ソルベとジェラート、そして名前が音信不通になってから、二日が経とうとしていた。
「……クソ、なんで見つかんねえんだよ」
誰かがぽつりと呟く。
諦めたくない。
だが、皆の心は完全に疲弊し始めていた。
「俺……ずっと考えてたんだけどよ」
「どうした、ホルマジオ」
リビングに響いた彼の声に、全員がそちらへ視線を送る。
「アイツら……何かに巻き込まれたんじゃねェか?」
「……巻き込まれた?」
訪れる静寂。
それを突如破ったのは、ギアッチョの怒声に近い叫びだった。
「巻き込まれた、だア? 名前はまだしも、アイツらは暗殺者だろオオオオ!? そんなヘマ、するはずねエッ!!」
「……巻き込んだのが、『組織』だと……したら?」
「!?」
ホルマジオに代わるように、言葉を紡ぎ出したイルーゾォ。
「組織……って」
「はは、そんなわけ……」
≪ない≫、と言えない。
その≪予測≫に否定できない自分たちがいるのだ。
再び漂う重苦しい空気。
黙って彼らの会話を聞いていたリゾットが、小さく口を開いたそのときだった。
「ハン、くだらねえ」
「!? 兄貴……」
「たとえ≪そうだとしても≫、オレは探すぜ」
そう公言し、ジャケットを手にするプロシュート。
だが、ペッシは知っていた。
彼がかなりの距離を駆け回り、限界に近付いていることを。
「ッ兄貴!」
「……それ以上は何も言うんじゃあねえぞ、ペッシ」
覚悟を決めた表情、声色に気圧され、黙り込んでしまう弟分。
そんな彼を一瞥してから、プロシュートは玄関へ向かおうと一歩踏み出した、が。
「プロシュート。今日は、お前はここにいろ」
「! リゾット、お前何言って――」
「オレが行く」
有無を言わせないリーダーの声。
席を立ち、コートを身に纏い始めたリゾットに誰もが口を出せないでいると――
ゴドン
「……?」
何かが、家の前に置かれた音がした。
「チッ……なんだよ、こんなときに」
「お、オレ! 見てきやす!」
玄関へ走り出すペッシ。
その背を見据えながら、リゾットは思考を巡らせていた。
自分たちの生業上、宅配関係はアジトの前に置くよう頼んである。
しかし――
「……え?」
「おい。どうした、ペッシッ!」
「あ、兄貴! これ……」
大きな段ボール箱を手に戻ってきた男。
彼の表情に眉をひそめつつ、皆が近づけば――
全員がその≪匂い≫に、目を見開いた。
「これは……」
「血、だな」
「クソッ! マジかよ」
「……開けるぞ」
厳重に巻かれたガムテープ。
それを疎ましく思いながら、リゾットが黙々と剥がしていく。
より強くなる、嗅ぎなれた匂い。
再び心の中で強くなる嫌な予感を押し込めて、箱を開けると――
皆が、言葉を失った。
「…………名前、?」
彼らの視界に広がるのは、ずっと探していた少女の姿。
だが、その姿は、決して無事と言えるものではなく――
黒い布で覆われた目。
色が変化し、切り刻まれた修道服。
そして、明かりでぎらつく首輪。
すべてが、彼女に似合わないものばかりで――
≪裏切りは許さない≫。
七人は漠然とだが、確かに組織の≪存在≫を感じていた。
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