uno

※裏はありませんが、危険な雰囲気注意









「……ん、っ……」


目を覚ました名前の視界は、暗闇だった。




どうやら、布か何かで目元を塞がれてしまっているらしい。



「……」



思わず黙り込む少女。


あのとき、確かに≪ボス≫の存在を感じたのだ。


しかし、今自分はこうして生きている。



――殺されなかった、理由は何?



ここで考えていても始まらない。とりあえず起きようと彼女はおもむろに手を動かした――が、なぜか背中から動くことはない。


「……えっ、まさか」




縛られているのだ。それもかなり厳重に。



「どう、しよう……」


だが、このまま大人しく囚われているつもりもない彼女は、後ろ手の状態で周りを探り始める。




触り心地のいい布――おそらくベッドだろう。


――もっと遠くも探してみないと。



静かにベッドの上で膝立ちになり、進もうとした、が。


「!?」



強く後ろへ引き戻される感覚。ところが、それは明らかに人によるものではなく――




名前の白い首には、革状の黒い≪首輪≫がその存在を示していた。




「な、に……これ……」


わからない。どうすれば――



ガチャ


「!」



そのとき、耳に届いた――ドアの開く音。


彼女がそれにびくりと肩を震わせていると、足音がこちらへ近付いてきた。





「ッ、誰ですか……?」


「……」


ベッドの上で後退る名前。




しかし次の瞬間――目の前に人の気配を感じた。



「!?」


――この、時間が飛んだ感触……まさか。



カシャン



「っ、ぁ……!」


強引に引っ張られる首が痛い。



間近で感じる吐息。


おそらく、自分を観察しているであろう相手に、少女は歯を食いしばることしかできない。




「……口を開けろ」


「!」


突如部屋に響き渡った声に、名前が驚きつつも首を横に振る。




――ダメ。屈したりなんかしたら……!



だが、それで引き下がるほど男――ディアボロも甘くない。



頑なに口を開けることを拒む少女に、彼は無言のまま首筋へと視線を落とし――






「――ッ、ぁあ!」



そこへ鋭く歯を立てた。


一方、予想もしなかった痛みに、悲鳴を上げることしかできない名前。



いつの間にか、彼女の口は開けさせられていた。





「吸血鬼……本当に存在していたとは」



じくじくと疼く首を気にしながら、男の声を聞く。



そして、彼が自分から少し離れたと思えば――


「面白い」


と、ただ一言呟いた。



「……先日拾った、あの医者に調べさせてみるとしよう」


「い、しゃ……?」




刹那、脳内に浮かぶのはカビを操る男。



――私……どうなるんだろう。


押し寄せるであろう痛みに、覚悟を決める。







だが、名前には一つだけ、≪不安≫に思うことがあった。



――ソルベさん……ジェラートさん……。



それは、路地裏で見送った二人のこと。





――お願いします。どうか、どうか……無事でいてください。





彼らのことを思い浮かべれば、自然と≪怯え≫を顔から消すことができた。


その表情に、ディアボロが少しだけ眉をひそめる。



「≪恐れ≫がないように≪見せて≫いるな……まあいい」


「!? う、っ……」


しかし、自分にとってはどうでもよいことだ――そう結論付けた彼は、己のスタンドに彼女の意識を奪わせた。



カシャンと鎖を揺らしながら、ベッドへ倒れ込む名前。



しばらく少女を見下ろしていた彼は、何かを思い至ったかのように姿を闇へと眩ませた。




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