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「はぁーい、私がアララギです。あら、キョウヘイ君も一緒だったのね!」
「お久しぶりです、アララギ博士!」
私は今日ポケモントレーナーとしての一歩を踏み出すため、ここ、アララギ博士のいるカノコタウンにやってきた。トレーナーと言っても、私にはバトルなんてできっこないっていうのはわかってる。だけど、大好きなポケモンをゲットしてみたいという夢をあきらめきれず、アララギ博士のもとを訪れている、というわけだ。
アララギ博士に自己紹介をすると、博士はさっそくポケモンを見せてくれるとのこと。私のポケモンはもうすでに決まっているみたいで、博士が手渡してくれたボールを眺める。ひとつ、深呼吸をして、軽く宙にボールを投げた。
『……っわあ…!!』
「ふふ、どう、気に入ったかしら?」
アララギ博士が私にプレゼントしてくれたポケモンは、
「ぴっかちゅう!!ぴっか!!」
くりくりとした瞳が特徴的なピカチュウだった。
『かっ…かわ……!!』
「ピカチュウだ!すげー!」
ピカチュウは私の周りをくるくるとまわると、私の体をよじ登り、頭の上で丸くなった。結構自由な子だなあ…。可愛いからいいけど!
私の首が悲鳴を上げる前にピカチュウを抱っこし、ぎゅう、とだきしめてみる。うん、ふわふわしてて気持ちいい…!ちゅう、と小さく鳴いたピカチュウは嫌がるそぶりは見せず、すりすりと頭を私に押し付けている。
「ユキノ、キョウヘイ、またいつでも来てねー!ピカチュウを大事にして頂戴!」
『はい、本当にありがとうございました!』
キョウヘイのウォーグルにまたがり、モンスターボールを確認し、ヒオウギに向かって飛んでいく。ついうれしくて、キョウヘイの服を掴んでいた手に力がこもる。うれしい、うれしい。これでちょっとはキョウヘイの役に立てるかな。すこしでもトウヤさんに近づけるかな。
トウヤさんに会えたこともポケモンをもらったことくらいうれしくて、私は顔をすこし緩めた。ああ、次はいつ会えるかな。
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