※いたずらっ子ヒロイン
※無理やり裏(愛はあります)
パッショーネの暗殺チームに属する少女、名前はいわゆるいたずらっ子として知られている。
典型的なモノから仲間の度肝を抜くモノまで。しかもその多くが身内に対してであり――特に最大の被害者はギアッチョだった。
「クソッ……オイ! 待ちやがれ! こンのアマ……!」
「きゃー! ギアッチョが怖いよーっ!(棒)」
廊下を駆け抜けながら、にこにこと笑う彼女の手には彼の眼鏡。
どうやらこれもイタズラの一環らしい。
とは言え、彼らも男と女だ。体格差ゆえか、しばらくしてギアッチョから拳骨が与えられると、観念した名前はすぐさま眉尻を下げ人質を差し出す。
「うう、痛い……ごめんね?」
一方、彼女のそうした素直さが案外嫌いではない彼は≪チッ≫と舌打ちを一つ。
「ケッ。最初っから大人しく返してりゃ、テメーを殴らずに済ん――って、ンだよコレはァアアアアア!」
己の手に戻った眼鏡を見下ろせば、レンズに刻まれた≪3≫の文字。
ありありと視界に映る黒は、おそらく消すことが難しい油性ペン。
当然、自分へ視覚補正器を渡した途端、脱兎のごとく自室へ逃げ帰った少女の名を男が叫んだのは言うまでもない。
また、他にも――
「……オイ」
「ん?」
深夜という時間帯であるにも関わらず、部屋に侵入されることもあった。
「≪ん?≫じゃねーだろ、≪ん?≫じゃ。人が寝てる間に何しようとしてんだ、テメーは」
「え? ギアッチョの髪にストレートパーマ当てようとしてるの!」
「……、一応聞くがよォ――、なんでだ」
「サラサラヘアーのギアッチョが見てみたいから!」
このように、繰り返される攻防戦は日常茶飯事なのである。
そして今日。仲間の大半が諸用で出かけているため、せっかくだからアジトを有意義に使おうと、ギアッチョはリビングのソファで居眠りをしていた。
ところが、突如届いた誰よりも軽やかな足音に、瞼を閉じたまま耳をそばだてる。
歩く速度、歩幅、歩き癖。現在進行形で響くそれらに該当する人物は一人しかいない。
「……(来やがったな)」
実は彼、今自分に近付いてきているであろう名前に対し、それなりの感情を持ち合わせているのだ。
カーリーの髪を弄られかけた時は本当に焦ったが、それ以外の場面で本気の制裁を加えたことはない。
もちろん、それゆえに高確率で男がイタズラの対象になっているのかもしれないが。
「あ……ギアッチョ」
「……」
「珍しいなあ、ここで寝てるなんて」
――今日はオメー以外、誰もいねえからな。
そう一言、いつものように紡いでしまいそうになる口をそっと噤んだ。
すると、ふと靴音が遠ざかりしばらくして戻ってきたかと思えば、腹部から下を覆った温かな布(おそらくタオルケット)。
風邪を引かないようかけたのだろうか。彼女のその気遣いにドキリとする自分がいて――ギアッチョは内心で顔をしかめた。
「(こういうとこがあっから、嫌でも絆されちまうんだよな。納得いかねえ)」
どうせ、すぐに何か仕掛けてくんだろ――そんな、諦めに似た感情で少女の次なる行動を待ち構える。
だが、一向にイタズラらしきことが起こらない。
まじまじと自分を見つめているのか、名前からもたらされる絡みつくような視線に募る苛立ち。
「(オイオイオイ……どうした、いつもの≪イタズラ≫はよォオ――ッ!? ずっと寝たフリしてるこっちの身にもなれってんだ!)」
頬が引きつらないよう筋肉に込めた力。それが訴えた≪限界≫にひたすら「待て」と命令を出し続けていると、鼓膜を震わせる一つの音。
「……ギアッチョ」
「ッ(な、なんだコイツ……しおらしい声出して……≪可愛い≫とか思ってねェェエエッ!)」
いつもは出会い頭に何かしでかすと言うのに、今日はどこまでも≪らしくない≫。なんだってんだ。彼がギリと微かに奥歯を鳴らした――
刹那。
「好き」
チュッ
「――!?」
鈴を転がすような一声と共に唇を掠める、柔らかでしっとりとした触感。
ちなみに、彼女が仲間である男たちに挨拶と称して口付けることは滅多にない。
まさかこれも、先程の小さな告白も、≪イタズラ≫だと言うのか。
プツン
「オイ」
――なんだよソレ。
――よくわかんねえけどよォオオ……すっげーイラつくぜ。
「! ぎ、ギアッチョ! まさか起きて――」
「ザケんじゃあねえぞ」
ドサリ
次の瞬間だった。怒りの炎を燃やしたギアッチョが、立ち去ろうとしていた少女の腕を強引に引き寄せ、つい今しがた自分が寝転んでいたソファへ縫い付ける。
一方で、あっという間に押し倒された名前はわけがわからず、視界を埋め尽くした天井と仲間の顔にただただ目を丸くするばかり。
「え……? ぎあ、ちょ? えっと……これは一体」
「テメーはいっつもいっつもよォオオオ! ちょこちょこちょちょこ俺の周りばっか動き回りやがって……ッ!」
「っそれ、は……その……、さっきので怒らせっちゃったなら、ごめんね? でも私……」
おずおずと開いた彼女の唇から溢れる謝罪。しかし、その言葉はもう聞き飽きていた。
「……チッ、別に謝んなくていいぜ。オメーの≪イタズラ≫には慣れっこだからな……だがよオ、何度言ってもわかんねえテメーにゃ、そろそろ仕置きっつーモンがいるよなァ――ッ?」
イタズラ。
粗雑に放たれた単語に、ようやく彼の≪誤解≫を悟る少女。
「! ま、待って、ギアッチョ! 誤解してる! さっきのはイタズラのつもりじゃ――っきゃあ!?」
ビリッ
だが時すでに遅し。
懸命に紡ぎ出そうとした名前の想いは、布が破かれた音と肌が捉えるひやりとした感触に掻き消される。
男がこれから行おうとしていること――ソファと密着する背中に手を回されたかと思えば、するりと取り払われた下着に抵抗を見せ始める彼女の身体。
