※みんなの服装について
※ 変 態 で す
「ギアッチョさん、ペッシさん、ジェラートさん、ソルベさんはこっちで、イルーゾォさんも……かな?」
「名前ー? なにみんなの名前並べてるわけ? あ、子作りならオレに任せry」
「メローネさん……実は、今皆さんの暗殺時の服装について検証していたんです」
「はは、スルースキル上がったね」
手をわきわきと動かしながら、近寄る彼をなんとか躱す名前。
「服装? ああ、そっか……よし! オレが協力してあげよう!」
「え? そんな、私のただの興味ですから――」
「みんなー! 名前が仕事着見たいってーッ!」
「ひい!」
まさかとは思っていたが、叫ぶとは。
名前は、すでにメローネへ正直に話してしまったことを後悔し始めていた。
「ったくよオ、休みだってーのに、どうしてこれを着なきゃなんねーんだよ」
「まあまあ、落ち着けよギアッチョ」
「これだからお子ちゃまは……文句言ってねえで、さっさと来るのが男ってもんだろ?」
「兄貴ィ! 髪、髪!」
徐々に皆が二人のいる部屋へ集まり出す。
ちなみに、かなり焦ったのか、プロシュートの髪は降ろされたままの状態だった。
「皆さん……なんだか、ごめんなさい。せっかくの休暇なのに」
「気にするな、名前。オレたちは、いつでも仕事に入れるよう、普段から素早く着替えられるようにしているんだ」
「あの、リゾットさん……一つ、いいですか?」
「ん?」
「……その、上半身ななめベルトだけはやめてくださいッ////」
そう。リゾットは今、黒いコートを着ていないため、いつも以上に筋肉をさらしまくりなのである。
当然、名前の顔は真っ赤に染まっている。
「ふ……」
――そこまであからさまに照れられると、余計虐めたくなるな。
頑張って目をそらそうとしている姿を、ただただ眺めていると――
「笑ってないで着てください!」
怒られてしまった。
数分後、名前とメローネの提案により、順番を並び替えられることになったメンバーたち。
「えっと、ソルベさんとジェラートさんは左で……」
「やったね、ソルベ! オレたち、服装でも一緒だ!」
「ああ」
そんな二人を名前だけが微笑ましく思いながら、次にギアッチョ、ペッシと並べていく。
「次は、イルーゾォさんですね」
「了解」
「えーっと、ここで……プロシュートさんかな」
意外かもしれないが、彼は胸元をかなり開けているだけなので、ホルマジオより露出は少ないと思われる。
「んー……問題は、メローネさんとリゾットさんか……」
二人を見比べるが、判断が難しいのだ。
――前だけだったらリゾットさんだけど……うーん。
「……そうだ、名前」
「? はい」
「気になるならさあ、自分で試してみたらいいんじゃない?」
「へ?」
――試すって、いったい何を……。
頭上にはてなマークを浮かべる名前に対し、メローネは自分の服を摘まんで見せる。
「オレとリーダーの服! 両方着てみなよ」
・・・・・・。
「「「「「「なんだってええええッ!?」」」」」」
「いい、かもしれないな」
「リゾット、正気かおい! そんなもん……めちゃくちゃイイに決まってんじゃねえか」
「……テメーらにまともな意見、期待した俺がバカだったよ」
腕を組み頷くリゾットに、ぐっと親指を立てるプロシュート。
安定した二人の姿に、ギアッチョは人知れず泣いた。
「ベネ! じゃあまずはオレの服だね!」
「あの……もう、着替えてもいい、ですか?」
「ダメダメ! んっんー、名前の肌って、白いねえ」
「ちょ、メローネさん! その顔怖――」
次の瞬間、長い脚が見えたとともに、メローネが遠くへ吹っ飛んだ。
「出し惜しみしてねえで、さっさと見せやがれ! …………!」
「ぷ、プロシュートさんも、そんな見ないでください……!」
恥ずかしい。
まさか、自分の小さな関心がこんな形で返ってくるとは。
普段、黒い修道服で全身を包んでいる名前にとって、この右半分露出した服は、かなり新鮮味がある。
そして異様に通気性が抜群なのだ。
「こ、これが見ずにいられるかよ! ……おい」
「はい」
「その胸元にある手はなんだ」
「え? だって……」
メローネの服はかなり着づらかった。
ズボンはいいのだ。
問題は、上着。
――押さえとかなきゃ、見えちゃうかもしれないし……!
しかし、そんな言い訳が伊達男に通じるはずもなく。
「だってじゃねえ! チラリズムってもんが、男のロマンだろうがァァ!」
「ええッ!?」
先程吹き飛ばされた彼も帰ってこないうえに、ほかの皆は隣の部屋でくつろいでいる。
絶体絶命――掴まれた手首に、思わずぎゅうと目を瞑ると――
「名前、遅いから心配したぞ」
「り、リゾットさん!」
「……チッ」
――い、今! プロシュートさんが舌打ちした……!
どうやら、リゾットがこちらへ来てくれたらしい。
ホッと息をつきながら、早く着替えたいと自分の服を見下ろす。
すると――
「次は、オレだな」
と、当然かのように彼は呟いたのである。
「へ? あ、あのリゾットさん! もう、十分にわかりましたから!」
「? それではダメだ。まだオレの服を試していないんだからな」
「〜〜ッ、そうですけど!」
「安心しろ、オレが着方を教えてやる」
――それが一番危ないような。
抱き寄せられ、直接感じる男の腹筋に赤面しかできない名前。
「ハン、ならリゾット。お前の部屋へ行こうぜ」
「……プロシュートも来るのか」
「当然だ。なんだってオレは今、まさに≪おあずけ≫状態だからな」
――本当にダメな気がする……!
頬を伝う冷や汗。
本人の意思を無視して、二人が話を進める。
「わかった」
「ふ、二人とも!」
なんとか止めよう――腕の中で暴れながら声を張り上げれば、頭に温かい感触。
「名前……大丈夫だ。リゾットは知らねえが、オレは優しくしてやる」
「そうじゃなくて――」
「何を言い出すかと思えば……プロシュート、それはオレに対する宣戦布告か?」
「ハン、どう捉えても構わねえぜ? やれるもんならやってみろよ、この朴念仁」
「だっ、誰か助けてください――――ッ!!」
その後、偶然トイレに行こうとしていたギアッチョによって、男二人は退治されたとか。
さらに、もう安易に興味のあることを口にしないと、名前は身を以て感じたのである。
「名前……今度ぜひ≪こすぷれ≫とやらをしてほしいのだが」
「……え」
しかし、彼女が暗殺チームのリーダーの中にあるスイッチを押してしまったということは、どうあがいても変えようのない事実だった。
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