somma 〜15〜

※本当に離してくれないリーダー
※リーダー、ぶっ飛んでいらっしゃる……?






「あ、あの……リゾットさん?」


「なんだ?」


「えっと……そろそろ、起き上がりたいなあって」



なかなか離されない己の身体。


その力強さと圧迫感に名前が戸惑いつつ、リゾットへ懇願してみるも――



「ダメだ。まだ、名前を堪能できていないからな」


玉砕。



むしろ、ぎゅうううと音が付きそうなほど、さらに強く抱きしめられる始末。



「っ、堪能だなんて、そんな――」


大袈裟じゃないですか?


しかし、彼女が放とうとした言葉は、上からこちらを突き刺すじっとりとした視線によって消えてしまった。



「丸二日眠り続けていた……その事実を聞いても、大袈裟と言えるのか?」


「まっ……丸二日?」



慌てて彼から顔をそらし、しっかりと閉められたカーテンを見つめる。


――そっか、リゾットさんがいつも日光を遮断してくれてるから……気付かなかった。



「ご、ごめんなさい。まさかそんなに眠っていたなんて……」


「謝る必要はない。わかってくれればいいんだ」



再びかち合う瞳。

そして、自分の頭をなでてくれる手にホッとしながら、少女はふと疑問に思った。



「でも……どうして私は二日も眠って……」


「……覚えていないのか?」


彼の驚きと困惑が交じった声に、小さく頷く。



「唯一思い出せるのは……ソルベさんとジェラートさんを私は追いかけて、それで――」


ダメだ、そのあとが思い出せない。


まるで脳が自分に思い出させないよう、痛みという名の警告音を鳴らしているかのようだ。



「名前、無理をするな」


少しだけ眉を寄せた彼女に気が付いたのだろう。


ますます髪をなでる手つきを、優しくするリゾット。




「っ、でも……!」


「じきに思い出せる。だから、焦らなくていい」


「……はい」



とても大事なことの、はずだ。


言うことを聞かない自分の記憶に、名前は彼にバレないようそっと下唇を噛んだ。






部屋に訪れる静寂。



「……つまり、首にある≪これ≫も覚えていないんだな?」


それを打ち破るように、男がぽつりと呟いた。



「へっ?」

一方、思わぬ代名詞に目をぱちくりさせる名前。




――これ、ってなんだろう。


きょとん。


そんな表情で自分を見上げる彼女に、少なからず心臓が高鳴るのを感じながら、己を叱咤したリゾットは名前の細い手をおもむろに取り――



「……え。ええっ!?」


存在を主張する首輪へと触れさせた。



「こ、これは……」


なぜ、こんなものが――



しっかりと指先が捉えてしまう革の感触に、不安そうに瞳を揺らす少女。


そして、ゆっくりと彼を見つめれば――なぜかそらされてしまった。



「……言っておくが、オレではないぞ」


「え!?」



――そんなつもりで見たんじゃ。


弁解しようとする名前を遮るように、リゾットは真顔のまま言葉を紡ぎ始める。







「それに……オレなら黒ではなく、名前に似合う赤色を選ぶ」


「……?」




彼は今、何と言ったのだろうか。


聞いてはならないことを聞いてしまったような気がして、困りに困った名前は――







「あ……そ、そうですね! 私も、リゾットさんが選んでくれた方が、嬉しいな」


聞かぬふり――という現実逃避を選んだ。




「! そう、か?」


「はい!」



目を見開き、少しだけ口元を緩めるリゾット。


その嬉しそうな表情に、少女は心の中でホッと息を吐くのだった。



しかし、そんな彼女の脳内は、次に発した男の言葉で一瞬にして思考停止することになる。








「わかった。今度通販で探してみるから、そのときは名前も一緒に選ぼう……首輪を」


「…………え」



もちろん、名前が痛む身体も気にせず、嬉々とするリゾットを必死で止めたのは言うまでもない。




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