uno




「お引越し……ですか?」



リゾットから告げられた言葉に、名前はこれでもかと言うほど驚いていた。








Giorno di muoversi
ある、引越しの日。









「そうだ」


「この場所は、組織に割られちまったからなア」


「……」



――もしかして。



苦々しげに呟いたギアッチョに対し、思わず黙り込んでしまう少女。


家を飛び出し、リゾットに再会するまでの間に起こったことがどうしても思い出せない――名前の記憶はかなり曖昧なモノとなっていた。



しかし、自分の知らない事実と今回の移動――この二つが関係しないはずがない。



「あの、私……ひゃっ!?」


「ギアッチョー、お前はもう少し≪気遣い≫ってものをできないわけ?」



顔を上げた途端、後ろから抱きつかれ驚く。


肩を震わす彼女を横目に、その犯人――メローネはへらへらと笑いながら腕の力を強めた。



「! 別に、テメーのせいじゃねえぞッ! あ、アレだ! 俺らだって気分を変えてえときもある!」


明らかに気を遣われている。



――どうして、思い出せないんだろう。


記憶さえ戻れば、わかることもあるかもしれない。




ソルベとジェラート――二人が今、どうなっているのか。


それすらもわからないのだ。




ズキンと痛む頭に、バレないよう眉をひそめていると――



違う何かに引き寄せられた。


「きゃ……!?」


「そういうメローネ。お前はいつまで名前を抱いているつもりだ?」


「……あはっ。ほんと、独占欲強いなあ、リーダーは」



すぐ近くで聞こえる声。


どうやら、今度はリゾットに抱きしめられてしまったらしい。


それも、かなり強く。



「あ、あの……リゾットさん? ちょっときつ……んっ」


首を掠める吐息。


脇腹から胸にかけて這い上がる手。


その予想もできない動きに名前が目を見開いていると、クスリと笑声が耳に届く。



「離してやれない――そう言っただろう?」


「そ、うですけど……触り方、が、ぁっ」


「触り方が、どうなんだ? 詳しく聞かせてくれ」










「おいおいおい! セクハラしてねェで、移動の準備しろよ!!」




嘆きにも似たホルマジオの叫び声が、皆の集まるリビングに響き渡った。




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