※睡眠不足1(ソルジェラ寄り)
※短いです。
ソルベが買い物に行っている間。
暇を持て余していたジェラートは、誰かいるだろうかとリビングへ足を踏み入れた。
しかし、きょろきょろと周りを見渡すが、人の気配はしない。
「さすがに、みんな部屋か……って、名前?」
どうやら、彼女はソファで丸まっていたらしい。
そして、ジェラートの驚きを含んだ声が届いたのか、ガバリと起き上がる名前。
「……あ! お、おはようございます!?」
「あはは、大丈夫。まだ夕方だよ」
安心させるように呟けば、ホッとしたような笑みが返ってきた。
だが、少女がこの時間に昼寝とは珍しい。
「名前……寝不足?」
「……はい、最近眠れないことが多くて」
「ふーん」
恥ずかしそうに彼女が苦笑する。
そのとき、ジェラートの脳内に≪ある案≫が浮かんだ。
「そうだ。ね、名前」
「? どうかされたんです――」
か。
最後まで言葉を紡ぐ前に、少女は男に抱きしめられてしまった。
「え? あの、ジェラートさん……?」
「きっと、人肌が恋しんでしょ? だから、ぎゅー」
そういえば、仕事なのかこの頃リゾットがアジトへ帰ってきていない。
睡眠不足の≪理由≫を悟ってしまっては放っておけるはずもなく、ジェラートは戸惑いを隠せていない名前を休ませることにしたのである。
「ひ、人肌……恋しいんでしょうか?」
「うん、そうだと思うよ」
「ジェラートさんが仰るなら、そうかもしれませんね……ありがとう……ござい、ます……」
うつらうつら。
すでに小さくなり始めた彼女の声に、男はよほど眠かったのだなと改めて己の腕に力を込めた。
「ただいま……ジェラート?」
「シーッ」
十数分後、ビニール袋を手に帰宅したソルベの目に映ったのは、ジェラートと彼の腕の中ですやすやと眠る名前。
「睡眠不足みたいでさ」
「……そうか」
少女の顔を隠している、黒い髪をソルベがそっと左手で退ける。
その先に見えたあどけない寝顔に、二人は顔を見合わて笑った。
「ね、ソルベ。オレ思ったんだけどさ」
「奇遇だな、ジェラート。俺もちょうど考えていた」
彼らの手にあるのは携帯。
「「思い出、作ろうか」」
こうして、二つの写真フォルダにはにっこりと笑うジェラートと微かに笑むソルベ、そしてその間に挟まれて目を閉じる名前のスリーショットが保存されたのである。
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