※裏
※流れ的に場所を選んでいません(余談ですが、実際は犯罪なので注意!)
どうしていつもそう、無理に堪えようとするのか。
リゾットは歯がゆさを噛み殺した表情で、壁にズルズルと背を預けながら息を乱している名前の頭をそっと撫でた。
「名前……無理をする必要はない」
「ん、はぁっ、は……、……リゾット、さん……?」
「オレはここにいる。血を求めていいんだ」
「! っ……ダ、メ……はッ、ぁ……ん……だめ、ですっ」
口元を右手で覆い隠し、拒否を示すように首を横へ振る少女。
とは言え、薬といった抑制の方法ですら効かない吸血衝動だ――辛いに違いない、と≪予想≫することしかできない彼女の苦しみと葛藤に、やるせなさが彼の心を占める。
どうか、遠慮することなく甘えてほしい。
――もっと自分を、自分だけを頼ってほしいのだ。
「んん……!?」
「はッ、……名前」
「や、っぁ……ふ、ぅっ、ん……んっ」
気が付けば、その感情に導かれるように男は己の舌を傷付けつつ名前の柔らかな頬を包み、驚きで開かれた唇をするりと奪っていた。
当然、瞠目した少女は慌てて身を引こうとする、が。
「逃げるんじゃあない」
「!? っふ、ぁ……りぞ、とさ……ん、ぅっ、んん……!」
あっという間に腰と手首を捕らわれ、背後にあった壁と目の前のリゾットに挟まれてしまう。
最初は≪ダメ≫と懸命に抑え込もうとしていた衝動。
だが、彼にしか感じ得ない甘美な味に身体の芯を刺激され、自然と求めるように彼女は深い口付けに応えていた。
ピチャリと路地裏の静寂に響く、唾液の音。
「はぁっ、はぁ……んっ、ふ、ぅ……ン……」
男を貫く名前のトロンとした深紅の瞳。
その上、いつもは奥ゆかしい少女とは一変した淫らな表情で粘膜を吸いつかれ、舌がピリピリと痺れを訴える。
もちろん、リゾットの中にあるそれは、屋外にも関わらず次第に快感へと変わっていった。
「っん……はぁ、はっ……え? ぁっ……や、っぁあん!?」
「……」
刹那、手首を握っていた感触が消えたかと思えば、彼の無骨な手が修道服越しに彼女の乳房を揉みしだき始めたのである。
大きな手のひらの中で形を変える、華奢な身体にしては豊かな膨らみ。
時に激しく、時にやわやわと動かされる五指に名前はただただ翻弄されることしかできない。
すると、見る見るうちに赤くなった耳たぶを甘噛みしながら、本能を剥き出しにした男は恋人の性感帯を震わせるように低く囁いた。
「ひぁっ……ぁ、ダメ……こ、なとこで、っ……ん、ぁあっ」
「ああ。本当はアジトに戻れたらよかったんだがな……。正直、我慢できそうにない。名前も、吸血の影響は知っているんだろう?」
「っ、それ、は……、あん!」
だからこそ、迷惑をかけないよう堪えていたのに――少女が後悔と申し訳なさで下唇を噛むが、それに構うことなく柔らかな肌を食み、ピクピクと反応してやまない皮膚を堪能し続けるリゾット。
背徳的な≪吸血≫。それは、体内の奥底にある快楽を易々と引き出していく。
とは言え、彼にとってその影響はほぼ口実であり、彼女と出逢えたことで色付いた心を掻き回すのは名前自身なのだが、本人がその事実を知ることはおそらくないのだろう。
「ぁっ、ぁ……やっ……ん、はぁ、っはぁ……ダメ、ぇ」
「ふ……それで抵抗しているつもりなのか? 腕に力が入っていないぞ」
――いや、先程のキスで全身の力が抜けているのか。
そう囁けば頭を振ろうとする少女の動きを阻むように、小刻みに震える耳の裏から頸部へ荒い息をこぼしながら己の唇を宛てがう男。
実際、紅い視線は否定を浮かべているが、リゾットの逞しい胸板に置かれた両手はただ添えられているも同然だった。
