somma 〜40〜

※いわゆる一つの猥談
※出演、リーダーとヒロイン以外




「ねえ、リーダーと名前って、普段どんなセックスしてんのかな」


「「……ぶッ!?」」



いつもと変わらないリビングで、メローネがおもむろに発した、ある意味彼らしい一言。

それに過敏な反応――コーヒーを思い切り吹き出したギアッチョとイルーゾォを一瞥して、ソファへ優雅に腰を下ろしていたプロシュートは大げさなため息をついた。



「チッ、この童貞どもが。つーか、お前のことだ。どうせ盗撮とかで知ってんだろうが」


「あはは、さすがのオレでもそんなベリッシモ大胆なことはできないよ。リーダーの部屋に仕掛けた小型カメラ、見つかって一瞬で潰されちゃったし」


「結局したことはあんじゃねェか……ったく、しょォがねェな〜! 前、≪ネコ耳の名前萌える≫とか呟いてたから、そういう系のプレイしてんじゃねェの?」


「……テメーら、何フッツーに話を進めようとしてんだよッ!」



目を剥いたギアッチョが、ペッシからタオルを受け取りながら叫ぶ。


その絶叫に集まる皆の視線。

グッと詰まった彼に対し、受け継ぐというかのようにイルーゾォがうんうんと頷いた。



「そうだよ。二人のプライベートの問題なんだしさ……というか、オレは童貞じゃない。オレは!」


「ハン、どうだか。お前の場合、抱きたくてもそのままできませんでした、ってオチがありそうだからな」


「な……!」



腕を組み、クツクツと喉を鳴らすプロシュートに、男が唖然としながら口を開こうとする。


しかし――



「ちょっと、脱線しかけてるよ! オレは、名前がリーダーにどんな風にあれよこれよと食べられちゃってんのかな、って聞いてるんだからね!?」


「なンで妙に熱くなってんだよ、メローネの奴。鬱陶しいぜエエエエ……!」


「ギアッチョ、落ち着けって。まァ、名前に出逢う前までのリーダーはよォ……よく言えばストイックだが、悪く言えば朴念仁だったろ? 気になんのも無理はねェよ」


「そうそう! これは興味! 別に知ってどうこうしようってワケじゃないから!」



へらへらと笑ってみせるメローネ。

そんな彼に男たちがじとりとした視線を向けた。


一方、しばらく考え込んでいたペッシは、何かを思い至ったのかおもむろに顔を上げる。



「真実の愛を見つけたんすかね、リーダー」


「……ペッシ、お前意外に詩人だな」



弟分の思わぬ発言。

紫煙をふかしていたプロシュートが少し目を瞠ったのに対し、メローネは「ベネ」と口端を上げる。



「真実の愛ね……確かにそうかも」


「……美女と野獣」



ぽつり。

そのイルーゾォが呟いた言葉に全員が吹き出した。



「ちょ、美女と野獣って……!」


「ぶふっ……さすがメルヘンなスタンドを持つだけあるなァ!」


「う、うるさい! なんでこんなときに限って聞き逃してくれねえんだよ!」




リビングに響いた笑声。

それがようやく止んだころには、彼らの顔はなんとも言えない疲労に満ち溢れていた。


だが、話は終わっていないと、翡翠の目を再び輝かせるメローネ。


「はー笑った。でもさあ、でもさあ! 名前のコスプレだったら、オレ≪ミニスカポリス≫が見たい! 絶対にディモールト・ベネだよな! ≪逮捕しちゃいますよっ≫とか言われながら逮捕されたい……!」


