その声を追った先で
「狐ヶ崎、本当に大丈夫なわけ?」


「だ、大丈夫です…。私も主様の刀なんですから、役に、立たないと。」


「無理してもいいことは無いぜ?震えてるし、第一そんな細腕で太刀を振れんのか?」



私は練度の高い加州さんが率いる第二部隊で、隊員として参加していた。目的は資材の調達と練度上げ。練度というものが今一つピンと来ないが、所謂レベルの事らしい。これが高ければ高いほど強いんだとか。
この本丸で最弱の練度を誇る私と、最近迎えたばかりの厚さん、大和守さん。そして震える私を心配して付いてきてくれた、初期短刀の今剣さんがメンバーである。私は本丸の中で唯一の太刀だが、一番戦いに向いていない。身体的にも、精神面でも。



「主も心配してたよ。今日は俺らが戦い方を教えるし、安心して。」


「加州さん…。ありがとうございます。」



せめて役には立たずとも、足手まといに成るのだけは避けなければ。一番練度が低いとか、刀を振るったことがないとか、其れは戦場で言い訳にしかならない。この世界に顕現して、短い間でも付喪神として過ごしていた私。気が付かなかった訳ではない。毎日誰かが傷を負って、辛そうな顔で帰ってきていたことに。私が戦に行かず、安寧の日々を送れていたのは、他の神様のお陰なのだ。
其れなのに、私の情けなさと言えば。いざ其れが自分に来たときに、こんなに周りに迷惑をかけている。覚悟を決めず、いつまでもうじうじと悩み続けている。怖い。恐ろしい。異形の生き物だったとしても、其れを斬るなんてことは簡単にはできない。
でも、其れは私の勝手な考えなのだ。主様が決めたことに従わなければ意味がない。



「…私、頑張ります。少しでもお役にたてるようになります。」


「よいこころいきですよ!いざとなればぼくがまもってあげますし、しんぱいしないでください。」


「僕もまだ顕現したばかりだし、戦いに慣れてないのは同じだよ。一緒に頑張ろう。」


私を気遣ってくれる声に、優しさに、思わず泣いてしまいそうになる。其れをぐっとこらえ、なるべく自然な笑みをつくって見せた。きっと大丈夫。私にはこんなにも心強い仲間がいる。
鳥居を潜って暫くすれば、血の臭いが強く漂ってくる。全員の雰囲気が変わるのが肌でわかった。ぴりぴりと緊張した空気の中、加州さんが偵察のために駆けて行く。その後ろを厚さんが追った。
相手がそう強くないからか、あっさりと陣形を把握した。そして隊長の加州さんが本体を抜くのを皮切りに、一斉に刀を構える。
私が久しぶりに手にして、はじめて抜いた刀身は重かった。手が震え、構え方もわからずに両手で握る。



「…狐ヶ崎、俺の傍を離れないでね。太刀はリーチが長くて、其の分重いから、早めに振ること。」


「わ、分かりました。」




「…よし、じゃあ、出陣だ!」



勢いよく物陰から飛び出す加州さんの背中を追い、私も意を決して覚悟を決め、確りと太刀を握りしめ、戦場に飛び込んだ。



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