「……ひゃっ!?」
辿り着いた部屋。
電気も点けられることのないまま、名前はベッドへ突き飛ばされていた。
「り……リゾットさん……っ」
何を――鍵の閉められる音に、そろりと顔を上げれば、月明かりに照らされたリゾットがこちらを見下ろしている。
そして、自分の方へ近づく彼の右手には――
「! やっ……!」
小型のナイフ。
起こるであろう出来事に、痛む背中へ鞭を打ち、少女が必死に後退る。
しかし――
「大人しくしていろ」
冷たさを帯びた声が耳に届き、身体が固まってしまう。
「ッ!」
そして、ぎらつく瞳を湛えるリゾットと壁に挟まれたかと思えば――
ビリィッ
「!?」
一瞬にして、名前の身に纏っていた黒い修道服は、切り裂かれていた。
「っ、いやぁ!」
露わになった肌を隠そうと、震える手で布を寄せ集めようとするが、両手首を掴み上げられそれすらも叶わない。
「リゾッ、トさん……ど、してっ」
「……」
ドサリ
何も言わず、少女の背を壁からベッドへと預けさせる男。
青白い光が浮き上がらせる、透き通るような白の柔肌。
自分しか映ることのない、不安に揺れる深紅の瞳。
恐怖を潜めたか細い声。
そのどれもが、リゾットの欲を満たした。
「……メローネが」
「ッ、?」
「メローネが、言っていたことは本当か」
「!」
次の瞬間、そらそうとした小さな顔を強引に上へ向かせる。
だが、同時に彼女のその行動が、≪事実≫ゆえの後ろめたさであると示しもしていた。
「……そうか」
「っひ、ぁ」
右の親指でそっと喉をなぞれば、小さく悲鳴を上げる名前。
自分が啼かせているのだと――そう優越感に浸ると同時に湧き上がるのは、
――オレではない男の血が、この喉を潤したのか?
――この甘い香りを、ほんの少しでもそいつに纏わせたのか?
――ほかの奴にも、そんな儚さを見せたのか?
ひどく歪んだ、嫉妬心。
ああ、仕事を終えた直後だから、気が高ぶっているのかもしれない。
「――名前は、悪い子だな」
「ぇ……っぁあ!」
そんな、いつもは決してなることのないクセを言い訳にして、リゾットは少女の鎖骨へと歯を立てた。
突如現れた鋭い痛みに、びくりと震える名前。
「リゾ、トさ……やぁッ」
チクリ、チクリと少しずつ移動する刺激。
彼の顔を離そうと、おもむろに両手を伸ばせば――
「邪魔だな」
「! 痛っ……」
布と化していた彼女の修道服。
ベッドの脇からそれを取り出した男は、名前の両手首をするりと纏め上げ、鉄柵とつなぎ合わせてしまった。
動くことを禁止された身体。
慌てて身を捩っても、リゾットの足にしっかりと挟まれてしまう。
「動くな。手首に傷ができるぞ」
「っいや、おねがい……離して、ぇ!」
「……すぐによくなる」
耳を掠めたその言葉に、名前は大きく目を見開く。
――嘘、リゾットさんが、そんな……!
しかし、彼女の微かな願いが叶うこともなく――
「……っきゃあ!?」
リゾットは、淡々とパステルカラーのブラジャーを剥ぎ取った。
すると、彼の目を引く――華奢な身体にしては大きな二つのふくらみ。
ようやく見ることのできた、少女の秘境。
気が付けば、その小刻みに揺れる乳房を揉みしだいていた。
「ぁ、ぁあっ! や、揉まな、で……!」
訪れているであろう快楽に、必死な様子で堪える名前。
しかし、彼女の身体は自身が思っている以上に正直だった。
「嫌なのか? なら……この固くなったモノはなんだ?」
「ぇ……ひぅッ!?」
片手はねっとりと柔らかさを堪能しながら、もう片方の指で赤く主張する突起をコリコリと弄る。
そうすれば、より一層少女は震えた。
「はっ、ぁ……やめ、てくださ……はぁっ」
途切れ途切れの声。
だが、やめてやる気は一切ないのだ。
「っ! やぁああッ」
揉み、弄り、そして口に含む。
舌で転がせば――小さな悲鳴は甘ったるい嬌声へと変わっていく。
びくり、びくり。
快感に従ってしまう身体を、名前はただ恨むことしかできなかった。
「ひぁ、ああっ……リゾ、ットさ、やら……っやああん!」
やめてほしい。
やめてほしくない。
朦朧とする頭で悩みあぐねていると――胸の先に感じる鋭さ。
リゾットは、少女を快感へ導くようにそっと歯を立てていた。
優しく、時に強く。
強弱をつけて乳首を甘噛みする彼に、自然とこみ上げる生理的な涙。
「もう、いいだろう」
「……え?」
小さく呟かれた言葉。
ぼんやりとしたまま動く男を追えば――
ビリッ
「!」
さらに寒さを感じる、腰から足先にかけての下半身。
中途半端に少女の身体を覆い隠していた黒のロングスカートは、本当に服として使い物にならなくなってしまった。
「……」
それから、彼は無言のまま残骸をベッドの下へ放り投げる。
バサリという音が耳に届いた瞬間、名前の力の入らない両足はリゾットに持ち上げられていた。
そして、唯一身に着けていた下着は、彼の取り出したナイフによって紐の箇所を切られ、ハラリと落ちる。
「ぁ……やっ、見な、で……見ないでぇっ!」
長年、誰にも見せたことのない、あられもない姿。
しかも相手は、特別だと気が付き始めた男だ。
まじまじと秘部をリゾットの赤い瞳に凝視され、名前は羞恥で死んでしまいそうだった。
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