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「あのーすいません。ピザのツケ回収しに来ましたあ」

誰もいないのか、店の中は静まり返っているようだ。よし、足を高く上げて、かかとを

「どぉおおおおおおんん「お邪魔しますー」」
「あーうっせ。ちょっとまって…だれだ玄関潰したやつ。銀さん今二日酔い中だから。頭痛いからおっきい音は止めてくれよったく」
「あっ!!!この前のジャンプ侍!!!」
「んあ?誰だてめぇ…ってこの前の」
「ツケ、返してもらいに来たから」

銀色の男はめんどくさそうな表情でこちらに歩み寄ってきた。ん…銀色?

「銀、さん?」
「なんだお前俺の名前知ってんの?」
「さっちゃんが言ってた、色気と筋肉がすごい死んだ魚の目をした素敵な人って」
「まあ、俺は色気と筋肉すごいし、すっごくかっこいいしイケメンだし素敵だけどぅううううう痛ってえええ何すんだてめぇ」
「は!?なんでさっちゃんこんなやつにハマってんの!?さっちゃん可愛そう!!!」
「可愛そうなのは俺だっての毎日毎日付きまとわれてこっちは迷惑してんの!!!あいつの知り合いならなんとかしてやってくれよ頼むから」

しんどそうに歩いている銀さんの襟元を後ろから引っ張り、顔を寄せる。相も変わらずダルそうな目。

「さっちゃんに手を出したら許さないから」
「お前さっきの話聞いてた?だからストーカーされてんのは俺の方なんだって」
「…へぇ」
「分かったらよろしい。んで、これツケの分」
「これ、金額より多いけど」
「パフェ食いに行くから」
「…誰と」
「お前と」

 
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 ファミレスにつくと適当に席をとってどかっと座る銀さん。私もゆっくりパフェでも食べようと思っていたのに、待っていたのは甘いカロリーの塊ではなく質問攻めの数々だった。どこに住んでいるのか、家族はいるのか、普段は何をしているのか、等々。

「んで、この街に帰ってきたってわけか。で、元御庭番衆でさっちゃんの友達で磯村くんの妹で」
「服部、全蔵」
「ああそうそう。磯部くんね」
「…付き合ってられない。私もう帰るからあああああちょっとまって前髪触らないで「はい、御開帳」」

私の顔覗かなきゃ気が済まないのか。また私の視界に映るのは銀色のモサモサと赤い目。まじまじと、しっかり三秒間目が合う。何を考えているか分からないその目は吸い込まれてしまいそうで、少し怖い。

「じゃーな」
「待って、」

かったるそうに歩き去る銀さんがニヤつきながら振り向く。

「伊織」
「…」

しわが寄った私の眉間を親指でぐりぐりされる。突飛な行動に顔が緩んでしまった。

「またな」
「…また、ね」

この男の妙にニヤけた顔が、家に帰っても私の頭の中から離れずに残っていた。



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