おかしい。血を補給すれば≪自分が≫元気になるはずなのに――いきいきとしている眼前の恋人を彼女は思わずじとりと睨んでしまう。
次の瞬間重なり合う、赤と紅。
「ん? どうした」
「っはぁ、は……、……っなんでも、ありません……」
「……ふむ。この服の下で充血しているであろう乳頭を、集中的に攻めてほしい。そう正直に言えばいいものを……名前は本当に恥ずかしがり屋だな」
「へ? ぁっ……ぁあん!? ……ぁ、やだ、っ、……ひぅ、ソコっ……つまんじゃ、っいや、ぁ!」
情欲を潜ませた彼の双眸に堪え切れず、俯こうとしたことが気に入らなかったのかもしれない。
突然、胸の頂きを強く捏ね回され、体内に電流のようなモノが走った。
なんとか身を捩れど逃亡が許されることはなく、布と熱を帯びた先端が擦れる感触にひたすら漏れてしまう嬌声。
一方、耳を劈くそれに男は嘲るように口端を吊り上げる。
「ふっ、名前……いつもより硬くなるのが早いんじゃあないか? まったく、外だと言うのにこんなにもすぐ興奮して……」
「! ちが……違、のぉ……はぁ、はぁっ……りぞ、とさ、っ……、ぁっ、やぁあッ」
「……」
か細い声で喘ぐ名前の淫らな表情。リゾットは押し黙りつつ、その姿をしばらく心に刻み付けていた。
だがふとした瞬間、スカートの裾をおもむろに捲し上げたのである。
当然ながら、これでもかと言うほど丸くなる少女の瞳。
「ひゃあ!? な、っぁ……や、なにし、てっ」
「次にすることと言えば、一つだろう」
這わされた手のひらに内腿を締めるも、時すでに遅し。
抵抗をさせる間もなく、彼は潜り込ませた手で少し蒸れた秘部を弄り始める。
薄いショーツ越しに柔らかな大陰唇全体を指の腹で揉みほぐしてから、無骨な指先が捉える陰核。
それがするりと包皮の中から暴き出された刹那、彼女は己の白い喉を惜しげもなく晒していた。
「……クリトリスをヒクつかせて。名前のあまりのいやらしさに、愛撫の手を止めてしまいそうだ」
「やっ、とめて、ぇ……おねが……はっ、はぁっ……ひぁ、ぁああんッ!」
「止めて? ふ……≪もっと≫の間違いじゃないのか?」
「きゃうっ……やだ、ッ……ぁっ、あん、! っふ、ぅ……と、っき……ぁ、ばっかり、やぁあ……!」
すでに色が変わっているであろう肉芽。神経が集中するその一点を念入りに攻め立てられ、膝が自ずと震えてしまう。
次第に顔を出した、波のように押し寄せてはまるで焦らすように引いていく絶頂感。
「ぁっあっ、ん……いや……ぁ、リゾ、トさん……っ」
しかし、快楽に流されてしまいそうな自身を叱咤する理性。
揺らぐ己の中の欲求。
自分が今、どのような顔つきをしているかも知らずに、名前が解放を乞うように男を見上げた、そのとき――
「――ひぁあ!?」
首筋をねっとりと覆う粘膜に、鋭い悲鳴に近い声を出していた。
驚いた少女がビクリと過敏に反応し、同時に力が抜けた一方で、リゾットは舌でうなじや浮き出る筋肉に細やかな刺激を与えながら、喋り続ける。
「名前は首を舌先でつつくと、すぐに大人しくなるな」
「ふっ、ん、ぅ……っぁ、や……なめるの、ダメ、ぇ////」
「……これ以上性感帯を増やせば、どうなることだか」
あらゆる所が≪感じやすい≫恋人。
それは吸血鬼という彼女の特異な体質ゆえではなく、先天的なモノなのだろう。
さらに自分が新たな快感を教え込めば――過ぎった考えに彼は密かにほくそ笑みつつ、じわりとぬくもりが伝う素肌にその唇を吸い付かせた。
すると、皮膚を啄むような仕草と微かに届くリップ音に、痕を付けられているのだと悟り、焦燥を表情に滲ませた名前は修道服でも隠せない部分を頻繁に擽る銀の髪にクシャリと弱々しく指を絡ませる。
「! やだ……っだめ、です……んっ、そこ、見えちゃ……っぁ」
