兄弟/ファイア


「いってらっしゃい。」



君が送り出してくれたとき、君が笑顔で見送ってくれたから。ああ、僕がいなくても平気なんだって思うのは仕方のないことなんだろうか。レッドなら?僕と変わらない歳のくせに、僕より早く町を出て、帰ってきたら僕よりずっと強くなってて。なんだよそれ。いつだってそう。ナマエもきっとレッドのほうが大事なんでしょ。



そんなひねくれた考えを持つ僕は、ずっと前から君に虜だったというのに。ナマエのあの時の笑顔が頭から離れないのが決定的な証拠だ。いつから僕はこんなに女々しくなったのだろう。





「…ファイア。こんなところまで来て…何の用?」



「……話したい、わけじゃないけど。」




ねぇ、レッドはナマエのこと好き?どこまでも保守的で、計算された言葉のようで、それは穴だらけだ。ごめん。誰に謝ればいいのかなんてわからないけど、僕は卑怯な人間だ。
レッドはそれに感ずいているのか。レッドの口が開く。




「ナマエ。…待ってると思うけど。こんなところで…僕と話してていいの?」




「…なんの話だよ。僕はそんなことを聞きに来たんじゃない!」



いつまでたっても勝てなくて、僕はなにもかも比べられているような気がしている。いや、きっとそうなのだろう。なんて不幸な人生なんだと思ったことは幾度とある。



ねぇ、レッド。もう諦めさせてよ。






「…ずっと、帰ってこずに特訓?」



「…なんだよ。何が言いたいわけ?」





だって特訓しないと何も残らない。強さを手に入れられるのは天性のセンスだけなんて、それはあまりにも不平等だ。レッドはそんな僕に心底あきれているかのようにため息をこぼす。






「さっきも言った…けど、ナマエは、ファイアが思っているほど強くないよ。」



「…どういう、意味―――。」





ぼそり、と小さな声で話された言葉は、ありえないほど僕の耳によくなじんだ。こいつに感謝したくはない、けど、今だけは恥をこらえてあげるよ。




「……ありがと。」








<ナマエは、ファイアが出て行ってから毎日泣いてたんだよ。…早く帰ってあげれば?>








「…手のかかる二人だなぁ。」






弟のために、僕は諦めるよ。…だから、今だけは泣かせて。



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