「ご挨拶遅れました。私……最近こちらの二つ隣に引っ越してきた、名前と申します」


よろしくお願いします――彼女が首を微かに右へ傾けたことで、ふわりと髪が揺蕩う。

柔らかな笑顔。


それが、近所の少女こと名前とのファーストインパクトだった。








「ああ、あの日本人女性のことか……すでに把握済みだ。挨拶に、とパスタを持ってきてくれたからな。日本では引越しした際に≪ソバ≫を近所へ贈る習慣があるそうだ」



その後の話によれば、どうやらリゾットだけが知っていたらしい。

少しばかり驚いたものの、礼儀正しくいい子だ――と真顔で呟く我らがリーダーに、≪なんで教えてくれなかったんだよ≫と悔しさの滲む声がその場に上がったのは言うまでもない。



「……(ずいぶん可愛い子ちゃんなご近所さんが、来たもんだなァ)」


凛とした、それでいて長閑な微笑。あの笑顔を、ホルマジオが忘れることは決してなかった。









「ッと、いけねェ。ボーッとしちまってた……邪魔すんぜ」


「ど、どうぞ……!」



そしてそんな二人は今や、恋人同士となっている。

彼が仕事の合間を見て訪れる、名前の家。

だが、今回ばかりは事情が違った。




いわゆる≪初めてのお泊り≫なのである。



「あ、う、えと……よかったらソファに座って?」


「あァ。……ん? 名前お前……家の中はスリッパに履き替えんじゃねェのか?」


「え? スリッパ……あっ! 忘れてた……!」



彼女は、男にとって仕事のことはさすがに難しくとも、それ以外のことはなんでも打ち明けられる癒しの存在だった。


一方、外行きのシューズのまま入ってしまったことにようやく気付いた少女は、パタパタと慌て気味に玄関へ戻っていく。そこからわかるのは、名前が明らかに緊張しているということ。

恋人のそれを解すために何かジョークの一つや二つを考えてみるが、あいにく頭が思うように稼動しない。こういった色事前の雰囲気は慣れているはずなのに――ホルマジオもまた、柄にもなく緊張しているらしい。