「見せつけるために刻んでいるんだ。名前、君の拒絶は聞かないぞ」
なおもキスを落とす男に対し、必死に身体をくねらせる少女。
そんな攻防戦が続く中、肩口へ顔を埋めていたリゾットが不意にぽつりと呟いた。
「これはもう、使い物にならないな」
えっ――何を言い出すのだろう。彼女が己の耳を疑った瞬間、すとんと音を立てて足元へ落ちた下着。
「!?」
そして、恋人は左、右と名前の両足を順に持ち上げ、代物を奪ってしまったのだ。
今日も今日とてパステルカラーのショーツ。
それをジャケットのポケットに仕舞いながら、彼はにやりと少なからず歪んでいた口を開く。
「ふむ。下着を履いていない修道女……ずいぶんいかがわしい響きだ」
「は、っはぁ…………はい? な、何を言ってるんですか……っ/////」
「……何をと言われても、オレは思ったことをただ呟いただけなんだが」
あっけらかんと返される言葉。
最後の砦を奪われ、秘境のひやりと冷たい感覚に羞恥がついに限界を超えたのだろうか。しばらく下唇を噛んでいた少女は、自然と今出せる最大の声で叫んでいた。
「〜〜っリゾットさんの変態! ど、どうしていつも――きゃ!?」
「変態、か……確かに傍から見れば、オレが愛らしい少女を一方的に襲っているように見えるのかもしれないな。本当にそうならば、の話だが」
――と言っても、オレたちはすべて同意の上だろう?
三半規管を通して、脳を支配する低音。
わずかに目を見開いた彼女は、快感と困惑が織り交じった視線をおずおずと彷徨わせる。
「ど、同意って……ん、っ/////」
「なんだ? 名前は嫌なのか?」
「ぁ……えと、っ……ひぁ、ッん……首、や、っぁ」
正直、こんなところで身体を重ねるなんて恥ずかしい。
ところが、血がトクトクと通う首筋に隙あらば唇を這わせてくる男の強靭な肩を押し戻すことができない。
理由はただ一つ。
どうしても名前の心が、身体が――劣情を宿した赤い眼差しに従ってしまうのだ。
これが、≪服従≫なのだろうか。
恐る恐る自分を射抜く潤んだ瞳。その二つから読み取ることができる感情に、リゾットは額をコツンと彼女のそれに合わせつつ加虐的な笑みをこぼした。
「ふっ、そうやってまたオレを無意識のうちに誘うんだな……」
「え……ち、ちがっ――」
「オレの心にすんなり入り込んだかと思えば、こう幾度も弄んで……悪い子だ」
「! ひぅ……やっ、ぁっ、ぁああん!」
次の瞬間、クチュという水音と共に、愛液で濡れた膣口へ侵入した彼の指。
突然の快感に、名前は抵抗も忘れてただ震えることしかできない。
「やら、っぁっぁ……ん、はぁ、はっ……りぞ、とさ……いきなり、いや、っ……いや、ぁッ!」
「……名前、いきなりがダメなのか? それならば……≪中指も膣に入れるからな≫」
「っ、ひぁあ!?」
二本の指でグチュグチュと荒らされる粘膜の壁。
親指によって今度は直接触れられる秘豆。
さらに、こちらも忘れるなと言いたげに、乳房で荒々しく動き出す大きな手の腹。
「ひゃ……ぁっぁっ、あん……っはぁ、はぁ……掻き、混ぜちゃ……っぁ、らめ、ぇ」
あらゆる性感を弄られ、屋外にも関わらず轟かせてしまう甲高い音。
ひどく火照る身体に、少女は腰を引きながら足を横へ移そうと試みる。
が、当然それを見逃すはずもなく――彼女の小柄な身体を筋骨隆々な躯体で閉じ込めるように壁へ押し付けて、男が指を動かす速度を淡々と速めていった。
すると、誘われるように襞が限界を訴え、ビクビクと絡み付く。
「ふ、我慢をするな。イっていいんだぞ」
「っぁ、っあ……やらっ……ぁあん、っ、ふ……りぞっとさ、ぁっ……イっちゃ……ひっ、ぁあああん!」
与えられた絶頂。それに堪えかねたのか、名前の膝から足先がガクガクと小刻みに痙攣し始めた。
