uno



ある日の深夜。身の毛もよだつような、寒さの中で――



「……ハァ……ハッ、ハ……」


ギャング組織『パッショーネ』の暗殺チームリーダー、リゾット・ネエロはふらふらと歩みを進めていた。


全身にまとう赤。


その多くは、たった今消し去ったターゲットのものである。


しかし。


「……ッ、く……」


「ロオオオオド」


「ロオオオオオオオオド」


今回に限っては、自分の血の割合がその大半を占めていた。


――油断していた、と言わざるをえない。


リゾットは、これまで任務を失敗したことが一度もない。


誰よりも素早くかつ正確に、完遂させていく。


ところが、まったく負傷せずに帰ることができるか、と問われれば話は別だ。


――スタンド使いは一人と聞いていた、が。



さらに二人いたことを思い出し、男は自嘲した笑みを浮かべる。


――信憑性を問うことなく、進めたオレのミスだな。


「ロオオオド」

傷口から覗く己のスタンド――『メタリカ』。


その多さを改めて感じながら、叩きつける冷たい風に耐える。


――やはり、冷えるな。


黒を基調にした衣装。

ちなみに、胸元の開いていない服を着ろというツッコミはここでしてはいけない。


――……アジトまで、辿りつけるだろうか。



感覚を失ってきた、身体の末端。


しかし、仲間に助けを求めるということは決して考えない。


それは皆同じだった。


――ん?


足を引きずりつつ、走馬灯のように騒がしくも憎めない仲間を思い出していると――


――教会、か。


暗く、そして少し寂れているようなそれを目にした瞬間、迷いはなかった。


ギイイイイ


蝋燭だけが包む世界。


今はよくわからないが、きっとここのステンドグラスは美しいのだろう。


リゾットは近づこうとして、足を止めた。


それは、彼の意識が限界の一歩手前であるからだけではない。


≪光≫は自分と正反対だった。


――八年前、オレはしっかりと思い知ったはずだ。


復讐。

たとえ業を滅ぼす業であっても、陰から抜け出せはしない。


「……ふ…………ぅッ」


そこまで考えを巡らせて、椅子へと崩れ落ちる男。


――く……限界、か。


このままいけば、おそらく司教に見つかってしまうだろう。


もちろん、仕事以外で≪殺し≫にかかわりたくはない。


――だが、もし騒ぐようなら……。


始末するしかない。



そんな自分の発想にも嫌気がさしつつ、降りてくる瞼に身を委ねた。



心地よいと言える、小さな足音を耳にしながら――




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