寄る辺の話



電車に乗ろうと思ってたら倉庫の中だった。本当は成人女性なのだが、気づいたら子供の体になっていた。これは少し経ってから気付いたことなのだが、周りが来ている服や本を見る限り、私が生きている現代ではない。

…なんて正直に言った日にはそういう病院に送りかねない、と思ったのでそこの所には何も触れないで、咄嗟に記憶喪失の振りをすることにした。鶴見中尉はにこにこ笑いながらただうんうん頷いてくれていたが、絶対怪しまれているだろう。

「うーん、どうしたものかな」
「どこかの施設に預けますか」
「…いや、駄目だ。此処においておく」
「「は?」」

月島さんと私の声がダブった。なんだって?元の世界に帰る為に外に出て手がかりを探そうと思っていたのに此処から出られない…?

「中尉殿、何が目的でそのような事を」
「あそこに閉じ込められていたということは、誰かに入れられたのだろう…しかしあそこの鍵は私が管理していたし、開けることは出来ないはずだ。となると、合鍵を持っているということになる。もしかしたら他の扉の鍵も持っているかもしれない。伊織嬢は誰に入れられたか今は何も覚えていないかもしれないが、もしかしたら何か思い出すかもしれない、という事だ」
「…はあ」

胡散臭そうにこちらを見やる月島さんは何とも複雑な表情をしている。そしてこちらを見ながら鶴見中尉に尋ねた。

「この子の世話は誰に任すんですか」
「何を言ってるんだ月島、お前だぞ」
「…冗談はよして下さい」
「何も付きっきりで面倒を見ろ、という訳では無い。伊織君は見たところとても大人しく賢い。だから仕事をするお前の横で遊んでいて貰えばいい」
「私は何も出来ませんよ」
「構わん。何かあれば私に言えばいい」
「…はぁ」
「既に伊織君より手がかかる奴を一人面倒を見てやっているだろう。一人増えようが変わらない」
「…」

とてつもなく面倒くさそうな顔をして月島さんが私を見やった。

「…あの」
「そういう事だから、まあ、よろしく頼む」
「こちらこそ、ごめいわくをおかけします。よろしくおねがいします…」
「ああ」

こうして私と(後々分かった)第7師団の奇妙な生活が始まるのである。




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