友達からは始められない
- ――まさか、いきなり、こんな状況に置かれるなんて。
それも随分昔の話だ。
彼と出会った時から、惹かれていた。
勿論その想いは誰に対しても害しか及ぼさないので、ずっと心の奥にしまってきたんだが。
オマケが居るとはいえ、この機会を逃す手があるだろうか?
俺と一緒に住む事を承諾した、それは少なくとも嫌いではないという事ではないだろうか。
いや――嫌いでない、どころか、むしろ。
忙しく立ち働く彼の後ろ姿を見ながら俺は思った。
――まさか、いきなり、こんな状況に置かれるなんてな。
それは随分昔の話だ。
酒場で絡まれた時から、惹かれていた。
勿論その想いは害にしか成り得ないので、ずっと誰に言う事もなかったんだが。
邪魔者が居るとはいえ、この機会を逃す手があるだろうか?
俺が一緒に住む事を承諾した、それは嫌いではないという事ではないか。
いや――嫌いでない、どころか、むしろ。
忙しく立ち働く彼の後ろ姿を見ながら俺は思った。
「……あの」
「ん?」
なんか、さっきから2人の視線が背中に突き刺さってきてる気がする。何だろう。
「何か用?」
しかし問えば、
「……別に」
そんな答えしか返ってこない。
しかも、朝までいがみ合ってた2人なのに、その返事は同時なんて。しかも被った事を嫌がりもしない。
何? 何なの? 仲いいのはいい事だと、言ったのは紛れも無く俺だけど。
さすがに気持ち悪いんですが。
「……じゃあ、何で見てんの?」
俺は今昼食を作っている最中だ。
いずれご飯作りやら何やらは当番制にしようと思ってるけど、今日は俺が全部作ってあげる事にする。
……だからといって、何もしないでダイニングの椅子に座られてても、困るんですけど。
「いや、別に」
「……ムカつくんだけど」
何を考えてるか分かんないところが。多分よくない事だろうとは思うけど。
「ちょっと、暇なら手伝えよ!」
振り返って言う。
赤と金はそう言われたのに驚いたのか、互いに顔を見合わせる。
……大丈夫か? こいつら……。
けしかけた俺がそう思う。
「……分かった」
金は苦笑しながらやってきた。……あの、赤さんは?
「赤! お前は!?」
「……そんな狭い所に男が3人も並んだら、窮屈だろう」
「あ、そっか」
俺はあっさりと納得していたが、隣で金は何故か肩を震わせていた。
「なに……?」
「いや――レイも『男』の内に数えられてるんだと思ったら――」
……なんて失礼なんだ、こいつ。
「悪かったな、童顔で!」
「いやいや、可愛いって事だから。身体はこんなに華奢だし」
「ちょ、触んなって!」
華奢とか。童顔とか。言われ慣れてる台詞ではある。
もうそんなに子供じゃないのに、酒場に行く度茶化される。
悔しい事この上ないのに。
「金の馬鹿っ! もう知らない!」
「あぁ……レイ、怒るなって」
腰に巻き付けられた手を解き、金は俺の頭を撫でる。
子供扱いすんな!
――と、キレたかった、のに。
「むぅ……」
金ローランは何故かやけに撫で慣れしてて、このまま撫でられててもいいかなって、思っちゃったんだ。
11-1/8
(――抜け駆けなんざ)
←