「おいおい、逮捕されてどうすんだよ。肝心なのはそっからだろ」


「そっからアア? どういう意味だ、はっきり言いやがれ!」



もはや止めても止まらない――そう判断したのか、ギアッチョが改めてコーヒーを飲み直しながら、尋ねる。

すると、煙草の火を消したプロシュートがニヤリとほくそ笑んだ。



「ハン、そんなの逆に≪捕まえて≫やればいいんだ。ミニスカポリスの名前が持ってた手錠を使って、な」


「!? プロシュート……あんた、まさか!」





「ふっ……路地裏の電柱に手錠で拘束され、嫌がるそぶりを見せる名前。そして、必死にくねらせる身体をじっくり甚振りながら美味しくいただく……最高にベネじゃねえか」


「ベネ! ベリッシモイイよッ! さすが、数多の女をひっかけてきただけのことはある! あんたはプレイの宝箱だよ……!」



感無量。

尊敬の念。


それらすべてを身体で表すべく、メローネが一人バッと腕を広げている。

一方、イルーゾォとギアッチョはすぐさま脳内で光景を再生してしまったのか、鼻から何か赤いものを垂らしていた。



「おいおい、褒めても何も出ねえぞ。それに、今は名前一筋だからな。つーか、実際買ってんじゃあねえのか? リゾットの奴」


「ハハハ! まッ、リーダーもやることやってるからな」


「うんうん、確かに! 手錠とか塗られたらヤラシー気分になるぬるぬるのローションとか、こっそり調達してそうだッ」



やいのやいのと騒ぐ組と、自然と妄想の世界へ旅立っている組。


彼らの動きを静かに見守っていたペッシが、恐る恐るといった様子で口を開いた。




「あの、みんなの言ってること……あながち間違ってないかもしれないっす」








「「「「「……え」」」」」


静寂が支配する部屋。


その、凍り付いた空気から最初に抜け出したのは――



「おい、どういうことだペッシ。お前……何を見たんだ……!?」



発言者の兄貴ことプロシュートだった。


「あ、兄貴……実は」



珍しく動揺をうかがわせる彼に対して、弟分であるペッシは申し訳なさそうに眉尻を下げる。


「実は、リーダーにコーヒーを運んだ時のことなんすけど、偶然部屋には誰もいなくて、パソコンだけ開きっぱなしの状態だったんですよ。それで、前にリーダー、節約って言ってたからスリープモードにしようとしたら、間違って検索のページを開けちまったんです。焦ったのは焦ったんすけど、その検索欄に――」


「(ゴクリ)……検索欄に? ペッシ、な、何が書いてあったの!?」







「≪手錠 通販≫やら≪プレイ 一覧≫って、明らかに仕事に関係ない言葉が出てきて……!」


「「「「「……」」」」」






まさかのカミングアウト。

ワッと両手で顔を覆い隠す弟分を慰めるように、そっと肩へ右手を置いてから、少なからず青筋を立てたプロシュートがゆっくりと言葉を紡ぎ出した。




「……どうにかあいつを、しばらく≪不能≫か何かにできねえのか。頭に浮かべんならまだしも、リゾットのことだ。本気でヤりかねねえ」


「ハハッ、プロシュート。お前も極端だなァ……ま、名前も≪ほぼ毎晩≫じゃあ大変だろ。いくら吸血鬼ちゃんでも最近は睡眠不足で辛そうだし。不能が≪一生≫じゃねェなら、俺は賛成」


「ちょ、こんなときに意気投合すんなよ、年長組! 確かにリーダーは名前を前にしたら性欲の化身かってぐらいすごいけど、さすがにそれは可哀そうじゃ――」



豪快に手を叩いて笑う丸刈りの同僚に、思わず叫んでしまうイルーゾォ。

しかし、彼の言葉を遮るかのように、≪あの男≫が動き始める。


「不能……不能、ね。アレとアレを混ぜて…………ベネ。楽しそうだ」


「ほーう、できるならやってみろよ」


ニヤリ

吊り上げられた口端。


何かを思案するブロンド二人に、先程まで爆笑していたホルマジオがふと首をかしげた。


「おいおい。お前ら、マジで何をおっぱじめる気だァ? なんか共通の≪目的≫でもあんのかよ」



すると、返されたのは――



「あ? んなモン」


「決まってるでしょ」



これでもかと言うほどあくどい笑み。




「……あの顔。アイツら、ロクでもねえこと考えてやがるぜエエエ」


「大丈夫かな……」



この二人が組むと、漠然としていても危ないと感じる。

押し寄せそうな事件に、ギアッチョは静かに舌打ちをし、ペッシはただただ苦笑を漏らしたのだった。



続、く……?



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