「ひっ……ぁ、やだっ……やめて……ギアッチョ、いや、ぁあ!」
「オイ。今更暴れても遅ェんだよ」
鋭くなる眼鏡越しの眼光。とにかく自分を押し返そうとする手が邪魔だ、とギアッチョは頭上に持ち上げた少女のか細い手首を、もはや布切れと化したシャツの一部で左右共々縛ってしまった。
当然ながら、彼の目の前に露わになる二つの膨らみ。おもむろに押し寄せた羞恥に心が掻き立てられ必死に足を動かそうにも、男が太腿あたりに伸し掛っていることで抗えない。
やめてほしい――その懇願は届かず、表情を無にしたギアッチョの割と大きな手のひらが、小刻みに震える名前の乳房へゆっくりと這わされる。
「ンだよ、思ったよりデケーじゃねえか」
「っひぁ!? ぁっ、いや……っおねがい……はっ、ぁ……ん、やめて、ぇっ」
「…………、クソ」
「あん、っふ……ぁ……ぎあ、ちょっ……んッ、わた、し……んんっ!?」
次の瞬間、言葉を遮るように彼女の唇が塞がれた。
目を見開き驚くより先に、ねっとりと粘膜を荒らされ、貪り尽くされる口腔。
執拗に口内を攻め立てられ、息を乱した少女の舌が奥へ隙間へ逃げようとすれば、すかさずそれは絡め取られてしまう。
クチュリ、ピチャリ。三半規管を直接突き刺す、淫靡な音。
「ふ、っぅ……や、ぁっ、はぁ……ぁ、ん……!」
「ん……」
「はっ、はぁっ……ぎあっちょ、っ……ふっ、ぁ、んん……ンっ!」
そして目の前が真っ白になりかけた頃、ゆっくりと焦らすように窒息の世界から解放される。
肩で息をする二人の間を繋いだ銀の糸。
恥ずかしくてたまらない。それでもなお、顔をこれでもかと言うほど紅潮させた名前が口を開こうとすれば――
「黙れ」
耳を劈いた命令形。
ゾクリ
彼にしては珍しいひどく静かな、怒り。
その異様な雰囲気に驚愕したのだろうか。息をのんだ彼女の隙をついて、男が手の動きを再開させた。
「ひゃんっ!? やっ……ぁっ、ん……はぁ、はっ……ぁっぁっ……もんじゃ、ダメぇ!」
ぐにぐにと自由自在に形が変わる白い陶器のような乳房。
同時にリビングに響き渡る、目尻に涙を浮かべた少女の淫らな嬌声。
その扇情的な仕草に、ズボンの下で膨張する一物を無視しながら、ギアッチョは鼻で笑う。
「ケッ……ダメとか言いながら先勃たせてんじゃねーか、オイ」
「! ちが、っ……ぁっ、そ、なんじゃ……はっ、ぁ……ひぁあ!?」
次の瞬間、性感を示すように赤く腫れた乳頭を爪で弾かれた。
一層甲高い悲鳴と共に弓なりに反らされる背。
「はぁっ、はぁっ……ぎあ、っちょ……おねがい……んっ、ぁ……やら、っそれ、いやぁ/////」
「嫌ァ? じゃあよォオ……潰されんのがいいのか?」
「――ひぅっ!? やっ、ぁっぁっ、ん……いや、っ……クニクニしな、でぇっ!」
「……いいみてえだな」
押し潰すように乳首を扱われ、跳ねる女体。名前のしなやかな腰がより強い快感を求めて揺蕩う。
だが、本人は気付いていないのだろう。
懸命に静止を訴える彼女の艶やかな視線を受け止めつつ、彼は思わず口端を歪めた。
「ハッ、どうしたんだよ。内腿擦り合わせて」
「はっ、ぁ……え? ッ! やら……ちが、違うのっ……これは……ぁっ、あん!」
「しっかしオメーも、無理やり犯されてるっつーのに抵抗忘れて、かなりの物好きじゃねえか」
違う、違う――そう言いたげに何度も横へ振られる首。
とは言え、快感にという名の熱に浮かされた身体はひどく正直だ。
自分を唆すように、ズボン越しの股座へ擦りつけられる少女の下肢。
当然、元より好意を抱いていた女性からの誘惑に堪え続けられるほど、男も我慢強くはない。
「っきゃあ……!?」
座る箇所を変え、名前のスカートを勢いよく捲り上げる。
そして、じたばたと太腿を動かす彼女をよそに、滑らかな足を通り抜けるショーツ。
さらにギアッチョはヒクヒクと振動する内腿を掴み、M字にさせながらその奥を覗き込めば――潤いの帯びた薄紅色の花弁に自ずと吊り上がる口角。
「オイ……ここ、グッチョグチョだぜ?」
「そ、んな……ぁっ、ちがっ、の……わたし……わた、しっ」
「何が違えんだよ」
「やっ、ぁあああ!?」
チュプ
そうした水音が少女の鼓膜を震わせた瞬間、彼の指が膣口を押し拡げた。
「ぁっ……ぁっあっ、ん……やらっ、はっ、ぁ……ひぁあんっ!」
一本、二本と増やされる指。内壁への圧迫。時折、神経が集まる陰核を親指の腹で擦られ、収縮するナカ。
今ここがどこで、どうしてこうなってるのかということすら憚らず、名前の半開きの唇から漏れる喘ぎ声。
集中的に攻められる膣肉の弱点。朦朧とした彼女の脳内が、漠然と≪絶頂≫を悟る。
「ん、ぁっ、いや……ぁっ、ぁっ……ぎあ、ちょっ……ダメ、っらめ……あっ、イ、ちゃ…………っ、?」
そのときだった。
まるで達させないと告げるかのように、突如消えた圧迫感に目を白黒させる少女。
躯体を支配するもどかしさ。
どうして――思わず色めいた視線を向けると、返ってきたのは案外淡々とした反応。
「テメー忘れたのか? お仕置きだっつったろ。もう終わりだ、終わり」
「え……」
そんな、私。そう呟いて俯いた名前が、妙な歯がゆさゆえか身体をモジモジとさせている。
一方、快楽と理性の間で揺れる彼女を一瞥して、なぜかやおらズボンを脱ぎ始める男。
そして改めてソファに浅く座りながら、こう言い放った。
「……どうしてもっつーなら――」
「コレ、できるよなア?」
ギアッチョの指が差し示すのは、下着を突き上げる陰茎。つまり、求められているのは口淫。
押し寄せた恐怖と不安。ところが、もはや≪イきたい≫という願いと快感に囚われた少女に迷いはなかった。
「(コクン)」
「ッ、なら早くしやがれ……ボケが」
想像した以上にすんなりと頷いた名前に内心驚きつつ、自分の前へ座らせる男。
