uno




カランコロン


「あっ、いらっしゃいませ! 何名様、でしょう……か……」


「……二人だが、食事をしに来たわけではない」


「よ! ずいぶん可愛い格好をしてるじゃねえか、名前」






「……リゾットさん……プロシュートさん」


街灯が照らす喫茶店。

そこへ突如現れた銀と金に、名前の顔は一瞬にして青ざめていた。








Rivelazione
隠し事は、いつか気付かれるものである。






「……で? その黒タイツに隠された頬ずりしたくなる足と、腰と胸のラインが際立つメイド服のまま、名前は連れられるハメになった、と」


「は、はい……」


「チッ! オイ、メローネッ! テメーはいちいち言い回しが気持ちワリーんだよ!」



メローネとギアッチョに挟まれた状態で、名前は居心地が悪そうにソファへ腰を下ろしていた。


それもそのはず。

店長の制止の声も聞かず、リゾットとプロシュートは青ざめる少女の腕を左右から取り、拉致してしまったのだから。


「あはっ、お褒めの言葉ありがとう!」


「褒めてねエエエエエエッ!」



――店長さんに、ちゃんと謝らないと……。


ちなみに、まるで捕らえられた宇宙人のように連行される名前と、その格好によって周りから好奇な目を向けられたのは言うまでもない。




「でもまあ、ホルマジオとペッシをよぼよぼの爺さんにしてカミソリを吐かせた挙句、すぐ飛び出していった二人も二人だけど、オレたちに黙ってた名前も名前だよね」


「それは……って、え!? い、イルーゾォさん、今なんて……!」


耳を掠めた名前は、自分がアルバイトのことを相談した相手。

まさか――押し寄せる嫌な予感に慌てて口を開けば、イルーゾォが唇を尖らせたまま背後の鏡を指差した。



「ホルマジオとペッシ。名前を探すリーダーにペッシが思わず口を滑らせちゃって、それを擁護しようと現れたホルマジオも自爆」


「そ、そんな……っ」


「とりあえず、これ以上被害が広がらないように鏡へ押し込んだけど……オレだって怒ってるんだから」



コツン。

降ってきた小さな拳骨に、名前がそっと顔を上げれば、眉をひそめたイルーゾォが立っている。


そして、彼の中にある心配ゆえの怒りを感じ、少女はしゅんと項垂れ謝罪の言葉を紡ぎ出した。


「……ごめんなさい」


「ん。わかってくれたならいいよ」


「そうそう! これからは名前がオレたちに遠慮せず相談して! そうしたら怒る必要もないんだしさ……あ、でもその前に! できれば保存・布教・使用のために写真を三枚――グホアッ」


「テメーは黙ってろ! 名前、もう二度とこんなことすんじゃねーぞ!」



頭をなでてくれるイルーゾォに賛同するメローネとギアッチョ。

再びケンカを始めた彼らに、ようやく名前の表情からも笑みがこぼれた、が。





「でも……リゾットさんとプロシュートさんは……まだ怒っていらっしゃいます、よね?」


「「「……あー」」」



アジトへ戻った途端、各々の部屋へ行ってしまった二人。

そのときの妙な静けさを思い出し、少女の心は再び沈み込む。


――どうしよう。なんて言えば……。


どれほど考えを巡らせても、いい案は出ない。

視界に映る白いエプロン。それを静かに握りしめた次の瞬間。



「オレは、≪外食≫で許してやるぜ」


「! ……えっ?」


突然、聞こえた楽しげな声。

勢いよく振り返れば、プロシュートがリビングの扉に背を預けていた。



「えー!? 何それ、オレだって名前と外食したいー!!」


「ハン、ガキは黙ってな。……どうすんだ、名前?」


騒ぐメローネを一蹴して、ニッと笑みを浮かべた彼が少女に近付く。

一方、思わぬ方法で解決してしまいそうな問題に、目をぱちくりさせることしかできない名前。



「が、外食……ですか」


「そうだ。まあ、超高級とまでは行かねえだろうがな」


「……本当に、それでいいんですか?」



おずおずと顔を上げた少女を見て、しめた――とプロシュートは内心でほくそ笑む。


二人で外食。それは、言い換えればデートなのだ。



「ああ。というより、オレはそれがいいんだ」


しかし、ホッと顔に安堵を浮かべた名前は、おそらく気付いていないのだろう。


「じゃあ……外食でお願いします」


「おう! 名前にとって、最高の夜にしてやる」

両手を取り、しっかりと握りしめれば、彼女がはにかむように笑う。


――まあ、リゾットの説得は……なんとかなるだろ。


だから、プロシュートがリゾットに強い酒でも仕込むか――と、デートにあたってとんでもない計画を立てていたとは、知る由もない。



「でもさ、名前」


「はい?」


「リーダーはなかなか、手強いと思うよ?」


「!」



そう。彼女にはまだ最後の問題が残っていたのだ。


「そ、そうでした……!」


だが、おろおろとし始める名前に対し、このときを待っていたと言わんばかりにメローネが深い笑みを浮かべる。



「ふっふっふっ」


「? め、メローネさん?」


「なんだコイツ、ついにおかしくなったのかア?」


「あのなあ、ギアッチョ。メローネが変なのは元からで――」


これでもかと言うほど頬を引きつらせるギアッチョに、イルーゾォが冷静にツッコミを入れていると。



next


1/6


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -