somma 〜39〜(↑の続き)

※裏



色づき、熱の帯びた頬。

潤む瞳で向けられる上目遣い。

甘い吐息を漏らす、赤く濡れた唇。



「――ひゃっ!?」


恥ずかしげな名前から放たれた言葉を聞いた瞬間、リゾットは無言のまま彼女を抱き上げ――近くにあったソファへと下ろしていた。



「り……リゾット、さん……?」


羞恥と不安。

その二つに揺らいだ深紅の瞳を一瞥して、優しく頭をなでた彼はおもむろに傍を離れる。



「え……?」


そして、先程少女が出てきたリビングの鏡を、偶然持っていたハンカチで覆った。



「?」


「……これで、あいつらも出てこられないだろう」



ギシッ

自分の上へ跨った男の穏やかな笑みと、その軋んだ音に≪まさか≫と目を見開く名前。



「あ、あの……っここで、ですか?」


「そうだ。今まで、リビングでシたことはなかったはずだが」


「う……確かにそうです、けど///」


「安心してくれ……この部屋には誰も入れさせやしない」



そういう問題では――誘ったのは自分だと理解しつつも、やはり恥ずかしさが心を占めてしまう。


狭いソファに縫い付けられたこちらを突き刺す、劣情でぎらついた眼。

自然とそれに胸を高鳴らせながら、羞恥に塗れた表情でおずおずと彼を見上げれば、


「名前」


「えっ、ん……っ!」



いつの間にか顔を近付けていたリゾットに、あっさりと唇を奪われてしまった。

きゅうと閉じられた瞼を見据えつつ、彼女の上顎、歯列、舌下を焦らすようにねぶっていく。


思わぬ誘い文句。

愛しくてたまらないこの少女が口にしたそれは、彼に少しばかりの驚きと大きな喜びを与えていた。


「ん、っふ……ぁ、リゾ、トさ……んんッ」



唾液が交り合う淫らな音と、快感に浮かされ始めた途切れ途切れの声が響く。



「はぁ、はッ……いきな、り、そんな……ぁっ!?」


「すまない。だが、名前が可愛すぎるんだ」



可愛らしくて、健気で、大切にしたい。

しかし、≪大切だ≫と心が訴える一方で、≪自分しか見えないよう、めちゃくちゃにしてしまいたい≫という感情もある。


修道服を浮き上がらせる、名前の柔らかで扇情的な二つの乳房。

乱れた呼吸で上下するそれをおもむろに両手で揉みしだき始めれば、彼女はビクリと肢体を震わせた。



「っぁ、ん、はぁ……リゾ、トさ……、あんっ」


「ん、やはり名前の首筋は甘いな……これは、アジトのボディソープの香りとも異なっている……なぜだろうか」


「ひぅっ、やだ……ぁ、ソコ、見えちゃ……っ噛まな、でぇ……!」



トクトクと脈の通う細い首筋へ唇を寄せる。

そして、目前の赤い痕に吊り上った口端を戻そうともせず、リゾットは快感を享受する少女の耳元で囁き続けた。


当然、黒で覆われた胸を歪な形へ変える両手も、止まることはない。


「やぁ、っは……はぁッ、は……りぞっと、さ、んんっ!」


「どうした?」


「ぁ、はぁっ、その」


「ん?」



いつの間にか、更なる快楽を乞い、擦り合わせてしまっている内腿。

ところが、荒い息のままちらりと彼を一瞥しても、男はただただ上半身へ痺れを与え、時折耳たぶを食むばかり。


言わなければ、ならないのだ。


「ッ、あの……、……下も、ココも、っさわって、くださ……っ」


「……ふ、わかった」


「ぁっ、!」



刹那、鼓膜を刺激する彼の声が遠退いたと同時に、無骨な手からバストが解放される。


一瞬――本当に一瞬だけ名前はホッと息をついたが、すぐさまロングスカートを捲られ、自らが願ったにもかかわらず驚いてしまった。


