再会は素直に喜べない?


「――で、何をしたんだ」
「え?」

 レイシが背中を向けて料理を作っている時に、赤は金にそう言った。

「あのレイが怒るなんて相当だ――テメェに非があるのは確かだが」

 しかし一瞬殺意を覚える。つまり何が言いたいのか。

「俺も役得だしな、話くらい聞いてやる」
「……そういう事か」

 赤はつまり、金のお陰でレイに服の裾を掴まれるという経験をしたから、そのお返しみたいなものだと言いたいのだろう。
 金は突き放そうかとも考えたが――利用の仕方によっては、きっと悪くはないと。
 そう考えて、口を開いた。

「……レイの友人らしい奴に、会ったんだ」

 ぽつり、ぽつり、その本人には聞こえないように。
 金は話し出す。林檎を落とし、拾った相手の行動を、できるだけ簡潔に客観的に。
 赤の表情がどんどん曇っていくのも知らず。

「……それは……」

 話し終えると、赤が言った。

「ま、半分はテメェが悪いな」
「……だよな」
「いくら劣等感を抱いても、やっていい事と悪い事がある」

 レイには尚更だ。……あいつは、多分まだ気付いてない。
 いつの間にか『同志』になりつつある彼らは頷いた。

「まあなぁ……俺も、そいつがどんな奴か気になる」

 レイの聞きたくないって言ったから、という言葉も気になる、と赤は続けた。

「聞いてみるか」
「え? でも……」
「俺達のライバルになる奴だぞ? 少しでも聞いておいた方がいいんじゃねぇのか」

 赤の言葉にそれもそうだと考えて、金は黙って頷いた。






「え? ローランサンの事?」

 いきなり赤がそんな話をするなんて驚いた。
 そうか……金が言ったのか。何だか目を合わせづらい。
 うぅ、まだ一緒に住み始めて2日目なのに、もうこんな状態なんて……。
 何だか悲しい。

「聞きたくないって言ったばっかじゃん……」
「だから、聞きたくないってどういう事だよ」

 そんな事を言った覚えはない、と言われて唖然とした。

「……いや、それ言ったの今朝だろ。もう忘れたとかそれは流石にマズイ――」
「今朝?」
「……え、言ったよな?」

 自然、金に同意を求める形になるが、金は少し首を傾げただけだった。
 ……お前も忘れたってか?

「だって、ダブルベッドの話、しなかったっけ」
「……あぁ」

 でもそれがどう関係あるんだよ、と言われた。

「大アリなんだけど……分かんないか?」

 はっきり言った方がいいのか?
 そう聞くと、2人は複雑そうな顔をして、少しの間黙り込んでしまった。

「……いや、やっぱいい」
「そうか」

 やっぱり変な奴らだと思った。
 俺は夕食を作る作業に戻る。

 ……待て、誤解とかされてないよな?

 囁き合う2人の方を振り返った。
















11-1/13
(ローランサンは寝相が悪いから)
(ダブルベッドに寝かせなきゃ)
(落ちちゃうんだよなぁ……)





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