somma 〜6〜

※吸血されたいリーダー


リゾットは、驚いていた。


目の前で申し訳なさそうに眉を寄せる、名前の言葉に。


「名前? 何を言って……」


「私……もう、リゾットさんの血を飲むことはできません」


聞き間違いと信じたかった。


しかし、現実は残酷なものである。


「なぜだ? なぜ……まさか、オレの血がまずいのか!?」


「違います! ……ただ」


「ただ?」










「ここにいたのか、名前」


「プロシュートさん!」



なぜあいつがここに――そんなことを考える暇もなく、リゾットは広がる光景に衝撃を受けた。



「リゾットと何話してたんだ?」


「ふふ、少し話してただけなのに、気になるんですか?」


駆け寄った少女が、何事もなく彼の腕にすっぽりと抱き込まれているのだ。


引き離そうと近づいている間にも、彼らの会話は続く。


「ハン、たりめーだろ。名前はオレの女なんだからな」


――オレの女? プロシュート、ついにトチ狂ったのか?


「プロシュートさん……/////」


――名前可愛い……じゃあない! なぜ、否定しないんだ!


慌てて駆け寄れば、プロシュートに勝ち誇った笑みを浮かべられた。



「リゾットさん……私、プロシュートさんの味にハマっちゃったんです」


「は?」


「要するに、名前はオレに夢中ってこった」


――いや、わけがわからないぞ!


名前の赤らんだ顔は可愛くて仕方がないが、隣の男が憎たらしくてたまらない。


ぐぐぐと奥歯を噛みしめていると、プロシュートは彼に見せつけるように名前の顎をクイと上げさせた。


「あ……」


「照れんじゃねえよ。これは……誓いのキスだ」


縮まっていく二人の距離。


名前は恥ずかしそうにしながらも、そっと瞳を閉じ――










「きょ、許可しないィィィィィッ! ……はっ」


叫んだ瞬間、目の前に広がるのは己のベッド。


「夢……か?」

いや、確かに夢だったのだ。


――誤ってイルーゾォの口調になってしまったが……よかった、名前はここにいる。



気持ちよさそうに隣で眠る少女に、リゾットは静かに息を吐いた。











しかし、あれは正夢へと変わろうとしていた。


「あの、リゾットさん」


「どうした?」


昼ごろ。皆がさまざまな行動をとる中、家計簿を睨み付け、今月の予算を立てていたリゾットの元へ、名前が歩み寄る。


「実は……言わなきゃいけないことがあって」


「? 別に構わないが……」


このとき彼は気がついていなかった。


今朝の夢においても、今と同じ会話から始まったという事実を。



「リゾットさん……ごめんなさい! 私、もう貴方の血を飲めません」


「……は?」


隣に腰を下ろした彼女の肩を、抱き寄せようとしたそのときだった。


「名前? 何を言って……」


「血を……リゾットさんの血を飲めないんです……」



ようやく脳内に届いた言葉。

次の瞬間、俯く名前の顔をこちらへ強引に向かせる。


「なぜだ? なぜ……まさか、オレの血がまずいのか!?」


「違います! ただ……」


――ああ、頼むからプロシュートだけは現れないでくれ……。









「あんなに可愛いメタリカちゃんを……飲むなんてできません!」


「……、……? ……は?」


突如聞こえた自分のスタンドの名前に、リゾットは目を見開くが、名前はそれすらも無視して話し続ける。



「気づいてしまったんです! リゾットさんの、一部であるメタリカちゃんを、私が飲んじゃうなんて……!」


「……一つ聞くが、プロシュートの血がうまかったとかではないんだな?」


「? 今のところ、リゾットさんの血しかいただいていませんが……」


「……はあああああ」


何もせずとも飛び出すため息。


――本当によかった……。


「なぜため息が……」


「名前」







「頼むから、血を飲むのはオレだけにしてくれ」


「え? だから……きゃ!」


もう一度繰り返そうとする名前の身体を、素早く抱き寄せる。


「安心しろ。オレはそれほど柔じゃあない。それに……名前の一部としてオレがいるなら、大歓迎だ」


「ッ///」


彼女の耳に囁けば、真っ赤に染まる顔。


――ここだけは、正夢だったな。



もちろん、名前を照れさせるのは自分一人で十分なのだが。




「でも……」


「拒否はさせない。むしろ……できないようにしてやる」


「え……! この匂いは、んッ!」



リゾットは、いい笑顔で今日も名前の唇を奪うのだった。











〜その光景をしっかりと目撃していた仲間たち〜


イ「またやってるよ……それにしても、名前の表情ヤバすぎ」


ホ「あ〜あ、俺にも名前みたいな可愛い娘ちゃんいねェかな」


ギ「テメーはまずネコの扱いから覚えやがれ! ったく、アイツらも人前でよくやるぜ!」


メ「ディモールト・ベネ! ああ、なんでこんなときにカメラ持ってないかなあ」


ジ「結局リーダーって、名前が好きなの? それとも欲求不満?」


ソ「両方じゃないか? ただ、自分の気持ちに気づいてないようだがな」


プ「チッ、あのマンモーニが! わからねえなら、名前を独占すんじゃねえよ!」


ペ「はは……(ん? リーダーもマンモーニなら……オレと一緒? 兄ィ、それはねーぜ……)」



そして彼らは、自分たちのリーダーに禁止令を出すか、本気で悩み始めるのである。




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