「/////」


「なるほど。下着にシミを作るほど濡らして……よほど期待していたんだな」



膝に手を添えられ、開かれる脚。

紡がれた言葉に慌てて首を横へ振っても、ショーツの色の変わった部分からリゾットが目を離すことはない。



「っ、はぁ……そ、な見ちゃ、やぁ……」


「≪嫌≫、か……ふむ、直視ならばどうだ?」


「え……、ひゃんっ!?」



するり


閉じられた足先を、布特有の感触が掠めた。

そして、床へ落とされたであろう下着を見守る暇もないまま、再び開脚させられ、冷たい空気を帯びる己の秘部。



「名前、すぐに舐めとってやるからな」


「舐め、ッ……待っ……ぁ、っあああ!」



クチュリ――生々しい音と共に膣内を蹂躙し始める彼の舌。

白い喉を晒しながらいやいやと示してみても、男は容赦なく彼女を官能の淵へと引き込んでいく。


「ぁっ、ぁっ……やら、リゾットさ、吸っちゃ……ぁあ……っ!」


「んっ……どんどん溢れてくるな……名前、感じているのか?」


「! ちが、っぁ、はぁ……いやっ、言わな、でぇっ」



ナカから抜き取られたかと思えば、感じているがゆえに腫れ上がった陰核を舌先で弄る。

リゾットがもたらすすべてに、翻弄されていた。


ねっとりとした愛撫。

「や、ぁっ、ぁ……ッはぁ、あん……!」


細やかな痙攣が押し迫る≪絶頂≫を予感させる。

しかし、今回はソレだけではなかった。



「ひゃ、っぁ……やぁあッ、リゾ、トさ、ダメっ、また出ちゃ……やぁっ」


以前、経験したことのある特徴的な排尿感。

トロリと蜜を零す秘部から口を退けようとしない彼に、名前は焦燥を浮かべながら、ソファ上で身を捩ろうとした、が。



「気にするな。……イっていい」


しっかりと太腿を固定され――



「ぁ……っ、ひぁ、ぁあああ……ッ!」


足のつま先から旋毛へ、駆け昇っていく快感。

蜜壺から飛び散る何か。

骨盤を侵す鋭い痺れ。



「は、ぁっ、はぁッ……あ、っ」


ビクリビクリと不規則に肢体を震わせていると、肉厚のある腿から顔を離し、口元の愛液を舌で一舐めしたリゾットがこちらを凝視してくる。

その目に映る、己の蕩けた表情にドキリとしつつ、「どうしたのだろう」と彼女は小首をかしげた。



「……一つ気になっていたんだが」


「はぁ、っん……は、い?」


「あの写真集はどうだった?」


「…………え!?」


突然の問い。

どうしてこう、答えづらい質問を出してくるのだ。

今ある力を振り絞りサッと視線をそらしても、深い色をした瞳はすかさず追ってくる。



男の真摯なまなざしに、降参を告げるのはいつも名前の方だった。



「あ、う、えと……すごく、ドキドキしてしまいました」


「そうか……、名前」


「は、はい」









「勘違いをしていると困るので正直に伝えるが……実は、あの雑誌をオレは一度も開いたことがないんだ」


「……、へっ!?」



≪開いたことがない≫?

予想もしなかった言葉に目をぱちくりとさせてしまう。


そんな彼女の反応に、やはり勘違いをしていたか――と言いたげにリゾットは真顔で話を続けた。


「アレは、メローネが贈ってきたモノだ。見舞品というだけあって、さすがに捨てるのも憚られてな……本棚にしまったのを忘れていた」


「あ……そう、なんですか」


ようやく胸から消えてくれた≪もやもや≫。

しかし、彼の代わりに現れたのは、言わずもがな≪羞恥≫である。


「〜〜っ////」

――勘違いしていたなんて……、恥ずかしい……!


穴があったら入りたい。

下唇を噛み、上下左右に視線を彷徨わせる名前。


その愛らしい姿にふっと頬を緩めた男。

そして――


「だが、名前にはかなり刺激が強かったらしい」


「ひぁっ」


いつの間にかズボンを脱ぎ去っていたようだ。

熟れた秘境が鮮明に捉えた亀頭の熱に、思わず彼女の唇から甘い嬌声が上がった。


一方、ビクビクと小刻みに震える花弁を見下ろしながら、彼は焦らすように入り口を攻め立てる。


「ココをこんなにも物欲しそうにして……自分がいやらしいポーズをしている時を想像し、興奮でもしたのか?」


「!? そ、んな……っぁ」


挿入されそうで、されない。

求めて、蠢く肉襞。


欲しいと、自覚してしまっている。

脳髄が下す命令に、少女は静かに腕を伸ばし、



「!」


「っ……リゾットさんの、……ほしい、です」



精一杯の言葉を口遊みながら、ぎゅうとリゾットの首元へ縋った。


あの写真のように、淫靡には誘えない。

だが、せめて――逸る想いに従い、そっと腰を強請るようにくねらせた次の瞬間だった。


「ぁッ、や、ぁあああっ!」


「名前……ッ」



飲み込んでいく性器。

悦びに震え、激しく収縮する膣内。


「は、ぁっ、ぁっ……リゾットさ、リゾットさ、ぁあ……!」


「ッく……自分から腰を振って……名前はいつから欲しがりになったんだ?」


「ぁっ、やら……ッはぁ、あんっ、言っちゃ……いっちゃ、らめぇッ」



寸前まで抜かれたかと思えば、モノの根元まで勢いよく埋め込まれる。

意識は朦朧とし、結合部からは新たな蜜がドプリと溢れ出した。


「ひぁ、っぁ、ぁ……ん、はぁっ、ぁああ……っ」



ベッドと比べてよりバウンドするソファ。

それが男の律動を速め、女の襞を絡みつかせ、互いにとって強い快感を引き出す。


グチュン

ジュブ


生々しくリビングに響き渡る、肉と肉の打ち付けあう音。


「ぁ、っぁ、リゾ、ットさ……はぁ、わた、し……ぁっ、わ、たひ……!」


「ッ名前……は、ッ」



重なる視線。

いつも以上に擦り、抉られる最奥。


「くッ……!」


「っぁ、や、――ぁ、ぁあああッ!」



刹那、リゾットの脈打った性器から注ぎ込まれる熱い液体と共に、名前は二度目の絶頂を迎え入れた。






それから、ゆるりゆるりと腰を揺蕩わせた彼が、不意に一物を彼女のナカから抜き取る。


「ふ、ぁっ///」

膣壁を掠め、思わず喘いでしまうが、ハッとして少女は口ごもった。


しかし、気付いているのか気付いていないのか、服を整えた男は優しく後処理をしていく。


「んっ……ふ、っぁ」


「ふ……どうした? 蕩けた顔をして。足りないのか?」


「ちっ、違います! そんなのじゃ……、ッ!」



意地悪なことを言うリゾットに反論しようとした、そのときだった。

甘い痺れとは違う――腰の痛みに小さく眉をひそめる名前。


その表情に、一瞬目を見開いてから、彼がすぐさま空いている片手で患部を撫で始めた。


「あ、ありがとうございます///(う……ソファだったからかな……)」


「いや、気にしなくていい……ところで。今日の名前はいつもよりずいぶん積極的だったが……雑誌と関係があるのか?」


「! そ、それは……」



当然ながら、言いよどんでしまう。

だが、黙っていてもいつか吐露せざるをえなくなるのも実だ。



「?」


「えっと……実は少しだけ、不安になってしまったんです」


「不安?」


大体の処理が終わったのだろう。

下着を戻し、修道服を足首まで戻した男が首をかしげながら、こちらへと覆い被さってくる。


ギシリ、と再び軋むソファ。

服越しにもはっきりと感じられるリゾットの鼓動、体温。

相変わらず腰にある優しい手と≪心配≫を交えたまなざしに、彼女はおずおずとだが頷いた。


「はい……その、写真がすごくて……私だけじゃリゾットさんに満足してもらっていないのかな、と――」



突如、話を遮るように自分の両頬を摘まみ上げる何か。

想像もしなかった反応に名前はギョッとするが、犯人は目の前の彼しかいない。



「!? な……なにふるんへふは!(何するんですか!)」


困惑を極めた眼で男を見上げる。

痛くはないものの、こうされた理由がわからない。


ただ、返ってきたのは呆れのこもったため息だった。



「名前……バカなことを言うんじゃあない」


「っ、へも――」


「……そうだな、はっきりさせておこう。オレには名前しかいない。名前にしか欲情していない。ありのままの、名前がいいんだ」


「!」


「もちろん、≪エッチ≫をしてほしいと呟く名前もこの世の何物とも比にならないほど可愛かったが……無理はしてほしくない」

それに、開いていないと言っただろう?