しかし、彼女は今も手首を拘束されたままだ。外してほしい――そう懇願するように彼をじっと見つめるが、「全部口でしろ」と一蹴されてしまう。
すべて口で。なんて難しいのだろう。ズボンを脱いでくれたことが唯一のお情けなのだろうか。喉を一度上下させた少女は、恐る恐るトランクスの端を唇で食み、なんとかそれをずり下ろす。
すると、露わになるひどく充血した肉棒に、言うまでもなく赤面した。
「/////(ぎ……ギアッチョの、意外におっきい……)」
「オイ。まじまじ見ても、なんも出ねえぞ」
「!」
かなり凝視してしまったらしい。
生々しくグロテスクな一物が、眼前にある。
しばらく逡巡していた名前もついに決心したのか、今更だが両腕でそっと乳房を隠しつつ、その先をちろりと舐めてみた。
「……ん」
「くッ」
よくわからぬまま、血管の浮き出る裏筋をつーと舌先でなぞる。
さらに、先端の亀頭をなんとか口内で咥え込み吸い上げれば、歯を食いしばりながら息を乱すギアッチョの姿が。
「……ッはぁ」
瞳がかち合った途端、なぜかわからないが男根がドクリと脈打った。どうしたのだろう――喉奥まで彼のモノでいっぱいにしたまま、彼女は思わず尋ねてしまう。
「あむっ……んっ、ふ、ぅ……ぎあっひょ、……気持ひいい?」
「バッ! ンなこと聞くんじゃねえよ! つか、そこで喋んなッ!」
「んん……らって……」
「……ッ(コイツ、強要されてる自覚あんのか?)」
まさか男がそんなことを考えているとは、思いもしないだろう。
根元から先端まで、丹念に愛撫を続ける少女。
いつの間にか、名前はギアッチョに気持ちよくなってほしい一心で舐っていた。
「ん……っ」
「はッ、名前……」
「!」
――今、名前。
瞠目した彼女の髪がクシャリと音を立てて掴まれる。
優しい手つきであるため、痛くはない。
もっとした方がいいのかな――首を捻った少女がとりあえず陰茎をますます咥え込もうとしたそのとき、温かな口腔から熱い感触が消えた。
「ふ、ぁっ……、?」
「一人イかせようとしてんじゃねー」
理由はわからないが、悔しさを滲ませた彼の表情。
視界には、唾液に塗れた相変わらず赤黒い一物。
夢中だったのだ。改めて自分がしていたことに名前がボッと顔を赤らめていると、突然身体をソファへ誘導される。
「?」
そして、椅子の背に抱きつく形で膝立ちになった彼女の後ろ姿を見つめつつ、同じく膝で長椅子に乗り上げた男が背後からたおやかな腰を掴んだ。
ギシッ――二人分の体重に鳴り渡った軋む音。
「足開け」
「え? あの……なんで――ひぁ、っぁああん!?」
不思議そうにしながらも少しばかり両膝を開いた刹那、グチュンと鮮明な音に重なった挿入。
ギアッチョへの奉仕でひどく熟れた秘裂に、焦熱が捩じ込まれていく。
はち切れんばかりのモノ。少女の白くほっそりとした喉が、惜しげもなく天井に晒された。
「ぁっ……あっ、や……ん、はぁっ、ぁ……」
何も考えられない。ただ、受け止めることしか、脳内にない。
「っん、ふ……ッはぁ、っぁ、っは……、っ!」
息を整えようとすれば、さらに根元まで打ち込まれる。
食い千切るように蠢く肉襞。
「ッく」
「やぁっ、!? らめ……ぁっぁっ、動いちゃ、っ……ひゃ、ぁあん!」
パンパン、と耳を突き刺す淫らな打音。
ダメと言いつつも、律動に応えるが如く上下に振られる名前の腰。
肉と肉が何度もぶつかり合っていた。
「ん……っぁっぁ、おねが……やらっ、あん、っ、ン……奥グリグリ、っや、ぁあッ!」
「はッ……オイ名前。オメー、嫌なら食いついてくんじゃねえよ。煽るように腰振りやがって」
「ひぁあんっ、んっ……ちが、そ、じゃなっ……ひゃあ、っ……!」
「……そういや――」
「アイツら、もうそろそろ帰ってくんじゃねえのか?」
「!」
次の瞬間。忘れていた事実に、一時停止をしたかのようにぴたりと止まる少女。
ところが、彼が動きをやめることはない。
「リビングのドア、鍵閉めときゃあよかったな」
「っぁあ、ん……はっ、はぁ、っ……そん、な……ぁっ…………きゃう!?」
「蕩けた顔でソファから胸剥き出しにして……こっちに回らなくても、オメーのそれですぐ気付かれるぜ」
「!? やっ、ぁっぁっ……いや……いやぁ、っん、ふ……おねが、ぁっ……もみもみしな、でぇ!」
背後からでもわかる名前のいやらしさ。
きゅうきゅうと絡みつく蜜壷。
ソファに滴り落ちた体液。
そして男は、彼女越しにある、今はまだ開かれていない扉を一瞥して、嘲るように口端を歪ませた。
「名前オメー、見られるかもしんねえ状況下で犯されてんのによォ……ずいぶんナカ締め付けてくるじゃねえか。こりゃあどういうこった」
「ッ……ぁっ……し、締め付けて、なんか……いな――ひぁっ」
「嘘ついてんじゃねえ。アレか? ≪マゾ≫っつー奴か?」
否定をさせないように、最奥を突き上げられる。
だが、自分は決して≪マゾヒスト≫ではない。
そう伝えようと、必死に頭を振るう少女。
「(ブンブン)」
一方で、ギアッチョは相変わらず信じていないのか、出し入れを激しくするばかり。
ジュブリ、と結合部は二人の液体が交じり合い泡立っていた。
「ぁっあっ……ん、ぎあっちょ、っぉ……はげしくしちゃ、っやぁあ……!」
「ッ」
「! んっ、ぁ……なんれ、おっきく……あんっ」
さらに肥大した男根。嬌声を絞り出しながら、思わず振り返れば――
「ッは……ンな声で呼ぶからだろうが」
「こ、え? ぁっ、ぁっあっ……そ、なのわかんなっ……ひゃ、っ、ぁあ!」
「く、ッ……名前」
「やっ、ぁあん!?」
周りも、状況も顧みず、ただ快感を貪り合う男と女。
この行為は同意なしに進めていると言うのに、勘違いしてしまいそうになる。
爛れた感情と果肉。
