核心に触れる
- 「おい、お前、何て事してくれたんだ!」
「いいだろ? 別に。お前が無事にあいつと仲直りする為の1番の方法だ」
「そんな事言っても……」
意味が分からなかった。
レイが本当に眠ってしまってから赤は降りてきた。
頭を撫でるその手は優しかったが、金はじっと見ていた。
「――もう、隠し切れない」
だろう? と聞かれ、金は思わず表情を歪める。
「でも、レイは……そんな事を望んでない」
「そりゃそうだろう。こいつはお前の罪滅ぼしの為に、一緒に住んでんだから」
「罪滅ぼし……」
其則ち、贖罪。
その言葉にこれ程胸が痛むとは知らなかった。
「分かったか? 所詮俺達は、そういう風には思われてないんだよ」
金は睨むように赤を見た。
――しかし、それが真実だと思い直し、ソファーで眠る彼の方を見る。
それで、よかったのだと。
自分の頭が納得するまで。
「……なぁ」
金は答えなかった。
「そんな事して、何か楽しいか?」
赤の指が眠るレイシの髪を梳き、そして彼は愛おしそうに目を細めた。
――失くしたくないんだって、そういう事で。
自分達は今、ぎりぎりの場所に立たされているのだと知る。
「こいつの事が好きだ――俺も、お前も。そうだろ?」
髪を一束掬い、赤はそれに軽く口付けた。
「まだ、知らない。でもいつか気付く。俺達は、物凄く不安定な土台の上に生きているんだと」
「……俺は、」
この微妙な関係を、いつまでも続けていたい。
必ずバッドエンドを迎えるその恋に、まだ終止符は打ちたくない。
――いつか、終わりを迎えると知っていても。
気付いた以上苦しくても、その気持ちは押し殺せるものだと金は思っていた。
「俺は、レイを」
眠る彼。長く伸びた睫毛が白い肌に影を落とす。
触れたいと、そう思い始めたのは、多分出会った時からだった。
「――好きだ」
11-2/5
例え噛み合っていなくても
歯車は回る事しか知らない
それが彼らの役目だから
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