刹那、蓄積していた快感が弾け、目の前が真っ白になる。
そして、恋人の手に飛び散った体液。
「はっ、はぁ、っ……ひぁ、っ……ん、っや、ぁあ/////」
排出する感触に赤らむ頬。ここ最近は、恥ずかしくてたまらないという想いとは裏腹に、達した途端≪潮≫を噴くことが多くなっていた。
まさに開発――喜びで笑みを浮かべたリゾットは、即座に俯こうとする少女の顎を左の指先で捕らえ、紅潮した耳に囁きかける。
「……まさか、噴き出してしまうとは。名前……ここが路地裏であることを、忘れているんじゃあないか?」
「ッ、やら……っぁ、はぁ、あん……言わな、でぇっ!」
「ふ……そう言いながらも、名前のナカはオレの指をいやらしく締め付けてくるんだが。まったく……、一年前の今頃は性交のせの字すら知らなかったというのに、なかなか淫乱な子になったものだ」
一際恥じ入る彼女から視線を外し、ふと横を一瞥すれば、建物と建物の間から覗く灰色に淀んだ景色。
今なら、歩いて帰ることも可能だろう。
だが――蕩けた表情でボーッと己だけを見上げている名前を解放してやる気も、逃がしてやる気もない。
内心でほくそ笑んだ彼が抜かずにいた指の関節を恥骨側へ曲げると、より快感が強くなるとも気付かずに、少女はぎゅうと縋るように胸元へ抱きついてきた。
「んっ、ぁっ……ふ、ぅ、っぁああ!」
「名前……これからも、オレなしではいられない、オレがもたらす快楽でしか感じることのできない、淫らな身体に育て上げてやるからな?」
性を知識としてのみ持ち合わせていた聖女を惑わす、悪魔の囁き。
すると、これから起こることへの不安ゆえか、小動物のように震える可愛い恋人を見据えて、唇が歪な形を作る。
≪捕まれば最後≫。
心も身体も――すべて自分に囚われて、そのまま離れられなくなってしまえばいい。
どこまでも強い己の願望と独占欲に嘲笑を浮かべながら、男はチュプリと音を立てて膣内から指を抜き、ジッパーの奥から愛欲ではち切れんばかりの男性器を取り出した。
「っ……」
視界に現れた自分を乱す代物。
快楽を期待してこれでもかと言うほど膨らんだ男根、そしてその先端から滴る透明な体液に、名前はひゅっと喉を鳴らし弱々しく首を横へ振る。
「いや、っぁ……こ、ここ……ひぁ、っそと、なのに……りぞ、とさ……んッ、らめ、です……っ」
「……クク、つい先程その≪外≫で、恍惚とした表情を浮かべながら絶頂を迎えたのは誰だ?」
「! やらっ……おねが、言っちゃ、ぁ……っ!」
言葉を遮るように、突如抱え上げられた左足の膝裏。
黒いロングスカートがそれにつられて腰元へはらりとずり落ちる。
あっという間に、ブーツと白い生足が露わになってしまった。
「今回ばかりは、このスカートにスリットが入っていればよかったんだが……これでは方向によっては名前の恥ずかしい部分が丸見えだな」
「ッ!」
深紅の眼に姿を見せた怯え。
もちろん、少女の恥部を晒す気はさらさらない。
ただ、動揺のあまりその考えを予期することができないのか、狼狽し胸板に顔を隠そうと擦り寄る恋人を見下ろして、リゾットはにやりと口元を歪める。
一方で、太腿のラインに沿って動かされるひどく熱い肉棒に、彼女の内腿はビクビクと反応していた。
「ぁ……はっ、はぁ……んっ、熱、いぃ……」
「名前は熱い方が好きだろう?」
「っす、すきだなんて……そんな、ぁ、っぁあ……!」
「ふ……まるで強請るように腰を振って」
いつものように膣内を掻き回してほしい――そう、性感を教え込まれた名前のしなやかで豊満な躯体は自ずと乞うてしまっていたのだ。
当然、それを自覚し驚愕に染まる顔色。
「わ、私……、……ひゃ、あんっ!」
「どうしたんだ? 名前、はっきり言わなければわからないぞ」