「ん、ぁっ……らめ、っらめぇ……だめなの……っは、ぁ、はぁっ……やら、ぁ……わたひ、おかしくなっちゃ、っ」
「……おかしく、だア? ケッ……なればいいじゃねえか」
隅々まで密着した互いの性器。
より刻まれる間隔が狭まったグチュリグチュリという音が、≪終わり≫を知らせていた。
溢れ出る支配欲。
苦悶を表情に滲ませた彼が、吐息をこぼすと同時に名前の耳元で囁く。
「名前。……しっかり、受け止めろよ」
「へ……? ぁっ……らめ……ぎあ、ちょ、っん……ま、って……ぁあ! ナカは、っぁっぁ……やっ、ぁあああん!」
「く、ァ……ッ」
ビュクリ。瞬時に胎内を埋め尽くす熱い体液。
それを彼女がなす術もなく受け入れる一方で、少女の腰を支えながら、男は何かを伝えるようにその首筋へそっと唇を押し当てていた。
踏み越えたデッドライン
その先にあるのは、思いもよらなかった≪心の一致≫。
〜おまけ〜
情事の香り漂うリビング。
そこで、いつの間にかソファの端に寄っていたタオルケットを名前の裸体へ被せたギアッチョが、苦虫を噛み潰したような顔でぽつりと呟く。
「……つーわけで、名前。二度とあんなことすんじゃねえぞ」
あんなこと――自然と脳内に浮かんだのは、己の堪忍袋の緒を見事に切ったあのキス。
もう二度と、苦々しい想いで彼女を抱きたくはない。
しかし、手首が解放されたにも関わらずいまだソファに座り込み、いそいそとタオルケットを胸元に手繰り寄せた少女から返ってきたのは、了承を示す頷きでも怒りを表すビンタでもない――驚くべきものだった。
「ど……どうして?」
放たれたのは、≪疑問≫。
当然ながら、それは彼がまったく予想していなかった返答だったのである。
しばらくの間、呆気にとられる男。
そして、この後に及んで何を言い出すんだ、コイツは――と言いたげに名前を見下ろすと。
「キスは驚かせちゃったかもしれないけど……私、ギアッチョのこと本当に好きなのに」
ピシリ
硬直した身体と思考。イタズラと信じて疑わなかった彼女のその≪告白≫に、ギアッチョが口をパクパクさせつつ音を紡ぎ出した。
「ス……キ? はッ? アレ、嘘じゃねえのか!?」
「嘘なんて言わないよ! ……どんな形でもギアッチョと話せるのが嬉しかったから、色々いたずらして……えっと」
徐々に声のトーンを下げ、ほんのりと頬を赤らめる少女。
ああ、なんという勘違い。
ようやく脳髄へ辿り着いた答えに、血相を変えた彼が声を荒げる。
「テメッ……そういうことは先に言えよッ!」
「ええ!? い、言う前にギアッチョが襲ってきたんだよ? なんていうか……ケダモノみたいに! かなり鬼畜だったし!」
「ッ」
ケダモノ。鬼畜。それら単語たちにグッと息を詰まらせる男。確かに、情事中における想像した以上の名前の可愛らしさと情欲に誘われて、かなり加虐的なことも言った上に、強要した(気がする)。
一方、相変わらず動揺をありありと見せるギアッチョを横目に、彼女はわざと不貞腐れたように唇を尖らせ、下腹部へそっと右手を添えた。
「しかも……中に出しちゃう、なんて」
「! 〜〜ッ」
≪同意の上≫ではなかったが、相手はずっと好きだった男。ひどく狼狽した気持ちとは裏腹にあった嬉しさ。
だからこそ、≪彼はどう反応するのだろうか≫と本音半分冗談半分で、少女が恨めしげに一瞥する。
と、突然ガシッと両肩を強く掴まれた。
そして再びソファに腰を下ろしたかと思えば、真摯な眼差しを滲ませたギアッチョが、一言呟く。
「責任…………取らせろ」
「え? ……えっ? セキニン?」
「ッオイ! 言わせた奴がきょとんとしてんじゃねェ――ッ! 取るっつったんだよ、責任をよォオオ…………つってもまあ、元々≪思わせぶり≫な態度取って、俺を怒らせたのもテメーだけどな」
「! それって……」
思わせぶり。
それは、彼が自分の仕草と言葉に≪期待≫したということ。
まさか――想像もしなかった結末に瞳をぱちくりさせると、決まりの悪そうな男がこちらを睨んできた。
「ンだよ。オメー、思わせぶりって言葉知らねーのか」
「う、ううん! 知ってる、けど……だって、ギアッチョと両思いになれるなんて思わなかったんだもん!」
「……クソッ。そういうこと、わざわざ口に出してんじゃねえ……こっちまでやりにくくなんだろうが」
両思い。
改めてそう紡がれると、ひどく気恥ずかしい。
「(チッ、安心しきった顔しやがって……)」
そんな自分に比べて、嬉しそうに破顔している名前。
彼女の微笑みを視界に収めながら、≪また照れた顔が見たい≫なんて柄にもない発想がギアッチョの脳内に浮かび上がる。
どうしようか。華奢な肩部をしっかり捕らえたまま、さまざまな手段を胸に彼がその双眸をじっと見つめていると――
リビングにあるはずのない声が、飛んできた。
「ディ・モールト良しッ! そのまま名前のこと抱きしめちゃいなよ、ユー!」
「ハン! 詰めが甘えぞ、メローネ。あの態度はなあ……≪名前のエロい顔をまた拝みたい≫なんていう欲望に従った、深く長えキスをする三秒前だ」
リビングの外でコソコソと話す男たち。ヒクリと引きつった頬。
「……」
すべてとは言わなくとも、大体状況を把握した口ぶりのメローネとプロシュート。
刹那、もっとも知られたくない二人に知られるという、最悪の想定が頭の隅を過ぎったのか、恥ずかしそうに少女が俯いたと同時に、アジト内には憤怒と羞恥の入り交じったギアッチョの咆哮が轟いたらしい。
終わり
![](//img.mobilerz.net/sozai/1616_w.gif)
長らくお待たせいたしました!
いたずらっ子ヒロインに怒ったギアッチョで、無理やり裏(最後は甘め)でした。
Magnolia様、リクエストありがとうございました!