「ええっと……こ、コーヒー入れるね」


「おう、悪ィな。……って、おいおい! んな高いところ上って危ねェだろ!」


「? でも――」


「いいから無理すんなって」



キッチン上の棚にあるコーヒーミルを取ろうとした彼女の耳に、ぎょっとした彼の声が劈く。


そして、少女の代わりに目的のものを手にした男がぽふ、と空いている手で黒い頭をなで始めた。



「ったくよォ……もっと頼っていいんだからな? 俺ら、恋人だろ?」


「! っ……う、うん」








こうして最初は、テレビの前に座りのほほんと普段と変わらぬ時間を過ごしていた男と女。

しかし、月が真上を通り過ぎた頃には、二人の口数は少なくなっていた。



「……」


「……なァ、名前」


「ふぁいっ!?」



小さなリビングに響く、名前の裏返った声。それにクツクツと喉を鳴らしつつ、ホルマジオがふと真摯な表情で口を開く。


「一応確認するが、今日は――」





「今日は、泊まらせてくれるってガチで思っていいんだよな?」


「!」



一つの言葉に込めた、二つの意図。

ソファの中でより近くなった距離に、彼の声色に、それを読み取られないほど彼女も幼くはない。


コクン――押し迫る恥ずかしさと緊張を胸の奥に抑え付けて微かに頷けば、男は安堵したように笑った。



「ハハッ……そっか、わーった」








「お前がそう言ってくれんなら……俺も、その気で行くぜ」


「っ、でででもね? ホルマジオ、できれば先に――」



次の瞬間、おもむろに唇を塞がれたことで消えた言葉の続き。


逃げることも避けることも許さない、長く甘い蕩けるようなキス。

窒息しそうになるほど濃密なその口付けに、少女が息を吸うためそっと開いた唇の隙間を、舌が割り込んでくる。


気付いたときには遅く、口内の粘膜を一つ一つ執拗にねぶられ、自然と腰はガクガクと震え始めた。


「名前……」


「んっ、ふ……ぁ、はぁ、はぁっ……んん!」


「ッは……ベッド、連れてくからな」


「ぁ……ん、っえ……? や、待っ――ふ、っぅ……ン……っ」



ゆっくりと誘導するように名前の腰を抱き寄せながら、隣の部屋――寝室へ向かう。


ギシリと悲鳴を上げたスプリングの音をバックに、ベッドへ倒れ込んだ二人。

そして、名残惜しそうに離れたホルマジオは、赤く唾液に濡れた彼女の唇を本人に見せつけるように舌先で舐め取った。



「! ……はっ、はぁ……ほる、まじお……?」


「ったく……可愛い顔すんなよ」


生理的な涙で潤んだ恋人の双眸。

まるで自分を惑わすようなその視線に、優しくしたい――という彼の中にある気持ちが掻き消えそうになる。


なんとかそうした欲望を抑えつつ、「脱がすからな」と先程組み敷いた衝撃で少なからず乱れた少女の服に手をかける男。


もちろん、互いに二十年以上生きていることもあり、こうした行為が未経験というわけではない。


だが、彼らの周りには≪初めて≫である錯覚を覚えさせるような緊張感があった。



「ぇ、ぁっ……ほるまじ、お……あの、待っ、て? はっ、ぁ……先にね、お風呂いきた、っん」


「クク、そう言われて≪はい、やめた≫ってなるわけねーだろォ? それと心配すんな……シャワーなんざ行かなくても、お前は綺麗だぜ」


「! ち、っちが……そういう、もんだいじゃ――ひぁっ」



刹那、否応なしにひん剥かれてしまった名前の上半身。


そのくびれと乳房が作り出す、しなやかな曲線。

ゴクリと喉を上下させ、ホルマジオは湧き上がるような熱をひたすら隠しながら、ゆっくりと豊満な乳房に愛撫を始める。


「意外にデケェんだな……揉みごたえがある」


「んっ、ぁっ……ダメ、はぁ、は……おねが……遊んじゃ、やっ、ぁ」



懇願を示すためブンブンと横に振られる首。

ところが、彼女の膨らみの柔らかさ、滑らかさを両手で味わっている彼には通用しない。



「ハハッ、遊んじゃあいねェよ。つか、お前も乳首ぷっくりさせてんじゃねーか」


「っ、ぁ……え!? やだ……ぁっ、あっ……うそ……っひゃん!」


「嘘なんか言わねーって。わかるだろ? こんなに硬くして」


寝室の空気に交わった艶やかな吐息。


腫れた乳頭をすり潰すように攻め立てると、背筋にゾクゾクと言いようのない痺れが訪れた。

一方、男は少女にさらなる快感をもたらそうと指先を動かす。

名前の肢体はひどく小刻みに震えていた。



「ひぁっ、ん、ッ……ほるまじお、っ……やッ……ぁっぁっ、あん……コリコリしちゃダメ、ぇ」


