内に放たれた熱で奥がしとどに濡れていくのを感じながら、木佐はきゅっと目を瞑り、繰り返し甘い嬌声を零す。
そんな木佐の姿を見て、朝井は引き結んでいた口元を満足げに緩め、木佐の耳元で甘く囁いた。
熱い吐息が耳に触れる、ただそれだけでピクリと小さく反応を返す木佐に、朝井の笑みは更に深まる。



「――イケよ、翔太」



ふるふると身体を震わせ必死に快感をやり過ごそうとする木佐を嘲笑うかのように、朝井は今まで木佐自身を縛っていた手を放し、代わりに自身の放った熱で濡れた奥を深く刔った。



「――――っ!!!」



途端、無防備だった木佐は突然の解放と与えられた刺激に堪え切れず、悲鳴のような嬌声と共に、突き動かされるまま腹部にとろりと白濁を放った。





「…失敗した」

「――は、」




高ぶった熱を放出した余韻に浸っている最中、シーツに疲れ果てたその身を沈めていた木佐が不意に呟き、ベッドサイドで煙草を燻らせていた朝井は思わず眉間に皺を寄せた。
――失敗した、ってどういうことだ。
こうして朝井と関係を結んだことを今更後悔しているとでも言いたいのだろうか。
考えるだけで何とも言えない不愉快な、いやもっとドロドロとした感情がじわりと滲み出し、朝井は苛立ちを隠しきれず近くにあった灰皿にぐいぐいと煙草を押し付けた。
すると不穏な空気を感じ取ったのか、――あぁ、いや、そうじゃなくて、と木佐は努めて明るく否定の言葉を口にし、視線を自身の内股へと向けた。
それにつられるよう視線をやると、木佐の内股はすっかり朝井の吐き出した白濁の液で濡れそぼっており、何とも艶めかしい。というか、エロい。
それを解っているのかいないのか、木佐は自身の内股を見つめて、はぁ…とひとつ大きな溜息を吐き、力無く笑った。



「…えっと、ゴム、付けて貰うの忘れてたからさ」

「――ゴム??」

「そう。気持ちいいのは好きだけど腹下すのはゴメンだから、いっつも付けて貰ってたんだけど」

「…お前、んなこと言わなかったじゃん」

「それはそうなんだけど――…ってか、ホテルに着いた途端、朝井さんが獣みたいにがっつくから!!」

「――俺のせいかよ。
まぁ、いいや。そんなに言うなら、それ、掻き出すの手伝ってやるよ」

「……は!?いやいや、いいです!自分でやるんで!!」

「いーから。ほら、足、開けよ」



朝井の告げた命令に近い言葉に、木佐は首を振り、頑なにイヤイヤを繰り返す。
その姿は何とも幼く可愛らしいものだったが、朝井は眉ひとつ動かすことなく、抵抗する腕を左手でひとまとめにし、右手をそっと後孔へと宛てがった。
途端、頭上から小さな悲鳴が聞こえたが気付かない振りをして、まずは一本と、朝井は自身のスラリとした長い中指をそこへと差し込んだ。
すると先程までの行為ですっかり解れたそこはいとも容易く、むしろ奥へと誘い込むように朝井の指を飲み込み、これならばと一気に本数を増やして、中に吐き出されたままの白濁を巧みな指使いで掻き出していった。
指を動かすたびに、くちゅりと濡れた水音、木佐の細く甘やかな喘ぎが朝井の鼓膜を震わせる。
これはあくまで後処理に過ぎない、そのことは朝井自身も重々承知していたが、



「……ぁあ…っ!!
――ちょ、あさ、い、さ……っ」



内で指が蠢くたび、そう木佐が朝井の名を呼び甘く甘く啼くものだから、次第に朝井の内に潜む嗜虐心がムクリと顔を覗かせた。
――あぁ、いけない。
そんなつもりは無かったのに。
そう思いつつも、綺麗な黒瞳が再び欲に濡れ、ふるふると震える睫毛から、はらりと幾つもの涙が零れ落ちるさまを見てしまったら――もはや、朝井は込み上げる衝動を抑え切れなかった。
白濁を掻き出していた指は明確な意図をもってバラバラに動き出し、強弱、緩急を付けては的確に木佐の内を犯していく。
突然の指の動きの変化に木佐は目を見開き、止めさせようと口を開くも、紡がれるのは途切れ途切れの、言葉にならない甘やかな喘ぎのみ。
今日初めて身体を重ねたばかりだというのに、朝井は既に木佐の感じるポイントを覚えたらしく、巧みに木佐を高め、追い詰めていく。
それに伴い、木佐自身も頭を擡げ、反り返り、気付けばその先端からは先走りが溢れていた。
――このままだと弾けてしまう、そう覚悟して木佐は襲い来る快感に耐えるべく目を瞑った、その瞬間。
不意に、木佐の中を不埒に蠢いていた指の動きがピタリと止まり、一気に引き抜かれた。
その突然の刺激に木佐は一段と大きく甘く喘ぎ、思わず顔を上げれば、朝井は不敵、不遜な笑みを貼り付けて実に楽しげに木佐を見つめていた。



「――なに、興奮してんの」

「…だっ、て!朝、井さん、が!!」

「んなの堪え切れないお前が悪い」

「〜〜〜っ!!」

「――なぁ、翔太。俺にどうして欲しい??」



言ってみろ、とばかりに綺麗な笑顔を浮かべて問い掛けると、言葉を無くした木佐は一気に顔を赤く染め上げ、恨めしげな、けれど涙混じりの眼差しを朝井に向けた。
――そんな目で見たところで、かえって俺を煽るだけだってのに。
ク、と苦笑を噛み殺しつつ、つぅ…と指の先で木佐自身を擦り上げれば、木佐はビクッと大きく身体を震わせ、先端から更にトロリと涙を零した。
…陥落するまで、あと少し。
気持ちいいことを知っているのならば、与えられない辛さも知っているだろう。
ならば、きっと自ら懇願し、堕ちてくる筈だ。
それを今か今かと内心ひそりカウントダウンしながら、朝井は先程の木佐の言葉を思い出す。


『いっつも付けて貰ってたんだけど』


――腕を回すことはあんな頑なに拒絶した癖に、流されたとは言え、それは受け入れるのか。
何故??
疑問符ばかりが浮かび、答えは一向に出てこない。
けれど、今はそれよりも、今まで木佐が相手に譲らなかった一点を、そうとは知らず突き崩したことに、朝井は何とも言えない満足感を抱いていた。
そう、つらつらと思考を巡らせていると、気付けばカウントゼロとなり、同時に、木佐は微かに震えた声で朝井の名を呼んだ。



「あさ、い、さん」



――あぁ、やっぱり堕ちてきた。
さて、一体どんな懇願の言葉が紡がれるのだろうか。
知らずと膨らむ期待に内心ひそり自嘲しながら、朝井は、



「…で、俺にどうして欲しい??
―――翔太」



そう、見惚れる程の綺麗な顔で笑った。







2011.07.30

ちょっとした優越感。


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