somma 〜25〜

※メローネの不満
※怪我には消毒液をちゃんとかけましょう。





「……納得いかない」


「ど、どうされたんですか? メローネさん」



ドルチェを楽しむ三時ごろ。

深刻な顔でエスプレッソを飲むメローネに、隣に座っていた名前はコテンと首をかしげる。

その動作に「ベネ!」と心の中で叫びながら、男はおもむろに口を開いた。



「名前って、スタンドで治療ができるよね? オレだってお世話になったことあるし」


「はい。そうですけど……」


「……」


「メローネさん……?」









「名前ッ! 君は、ベリッシモ……ベリッシモ損をしている!!」


「へ!?」



ビシィッ

まるでその効果音が後ろで響いているかのように、こちらへ指を勢いよく向けるメローネ。

だが、目を丸くして反応に困っている少女を気に留めることなく、彼はつらつらと言葉を並べ続ける。



「たとえばの話。君のスタンドは治癒系じゃないとしよう。そうすると……ほら、想像して? リーダーが負傷して帰ってきたときのことを――」









ガチャリ。

ドアの音が名前の耳に届き、少女は玄関へ走る。



「おかえりなさ……リゾットさん! その怪我……っ」


「ッ、名前……心配するな。大した傷じゃない」


「でも……!」



ポタリ、ポタリ。

肘から下へ伝う赤に、彼女が泣きそうな表情で近付けば、リゾットは安心させるように微笑んだ。


「大丈夫だ。これぐらい、舐めておけば治る」


「! ……なめ、れば?」


「? ああ。だから……名前?」


不意に視線を落とした名前。

その様子に、彼が痛みに堪えつつ首をかしげていると――



「……私が、してもいいですか?」


「は? いったい何を……ッ!?」



刹那、少女がそっと床に跪いたかと思えば、自分の腕を取り――傷口に舌を這わせていた。

鋭く、そして甘い痺れにリゾットは慌てて身体を後ろへ引こうとする。


しかし。



「ん、っ……ダメ、私……少しでも、んんッ、リゾットさんの力に、なりたいんです……っ」


「!? だから、と言って……ッ、く」


まるで猫の毛づくろいのように、名前が丁寧に患部を舐め上げていく。


伏せがちな彼女の瞳。

ちらりちらりと見える赤い舌。

彼の身体を痛みより遥かに強く駆け巡る、熱。



それは、快感に似ていて――





「……ッ名前」


「ひゃ、ぁっ」



背中がひやりとする。

そこで、名前はようやく自分が壁に押し付けられているのだと悟った。



「っリゾット、さん……? 怪我、治さなきゃ……んん!?」


「……治療より、したいことがある」



リゾットの瞳の中に浮かんだ劣情。

だが、それに映った自分の顔は彼以上に――欲を孕んでいた。



「はぁ、っん、っ……ふあ、リゾ、トさ……ッん」


「名前……はッ」



今日は寒いはずなのに、とても熱い。

窒息してしまいそうな世界の中で、男のいつもより性急なキスを受け入れる少女。


視界がクラリと霞んでいく。



そして、熱に浮かされた二人はそのまま玄関で――










「って、なるわけだ! つまり……名前?」


「/////」



語り終えて、隣へそろりと視線を移せば――名前が真っ赤な顔で俯いているではないか。


――ディモールト・ベネ!!


カップに口を付ければ、するりと喉を通ってしまうエスプレッソ。

どうやら、かなり話し込んでしまったらしい。



「……ハア、本当に君は可愛いなあ……ハアハア」


自然と荒くなる息。

できるならば、自分もこの初心で照れ屋な少女を襲いたい。



いや、「襲う」と心の中で思ったならッ!









「その話、オレにもじっくりと聞かせてくれないか、メローネ」


「……あ、リーダー」




メローネの末路と羞恥で沸騰しそうな名前が、リゾットによってどうなったのか。


それは、誰にもわからない。



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