「……んー? 無茶言うなよ、お前の先っぽかなり美味そうなんだぜ?」


「! やら……ぁっ、ぁああ……!」


「ん……腰ビクビクさせてエロいなァ。大人しそうに見えて淫乱。いいギャップだ」



次の瞬間、不意にホルマジオがぶるんと揺蕩う胸の先端を、上唇と下唇で挟む。


骨盤を駆け巡る電撃。

さらに、彼が頂きを優しく噛めば、より高い嬌声を上げると同時に彼女は喉元を晒した。



「はっ、ぁ……ダメなの……あん、っん……噛まな、でぇ、っ!」


「おーおー。名前お前、甘噛み好きなのかよ……さっきとあからさまに反応変わったぜ」



いやいやと再び左右に動く顔。

だが、少女の把握をした男は淡々と舌先や歯を酷使し続ける。


「ふ、ぁっ……はぁ、っは、ん……や、ぁあんッ」



丹念に先端をしゃぶられ、ピチャピチャと耳を犯す水音。

それが、名前の心をさらに羞恥へと高めた。

恋人からもたらされるとめどない快楽によって、たまらなく火照った身体。


≪まずシャワーに≫と嫌がっていたはずが、彼女は自ずと乞うような眼差しを向けてしまう。



「っ……ほ、ほるまじお……」


「クク、≪下≫が切なくて仕方ないってか? しょォがねーな〜。今、名前の望み通りにしてやっから」


「きゃ……っ」


スルリ

腰が持ち上げられた途端、奪われるスカートとショーツ。


一糸纏わぬ姿。恥じらう少女の表情を胸に焼き付けつつ、目線を花弁へ移したホルマジオは想像以上の光景に言うまでもなく口端を歪めた。



「ずいぶん蜜が溢れ出してんなァ、おい」


「〜〜っ////」


シーツに広がっていく愛液。

その情欲をそそらせるいやらしさに、彼が足を開かせていた手の片方を秘境に寄せる。



「ぁっ……やら、そっちは……ん、ひぁ、ぁあああっ」


「お前のナカ、すげー狭いけどよ、俺の指を嬉しそうに飲み込んでってるぜ?」


「ん、ふっ……ぁっぁっ、ダメ……らめぇ! ソコ、っぁ……こすっちゃ、っや、あん……!」



ざらついた窪みを中指でただ擦るたびに、そこが弱点なのか背を弓なりにさせる名前。

同時に、蠢く膣壁を肌の感覚で捉えながら、男がふと彼女の白い陶器のような内腿を唇で啄み始める。


瞠目する鳶色の瞳。

不規則な二つの愛撫に、少女はピクリピクリと反応していた。



「っあ、はぁ……ほる、まじお、ッ……ぁっ、んん……ダメな、のぉ」


「クク……≪ダメ≫だァ? 痕付けられて、ナカ震わせてんじゃあ世話ねェな」


「っ……それ、は……ん、ぁっ、はぁっ」


「……こっちも準備万端か」


こっち――名前が首を捻ったときにはもはや遅く、薄紅色に染まるビラを拡げたホルマジオの親指。


彼は丁寧に包皮を剥き、すでに勃起した秘豆を己の眼前へ露わにする。

そして、充血した膣内への刺激と共に、その小さな粒を指の腹で扱けば、彼女の喘ぎ声は一層淫らなモノに変わった。



「ぁっ、ぁあ! あんっ、ん、ふ……はぁ……いじっちゃ、やら……ひぅっ!?」


徹底して与えられる性感帯への刺激。

責め苦のような感覚に、少女は漆黒の髪を振り乱している。



「っや……ぁっぁっ、二つ、いっしょ……はぁっ、ん……ぁ、らめぇッ」


「残念ながら、そうは見えねェぜ……お前の顔、ずいぶん恍惚としてっからな」


そう言ってほくそ笑む男だが、なぜか強い快楽は押し迫ってこない。


おそらくホルマジオは、≪優しくしよう≫と努めてくれているのだろう。


ところが、絶頂と自分の間にあるモヤはいつまで経っても消えず――名前はまるで焦らされているような感覚に陥ってしまう。

自然と、彼女は熱を帯びた視線で、己の股間に顔を埋める恋人を見つめていた。



「ぁっ、も、もう……ん、はぁっ、は……ほるまじおの、ちょーだい……っ」


すると。


少女のひどく淫らな、切羽詰まった誘い文句に驚いたらしい。

男がぴたりとすべての動作を止め、口角を上げる。



「へェ……思ったより誘い方が上手いじゃねェか」


「ん、っぁ……だって……ひゃっ、ぁ、初めてなのっ…………はぁ、はっ……さわって、もら、て……こんなに気持ちい、って……思ったのっ」


「!」



刹那、何か柔らかなモノがチュッと小さな音を立てて、名前の唇を掠めていった。

その正体を数秒後に理解したのか、ぱちくりとさせながら見上げれば、呆れと劣情の入り交じった笑顔でこちらを見据えるホルマジオが。



「……ガチでお前はよォ……んな風に俺のこと誘って、どうしてーんだ〜?」


「っ……ほんとの、ことだから……言っただけ」



フイッ

自分が言ったにも関わらず、恥ずかしくてたまらないようだ。


名前には敵わねェな――改めて苦笑を口からこぼした彼は、やおら服を脱ぎ捨て始める。



「っ!」


布から晒け出された肉体美。

その想像以上の逞しさに、彼女は驚きとときめきでひゅっと息をのんだ。


仕事についてはあまり聞かないが、もしかするとガテン系なのかもしれない。


一方、少女の貫くような視線に気付き、そちらを振り返った男。


「ん? どうした?」



しかし、脳内に浮かんでいた思考を当然ながら打ち明けられるはずもなく。

なんでもない、と示すがごとく首を横へ振る名前に、ホルマジオは詮索したい気持ちをグッと抑え付け再びベッドへ体重を預けた。



「いいか? 痛かったら、ちゃんと言うんだぜ?」


「……う、ん」


「名前……、……くッ」


「ん、っ……ひぁ、っぁ、……ん、や、っぁああ!」



無理やりと言っていいほどこじ開けられていく蜜壷。

その粘膜を圧迫された強烈な感触に、思わず絶頂を迎えてしまったらしい。


規則的に収縮する彼女の膣肉が、彼の眉をひそめさせる。



「う……ッ、突っ込んだだけでイっちまったのか?」


「はぁっ、ぁっ……はっ……らって、ぇ」



謝罪と共に涙ぐんだ双眸を向けてくる少女。

男は思わず腰を動かしてしまいそうになりつつ、堪えるようにその頭をなでた。



「だって? ……なんだよ」


「ほるまじおの、で……はっ、はぁっ……なか、こすられると、きゅんって……ん……ぁっぁっ、しちゃう、のぉ」


「ッ」


達した直後ゆえの過敏な反応。

名前の無自覚さには困ったものだ。

≪翻弄しているようで、翻弄されている≫。


その的を射た表現にホルマジオは笑ってから、グチュンといまだにうねっている最奥を突き上げ始めた。



「ッひゃあ!?」


「はああ……もっと時間かけて、優しくシてやりてェのによ」



グプリ――結合を表す淫らな音。

何度も狭い膣口を出入りするはち切れんばかりに硬くなった彼の陰茎。


一方、荒い息の彼女は不安を声色に滲ませる。



「えと、っ……んっ、ぁ……はぁっ、ほるま、じお……おこって、る?」


「いいや、全然怒ってなんかねェから安心してくれ。まッ、お前の無防備さは正直心配だけどな。……つっても、可愛い名前の誘惑は断る気ねーし……覚悟するんだぜ」


「かくご……? ぇ、っぁ……ひぁ、ぁっあっ、ぁあんっ」


どうやら男が放った言葉の意味は、律動の激しさだったらしい。

全身を揺さぶるような振動に、強い快感で腰が震えた。


だが同時に、少女の心に溢れ出すのは恋人と繋がることができた幸福感。


ぎゅうっとホルマジオの首に手を回し抱きついた名前は、見よう見まねでその筋肉がしっかり付いた肌へ吸い付いてみる。



「ッ……おいおい、どうしたよ」


「ん、わた、しも……付けたくて……んっ」


「ククッ……そうかそうか。けどよ……んなことされたら、俺に≪ベタ惚れ≫って勘違いしちまうだろォ?」


「っ……ほ、本当にベタ惚れだから、いいよ……?」



ああ、まただ――図らずとも膨らむ愛と欲。

そして、不意に自分を射抜いた≪ホルマジオは?≫と言いたげな彼女の視線。


次の瞬間、その美しい鳶色に引き寄せられるがまま、彼は少女の額に己の額を重ね合わせていた。



「ハハッ、わかってやがるクセに。もちろん俺も…………いや、≪好き≫じゃねェ」


「……っえ?」









「俺ァ愛してるかんな?」


「!」


「お。今度は赤くなったぜ」


少しばかり青くなったかと思えば、すぐ真っ赤になる頬。

からかわれた――そう気付いた名前は嬌声を微かに漏らしながら、じとりと男を睨みつける。



「あんっ、ぁ……やら、ぁっぁっ、ん……いじわるしな、っでぇ」


「クク、悪ィ……お前のコロコロ変わる表情が可愛すぎてよ。つい意地悪したくなっちまうんだ」



なんというサドだ。

つい先程、一瞬だけ覚えたショックを返してほしい。


そう簡単には怒りが収まらないのか、彼女が恋人の肩口をポカポカと叩いた。



「〜〜バカっ、ばか……ほるま、じおのっ……おや――ひゃぁああん!?」


「へェ……俺のモンをパックリ咥え込んでる可愛い子ちゃんは、よっぽどいじめられんのがお好きか」


「ちが、っ……やらっ、あん……はっ、はぁ……ごめん、なさ、っぁっぁ……ひぁあ……!」


「聞こえねェな〜?」



熟れた果肉を抉るように彼の男根が弱点を擦っていく。

≪オヤジ≫と言いかけたことが、スイッチを押したのかもしれない。