「っ……、やら、ッは、はぁ……いじわ、る……しな、でぇっ」
柔肌に擦りつけられる焦熱。
少女の中で後回しになっていく理性。
いよいよ肉欲を抑えきれなくなった彼女は彼を懸命に見上げ、おずおずと唇を震わせる。
「〜〜ぁっ、あの……りぞ、とさんの……その、……くださ……っ!」
「ふむ……オレのモノをひどく熟れたこのナカに挿入したとしよう。名前はそれで満足なのか?」
つまり、≪どうしてほしいか≫まで言わなければならないということ。
「っん、はぁ、っぁ……そ、なの言えな……っ」
当然ながら、無理だと頭を振るう名前。
だが、恋人を求める心はより掻き立てられ――言うしかないのだ。
「名前」
穏やかに呼ばれた名前に潜む命令。言うしかない。
「ぁ、あん……ッ、……っお、くまで……ん、ぐちゃぐちゃに……ぁっ、して、ぇ////」
「……ッ合格だ」
「や……ひゃ、あああんっ!」
その瞬間、体液に塗れた陰裂に宛てがわれた亀頭。
常に落ち着いた己を見せようと努力するも、この少女を前にすればそれまであった余裕はあっという間に消え去ってしまう。
清楚と淫靡――何度感じても慣れることのない彼女のギャップにゴクリと喉を上下させた男は、自身をひどく狭い最奥まで勢いよく突き入れていた。
昼下がりとは思えない淫らな音が、路地裏に響き渡る。
影に姿と吐息を潜ませた二人。
性器をズルズルと引き抜かれた瞬間、抉るように根元までを捩じ込まれ、身長差もあるのか名前の右足は自然とつま先立ちになった。
息が止まってしまうのでは、と錯覚するほどの激しい律動。
「は、名前……名前……く、ッ!」
「りぞっ、とさ、ッ……ぁっぁっ、あんっ……ふ、っぅ……!」
ジャケットを握る指先に力がこもる。
ここが、この場所がこんなことをするところではないとわかっているのに――少女の胸を包む、好きな人と繋がることができた≪幸福感≫。
「はぁっ、ぁ……やら、っソコ……ん、グリグリ、っしちゃ……やぁあッ」
一方、彼もその迷いを悟ったのだろう。
自分に身を委ねつつも、息を殺そうと試みている赤い耳元へ唇をそっと寄せた。
彼女の愛らしい表情見たさゆえに、話すことはただ一つ。
「……どこかで、名前のこの喘ぎ声を聞いて興奮している奴がいるかもしれないな」
「!? やっ……らめっ、ぁ、あん……はぁっ、はっ……聞いちゃ、らめぇ!」
「ダメ? ……ふ、狭い蜜壷を大きく収縮させておきながらよく言う」
「ひぁ、っん……、ちがっ、の、ぉ……ちが――ぁあんっ」
なんとか口を噤むためか、両手を自分の胸先から離そうとする名前の動きを邪魔すべく、より一層突き上げを速くする。
当然だが、少女の控えめで妖艶な声を周りに聞かせる気も、男にはない。
しかしこの手の辱めが、目下で嬌声を漏らし、生理的なナミダを零す恋人を官能へ誘い込むとリゾットは熟知していた。
羞恥と快感で火照る頬を愛おしそうに撫で、彼が少なからず眉根を寄せながら微笑む。
そして、小さく吐息を滲ませたまま、今まで右手で抱えていた細く軽い左足を己の下肢に巻き付けさせた。
「! あん、っ……りぞ、とさん、ぁっ……ん、はぁ……ひゃんっ、ふ、ぁ……ぁああ!」
深くなった挿入とますます激しくなった動作に驚いたのだろう。
更なる快感を享受することになると言うのに、彼女は思わず男の首元へしがみついてしまった。
刹那、膣壁を拡げるようにありありと肥大した性器に、これでもかと言うほど目を見開く名前。
「!? や、ぁ……っな、なんれ、おっきく……っ」
「くッ、わからないのか? 情欲をそそらせる仕草をしておきながら」
リゾットの方が把握しているであろう弱点。ソコを執拗に攻め立てられる。
さらに、躯体を支えていた左手で腰から臀部を撫で回され、ゾクゾクと言いようのない快感が少女の全身を駆け巡った。
「っぁっぁ、っあ……はぁ、は……っはげし、の……あんッ、やら、ぁ!」
ハアハア、と鼓膜のそばで滲む彼の荒い息遣い。
男も余裕がない――朦朧とした脳内でその事実を理解し、自然と蜜壷をうねらせてしまう。
すると、ドンと下から深く突き上げられ、もっとも強い刺激が彼女を襲った。
「ひっ、ぁあああん!?」
「……もっともっととオレの陰茎を食いちぎるように肉襞を絡み付かせて……そうか。まだ足りないのか」
「やッ……ぁっ、あん……そ、じゃな……っ、ぁ、ああ!」
一段と果肉にめり込む熱く太いモノ。
リゾットの指が腰に食い込んだかと思えば隅々まで蹂躙され、否応なしにもたらされる強烈な痺れ。
「は、ッ……」
「ぁっ……はぁ、っはぁ……っ、りぞ、とさ……? ぁ、んんッ」
ふと、こちらをじっと見つめる彼に、名前が瞳を潤ませつつ小首をかしげる。
次の瞬間、二つの唇が重なった。
ときめきと切なさが入り交じり、子宮をきゅんと疼かせる甘いキス。
「……名前」
「ん、ふ、っぅ……はぁ、は……りぞっ、と、さん……んっ」
「ッは、……そう可愛い顔をしないでくれ」
名残惜しさを伝えるかのごとく、桜色の上唇を食む。
そして、少女の小さな頬を左手で優しく包み、男は嬉しそうに微笑んだ。
「……こんな快感に蕩けきった表情は、オレ以外の誰にも見せられないな」
「ッそ……そんな、っ、ぁ……」
「こら、目をそらすんじゃあない。それとも名前は、命令として縛り付けられる方がイイのか? 他の輩に見せることは許さない、と」
「! 〜〜っ/////」
つーと首筋まで流れる唾液を拭うためか、まるで壊れ物を扱うような繊細な手つきで口端をなぞる親指。
ドキリと跳ねてしまう彼女の鼓動。
いつまで経っても慣れずにはにかむ名前。
そのあらぬ方へ移った視線を合図に、膣内を抉る動きが一際鋭さを増した。
「――っひゃ、ぁああ! あんっ、ぁっぁっ、ひぁ……奥、っこすっちゃ……ぁっ、らめ、ぇ!」
「く……、名前……ッ」
性感によって熟した肉と肉の打ちつけ合う音。
自ずと下りてきた子宮を押し上げる、凶器のような先端。
グチュン、パチュッと鼓膜を劈くそれが、羞恥と性的興奮を掻き立てていく。
「は、っ……はぁ、っぅ……やら、ぁ、ッぁあ!」
首にきつく回された腕。
己をたぶらかす悩ましげな顔つき。
鎖骨を突き刺している甘やかな吐息。
いやいやと拒みながらも、上下前後に揺れる滑らかな下肢。
「ぁっ、ぁっあっ……ひぁっ……りぞっと、さ……っは、りぞ、とさ……ぁあん、っ」
「は、ッ……どうした?」
「あんっ、ふ……私……っわたし、もう、っ……ひゃんッ」
離れないよう、ぴったりと密着したリゾットの腰。
目尻にナミダを滲ませつつ、少女は背を弓なりにさせると同時に一際甘い嬌声を上げた。
「ん、らめ……はぁっ、は、っ……イ、ちゃ……やらッ、ぁっぁっ、ひぁ……っや、ぁあああ!」
「ああ、……名前。オレも最奥に、注ぎ込むからな…………、ッく」
脈打った彼の性器に呼応するかのように全身の筋肉を弛緩させ、彼女は果てない快楽を感受する。
だが次の瞬間、膨大した亀頭を子宮口へゴリゴリと押し当てるようにして、勢いよく注がれた子種。
内壁や胎内が火傷してしまいそうなほど熱いそれに、もう一度たおやかな肢体がビクリと跳ねたかと思えば、名前は旋毛からつま先をピンと張り詰めさせていた。
「はッ、はぁ……名前……」
「ふ、っあ……いっぱい、れちゃっ、ぁ……ん、ぁっ、ぁああんッ!」
「! ッ……」
生殖本能が命じるままに、最後の最後まで白濁液を最奥で搾り取ろうと肉襞が蠢く。
