somma 〜27〜

※消えた修道服の謎



情事からしばらくした後、リビングへやってきた名前は、ソファに置かれた≪あるもの≫に目を丸くした。


「え!? これって……!」


「あ。それ、ちゃんとクリーニングに出しといたよ」



いつの間にか帰っていたらしいイルーゾォが、髪を弄りながら呟く。

彼曰くクリーニングに出されていた自分の修道服を見つめて、少女は思わず首をかしげてしまう。



「クリーニング……」


「あ、俺もちゃんとしといたぜ!」


「ホルマジオさんも、ですか?」



笑顔で現れたホルマジオによってさらに重ねられる、黒い修道服。

その数を数えてみれば、クローゼットになかった理由も理解できる。


――……でも、どうしてクリーニングに……?



聞いてみてもいいだろうか――と名前が恐る恐る口を開いたそのとき。



「チャオ、名前!」


「! メローネさん!」



自分の肩へそっと置かれた手に驚けば、にっと笑みを浮かべたメローネが後ろに立っていた。


そして、そんな彼の手にはなぜかビデオカメラが。



「あの、それは……?」


「ん? ああ、これはね……十分な成果を出してくれたであろう優秀な子なんだ」


「? そう、なんですか」



一体何を撮っていたのだろう。

知りたいような知りたくないような――自分の気持ちに戸惑っていると、メローネの元へイルーゾォとホルマジオが集まってきた。



「メローネ! ほんとにちゃんと撮れたの?」


「もちろんだッ! 盗撮なら、オレに任せてくれ!」


「ならいいけどよォ……まさか、実はテープが入ってませんでした、とかやめてくれよ?」


「ははっ、そんなわけないさ! ちゃんとここに、名前の彼シャツ姿を映したテープが…………ないッ!?」


パカリとビデオカメラを開ければ、あったはずのものが消えている。



「はあ? オレたちの努力が水の泡になるってこと?」


「そうだぜ! 雀の涙にもならねえ給料を、名前の彼シャツを拝むためだけに、たっけークリーニング屋で費やしたのによォ……!」










「……やはりそういうことだったんだな」



「「「……あ」」」


聞きなれた低音ボイス。だが、それは彼らにとって絶対に聞きたくないものだった。



「り……リーダー……」


「よ、よォ! ど……どうしたんだよ、こんなさみー中、上半身裸で!」


「……ハッ! まさか、彼シャツのやらしさに堪えきれず、さっきまで名前を余すことなく召し上がっていたんじゃ……グエッ!」



床に響く金属音。

左手でビデオカメラのテープを潰してしまいそうなほど握りしめたリゾットは、真顔のまま仲間三人へと容赦ない制裁を贈るのだった。







「ったく、あいつら……そういうのはリビングで言うなよ(オレは拝めたからいいけど)」



リビングが赤に染まるころ、いつの間にか煙草を手に隣へやってきていたプロシュート。

修道服を膝へ引き寄せながら、自分を勇気づけてくれた彼にお礼を言おうと、名前は静かに口を開く。



「あ、プロシュートさん……」


「よ、名前。……どうやら、上手く行ったみてえだな」


「はい……ありがとうございます!」


「で? そのままリゾットにまた美味しくいただかれたのか?」


「!?」



からかうように言葉を紡ぐ男。

事実を言い当てられ、己の頬が紅潮していくのを認識していると、ふと頭に感じる温かいもの。



「……プロシュートさん?」


俯いていた顔を上げれば、わしゃわしゃと手を動かすプロシュートが目の前に立っている。

髪が捉えるその心地よさに、ただただ彼を見上げていると――




「よかったな」



優しい声が耳に届いた。



「! ……っ(コクン)」








「プロシュート……! お前は、何どさくさに紛れて名前の頭をなでているんだッ!」


「ハン、なでてえからなでる。それでいいじゃあねえか……な? 名前」


「えっ? あ、えっと……はい……?」


「〜〜ッダメに決まっているだろう! 名前、オレのところに来るんだ」


「リゾット……そういう誘い文句は、まず付着した血をどうにかしてから言えよ」


「……確かにそうだな。なら、名前……オレと一緒に浴室へ行こうか」


「へ!? どうして私も……っきゃあああ!?」



その後、二人は浴室から二時間は出てこなかったとか。



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