もう片方の手で黒髪を梳かしながら事実を口にすれば、そっと少女の首が縦に振られる。


たとえ、世に言われる≪積極的≫な女性でなくてもいい。

いつもは羞恥にいっぱいいっぱいでありながら、想像すらしないところで大胆になる名前を、自分は愛しいと感じているのだから。



「……リゾットさん」


再び、むにむにと柔肌を堪能していた両手。

それをゆっくり離すと、はにかみながら自分の名を口にする彼女が。


「わかってもらえたか?」


「はい……!」



にこっ

安堵と歓心に満ち溢れた笑顔。


やはりオレがもっとも愛しいのは、名前の笑顔だ――少女への想いを改めて実感し、頬を緩ませる。

そして――


「ぁ、っダメ、です……」


「名前……身体を強張らせる必要はない。キスをするだけだ」



――もっとも、名前がオレを煽らなければの話だが。


どうやら口付けなら受け入れてくれるらしい。

安心したように微笑み、静かに瞳を閉じた彼女を見つめて、リゾットはすでに≪キスだけ≫という意志が変わり始めていることを自覚しながら顔を寄せた、が。



ドンドンドンッ


「!」


「ちょ、リーダー! もう無理! もうこいつら止めておけな――ぎゃああッ!」


「さっさとそこを退きやがれ、内弁慶野郎! これ以上リビング(と名前の身体)を独占させられっか……!」


「あはっ、イルーゾォ……ベイビィの標的にされたくなければ、そこを退こうか?(いつも盗撮してるけど、名前の陶器のように白くてエロい裸を直視するチャーンス!)」



突如、情事の前に塞いだ鏡から届く怒声。

すると、二人がそろりと上体を起こしたと同時に、メローネとプロシュートが飛び出してきたではないか。



「「……」」


「お前たち……しばらく出入り禁止だと紙を貼って――」


リビングで対峙する男女たち。

顔色一つ変えることなく、一歩間違えれば職権乱用と訴えられかねないことを紡ぎ出す男。


けれども、彼らの視線の先は――


「着衣プレイ、だと……? ベネッ、ベリッシモイイけど、なんてこった……!」


「Porca miseriaッ!(こんちくしょうッ!)」



普段通り、清純な修道服を身に纏い、きょとんとしている名前にあった。

我らがリーダーに抱き込まれた彼女を目に焼き付けてから、何を思ったのか鏡へと踵を返す二人。


すると、おもむろに背後へ出したのは己のスタンド。

標的はもちろん――



「「……イルーゾォ」」


自分たちを引き留めた鏡の国の男である。



「え……ちょ、許可しない! もうこいつら絶対に許可しないィィィイ!」







絶叫と悲鳴が轟く中、彼らの仲裁をすることなど微塵も考えていないリゾットは今以上に少女を抱きしめる腕を強める。

そして、何度されても慣れないのか、見る見るうちに紅潮した名前の顔にふっと柔らかな笑みを浮かべ、彼は吐息を滲ませた唇を静かに耳元へ寄せた。



――思わぬ邪魔が入ったが……仕方ない。


「名前、続きは夜だな」


「! お、お手柔らかにお願いします……ね?」


「…………考慮はしよう(おそらく無理だろうが)」



胸を支配するのは、もはや諦めに似た感情。

それと同時に、


――≪誘い文句≫か……オレが名前に覚えさせるのもイイかもしれないな……。


と、とんでもない策を男が練り始めていたとは――鏡の前にて繰り広げられる攻防戦を心配そうに眺めていた彼女は、知る由もない。



終わり



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