ブリッジ待機していただいたということで……お腰を痛めていらっしゃらないか心配な管理人です(汗)。
感想&手直しのご希望がございましたら、clapもしくは〒へお願いいたします^^
Grazie mille!!
polka
>
※無理やり裏(愛はあります)
パッショーネの暗殺チームに属する少女、名前はいわゆるいたずらっ子として知られている。
典型的なモノから仲間の度肝を抜くモノまで。しかもその多くが身内に対してであり――特に最大の被害者はギアッチョだった。
「クソッ……オイ! 待ちやがれ! こンのアマ……!」
「きゃー! ギアッチョが怖いよーっ!(棒)」
廊下を駆け抜けながら、にこにこと笑う彼女の手には彼の眼鏡。
どうやらこれもイタズラの一環らしい。
とは言え、彼らも男と女だ。体格差ゆえか、しばらくしてギアッチョから拳骨が与えられると、観念した名前はすぐさま眉尻を下げ人質を差し出す。
「うう、痛い……ごめんね?」
一方、彼女のそうした素直さが案外嫌いではない彼は≪チッ≫と舌打ちを一つ。
「ケッ。最初っから大人しく返してりゃ、テメーを殴らずに済ん――って、ンだよコレはァアアアアア!」
己の手に戻った眼鏡を見下ろせば、レンズに刻まれた≪3≫の文字。
ありありと視界に映る黒は、おそらく消すことが難しい油性ペン。
当然、自分へ視覚補正器を渡した途端、脱兎のごとく自室へ逃げ帰った少女の名を男が叫んだのは言うまでもない。
また、他にも――
「……オイ」
「ん?」
深夜という時間帯であるにも関わらず、部屋に侵入されることもあった。
「≪ん?≫じゃねーだろ、≪ん?≫じゃ。人が寝てる間に何しようとしてんだ、テメーは」
「え? ギアッチョの髪にストレートパーマ当てようとしてるの!」
「……、一応聞くがよォ――、なんでだ」
「サラサラヘアーのギアッチョが見てみたいから!」
このように、繰り返される攻防戦は日常茶飯事なのである。
そして今日。仲間の大半が諸用で出かけているため、せっかくだからアジトを有意義に使おうと、ギアッチョはリビングのソファで居眠りをしていた。
ところが、突如届いた誰よりも軽やかな足音に、瞼を閉じたまま耳をそばだてる。
歩く速度、歩幅、歩き癖。現在進行形で響くそれらに該当する人物は一人しかいない。
「……(来やがったな)」
実は彼、今自分に近付いてきているであろう名前に対し、それなりの感情を持ち合わせているのだ。
カーリーの髪を弄られかけた時は本当に焦ったが、それ以外の場面で本気の制裁を加えたことはない。
もちろん、それゆえに高確率で男がイタズラの対象になっているのかもしれないが。
「あ……ギアッチョ」
「……」
「珍しいなあ、ここで寝てるなんて」
――今日はオメー以外、誰もいねえからな。
そう一言、いつものように紡いでしまいそうになる口をそっと噤んだ。
すると、ふと靴音が遠ざかりしばらくして戻ってきたかと思えば、腹部から下を覆った温かな布(おそらくタオルケット)。
風邪を引かないようかけたのだろうか。彼女のその気遣いにドキリとする自分がいて――ギアッチョは内心で顔をしかめた。
「(こういうとこがあっから、嫌でも絆されちまうんだよな。納得いかねえ)」
どうせ、すぐに何か仕掛けてくんだろ――そんな、諦めに似た感情で少女の次なる行動を待ち構える。
だが、一向にイタズラらしきことが起こらない。
まじまじと自分を見つめているのか、名前からもたらされる絡みつくような視線に募る苛立ち。
「(オイオイオイ……どうした、いつもの≪イタズラ≫はよォオ――ッ!? ずっと寝たフリしてるこっちの身にもなれってんだ!)」
頬が引きつらないよう筋肉に込めた力。それが訴えた≪限界≫にひたすら「待て」と命令を出し続けていると、鼓膜を震わせる一つの音。
「……ギアッチョ」
「ッ(な、なんだコイツ……しおらしい声出して……≪可愛い≫とか思ってねェェエエッ!)」
いつもは出会い頭に何かしでかすと言うのに、今日はどこまでも≪らしくない≫。なんだってんだ。彼がギリと微かに奥歯を鳴らした――
刹那。
「好き」
チュッ
「――!?」
鈴を転がすような一声と共に唇を掠める、柔らかでしっとりとした触感。
ちなみに、彼女が仲間である男たちに挨拶と称して口付けることは滅多にない。
まさかこれも、先程の小さな告白も、≪イタズラ≫だと言うのか。
プツン
「オイ」
――なんだよソレ。
――よくわかんねえけどよォオオ……すっげーイラつくぜ。
「! ぎ、ギアッチョ! まさか起きて――」
「ザケんじゃあねえぞ」
ドサリ
次の瞬間だった。怒りの炎を燃やしたギアッチョが、立ち去ろうとしていた少女の腕を強引に引き寄せ、つい今しがた自分が寝転んでいたソファへ縫い付ける。
一方で、あっという間に押し倒された名前はわけがわからず、視界を埋め尽くした天井と仲間の顔にただただ目を丸くするばかり。
「え……? ぎあ、ちょ? えっと……これは一体」
「テメーはいっつもいっつもよォオオオ! ちょこちょこちょちょこ俺の周りばっか動き回りやがって……ッ!」
「っそれ、は……その……、さっきので怒らせっちゃったなら、ごめんね? でも私……」
おずおずと開いた彼女の唇から溢れる謝罪。しかし、その言葉はもう聞き飽きていた。
「……チッ、別に謝んなくていいぜ。オメーの≪イタズラ≫には慣れっこだからな……だがよオ、何度言ってもわかんねえテメーにゃ、そろそろ仕置きっつーモンがいるよなァ――ッ?」
イタズラ。
粗雑に放たれた単語に、ようやく彼の≪誤解≫を悟る少女。
「! ま、待って、ギアッチョ! 誤解してる! さっきのはイタズラのつもりじゃ――っきゃあ!?」
ビリッ
だが時すでに遅し。
懸命に紡ぎ出そうとした名前の想いは、布が破かれた音と肌が捉えるひやりとした感触に掻き消される。
男がこれから行おうとしていること――ソファと密着する背中に手を回されたかと思えば、するりと取り払われた下着に抵抗を見せ始める彼女の身体。
「ひっ……ぁ、やだっ……やめて……ギアッチョ、いや、ぁあ!」
「オイ。今更暴れても遅ェんだよ」
鋭くなる眼鏡越しの眼光。とにかく自分を押し返そうとする手が邪魔だ、とギアッチョは頭上に持ち上げた少女のか細い手首を、もはや布切れと化したシャツの一部で左右共々縛ってしまった。
当然ながら、彼の目の前に露わになる二つの膨らみ。おもむろに押し寄せた羞恥に心が掻き立てられ必死に足を動かそうにも、男が太腿あたりに伸し掛っていることで抗えない。
やめてほしい――その懇願は届かず、表情を無にしたギアッチョの割と大きな手のひらが、小刻みに震える名前の乳房へゆっくりと這わされる。
「ンだよ、思ったよりデケーじゃねえか」
「っひぁ!? ぁっ、いや……っおねがい……はっ、ぁ……ん、やめて、ぇっ」
「…………、クソ」
「あん、っふ……ぁ……ぎあ、ちょっ……んッ、わた、し……んんっ!?」
次の瞬間、言葉を遮るように彼女の唇が塞がれた。
目を見開き驚くより先に、ねっとりと粘膜を荒らされ、貪り尽くされる口腔。
執拗に口内を攻め立てられ、息を乱した少女の舌が奥へ隙間へ逃げようとすれば、すかさずそれは絡め取られてしまう。
クチュリ、ピチャリ。三半規管を直接突き刺す、淫靡な音。
「ふ、っぅ……や、ぁっ、はぁ……ぁ、ん……!」
「ん……」
「はっ、はぁっ……ぎあっちょ、っ……ふっ、ぁ、んん……ンっ!」
そして目の前が真っ白になりかけた頃、ゆっくりと焦らすように窒息の世界から解放される。
肩で息をする二人の間を繋いだ銀の糸。
恥ずかしくてたまらない。それでもなお、顔をこれでもかと言うほど紅潮させた名前が口を開こうとすれば――
「黙れ」
耳を劈いた命令形。
ゾクリ
彼にしては珍しいひどく静かな、怒り。
その異様な雰囲気に驚愕したのだろうか。息をのんだ彼女の隙をついて、男が手の動きを再開させた。
「ひゃんっ!? やっ……ぁっ、ん……はぁ、はっ……ぁっぁっ……もんじゃ、ダメぇ!」
ぐにぐにと自由自在に形が変わる白い陶器のような乳房。
同時にリビングに響き渡る、目尻に涙を浮かべた少女の淫らな嬌声。
その扇情的な仕草に、ズボンの下で膨張する一物を無視しながら、ギアッチョは鼻で笑う。
「ケッ……ダメとか言いながら先勃たせてんじゃねーか、オイ」
「! ちが、っ……ぁっ、そ、なんじゃ……はっ、ぁ……ひぁあ!?」
次の瞬間、性感を示すように赤く腫れた乳頭を爪で弾かれた。
一層甲高い悲鳴と共に弓なりに反らされる背。
「はぁっ、はぁっ……ぎあ、っちょ……おねがい……んっ、ぁ……やら、っそれ、いやぁ/////」
「嫌ァ? じゃあよォオ……潰されんのがいいのか?」
「――ひぅっ!? やっ、ぁっぁっ、ん……いや、っ……クニクニしな、でぇっ!」
「……いいみてえだな」
押し潰すように乳首を扱われ、跳ねる女体。名前のしなやかな腰がより強い快感を求めて揺蕩う。
だが、本人は気付いていないのだろう。
懸命に静止を訴える彼女の艶やかな視線を受け止めつつ、彼は思わず口端を歪めた。
「ハッ、どうしたんだよ。内腿擦り合わせて」
「はっ、ぁ……え? ッ! やら……ちが、違うのっ……これは……ぁっ、あん!」
「しっかしオメーも、無理やり犯されてるっつーのに抵抗忘れて、かなりの物好きじゃねえか」
違う、違う――そう言いたげに何度も横へ振られる首。
とは言え、快感にという名の熱に浮かされた身体はひどく正直だ。
自分を唆すように、ズボン越しの股座へ擦りつけられる少女の下肢。
当然、元より好意を抱いていた女性からの誘惑に堪え続けられるほど、男も我慢強くはない。
「っきゃあ……!?」
座る箇所を変え、名前のスカートを勢いよく捲り上げる。
そして、じたばたと太腿を動かす彼女をよそに、滑らかな足を通り抜けるショーツ。
さらにギアッチョはヒクヒクと振動する内腿を掴み、M字にさせながらその奥を覗き込めば――潤いの帯びた薄紅色の花弁に自ずと吊り上がる口角。
「オイ……ここ、グッチョグチョだぜ?」
「そ、んな……ぁっ、ちがっ、の……わたし……わた、しっ」
「何が違えんだよ」
「やっ、ぁあああ!?」
チュプ
そうした水音が少女の鼓膜を震わせた瞬間、彼の指が膣口を押し拡げた。
「ぁっ……ぁっあっ、ん……やらっ、はっ、ぁ……ひぁあんっ!」
一本、二本と増やされる指。内壁への圧迫。時折、神経が集まる陰核を親指の腹で擦られ、収縮するナカ。
今ここがどこで、どうしてこうなってるのかということすら憚らず、名前の半開きの唇から漏れる喘ぎ声。
集中的に攻められる膣肉の弱点。朦朧とした彼女の脳内が、漠然と≪絶頂≫を悟る。
「ん、ぁっ、いや……ぁっ、ぁっ……ぎあ、ちょっ……ダメ、っらめ……あっ、イ、ちゃ…………っ、?」
そのときだった。
まるで達させないと告げるかのように、突如消えた圧迫感に目を白黒させる少女。
躯体を支配するもどかしさ。
どうして――思わず色めいた視線を向けると、返ってきたのは案外淡々とした反応。
「テメー忘れたのか? お仕置きだっつったろ。もう終わりだ、終わり」
「え……」
そんな、私。そう呟いて俯いた名前が、妙な歯がゆさゆえか身体をモジモジとさせている。
一方、快楽と理性の間で揺れる彼女を一瞥して、なぜかやおらズボンを脱ぎ始める男。
そして改めてソファに浅く座りながら、こう言い放った。
「……どうしてもっつーなら――」
「コレ、できるよなア?」
ギアッチョの指が差し示すのは、下着を突き上げる陰茎。つまり、求められているのは口淫。
押し寄せた恐怖と不安。ところが、もはや≪イきたい≫という願いと快感に囚われた少女に迷いはなかった。
「(コクン)」
「ッ、なら早くしやがれ……ボケが」
想像した以上にすんなりと頷いた名前に内心驚きつつ、自分の前へ座らせる男。
しかし、彼女は今も手首を拘束されたままだ。外してほしい――そう懇願するように彼をじっと見つめるが、「全部口でしろ」と一蹴されてしまう。
すべて口で。なんて難しいのだろう。ズボンを脱いでくれたことが唯一のお情けなのだろうか。喉を一度上下させた少女は、恐る恐るトランクスの端を唇で食み、なんとかそれをずり下ろす。
すると、露わになるひどく充血した肉棒に、言うまでもなく赤面した。
「/////(ぎ……ギアッチョの、意外におっきい……)」
「オイ。まじまじ見ても、なんも出ねえぞ」
「!」
かなり凝視してしまったらしい。
生々しくグロテスクな一物が、眼前にある。
しばらく逡巡していた名前もついに決心したのか、今更だが両腕でそっと乳房を隠しつつ、その先をちろりと舐めてみた。
「……ん」
「くッ」
よくわからぬまま、血管の浮き出る裏筋をつーと舌先でなぞる。
さらに、先端の亀頭をなんとか口内で咥え込み吸い上げれば、歯を食いしばりながら息を乱すギアッチョの姿が。
「……ッはぁ」
瞳がかち合った途端、なぜかわからないが男根がドクリと脈打った。どうしたのだろう――喉奥まで彼のモノでいっぱいにしたまま、彼女は思わず尋ねてしまう。
「あむっ……んっ、ふ、ぅ……ぎあっひょ、……気持ひいい?」
「バッ! ンなこと聞くんじゃねえよ! つか、そこで喋んなッ!」
「んん……らって……」
「……ッ(コイツ、強要されてる自覚あんのか?)」
まさか男がそんなことを考えているとは、思いもしないだろう。
根元から先端まで、丹念に愛撫を続ける少女。
いつの間にか、名前はギアッチョに気持ちよくなってほしい一心で舐っていた。
「ん……っ」
「はッ、名前……」
「!」
――今、名前。
瞠目した彼女の髪がクシャリと音を立てて掴まれる。
優しい手つきであるため、痛くはない。
もっとした方がいいのかな――首を捻った少女がとりあえず陰茎をますます咥え込もうとしたそのとき、温かな口腔から熱い感触が消えた。
「ふ、ぁっ……、?」
「一人イかせようとしてんじゃねー」
理由はわからないが、悔しさを滲ませた彼の表情。
視界には、唾液に塗れた相変わらず赤黒い一物。
夢中だったのだ。改めて自分がしていたことに名前がボッと顔を赤らめていると、突然身体をソファへ誘導される。
「?」
そして、椅子の背に抱きつく形で膝立ちになった彼女の後ろ姿を見つめつつ、同じく膝で長椅子に乗り上げた男が背後からたおやかな腰を掴んだ。
ギシッ――二人分の体重に鳴り渡った軋む音。
「足開け」
「え? あの……なんで――ひぁ、っぁああん!?」
不思議そうにしながらも少しばかり両膝を開いた刹那、グチュンと鮮明な音に重なった挿入。
ギアッチョへの奉仕でひどく熟れた秘裂に、焦熱が捩じ込まれていく。
はち切れんばかりのモノ。少女の白くほっそりとした喉が、惜しげもなく天井に晒された。
「ぁっ……あっ、や……ん、はぁっ、ぁ……」
何も考えられない。ただ、受け止めることしか、脳内にない。
「っん、ふ……ッはぁ、っぁ、っは……、っ!」
息を整えようとすれば、さらに根元まで打ち込まれる。
食い千切るように蠢く肉襞。
「ッく」
「やぁっ、!? らめ……ぁっぁっ、動いちゃ、っ……ひゃ、ぁあん!」
パンパン、と耳を突き刺す淫らな打音。
ダメと言いつつも、律動に応えるが如く上下に振られる名前の腰。
肉と肉が何度もぶつかり合っていた。
「ん……っぁっぁ、おねが……やらっ、あん、っ、ン……奥グリグリ、っや、ぁあッ!」
「はッ……オイ名前。オメー、嫌なら食いついてくんじゃねえよ。煽るように腰振りやがって」
「ひぁあんっ、んっ……ちが、そ、じゃなっ……ひゃあ、っ……!」
「……そういや――」
「アイツら、もうそろそろ帰ってくんじゃねえのか?」
「!」
次の瞬間。忘れていた事実に、一時停止をしたかのようにぴたりと止まる少女。
ところが、彼が動きをやめることはない。
「リビングのドア、鍵閉めときゃあよかったな」
「っぁあ、ん……はっ、はぁ、っ……そん、な……ぁっ…………きゃう!?」
「蕩けた顔でソファから胸剥き出しにして……こっちに回らなくても、オメーのそれですぐ気付かれるぜ」
「!? やっ、ぁっぁっ……いや……いやぁ、っん、ふ……おねが、ぁっ……もみもみしな、でぇ!」
背後からでもわかる名前のいやらしさ。
きゅうきゅうと絡みつく蜜壷。
ソファに滴り落ちた体液。
そして男は、彼女越しにある、今はまだ開かれていない扉を一瞥して、嘲るように口端を歪ませた。
「名前オメー、見られるかもしんねえ状況下で犯されてんのによォ……ずいぶんナカ締め付けてくるじゃねえか。こりゃあどういうこった」
「ッ……ぁっ……し、締め付けて、なんか……いな――ひぁっ」
「嘘ついてんじゃねえ。アレか? ≪マゾ≫っつー奴か?」
否定をさせないように、最奥を突き上げられる。
だが、自分は決して≪マゾヒスト≫ではない。
そう伝えようと、必死に頭を振るう少女。
「(ブンブン)」
一方で、ギアッチョは相変わらず信じていないのか、出し入れを激しくするばかり。
ジュブリ、と結合部は二人の液体が交じり合い泡立っていた。
「ぁっあっ……ん、ぎあっちょ、っぉ……はげしくしちゃ、っやぁあ……!」
「ッ」
「! んっ、ぁ……なんれ、おっきく……あんっ」
さらに肥大した男根。嬌声を絞り出しながら、思わず振り返れば――
「ッは……ンな声で呼ぶからだろうが」
「こ、え? ぁっ、ぁっあっ……そ、なのわかんなっ……ひゃ、っ、ぁあ!」
「く、ッ……名前」
「やっ、ぁあん!?」
周りも、状況も顧みず、ただ快感を貪り合う男と女。
この行為は同意なしに進めていると言うのに、勘違いしてしまいそうになる。
爛れた感情と果肉。
「ん、ぁっ……らめ、っらめぇ……だめなの……っは、ぁ、はぁっ……やら、ぁ……わたひ、おかしくなっちゃ、っ」
「……おかしく、だア? ケッ……なればいいじゃねえか」
隅々まで密着した互いの性器。
より刻まれる間隔が狭まったグチュリグチュリという音が、≪終わり≫を知らせていた。
溢れ出る支配欲。
苦悶を表情に滲ませた彼が、吐息をこぼすと同時に名前の耳元で囁く。
「名前。……しっかり、受け止めろよ」
「へ……? ぁっ……らめ……ぎあ、ちょ、っん……ま、って……ぁあ! ナカは、っぁっぁ……やっ、ぁあああん!」
「く、ァ……ッ」
ビュクリ。瞬時に胎内を埋め尽くす熱い体液。
それを彼女がなす術もなく受け入れる一方で、少女の腰を支えながら、男は何かを伝えるようにその首筋へそっと唇を押し当てていた。
踏み越えたデッドライン
その先にあるのは、思いもよらなかった≪心の一致≫。
〜おまけ〜
情事の香り漂うリビング。
そこで、いつの間にかソファの端に寄っていたタオルケットを名前の裸体へ被せたギアッチョが、苦虫を噛み潰したような顔でぽつりと呟く。
「……つーわけで、名前。二度とあんなことすんじゃねえぞ」
あんなこと――自然と脳内に浮かんだのは、己の堪忍袋の緒を見事に切ったあのキス。
もう二度と、苦々しい想いで彼女を抱きたくはない。
しかし、手首が解放されたにも関わらずいまだソファに座り込み、いそいそとタオルケットを胸元に手繰り寄せた少女から返ってきたのは、了承を示す頷きでも怒りを表すビンタでもない――驚くべきものだった。
「ど……どうして?」
放たれたのは、≪疑問≫。
当然ながら、それは彼がまったく予想していなかった返答だったのである。
しばらくの間、呆気にとられる男。
そして、この後に及んで何を言い出すんだ、コイツは――と言いたげに名前を見下ろすと。
「キスは驚かせちゃったかもしれないけど……私、ギアッチョのこと本当に好きなのに」
ピシリ
硬直した身体と思考。イタズラと信じて疑わなかった彼女のその≪告白≫に、ギアッチョが口をパクパクさせつつ音を紡ぎ出した。
「ス……キ? はッ? アレ、嘘じゃねえのか!?」
「嘘なんて言わないよ! ……どんな形でもギアッチョと話せるのが嬉しかったから、色々いたずらして……えっと」
徐々に声のトーンを下げ、ほんのりと頬を赤らめる少女。
ああ、なんという勘違い。
ようやく脳髄へ辿り着いた答えに、血相を変えた彼が声を荒げる。
「テメッ……そういうことは先に言えよッ!」
「ええ!? い、言う前にギアッチョが襲ってきたんだよ? なんていうか……ケダモノみたいに! かなり鬼畜だったし!」
「ッ」
ケダモノ。鬼畜。それら単語たちにグッと息を詰まらせる男。確かに、情事中における想像した以上の名前の可愛らしさと情欲に誘われて、かなり加虐的なことも言った上に、強要した(気がする)。
一方、相変わらず動揺をありありと見せるギアッチョを横目に、彼女はわざと不貞腐れたように唇を尖らせ、下腹部へそっと右手を添えた。
「しかも……中に出しちゃう、なんて」
「! 〜〜ッ」
≪同意の上≫ではなかったが、相手はずっと好きだった男。ひどく狼狽した気持ちとは裏腹にあった嬉しさ。
だからこそ、≪彼はどう反応するのだろうか≫と本音半分冗談半分で、少女が恨めしげに一瞥する。
と、突然ガシッと両肩を強く掴まれた。
そして再びソファに腰を下ろしたかと思えば、真摯な眼差しを滲ませたギアッチョが、一言呟く。
「責任…………取らせろ」
「え? ……えっ? セキニン?」
「ッオイ! 言わせた奴がきょとんとしてんじゃねェ――ッ! 取るっつったんだよ、責任をよォオオ…………つってもまあ、元々≪思わせぶり≫な態度取って、俺を怒らせたのもテメーだけどな」
「! それって……」
思わせぶり。
それは、彼が自分の仕草と言葉に≪期待≫したということ。
まさか――想像もしなかった結末に瞳をぱちくりさせると、決まりの悪そうな男がこちらを睨んできた。
「ンだよ。オメー、思わせぶりって言葉知らねーのか」
「う、ううん! 知ってる、けど……だって、ギアッチョと両思いになれるなんて思わなかったんだもん!」
「……クソッ。そういうこと、わざわざ口に出してんじゃねえ……こっちまでやりにくくなんだろうが」
両思い。
改めてそう紡がれると、ひどく気恥ずかしい。
「(チッ、安心しきった顔しやがって……)」
そんな自分に比べて、嬉しそうに破顔している名前。
彼女の微笑みを視界に収めながら、≪また照れた顔が見たい≫なんて柄にもない発想がギアッチョの脳内に浮かび上がる。
どうしようか。華奢な肩部をしっかり捕らえたまま、さまざまな手段を胸に彼がその双眸をじっと見つめていると――
リビングにあるはずのない声が、飛んできた。
「ディ・モールト良しッ! そのまま名前のこと抱きしめちゃいなよ、ユー!」
「ハン! 詰めが甘えぞ、メローネ。あの態度はなあ……≪名前のエロい顔をまた拝みたい≫なんていう欲望に従った、深く長えキスをする三秒前だ」
リビングの外でコソコソと話す男たち。ヒクリと引きつった頬。
「……」
すべてとは言わなくとも、大体状況を把握した口ぶりのメローネとプロシュート。
刹那、もっとも知られたくない二人に知られるという、最悪の想定が頭の隅を過ぎったのか、恥ずかしそうに少女が俯いたと同時に、アジト内には憤怒と羞恥の入り交じったギアッチョの咆哮が轟いたらしい。
終わり
![](http://img.mobilerz.net/sozai/1616_w.gif)
長らくお待たせいたしました!
いたずらっ子ヒロインに怒ったギアッチョで、無理やり裏(最後は甘め)でした。
Magnolia様、リクエストありがとうございました!
ブリッジ待機していただいたということで……お腰を痛めていらっしゃらないか心配な管理人です(汗)。
感想&手直しのご希望がございましたら、clapもしくは〒へお願いいたします^^
Grazie mille!!
polka
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