11/22にて
※嫁ヒロイン
※甘裏
※原作後、生存設定です。





夕暮れに響いた玄関の開く音。



「おかえり……!」


それに瞳を輝かせた名前は、毎日見送っては待ちわびる、旦那の元へ駆け寄り――ぎゅうと抱きついた。

当然、ギアッチョは鈴を転がすような一声と共に包まれた人特有の重みに、眼光を鋭くする。



「うおッ!? 名前! テメ、いきなりくっついてくんじゃねえよ!」



しかし、男の帰宅をこれでもかと言うほど喜ぶ彼女が、大人しく離れることはない。



「やだ! 今日もギアッチョが仕事から帰ってきてくれてホッとしたから、離れたくない!」


「〜〜ッいちいち大げさだな、オメーはよォ――! いいから離れろ! ケーキ潰れちまうだろうが、ボケがッ!」


「え……、ケーキ?」



ぴたり。

刹那、目を丸くして動きを止めた名前。


それから、窺うようにこちらを見上げる自分の≪嫁≫に、「単純だな」と内心思いつつ彼は左手が握る白い箱を差し出す。



「仲間いわく、今日は≪いい夫婦の日≫らしいからなァアア……帰り道ついでに寄ったんだよ、ワリーか」


「……」



だが、どうしたことだろう。説明に対して、うんともすんとも返ってこない。

そんな彼女の思わぬ反応にやきもきしながら、彼は己より少し背の低い奥さんを見下ろした。



「チッ……オイ、なんか言え」


「! えっと、その…………、ギアッチョ大好き!」


「はア!? な、なッ……なンでそうなるんだァアアッ!」


「きゃあああ! 痛い! 痛いよ! 利き手で頭グリグリはダメー!」


ついに羞恥が限界を超えたのか、空いている手で拳骨を繰り出したギアッチョ。

小さな箱を受け取りつつ、涙目で悲鳴を上げる名前。


この一場面を見れば家庭内暴力に見えるかも知れないが――ご安心を。二人は正真正銘≪おしどり≫夫婦なのである。








そもそも妻の名前は、情報分析チームの一員だった。

彼女は、どこで仕入れたのかは不明だが、レンズへガンを飛ばすギアッチョの写真(入団時)に一目惚れし、その後いろいろあり――現在に至るらしい。



「〜♪」


少し音程の外れた鼻歌を紡ぎながら、エスプレッソを愛しい夫の前にあるテーブルへ置く。


食卓の中央には、皿に乗せられた三角柱の形をしたケーキが一つ。

そして、自らも席に着いた名前は彼が買ってきてくれた≪プレゼント≫を改めて見とめ、にやにやと口元を緩ませた。



「えへー、嬉しいな……でも、どうして一つなの?」


思わず唇からこぼれた疑問。すると、眉をひそめた男はコーヒーを喉に通してから口を開く。



「俺はいらねえ。さっさと食っちまえ」


「えー!? そんなの申し訳ないよっ!」


「オメーが好きそうだから買ったんだ。いいから食えよ」



有無を言わさぬ言葉と眼差し。

ギアッチョを不満げに見つめていた彼女は、しばらくして渋々フォークを手に取った。



「じゃあ……いただきます。もぐ、もぐもぐ……っ美味しい!」



次の瞬間、ぱああと輝いた二つの丸い目。心を満たしてやまない喜びと幸福感に、名前はそれを細める。



「私って幸せ者だなあ……ギアッチョ、ありがとう!」


「……おう」


返答として届く短い音。


照れてる――そっぽを向いた彼の横顔に小さく微笑んだ彼女は、再びケーキを食べ進めた。

咀嚼すればするほど、柔らかな甘さが口内に広がっていく。



「うん、うん……やっぱり美味しい! ギアッチョも食べてみて! 一口でいいからっ」


そしてついに、自分だけがこれを味わうのはもったいないと感じたのか、名前は夫に≪美味しいものに対する共感≫を提案した。

一方、「いや、だから俺は」と拒否を示そうとした男の目の前には、すでに一口分のケーキが乗ったフォークが。



「はい、あーん」


「! ……ん」



恥ずかしくてたまらない彼女からの≪あーん≫。それでも、ギアッチョは大人しく応じている。


――ギアッチョじゃなくて、デレッチョ。

以前仲間を愛の巣へ招いたとき、そう言って自分をからかったブロンド二人組を、奥さんの見ていないところで氷漬けにしたことがあった。


その光景をふと思い出しながら、彼は考えていたモノより甘くない風味にゆっくりと首を縦に振る。



「まあ……悪くねえな」


「でしょでしょ? この甘すぎない感じがいいよね!」


「そうだな……って、どーしてオメーが得意げな顔してんだ。買ってきたの誰だと思ってやがる」


「いたっ」



まるで自分が購入したかのような物言いが、気になったらしい。

少しばかり口角を上げた男は、こつんと控えめに名前の頭を小突いた。


代え難い人との時間。それを実感すると同時に、彼女の心には以前から燻っていたある一つの≪希望≫が広がったのである。









「……あのね、ギアッチョ」


「ンだよ」


「えっと……あの……一つお願い、言ってもいい?」



しばしの間のどかな時間を過ごしていた二人。

ところが、何かしらの決心がついたのだろうか。


男が一つ頷きを見せた瞬間、名前は少々険しい表情で言葉をおずおずと紡ぎ出していく。



「お願いっていうのは、ね? ええっと……恥ずかしいん、だけど」



恥ずかしい――しどろもどろな彼女のその一言に、一体何を自分に頼むつもりなのかと引きつる頬。


すると、唾を一つ飲み込んだ名前は、突如テーブル上に置いていたギアッチョの左手を両手で強く握り締めた。

天井から射す光で煌く、互いの薬指に収まった二つの銀。


そして不安交じりの凛とした声が部屋に響く。









「ギアッチョ! っ今日は……ううん、今日から……その……≪ゴムなし≫で……しよ?」


「……」



ゴムなし。

その単語を耳にした刹那、思考をどこかへと旅立たせていた脳。


しかし、神経は情報の停止を許さないらしい――≪ゴムなし≫、すなわちコンドームなしというフレーズが脳髄に到達してしまった。



「バッ!? ゴゴゴゴムなしって! テメッ、突然なんの話始めんだよ!」



その意味を把握し、彼は椅子にもたれるように仰け反る。

心に現れた動揺。

もちろん、彼女が勇気を要したのは理解しているが、かなり衝撃が大きい。



一方、男の焦燥具合に改めて自分が告げたことを脳内で反芻した名前は、頬を赤らめつつ首を横へ振った。



「と、突然じゃないよ! ずっと、ずっと考えてたの……ギアッチョがちゃんと戻ってきてくれたあの時から」


「!」



そう。あの4月2日明朝――命を落としていたかもしれない自分は、今生きている。

生があるからこそ、彼女と築くことができた優しい≪時≫を(本人には口が裂けても言えないが)、こうして過ごしているのだ。



「……」


今まで一切、避妊具を欠かすことはなかったギアッチョ。


眼前で黙り込んだ彼の胸には、自分への配慮も確かにあったのだろう。

それを名前も、はっきりとではないが理解していた。



「今まで付けてくれてたのも、ギアッチョの優しさだってわかってるんだ。……でもね。だからこそ、ギアッチョともっと繋がっていたい」


確かめるように手に力を込めれば、男の低めだが安堵をもたらすぬくもりが伝わってくる。

手のひらの肌が捉えた≪金属特有の冷たさ≫に小さくはにかんでから、彼女は静かに笑みを浮かべた。



「えへへ……これが私のお願い」


「ッ、オメーって奴はよォ――ッ! どーしてそう、人のツボを突くっつーか、なんつーか……」


「(ツボ? なんのことだろ)……えっと……ダメ、かな?」



こてんと首をかしげる名前。どうやら気付いていないようである。

その発言、その仕草が――彼を寝室へと誘っていることに。


≪据え膳食わぬはなんとやら≫。


兄貴で知られる男が口にした言葉を頭の中に過ぎらせたギアッチョは、相変わらずきょとんとしている奥さんを席から立ち上がらせ、その細い腕を引き寄せた。



「クソ……ッ行くぞ」


「え!?」


あっという間の出来事に、されるがままの自分。

ただひたすら足を動かしながら彼の≪目的地≫を悟った彼女は、ようやく己が数分後どうなるかを推測し、慌てて口を開く。



「ま、待ってギアッチョ! 今、まだ夕方だよ? それに私、夕食も作らなきゃ――」


「ンなモン、メシは後だ……まずはオメーを食う! 言っとくがよォオオ、拒否権はねえからな」


「! 私を食べるなんて、そんな……で、でもっ」


「≪でも≫も≪クソ≫もねえッ!」



どうにか回避する案を必死に探すも、一蹴。

予想だにしなかった結果。


これからのことを考え、高鳴る心臓を服越しに押さえ付けた名前は、男の赤くなった耳を窺いつつ大人しく歩き続けた。









「きゃ……っ」


ベッドルームへ足を踏み入れた途端、ボフンと音を立ててベッドへ乗せられた彼女の身体。

そして、白いシーツの上で狼狽する奥さんに伸し掛りながら、ギアッチョは至近距離で潤みがちの双眸を見下ろす。



「……」


「あ、う……えーっと///////」



何も轟くことのない静寂。

自分を突き刺す劣情を孕んだ視線に火照り始める肌。


心は緊張に支配され――ひどく恥じらう名前に、男はこれでもかと言うほど眉をひそめた。



「オイ……自分から誘ってきといて、何照れてんだよ」


「っ誘ってないよ! 私は夜のつもりで言っただけで……た、確かにいつでもギアッチョと、す……するのは嬉しい、けど」


「…………テメー、やっぱ誘ってんじゃねーか」



彼女のどこまでも無自覚な反応に、思わずため息が漏れる。


そんな二人の間に広がるのは、いつまで経っても初夜のような雰囲気。

だが、もちろん悪い気はしない。

脳天気になったモンだ、俺も――そう自分を嘲りながら、ギアッチョは火が出てしまうのではと考えてしまうほど紅潮した名前の頬にそっと手を添えた。



「名前」


「ぎ、ギアッチョ? あの、ずっとこの距離は近……ぁ、んんっ」



目と目がかち合った瞬間、塞がれる柔らかな唇。それに驚き瞠っていると、眼鏡が鼻骨にぶつからないよう斜めの角度から彼の舌が侵入してくる。

ねっとりとあらゆる粘膜をねぶられ、口内を掻き混ぜられ、クチュリと室内に響き渡る生々しい水音。



「んっ、ふ……ぁ、ぎあ、ちょ……ん、ッ」


「はッ……ちったァ黙ってろよな」


「そ、な……っんん、ぅ……はっ、はぁ、っ……ふ、っん……!」


「ッ……は」



最初は戸惑っていたが、徐々に絡ませようと懸命に動く舌。

自然と抱きつくために男の首へ回る両腕。

トロンと淫靡の色を宿した瞳。


鼓動は、言うまでもなくドクドクと強烈な自己主張を始めた。



「っン、ぁ……んん、ふっ、ぅ……、ぁっ」



ペロリ


存分に堪能したのだろうか。しばらくして唇を離したギアッチョが、顎先へ伝う唾液に舌を添わせるように彼女の口端を舐めとる。

そして一言。



「……甘エ」


「! はっ、はぁ……そりゃ、ケーキ……んっ、食べたばっかり、だし」



違えな――彼は直感的に思った。これは名前の味だ。

その舌上を刺激する甘みに、まるで今から本当に奥さんを食するような感覚に襲われつつ、男は少々性急な手つきで彼女のシャツのボタンを一つ一つ外していく。

すると、それを肌蹴させた瞬間にふわりと鼻腔を擽る芳潤な香り。


家には一つの洗剤しかないと言うのに、どうしてこれほど本能を煽るのか。勢いよくブラジャーまでも取り払ったギアッチョは、いまだ呼吸を整えるために上下する名前の乳房をおもむろに揉みしだき始めた。



「ひゃ……冷た、っぁ……ギアッチョの、手、んっ……つめたい、よぉ」


「……何言ってんだ。俺が冷てーんじゃなくて、オメーが温けえんだよ」


「はぁっ、はぁ……ちが……っ私、子ども体温じゃな、っぁあ」



問答無用。そう告げるかのように愛撫は続けられ、彼の手のひらの中で膨らみが歪な形を作る。

一方、彼女はあられもない嬌声を上げながらも、今はまだ快楽より羞恥が勝つらしい。



「あん、ッ……ぎあ、ちょ……はぁっ、ぁ、ダメっ……ぐにぐにしちゃ、っ……ぁっ、ん、ひぁ……だめ、ぇ」


いやらしさの滲む喘ぎ。

自分の下で、生理的な涙を瞳に浮かべたまま身を捩る名前。


そのとき、男はあることに気が付き、ゆっくりと口端を吊り上げた。



「ったく、いやいや言ってんじゃねえぞ。ココ硬くしてるクセによォオ――ッ!」


「! っ、ひぁああ/////」



目線の先。それは赤くぽってりと腫れ上がった乳首。

ギアッチョが両方の頂きを押し潰すように弄り回すと、本人は快感に抗っているのかもしれないが実際は彼女の艶めかしさが増すばかり。


「ぁっあっ……ひぅ、っ、んッ……おねが、っぎあ、ちょ……そこばっかり……いじめな、でぇっ」



空気に入り交じる甘やかな吐息。


しかし、やはり性感に絆されているのだろう。両足で挟んだ名前の腰が無意識のうちに揺れている。


――もっと啼かせてえ。

視界に飛び込んだ妻の可愛い姿に、自然とそんな想いが彼の脳内を掠めた。



「っん、ぁ……はっ、はぁ……ひゃ、っ、ぁあ」


「……」


「はぁっ、ん……、っ? ぎあっちょ……? どうし――っやぁあん!」


「ん」



刹那、指先をぴたりと止めた自分を不思議に思ったのか、悩ましげな表情のままきょとんとした彼女の隙を狙うように、左胸の先端を唇で咥え込んだ男。

舌先につつかれ、転がされ、乳頭が捉える甘い痺れに神経はさらに鋭く敏感になっていく。


同時に、当然ながら名前の羞恥心を掻き立ててやまなかった。



「あん! ふっ、ぅ……ぁっ、はぁ、っ……なめちゃ、やだっ、ぁあ!」



絶え間なく続く快感。必死に理性を保とうとしつつも、ますます熱を帯びていく身体、瞳。



「っぁっぁ……ん……はっ、は、ぁっ……ひぁ、んっ……!」



しばらくして、胸の頂きから口を離したギアッチョは、もう片方の先端を人差し指と親指で摘まみ上げながら、丹念にねぶったことでテラテラと唾液に濡れたそれを一瞥してにやりとほくそ笑む。

次にすべきことはただ一つ。



「無駄な抵抗すんなよ」


「!」


抵抗――その単語が彼女の耳を劈いた矢先のこと。


彼の意外に大きな手のひらは白く滑らかな肌を這っていき、ついにはショーツの下へ滑り込んだ。

そして、スカートと下着をするりと剥ぎ取られ、あっという間に名前は一糸纏わぬ姿へと変えられてしまう。



「うう……っ/////」


「……ンだよ。オレも、オメーも互いの裸なんざ見慣れてんだろ」


「そ……そ、かもしれない……けど……でも、やっぱり……っひぁ!?」



クチュリ

あらぬ方へ視線を彷徨わせていた彼女は、突如膣口を押し拡げた感触にビクリと躯体を震わせた。


熟れた粘膜を攻め立てる指。

一本、二本と増えるそれに翻弄された名前は喉を惜しげもなく晒し、ただただ喘ぎ声を上げ続ける。



「ひゃっ、ぁっ……あん、っ、はぁ……ゆび……ぁっぁっ、入れないで、ぇっ!」


「ケッ、そりゃあ無茶な話だなァア……つーかオメーだってよオ、満更じゃないみてーじゃねえか。膣の肉、パクパク動いてんぞ。なんでだ、言ってみろ」


「っん、ぁ……え……えっと…………、恥ずかし、けど……ぎあっちょに、触れてもらえ、て……嬉し、いから……?」


「!? ……はあアア。テメーはなんでそう」



自分は別に、真面目に答えを求めたわけではないと言うのに。

目前には息をひどく淫らに乱しながら首を傾けた奥さん。


いかがわしさの中にあるあどけなさ。そのギャップに我にもなく唾を一つ飲んだ男は、愛液を絶えずこぼす蜜壷から抜き取った後、不意にほっそりとした彼女の両足首を掴み――



「ひゃうっ!?」


天井に向かって恥部を晒すように持ち上げ、頭の方へ寄せた。

当然、恥辱感に塗れた名前は顔をひどく火照らせつつ、ふるふると首を横へ小刻みに振る。



「やら、っ……ぎあっちょ……あっ、ん……やら、見ちゃ、やらぁっ!」


「≪やだ≫じゃねえだろうが。オメーのココ、ヒクヒクしてんだぜ? しかもこんだけ蜜垂らしてよ……見ないわけねえよなァ――ッ?」



吐き出された、わざと自分を辱める言葉。

激しくも優しいギアッチョの愛撫に感じ入り蕩けた秘部をまじまじと観察され、彼女も限界に達していたらしい。


気が付けば、赤面したままじとりと上の旦那を睨んでいた。



「〜〜っ/////ぎ……ぎあっちょのすけべ!」


「ッはあアア? 名前テメー、言っていいこととワリーことが…………いや、確かにそうかもしんねえ」


「?」



≪珍しい≫。

すぐにキレるギアッチョが冷静なだけでなく、認めた――驚きで丸くなる名前の双眸。


だからこそ彼女は勘付くことができなかったのである。

彼が、己の唇を潤う陰裂へ近付けていることに。



「俺は今から、≪そういうこと≫をしようって魂胆なんだからな」


「……え? 何言っ――ひぁああんっ!?」



次の瞬間、男は外陰部に覆われた入口へ赤い舌を出し入れさせ始めた。

とめどなく溢れる愛液とその唾液が入り交じったチュプチュプという音が、更なる羞恥を煽っていく。



「ぁっぁっ、あっ……ぎあ、ちょ、っ……あん、っん……いきなり、やぁあっ////」


「オイ。≪いきなり≫が無理ってオメー……どうしろっつーんだよ」


「はぁっ、あ……んん! おねが……息、っダメ……ぁあんッ、ふ……そこでっ、喋らな、でぇ!」


「……素直じゃあねえな、テメーは。こっち勃起させてんじゃねえか」



両指で広げられ、剥き出しになった陰核。


勃ち上がったそれを舌先で刺激されれば――襲い来るのは途方もない快感。

そこは、女性の身体でもっとも敏感と言われる箇所。


秘豆と膣内を交互に弄られ、これまでにない鋭い電流が名前の背筋を駆け巡った。



「ッん、ぁっぁっ……らめ……ぎあっちょ、っひぁ、ん……やらっ、ぁ……私、イっちゃ、っぁあ……!」


「あア。イっちまえ」


「ぁっぁっ、あんっ、や……イっひゃ……ぁ、っぁあああ!」



刹那、弓なりになって絶頂を甘受する。

骨盤に焚き付けられた刺激。弛緩した筋肉。


そして、彼女は荒い息のままギアッチョをそろりと見上げた。



「はぁ、っはぁ……」


「……名前」



チュッと半開きの唇を掠めた軽やかなリップ音と共に、言うまでもなく赤らむ頬。


「んっ……ぎあっ、ちょ……////」



恥ずかしさを上回る幸福感。

すると、ベッドのそばへ降りた彼がおもむろに服を脱ぎ捨て始める。



「……(はわわわ……)」


「オイ。何見てんだ」


「!」


男の背中から腰を見つめていることがバレたらしい。

慌てて弁解しようとすれば、ドサリと改めてベッドに組み敷かれてしまう。


自然と交わり合う視線。



「名前」


「っ、えっと……、なあに?」









「……一応確認すっけど、マジでなくていいのか?」


決まりが悪そうに紡がれた音。

なくていい――その言葉の真意を悟った名前は、



「うおッ!?」


新生パッショーネの誕生時、ギアッチョが隠すことを拒み、あえて残した喉の傷跡へキスを贈った。


しばしの間。

もちろん、彼の眼鏡越しの瞳はこれでもかと言うほど見開かれる。



「ッ、何すん――」


「私の気持ち」


「! ……名前」







「私にいっぱい……ギアッチョが生きてるって、ギアッチョを感じさせてください」



にこり。

照れ臭さの潜む微笑み。


その眩しさに少しだけ俯いた男。


だが、しばらくして顔を上げたギアッチョの眉は、驚くほど吊り上がっていた。



「テッメー……何度言わせりゃ気ィ済むんだッ! いちいち俺を煽ってんじゃねーぞ、ゴルァ!」


「え!? 煽ってないよ! わ、私はほんとのことを――ひゃあ!」


その瞬間、再び両方の膝裏が抱え上げられる。


静かに秘部へ添えられたひどく熱い亀頭。

鼓膜を震わせる優しい低音。


「いろいろ驚いて、泣くなよ」


「はぁっ、ぁっ……ん、泣かな、い…………あ、でも……やっぱり嬉しくて泣いちゃう、かも」


「ッ、名前……」



彼女のこの無自覚っぷりはもはや諦めるしかない。

もう一度奥さんの瞳をじっと見下ろした彼は、ゆっくりと腰を密着させ――



「んっ……ぁ、っ……やっ、ぁああ!」


「くッ」


潤っていると言えども狭いナカへ、膨張した性器をグッと押し進めた。


寝室に轟いた悲鳴に近い嬌声と苦悶に満ちた短い音。

奥の奥を、侵される感覚。


何度身体を重ねても、彼女の肉襞がもたらす鋭い収縮に囚われてしまう。



「ぁあっ……ぁっぁっ、ん……はぁっ、はっ、ぁ……ふ、ぁっ……あん!」


「クソ……ッンな締め付けんな、ボケが……はッ」


「っや、ぁ……はぁ……むり、っだよ……らって……ぎあ、ちょの……熱いの、ぉ」


「〜〜ッ」



次の瞬間。

名前の一言がきっかけとなったのだろうか。


小さく息を漏らした男は眉根を寄せながら、ひたすら律動のテンポを速めていく。



「ひぁん! ぁっ、あっ……らめっ……ん、っぁっぁ……はげし、の、らめぇ!」


「名前……名前、ッ」


「っひゃ、んッ……ふ、ぅ……はぁっ、はっ、ぁ……ぎあ、ちょ……!」


グチュリ、ジュプ

肉と肉がぶつかり合い、ひどく卑猥な音に交じる、互いの名前。



「っは、っはぁ、っあ……ん、奥……ぐちゅぐちゅ、しな、でぇっ」



男根を求めて蠢く膣肉。

その誘惑に性器ははち切れんばかりに腫れ上がり、ますます彼女のナカを圧迫した。


すべてを支配される――そのような錯覚に浸りながら、名前が縋るように夫の首へ抱きつく。


たとえ、その仕草が二人の快感を強めるものであったとしても。

当然、ギアッチョも垣間見えた≪絶頂≫を察したのだろう。



「……ッナカに、いいか?」


「!」



ふとした瞬間、微かに切羽詰まった彼の声が、彼女の耳に届いた。


そうした今も緩急つけて繰り出される、秘所を暴かれるかのような強い快楽。

どこまでも膨らんだ欲求。

欲しい――その感情に促され、名前は同意を示すように男の首元で何度も頷く。



「う、んんっ……おねがい……はぁっ、ぁっ……ん、っぁ……ぎあっちょのっ、らして、ぇっ」


「ッは……名前……」


「ぁっ……ぁっぁっ、あっ、きちゃ……っぁ、や……ひぁ、ぁああん!」


「……ッ、く」



刹那、本能的に膣口側へ下りた子宮口は、限界を示した亀頭をいとも容易く受け入れ、ドプリと胎内へ注ぎ込まれる白濁液。

微動だにせず、見つめ合ったままの二人。その場には、甘くも乱れた吐息と互いへの想いだけが、溢れ返っていた。









11/22にて
心を、未来を、人はその日に確かめ合う。




〜おまけ〜



情事後特有の香りがいまだ部屋を支配する中、ベッドに寝そべった人影が二つ。

窓の外には、ずいぶん前から顔を見せた月。


布団を胸元へ手繰り寄せ天井を見上げていた名前は、ふとその明かりに照らされた旦那を一瞥して、思わず笑みをこぼす。



「えへへ」


「……なんだよ」



訝しげなレンズ越しの双眸。

すると、彼女はそれをじっと見上げ――



「ううん! ただ、ギアッチョが好きだな、って思ったの! 大好き……!」



今までも、これからも――決して失うことのない気持ちを打ち明けた。


あっという間に見開かれた目。

結婚してもなお、ギアッチョは名前のそういうところには慣れないのだろう。

奥さんの素直すぎる(だが可愛いと内心思っている)発言に、バツが悪そうに舌打ちをしてみせた。



「チッ……ンなモン、俺も同じに決まってんだろ」


「えへー、わかってるよ! でも……その、できればギアッチョの口から気持ちを聞きたいな、って」


「な……ッ!」


今度は何を言い出すのだ。

だが、自分が想いを告げないばかりに、彼女に愛想を尽かされ名も知らぬ街へ逃げられてしまう(byメローネ)のも困る。というより考えたくない。


諦念に似た感情を心中に宿した彼は、妻の方を向き直り深く息を吸う。




「――――」


そして、紡がれたのは男に似合わない愛の言葉。

再び二人の瞳が重なった。

映し出された互いの顔。


まるで鏡のようなそれをひたすら見つめながら、名前は自ずと頬を緩ませる。



「えへへへ、私幸せ〜」


「…………Anch'io」



≪俺も≫。それを意味する、しばしの間を置いて贈られた一言。

それから、いたたまれなさそうに視線を彷徨わせ始めたギアッチョの腕に、はにかんだ彼女はこてんと頭を寄せ、瞼を閉じるのだった。










長らくお待たせいたしました!
お嫁さんヒロインにデレ気味なギアッチョで、ラブラブな裏でした。
ことり様、リクエストありがとうございました!
喜ばしいことに夫婦夢が好評なようで……確かに、暗チメンバーはそれぞれ個性ある結婚生活を送りそうですね(笑)。


感想&手直しのご希望がございましたら、お願いいたします!
Grazie mille!!
polka



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