ブラックの定義

黒本丸と聞いて思い浮かぶのはやはり虐待や過度な出陣、後は夜伽等だろうか。私もこの職で生きていく事になるまではそのみっつが主流なのかなぁとか、むしろそれ以外に黒本丸に成る理由など思い浮かばないと思っていた。が、現実はそう簡単では無いらしく、それはそれは様々な理由が複雑に絡み合い、私の頭を悩ませる原因となる。



例え刀剣男士を従え、上に立つものとして必死に良き主を演じていても、所詮は人の子。美しい見た目に加え、主と言って慕い、自分に危機が訪れたときは颯爽と駆け付け救い出してくれる彼らに恋慕の感情を抱く者も多い。それが夜伽の始まりになってくれればいいものの、時には恐ろしい性癖の輩もいる。



夜伽を強制された刀剣男士は、よっぽど主を好いていない限りは、神聖な身体を汚され、闇に堕ちてゆくものだ。しかし、その場合は一目で判るのでただ審神者の方をお覚悟すればいいだけ。でも……、盛りまくって主を処理に利用したり、審神者ラブになって神隠ししたりするのは如何なものかと思う。止めなかった審神者も審神者だが、その時の処罰の対象は神になる。正直に言おう、止めてくれ。めんどくさいし、何より仕事が増えるのだ。
因みにこれは機密情報らしいのだが、今までに神隠しをしたことのある刀ランキングではどこぞの長谷部がトップを爆走中だそうだ。さすがしゅめー厨。




「……はぁ、どうするべきか。」



ここまで長々と説明と言うかただの雑談になっていた気もしなくもないが、要するに私は政府に助けを求めるか悩んでいる。あの術は審神者が掛けたものに違わないが、如何せん情報が足りない。一瞬聴いたあの声が気には成るが、今のところ私に出来ることはない。ホワイトでもブラックでもない、云わばこの本丸はグレーゾーン。
そんな曖昧なタイミングと勘でいいのか。




暫く早起きしたしたために無駄になった時間を使いながら考えていると、誰かが歩いてくる音がした。とっさに太刀に手を翳し、何時でも抜刀出来るよう構える。控え目に、見習いさま、と掛けられた声に、開ける許可を与えずに尋ねる。



「…何方が、何の御用でしょうか。」



「…あ、おきていらっしゃったのですね!ぼくは今剣ともうします!あるじさまにみならいさまをつれてくるようにたのまれました!」



この子供っぽく少し拙い声、まさしく私の知っている今剣に間違いはないだろう。そう判断した後、漸く私は太刀から手を退けた。まあ騙されるようなことをされるとは限らないが、その逆もまた然り。気を抜くことが出来ないのはもう癖のようなものかもしれない。そっと襖を開くと、にこにこと微笑みを浮かべている今剣と目があった。



「…分かりました。今すぐに参りましょう。」


「はい!ぼくがあんないいたします!」




私よりも随分と小さな背中を追いながら、ふと思う。あれ、審神者の所というのはつまり自室であろうか。そんな疑問を問い掛けてみると、ひろまです!と言う元気な声が返ってきた。
広間、それは即ち昨日私が訪れた部屋だ。でも広間へいくには遠回りではないのか。数回角を曲がり、広間の戸が見えたときに気付く。ああなるほど、こう遠回りをしなければあの怪しい部屋の前を通ることになってしまうのだろう、と本丸の造りを思い出す。



「みならいさま、むずかしいかおをなさってどうしたのですか?」



いつの間にか眉間に皺が寄り、大分変な顔をしていたのだろう。心配そうに尋ねてくる今剣に申し訳なく思い、何でもないと誤魔化す。



「大丈夫ですから、さあ、入りましょう。」


「そうですか?ならはいりましょう!」




やっぱり連絡はするべきか。社会人として報連相をしないと後でどやされそうだなぁと一人で考えなから、私は今剣が開け放った襖を通り抜けた。ああ、なんだか面倒な仕事に成りそうだ。
(6/15)
前へ* 目次 #次へ


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -