お友達から始めましょう
- 「……とりあえず、どこを家にするかだよね」
朝、目覚めて何か息苦しいと思ったら、俺の上に2人が覆いかぶさっていた。
寝起きに平手を2発かまし、2人に言う。
「俺は、レイシ、君だけだったらウチでもいいんだけど」
「それは恋人に言ってやれよ。何で今更改心してるんだお前は」
「うちに来いよ、レイシ。まぁそいつを殺してからになるがな」
「やめてよ、あんたなら本当にしかねないし」
――いや、赤い方なら、有り得るんだよな、これが。
「……よし」
じゃあ、ベッドが一番広い家に住もうか。
俺は、にっこりと笑ってそう言った。
――結局、場所は変わらず。
「普通はシングルベッドだろ」
「何でテメェの家はダブルベッドなんだよ」
「……えー……」
聞きたいの? と言うと、2人に思い切り首を横に振られた。
「まぁ一番勝手分かってるし、俺は構わないんだけど」
すると、ローラン2人は互いを睨み合う。
「……あの。どっちも俺の家に来た事はないでしょ」
「中にはな」
「前までは」
同時に言われた。
……え? 何それ。2人ともどういう意味?
うちの前までは来た事があるって事? それとも今は入ってるって言いたいわけ?
せめて後者である事を願いたい。誤解を招く言い方はやめてもらいたいけど。
「ちょ、ちょっと。睨み合わないでくれる。一番困るの俺なんだからさ」
とにもかくにも俺が間に挟まれ、流血沙汰になるにしてもここは俺の家である。
頼むから、やめてくれ。血ってこびりついたらどうしようもないんだ。
「……それにしても、呼びにくい名前だな」
「……は?」
「2人ともローランなの、どうにかならない?」
なんて無茶振りだが、どうにもならないに決まっている。
どうにかなるとすれば、どちらかがどちらかを殺した時だ。
(死んだ時、なんて言えないのは、現在進行形でこいつらが睨み合っているからである。)
……あー、やばい。今のは俺のせいだけど。
マジで流血沙汰になりそう。
「落ち着けよ、2人とも。俺が悪かったからさ……そうだ、『赤』と『金』なんてどうだ?」
2人とも、争っていた時より険悪な表情になった。
「いや、ちょ――そんなに嫌なの?」
「当たり前だ」
「何で!」
ローラン、て呼んで、自分じゃなかったら嫌じゃんか。
そう言うと赤ローランがすかさず口を開く。
「だから、俺がこいつを殺す」
「そんな事言わないで! 仲良くしろよ!」
俺どっちも好きなんだから、と。
勢いに任せてそう言うと、2人はいきなり、いがみ合いをやめて俺の方を見た。
「な、何……?」
「……レイシ、それは本当か?」
「え? あぁ……本当だけど」
金ローランに肩を掴まれる。
「い、痛いんだけど――何?」
赤ローランも、金ローランの横から顔を出した。
決して仲がよいとは言えない彼らの筈なのに、その様子は何だか笑えてきて。
「ふ……あの、2人が仲良くしてくれればいいと思ってるんだよ、俺は」
「は?」
「2人が仲良くできないなら、俺、こういう生活始めた意味ないし」
元々は、金ローランの片腕の代わりになろうと思っていたのだった。
だから、こう言うのは申し訳ないけど、赤ローランはオマケのようなもので。
赤ローランにはどうか、金と仲良くしてほしかった。そんな事を言うのは2人ともに酷かもしれないけど。
「で、赤と金って、呼ばせてもらえる?」
まぁ……外見上の特徴でしかないわけだから、申し訳ないよね……。
迫ってくる2人を押し止めながら聞く。
「つまり、あだ名って事なんだけど」
「……あだ名……?」
「そう」
何だか、金の方を懐柔できそうな予感がしてきた!
「俺はいいけどよ、レイシ」
「ん?」
「俺達にあだ名をつけるんなら、お前にも必要だよな?」
「……え?」
――いやいやいや。何言ってんの? 別にいいんじゃないわけ?
しかも更に悪い事には、金もそれに乗っかってしまった事で。
「いいな、それ」
「だろ?」
「……あんたらね……」
仲がいいのか悪いのか分からない。いや、よくあってほしいけど。
「……でも、まぁ、分かった。俺が無理言ったんだから、それくらい」
「よしっ!」
手を叩き合ってるんですがあなた達何者? 既知の仲ですか?
仲悪いとか絶対嘘だよね、と俺は思った。
「じゃあ、2人で一緒に考えて、1つにしてよ、あだ名は。俺下で朝食作って待ってるから」
「は!?」
「は、って何、は、って。じゃ宜しく」
「レイシー!」
呼ばれたが、俺は全く気にせず2人を部屋に置いて行った。
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