「…ナマでいいから、挿れて」



足を開いて、濡れた瞳で告げられた言葉に朝井は口端を上げて笑う。


腕を掴んで体を反転させ、四つん這いにさせれば、木佐はまたその手でシーツに皺を刻んだ。


「…あさいさん」


『早く』と言わんばかりに木佐がねだるように甘い声で自分を呼ぶから、短く声を出して笑った。
それでも待ちきれないのは自分も同じで、下だけ履いていたジーンズのベルトに手をかける。
ベルトを外して前を寛げ、木佐の痴態ですでに反応していた自身を手で軽く扱けば、その間すら待てないのか、再度木佐は口を開く。


「朝井、さん…っも、早く…ッ」


その声にクスクス笑いながら木佐の背中に覆いかぶさる。
硬く猛った自身を宛がえば、ふるりと震える体と共に濡れた入り口が誘うようにヒクつく。


「…も、どんだけSなんだよ…」


なかなか与えられない快楽に焦れた木佐が、小さく笑いながら誘うように腰を揺らす。
その仕草に誘われるまま、ゆっくりと挿入していく。


「んんっ」


ずぷ、と卑猥な水音を立てて木佐の中に自身を埋め込む。
一度奥まで挿入してから、木佐の細腰を掴んですぐに激しく抜き差した。


「…ぁっあ!は、ああっ!!」


感じる場所の内壁を強く擦りあげれば、木佐はすぐに甘い声で啼いた。
先程まで散々焦らしておいて、いきなり快楽を与えられ、惜しみなく素直にこぼれる嬌声に、また口端があがる。


「…お前こそMなんじゃねーの、翔太」


『締め付け、ヤベーんだけど』とわざと水音を立てるように激しく突き上げてやりながら耳元に囁いてやれば、『んな…ワケ、あるか…ッ』と吐息まじりに木佐は告げる。
その声に説得力がまるでなくて、また朝井の唇から笑い声が漏れる。


「…っくく…否定できねーだろ、この体じゃ」


苛められて悦んでるくせに、と律動を続けたまま囁いて耳を舐めれば、木佐はまた唇から甘く吐息をこぼす。


「…いいじゃねーか…相性いいってことだろ?」

「…ざ、けんな……っあぁ!」


一点を突けば、木佐は一層高い声で喘ぐ。
それを朝井が見逃すわけもなく、その場所を何度も擦り上げる。


「…ほら、俺は優しいだろ?」

「〜〜〜ッ!!」


顔が見えなくても、木佐が唇を噛んでいるのがわかる。
そんな木佐がたまらなくて、手を伸ばしてすでにとろとろに濡れそぼる自身に触れ、突き上げに合わせて扱いてやる。


「っそんな、されたらぁ…っ!」


シーツを一層キツく握り締め、しなやかに背中を反って、木佐は早々に限界を告げる。


…他のヤツが相手ならもっと焦らして、焦らして、…グチャグチャにしてやるのに。



「翔太」



呼んだ名が、自分でも信じられないほど甘い声音で驚くのに、すぐに次の言葉を告げてやる。



「…早くイけよ」



そう告げて、最奥を抉るように強く突き上げる。


「…ぁあああッ!!」


耐えきれずに木佐は朝井の手に、熱を放つ。
その瞬間、ナカが絡みつくようにキツく締め付けられるが、ギリギリのところで、朝井は耐えた。
それから熱く濡れる己の手に、満足げに笑う。


「…はあ、は……あさ、い…さん…」


小刻みに体を震わせ、木佐は達した余韻に浸っている。
そんな木佐の耳元に、朝井は囁く。


「…楽しませろよ、翔太」


『俺はまだイってねーんだから』と言えば、木佐は体を小刻みに震わせたまま腰を揺らす。


「んっ…朝井、さん…」


甘いその声に、自分たちは恋人同士ではないのかと錯覚する。


…回されない腕。
この体位では、回されるはずもない。


…それでもいい。


「翔太」

「…朝井さん」

「…翔太…」


自分は今、どんな顔をしている?
…木佐に見えなくて、正解だ。
木佐が顔を見ていたなら、この関係は、この一夜で終わっている。

考えを振り払うように、達したばかりの敏感なナカを、猛った自身で穿つ。


「あっぁんッ…は、あ…!」

「…もう一回、ナカに出してやるから」


笑みを含んだ声で耳元に囁いてやる。
そうすれば快楽に弱い、それでも生意気で可愛い目の前の男は、息もきれぎれに『ふざけんな』と予想通りに告げるから、余計に笑ってしまう。



…演技は得意だ。
この男にどこまで通じるのか、それすら楽しい。
…お前の体だけが目的のフリ、してやるよ。



そんな考えを巡らせながら朝井が『後でまた、掻き出すの、手伝ってやるよ』と囁けば、『…朝井さんなんて最低だ!!』と耳を真っ赤に染めて、木佐は声高に叫んだ。







2011.07.31
2011.08.07修正

はじめて書いたあさきさでした。





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