夢うつつ




人の気配に薄目を開ける。仕事から帰ってたのだろう、尾形がカバンを床に置く音。今日はいつもより遅いようで先に夕飯を食べてしまった。おかげで満たされた体は眠気に勝てずソファに横になった所までは覚えている。しっかり夢まで見ていたようで、まだ現実との区別が曖昧だった。でもすごくいい夢だったのははっきり覚えている。
尾形が仕事が早く終わったからと沢山甘やかしてくれる夢。あぐらをかいたその間に座らされて、後ろからぎゅと抱き締められる。そして甘い言葉を交わしあっていた。尾形が言いそうにないような事まで言って貰えてとても幸せだったのだ。夢の中では。
恐らく今日も疲れて帰ってきた尾形は、食事とお風呂を済ませたらきっとすぐに寝てしまうだろう。それなら夢の中だけでも甘い時間を過ごしたい。そう思ってもう一度意識を飛ばそうとすると、いつの間にか近寄っていた尾形に無理やり目をこじ開けられた。

「狸寝入りはもう終いだ」
「……なんで、起きてるって分かったの」
「お前の事ならなんでも知ってるぜ」

前髪をかき上げながらこっちを見下ろす目は疲労が滲んでいた。やっぱり疲れてる。

「お疲れ様です、尾形さん」
「全くだ。お疲れの俺を癒してくれねぇのか」

そう言いながら尾形は私の無防備なお腹に顔を埋めてきた。くすぐったくて髪の毛を触ると尾形の目元が緩む。

「どうやって?」

わざと聞くと、ふいに顔が近づいてきて唇が触れ合った。尾形にしては珍しく、優しく食むように唇を啄まれて意識が完全に覚醒した。キスなんて今更なのに、急に羞恥心が沸き起こってくる。一旦落ち着くために起き上がり、尾形の顔に手を添えて目を合わせた。

「……ねえ、明日も仕事でしょ」
「仕事が一段落着いたから有給取った」
「今日疲れてるんじゃないの」
「明日寝りゃいい」

そう言いながら尾形は私の腰と膝の下に手を差し入れると、ひょいと持ち上げた。

「えっ、待って私まだお風呂入ってない」
「一緒に入ったら良いだろ」

にやにや笑う尾形の頬に優しくキスを落とすとお返しとばかりに鼻先にキスが降ってきた。起きて正解だったなと尾形の胸に顔を寄せ息を吸い込んだ。





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