その鋭い刺激に苦悶の表情を浮かべながらも、くたりとなった少女の身体を強く抱き寄せ、体液を焼き付けるかの如く男は腰をゆるゆると揺蕩わせるのだった。
太陽に雲が覆い被さる夕暮れ時。
その中にずいぶん長い間、微動だにしなかった車が一台。
≪リーダーからの頼み事≫――メローネからそれを伝えられたギアッチョは、いくつもある薄暗い路地裏からようやく見つけた二人の影に無愛想な表情で舌打ちをした。
「チッ、≪いつもの通り≫っつー言葉だけでわかるわけねーだろオオ……って」
「……どうした」
「リゾット。一つ言っていいか」
よほど待たせたのだろうか。かなり苛立っている。
なんだ、言ってみろ――とリゾットが口を開けば、視線の先には自分の腕によって横抱きにされている名前がいた。
「なァ、どういうことだよ……帰った途端この話聞いて、わざわざ急いで来てやったっつーのにコイツは……! 何呑気に寝てんだッ! クソ! クソがッ! この俺をナメやがってエエエエ! これって納得行くか――ッ!?」
「……とりあえず落ち着け。そしてすまなかった。ちょっとした≪運動≫をしていてな……名前も疲れ果ててしまったらしい。寝かせてやってくれ」
チーム全員を時に叱り、時に宥める声。
彼が穏やかな表情で喉を震わせながら、少女を車の座席にそっと預ける。
動かしても、近くで怒声が聞こえても目を覚ます気配のない彼女。その寝顔を愛おしむように、そして慈しむように見つめてから、
「さて、オレは近くのゴミ箱に≪これ≫を捨ててくる」
おもむろにその場を離れようとする男。
当然、彼が手に持つモノに対して、ギアッチョは胡散臭そうな眼差しを向けた。
「そりゃ構わねーが……つーか、なんだよソレ」
「ん? ティッシュだが。名前が偶然持っていてな」
――ンなこたァわかってるに決まってんだろ!
拍子抜けするリゾットのド天然さに、すでに苛立ち気味の彼が内心で叫ぶ。
聞きたいのは、その用途だった。
半透明のビニール袋に入った白いティッシュ。それらの量があまりにも異常なのだ。
一方、赤い眼鏡越しの鋭い双眸を一瞥して、リーダーである彼はなぜか考え込む仕草を見せる。
「いや……今まで、ジャッポーネで頻繁に配られているこのポケットティッシュとやらを、正直もったいないと感じていたんだが、≪こういうとき≫に便利なのか……なるほど」
「……オイ。どんどん話がズレてってんじゃねエか。俺が聞きてーのは――」
「名前と過ごす毎日は本当に刺激的だからな……。オレもこれからティッシュを≪持ち歩くこと≫にしよう」
そして、結局答えを明かさぬまま、男はその場を離れていってしまった。
なんなんだよ、一体。意味がわかんねエ。
遠退くリゾットの背中に頬を引きつらせたギアッチョは、不意に車内の名前へ目線を移して、ギョッとした。
「すー……すー……」
「……」
思わず凝視してしまう少女の首筋。
そこには、無理に壊すと相手は組織だ。何かあるかもしれないと危惧してか――外せずにいる黒い首輪。
加えて、脈がうっすらと通う、透き通った白に散らばった紅い所有印。
なんとなく、本当になんとなくだが、あの袋の中身も起きていた≪状況≫も彼は運悪く一瞬で察してしまったのである。
「はあアア……テメーも大変だな」
ぐっすりと眠る彼女の顔をよくよく覗き込んでみれば、穏やかさの中に≪運動ゆえの疲労≫を滲ませているようにも見えなくはない。
とは言え、仕事の面では自分も尊敬しているあの男を、コイツは一途に恋い慕っているのだから、ホルマジオじゃねエけど≪しょうがねーか≫――遠い目をしたギアッチョは、深いため息と共に名前への小さな同情と、バカップルに対する呆れを吐き出したのだった。
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