somma 〜9〜

※幼児化+ネコミミしっぽ
※それになるのは暗殺チーム
※圧倒的ひらがな率




「皆さん、おはようございま……あれ?」


リビングに足を踏み入れた名前は、想像もしなかった静けさに、一瞬戸惑う。


――どうしたんだろう……出かけるとは聞いてないし。


さらに言えば、九人全員がアジトを空けることはなかなかない。


――でも、突然出なきゃいけなかったのかもしれないし……。


「よし、皆さんが帰ってくるまでに、お昼でも作っておこうかな」


皆がなかなかキッチンへ入れてくれないものの、自分も料理はできる。


腕まくりをし、歩き出そうとしたそのときだった。


グイッ


「ん?」


何かに引っ張られる感覚。


何事かと振り返ってみれば――



「え……ええ?」


自分の服を引っ張っていたのは、小さな男の子。


しかもその頭にはネコのような耳と、しっぽまでついている。



「あの……僕、お名前は?」


「……」


しゃがみ込み、その子に語りかけるが、少年は俯いたままだ。


――でもこの子……リゾットさんの髪色に似てる。


「もしかして、貴方のお父さんのお名前はリゾットさん?」


「……ちがう」


「そっかあ……どなたのお子さんだろう」


「だれでもない」


「へ?」


その言葉に驚いていると、ぎゅうと抱きつかれてしまった。


「名前……おれだ、りぞっとだ」


「え……えええええええッ!?」







数分後、少年こと幼くなったリゾットの話を聞いてみると、どうやらメンバー全員がこの状態らしい。


「でも、原因はわからないんですね……」


「ああ……すまにゃい。……」


「……」


ちなみに、半分猫になり始めているとか。


「……名前、その、いまのはわすれてくれ」


「〜〜っ可愛い!」


ムッギュウ

「!?」


リゾットは一瞬、自分の身に何が起こっているか理解できなかった。


いつもは抱きしめ返すことも恥ずかしがる名前が、自分を強く抱きしめているのだ。


「ごめんなさい、リゾットさん……! 私、無類の猫好きなんです!」


「そ、そうにゃのか……あの、名前……む、むねがあたって――」


「あー! りーだーいいなあ!」


嬉しいが男として見られていないことに関しては複雑。


その思いが少年の心を渦巻き、どうにかしようとした瞬間。


皆が集まってきたのだ。



「もしかして、メローネさん?」


「そうだよ〜! 名前、おれもむぎゅっとして!」


「ふふ、いいですよ」


「わーい!」


リゾットが小さいこともあり、その隣に入ってくるネコ耳の少年。


どさくさに紛れて名前の胸を触ろうとしたメローネに、彼は容赦なく制裁を加えた。


「ッ、いたいー! うわあああん、名前ーっ!!」


「え? どうしたんですか!?」


「きにするにゃ」


泣き出してしまったメローネの頭をなでながら、首をかしげていると――



「ほんとこれ、どうにゃってんだよ……はあ」


「あにきー! おいてかにゃいでください!」


「じぇらーと……おまえはにゃんでもにあうな」


「ほんとー? ありがとう! そるべもかっこいいよ!」


「くそ! こんにゃときまでいちゃついてんじゃねえぞ!!! って、あーッ! ことばまでかわってきやがった!」


「おいおいー、ねこはすきだけど、ねこににゃるしゅみはねーぜー」


「……おれも名前にぎゅってされたい」



わらわらと現れる暗殺チームの仲間たち。


もちろん、彼ら全員に耳としっぽがオプションでついてあり――


「かっ、可愛い……!」


名前にとっては、まさに楽園だった。



しかし、このままというわけにもいかない。



「んー……何かの攻撃、ではないんですよね?」


「むろんだ。このあじとへはいったら、のこるのは≪したい≫のみ」


「はは、は……ですよね」


幼いリゾットの口から飛び出す、現年齢に似合わない単語に、思わず苦笑が漏れる。


ちなみに、今名前が抱っこしているのは、こくこくと眠り始めているイルーゾォである。


彼女の背を叩くテンポが、眠気を助長しているらしい。


「ん……名前……おれ、おもく、にゃい?」


「ふふ、軽いぐらいですよ? 思わず心配しちゃいます……イルーゾォさん、遠慮せずに寝ていいんですからね」


「むにゅ……あり、がと……」


二人が同じ黒髪だからだろうか。


その姿はまるで親子のようで、名前はいい母親になるだろうな、と見上げながらリゾットは一人思った。



「名前〜! ぎあっちょもねむたいってー!」


「ばっ、ねむくねーよ!」


「ギアッチョさん……はい」



隣のメローネに舌足らずで暴言を吐く少年。


すでに熟睡しているイルーゾォを優しくソファへ下ろし、ギアッチョの元へ近づいた名前は、笑顔で両腕を差し出した。


「にゃ、んだよこのては!」


「え? 抱っこじゃないんですか?」


「っ! 〜〜ッくそ////」


「あはは、ぎあっちょてれてるー!」


「うっせー、へんたい! 名前、はやくだきあげろ!」


「ふふ、仰せのままに」



真っ赤になった顔を隠すように、彼女の胸へとそれを埋める。


しかし、同じく赤い耳を見て、名前は小さく笑みをこぼすのだった。


――みんなすごく可愛い……でも。




「だが、このままというわけにも、いかにゃい」


もう猫語は吹っ切れたらしい。


ぽつりと呟くリーダーに、皆が頷く。



「そうですね……仕事もありますし」


「そうだぜ。このままじゃ、名前もだきよせられねえ!」


やはり幼くなっても兄貴は兄貴だ。


名前が彼の言葉にどう返そうか困っていると、自分のしっぽで遊んでいたメローネが笑顔で話し始めた。



「だいじょーぶ! もうそろそろもどるからさ!」


「え? メローネさんどうして――」


知っているんですか?


そう聞こうとした瞬間。







ボンッ



「え? あ、わわッ」


「ん? なんでお前が目の前に……って、なんじゃこりゃアアアッ!!!」


ギアッチョが叫ぶのも当然だ。


なぜなら戻った彼らは――



「ベネ、ベネ! みんな、いい筋肉してるね! ディモールト良好だッ!」


何も着ていなかった。



「あの……ギアッチョ、さん? そろそろ離していただいても……」


「あ、ああ悪い……ってちげェ! まだ離れんな!!」


「え? ひゃッ!」


こうして、そのとき一番冷静だったギアッチョによって、名前に皆の裸が見られるということは起こらずに済んだが――










「ああッ、すげえ痛い……でも、ベネ!」


犯人だったメローネには、メンバー全員からお仕置きが下ったそうだ。




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