性別転換話つめあわせ。


花霞さんの性別転換話と同じ設定で書いたあさきさです。
受組が女の子なので注意!
大丈夫な人だけどうぞー









濡れた水音が密閉された資料室に響く。
脇に腕を通され、抱き上げるように机に座らせたかと思うとその机に手をついた朝井先生にキスをされた。
はじめは啄ばむように軽いものだったのに、次第に箍が外れたように深くなり、快楽の混じりだした頃に、俺は自ら求めるように腕を回した。
そうして散々唇を味わった後、息のあがった俺の濡れた唇に指先で触れながら、朝井先生は告げた。


「…今日、なんでいちご味なの?」


その言葉に思わず笑ってしまった。
『いちご味』、だって。
朝井先生の口から出るには相当レアであろうその言葉に笑っていると、不機嫌そうにその人が顔が歪めたから、機嫌を損ねる前に俺は口を開く。


「…昨日 デパートで、ちーちゃんがね」
「ちーちゃん?…ああ、吉野か」
「うん。このシリーズのリップ、お揃いにしよう、って」


そう言いながら、俺はポケットから取り出したリップクリームを朝井先生に見せる。


ちーちゃんはマスカット、律っちゃんは桃、俺はいちご。


…たまたま周期が重なったように、俺たち三人は、三人とも女の体になった。
三人とも性別が揃うことは珍しく、昨日それに大喜びしたちーちゃんが『ガールズショッピングに行こう!!』と言い、俺はすぐさまそれに乗った。
そうして遠慮する律っちゃんを引きずり連れてデパートに繰り出し、律っちゃんにスカートファッションショーを無理やり開かせたあげく、一番似合っていた膝丈のフレアスカートをちーちゃんと俺とでプレゼントした。
『明日絶対着て来るんだよ!!』と二人で念押せば、普段男の姿だろうが女の姿だろうがパンツスタイルを貫いている可愛い後輩は、無駄にプレゼント包装してもらったそれを呻いて泣きながら受け取った。
その後、各々で欲しいものを見るのに付き合った際に、たまたまこのリップクリームを見つけたのだ。
香り付きのそれが気に入り、テスターで匂いを確かめていると横からひょいとちーちゃんと律っちゃんが覗いてきた。


『しょーた、リップ買うの?』
『ん。最近乾燥するしさ』
『…確かに、冷えるとカサつきますよね』
『…いいこと思いついた!ね、ね!これ今日の記念にしようよ!』


『記念?』と律っちゃんとふたり、提案したちーちゃんを見つめる。
するとちーちゃんはすごく嬉しそうに頷いた。


『ガールズショッピングの記念に、三人おそろいで、このリップ買お!ねっ!』


ちーちゃんらしい可愛い提案に思わず俺は笑ってしまった。
視線を向ければ律っちゃんも困ったように、それでも『おろそい』と『記念』という言葉に、嬉しそうに笑ってくれた。



そのことを話しながら、いちごのリップを手渡せば、『フーン』と言いながら朝井先生はまじまじとそれを見た。


「…『キスしたくなるリップ』」
「!!」


びっくりしたように顔を見れば、朝井先生は意地悪く口端をあげてスティックの側面を俺に見せた。


「キス、したかった?」


『俺と』、と言いながら側面のその文字を指でなぞられ、頬が真っ赤になる。
…うっかりしていた。
このリップのキャッチフレーズがそういう言葉だったことを失念していた。


「俺に食べられるために塗ったんだろ?」
「そ、そんなこと」
「俺はしたいけど。翔太にキス」


キャップを外し、長いその指でクリーム部分を引き出すと『動くなよ』と口添えして、朝井先生は俺の顎を片手で掬い取り、唇にリップを塗っていく。
丁寧に引かれるそれと、唇を見つめる真剣な視線に頬に熱が集まる。
塗り終わると、朝井先生は満足そうに笑った。


「…もっと喰わせて。お前のいちご」


その言葉に、俺はまるでいちごのように、さらに頬を真っ赤に染める。
…そうして近づく綺麗な顔に、俺はねだられるままにゆっくりと目を伏せた。





*****





もっと、と誘うように赤い舌を覗かせたから、すぐに唇を塞いだ。
深まる口付けに、甘い声が混ざる。
合わせた唇では言葉が紡げないから、心で呟く。

(…翔太…)

…生徒に手を出すなんて、教職者失格だ。
それなのに『俺を溺れさせたコイツが悪い』なんて、全ての罪を翔太に被せてしまう。
抱いても抱いても初々しい反応を返す体。
真っ赤に染まる頬。
涙をこぼしながら自分を見つめる漆黒の瞳。
演技ではないのがわかる。
そのせいで愛しさが募った。

…『先生が好き』と告げられたことがある。
頭で『お前みたいなガキに欲情すると思ってんの?』『俺を失業者にするつもり?』と考えながら『ごめんな』という言葉で諭すように彼女の頭を撫でた。
自分には一切の執着がなかった。
求められ、気に入れば応えたが、その場限りですぐに飽きた。
欲しいものは手の届く範囲で調達し、飽きたら躊躇なく捨てた。
ずっとそうして、生きていくのだと思っていた。

ちゅっと下唇を甘く吸ってから唇を解放し、翔太を見る。
その瞬間、通じたようにぎゅっと伏せられていた瞳がゆっくりと開いた。
目が合った瞬間に、柔らかく微笑む。


「……せんせ」


甘い声と共に細腕が伸ばされ、自分の首に回される。


「せんせ、もっと。もっと欲しい…」


頬を真っ赤にして、濡れた瞳でねだるその姿に目を細める。

…愛しい。
漆黒の髪も、それと揃いの瞳も、幼いその顔も、甘いからだも、全てが愛しい。

もっと俺を欲しがればいい。
男の姿でも女の姿でも相違無いその気持ちに、心が翔太を求めていることを知った。
お前は俺の、唯一の存在。


「…お前が望むならいくらでも」


掻き抱くように抱き締め、『欲しいだけくれてやる』と赤い耳に囁けば、少し震えた後で、回された腕にぎゅっと力が込められた。









2012.04.01

見事にえろばっか。
木佐さんえろいよ木佐さん。




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