腹部まで突き刺さってくるような錯覚に陥りつつ、少女は無意識のうちに肉襞をくねらせていた。

密着する二人の躯体。


「ぁっあっ、ん、はぁ……おく、ぐちゃぐちゃしな、っで……ひゃん、っ」


「ったく、今度言ったらお仕置きすっから……忘れんなよ?」


「! や……っおしおきは、やら――んん……っ」


男を見上げた刹那、おもむろに塞がれる桜色の唇。

気が付けば、ぴちゃりぴちゃりと水音が淫らに絡み合う。



「ふっ、ぅ……んっ……」


どちらのものとも判断のつかない唾液が、名前の口端を伝った。

室内に轟き続ける、肉と肉がぶつかり合う音。


そして、肥大した性器によって鋭い快感が子宮に焚き付けられ――あられもなく喘ぐ彼女の目の前を白い光が過る。



「は、ッ名前……」


「ぁっ……ほるまじお、っ……わたし、んっ、ぁ……イっちゃ……ひゃ、っぁ、あん……!」


「……いいぜ。イっちまえ」


「ん、ぁっぁっ、らめ……も、はげしく……しちゃやら、っ、はぁ……ぁっあっ、ぁ……ひ、っぁああ!?」



ビクリ

一際甘い嬌声と共に、跳ねる肢体。小刻みに震える少女の潤った秘裂が、肉棒の根元から先端に絡み付いた。


「……ッく」


勢いよく胎内に注ぎ込まれる白濁液。

そのどこまでも熱い体液に、脳髄が朦朧としてしまう。


だが、なんとか意識を繋ぎ止め、静かに交わらせた恋人の瞳。



「はっ、ぁ……はぁ……ん、っ、ホルマジオ……」


「……名前」



互いの微笑に見え隠れする、情事ゆえの疲労。そんな心地よい倦怠感の中、二人の胸はどこまでも一つの幸せに満ち溢れていた。









三毛猫のタンゴ
絶対に離したくない、彼女との日常が幸福。




〜おまけ〜



「おっし。……第2ラウンド行くか」


「第2……、ええっ!? な、何言って……っひゃん」


「ククッ、夜はまだたっぷり残ってんだぜ? 寝る、なんて選択肢は元からねェよ」



このまま穏やかな時間を過ごすと思っていた名前に、思わぬ宣告。

そして、布団の中でひどく動転する彼女にホルマジオの手が迫った――刹那。


彼らの間に≪何か≫が飛び込んできた。



「にゃー!」


「「!」」



正体は彼が飼っている猫。中断された近迫に、少女は内心≪助かった≫と安堵の息を漏らしながら、首をかしげる。



「あ、あれ? 網戸開けて入ってきちゃったのかな……?」


「お前……! つーかよォ、来るなら来るで別に構わねーが、俺と名前の間に入ってくんじゃねェ!」


「フシャーッ!」


「おいおいおい……勘弁してくれ。こんなときまで飼い主に反抗期か。しょーがねェな〜!」



アジトに帰ったら、きっちり瓶詰めにしてやっから覚悟しとけよ――こちらに鋭い歯を向け威嚇を示すペットに、ありありと頬を引きつらせる男。

一方、いつまでも睨み合う一人と一匹のおかしさに、名前は小さく笑みをこぼした。



「ふふ……この子はかなりツンデレさんなんだね。可愛い」


「いや、こりゃあもうツンデレの領域じゃねェし……可愛い奴なら、他にもいるだろォ?」



≪可愛い奴≫。この子以外にも飼っているのだろうか、と思考を巡らせてみるが、脳内に浮かぶのははてなマークばかり。


「?」


そんな彼女の心情を察したのだろう。

優しさと雄々しさが入り交じる笑みを口元に宿した彼は、恋人の眼前にグッと顔を近付けた。


トクン。それだけで高鳴り始める心臓。



「ほ、ホルマジオ? あの――」


「まだわかんねーのか? ……いるじゃねェかよ。今、盛ったオスに乳を見せ付けてるとも気付いてない、真っ裸のエロ可愛いにゃんこが……俺の目の前にな」


「!? ぁ、え、その……〜〜もうっ////」



次の瞬間、少女は布団の裾を慌てて引っ張り上げたうえで、紅潮した顔の目から下を隠してしまう。

しかし、元から我慢するつもりのなかった恋人が逃がすはずもなく――嫌がる猫をベッドの下へ移動させたホルマジオは、名前を覆うその寝具を剥ぎ取り、有無も言わさず第2ラウンドへ突入したらしい。





終わり








大変長らくお待たせいたしました!
ホルマジオで甘裏でした。
リクエスト、ありがとうございました!
実はマジオさんの裏は初めて書かせていただきまして……いかがでしたでしょうか?


感想&手直しのご希望がございましたら、お願いたします!
Grazie mille!!
polka



prev next

24/52

back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -