※本編後の早朝
※微裏
遠くから聞こえる鳥の鳴く声。
それが朝を示していると気付いたリゾットは、静かに意識を覚醒させる。
「……ん……ッ」
素肌がおぼろげに捉えるシーツ。
肩から顔にかけて、ひやりと冷たいのは彼女と熱く滾る身体を重ねた後ゆえだ。
――……思い出しただけで、こんなにも心を揺さぶるなんてな……。
自分に向かって微笑む少女。
赤面しながらも、自分の胸に頭を寄せて安堵の表情を見せる少女。
快感に美しい目を潤ませて、何度も何度も身体で、言葉で自分を求める少女。
たとえ、その中にリゾット自身であることを前提とした──エゴが含まれていると理解していても、心臓が高鳴るのを止められはしない。
「……?」
いつものように、彼女の存在を確かめるため腕を動かそうとする。
しかし、普段とは違う――特に顔を覆う何か柔らかい感覚。
それは冷たいわけでもなく、むしろ温かい。
ただただ優しく包まれている。
自然と浮かぶ――≪離れたくない≫という願望。
だが、この正体を掴まねば、隣で眠る名前の状況を把握することさえ困難だ。
そろりと長い睫毛を震わせて、瞳を開く。
すると――
「!?」
見慣れた肌色。
これは――名前の胸元だ。
毎日のように触れ、目にしているから一瞬でわかる。
――なぜ、こんな素晴らしい……いや、普段ではありえない状態に……?
下から少女の顔を覗き込めど、しっかり閉じられている瞼。
お互いに、寝相はいい方だ。
だからこそ、不思議でならない。
さらに、意識がはっきりとしてきたことで理解できる、後頭部に回された両腕。
――つまり、名前自ら……?
知りたい。
しかし、本人を起こして尋ねるわけにもいかず、谷間に顔を埋めたまま考え込んでいたそのときだった。
「ん……っ」
「!」
「……、……りぞ、とさん……すう……すう」
「……」
鼻を直接擽る名前のふわりとした香りに、すでに危険な状態になっていたリゾット。
もちろん、彼女の≪今の言動≫が引き金にならないはずもなく――
「名前……」
「……っ、ん……はっ」
――睡眠時ですらオレを誘惑するとは……なんて可愛くて、イケない子なんだ。
ふるんと小刻みに揺れる乳房へ両手を近付け、ゆっくりと焦らすように動かす。
その揉み心地のよさと、ピクリと反応した少女に気をよくして、リゾットは親指と人差し指で突起をコリコリと弄り始めた。
「! ぁ……や、っ……!」
「ふっ……身を小さく捩らせて、一体どんな夢を見ているんだろうな……?」
気にならない、と言えば嘘になる。
正直、考えたくもないが――もし、名前が寝言で自分以外を呼ぶことがあるとするならば――きっとショックを受けるだけでは済まない。
――≪君の夢に入り込めたら≫。こんな陳腐な映画のセリフを少しでも頭に過らせる日が来るとは……思いもしなかった。
「んっ……、ふ……ぅっ」
「……下は、どうなっているんだ?」
胸の形を変えるほど動かしていた右手を離し、リゾットはその滑らかな肌を確認するように胸から脇腹へ、脇腹から腰へ、そして腰から秘部へ――と這わせていった、が。
「ぁ、っ…………え?」
「……ああ、起きたんだな」
こちらを見下ろす深紅の瞳。
まだ眠気から覚めたばかりなのか、トロンとしたそれに胸が高ぶるのを感じながら、男は話し続ける。
「おはよう、名前。よく眠れたか?」
「……き」
「き?」
「〜〜っきゃああああああッ/////」
その後、驚きと羞恥で名前が上げた悲鳴に、当然のように仲間全員が駆けつけ、なんとか≪完食≫とまでは行かずに済んだらしい。
しかし――
――ああいったイタズラも……たまにはいいかもしれない……いや、メローネの言葉を借りるなら、ベリッシモ……イイ。
「!? ……あれ? い、今、一瞬寒気が……(珍しいけど、風邪かなあ)」
「ッ……(きょろきょろしている名前も可愛いな……)」
少女の苦難が、絶えることはなさそうだ。
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