家事当番制


「家事は当番制でいいだろ?」

 出し抜けにそんな事を聞くと、意味が分からないという顔をされた。

「やる事は炊事、洗濯、掃除」
「……マジで?」
「マジで」

 まぁ、一緒に住めばと提案したのは俺だが、そこは譲らない。こいつら客人じゃないからね。

「料理苦手だったら諦めるけど。そんな事ないよな?」

 主に赤が心配である。

「ていうか君達、自炊してた時期あるよね……?」

 こそこそと話し出しているのは何故だろうか。いつの間にこんな仲良くなってるんだ?
 考えてみてもそんなタイミングはあだ名付けていいよって言った時しかない、でもその後にこいつらは喧嘩をしている。
 ……やっぱ、『ローラン』同士、通じ合うものでもあるんだろうか。
 俺は首を捻りながら金の作ったスープを飲んだ。

「うわ……何コレ、超美味いんですけど」
「レイ、決めた」
「え? 何を?」
「当番」

 ……それって、俺ナシで決まっちゃうものですか? 俺の意見は無視?
 まぁいいけど。仲良くしてくれるなら。

「まず、レイは料理」
「ふん、俺は料理――って、え!?」
「どうかしたか」

 いや、どうかも何もないですよね!

「何で俺ナシで俺の当番まで決まっちゃってんの!?」
「ん? 駄目だったか?」
「いや……駄目じゃないけど……」
「何も言わないからいいのかと思った」

 赤も金も、勝手な事ばっか言いやがって……くそう。
 確かに俺も、何も言わなかったけど。

「若干異義ありー」
「若干って何だ、若干って」
「料理は金のが上手いと思いまーす」

 手を挙げてそう言うと、金は苦い表情をした。

「いや、俺は、赤の料理は食べた事ないから分かんないけど。でも、俺より金のが美味い。絶対に」
「だから、お前が料理をできるようになる為に、お前が食事当番になるんだろ」

 ……そういう事ですか。何だかがっくりきた。

「ていうか、毎日変えるとかそういうんではないわけ?」
「それも考えたんだけどな」
「面倒くせぇだろ。飽きたら変えるけどな」
「……飽きたら……」

 飽きる事なんてあるのか。これから毎日、いや、今までもやってきた事だというのに。
 そこまで考えて、はたと俺は気付く。
 ――そうか。いつまでも一緒に居られるわけでは、ないのか。

「まぁ、変えられるっていうんならいいけど……後は?」
「俺が洗濯、こいつが掃除」
「……赤が掃除、ねぇ」

 決して馬鹿にしているつもりはない。今の言い方だとそう聞こえるかもしれないが。
 赤は喧嘩とか、そういう事をしているイメージの方が強い。あんまり家事は似合わなさそう。
 ――でも、これからはそういうとこも、見れるんだな。
 俺は何だか可笑しくなって、笑ってしまった。

「どうしたんだ、レイ」
「ん? 何でもない」

 今まで知らなかった部分が見られる。それはとても楽しくて、とても怖い事だろう。
 俺が今まで見せていなかった汚い部分も見られる事になるんだろう。
 ……まぁ、でも。

「これから楽しみだな」

 いつまでこの興奮が続くだろう。……賭けてみようか?
 俺はスープを飲み干した。



















11-1/10





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