ノイズ混じりの感情を

 その日、レイシが帰ってから、メルは1人物思いに耽った。






<ねぇ、どうしたの? メルなんか変よ>
「……うん」
<本当にどうしちゃったの?>

 メルの腕の中で可愛らしい人形が言う。
 しかしメルの心の中を占めているのは、先程まで話していた可愛らしい少年の事だった。

<さっきの子の事考えてるの? あんな子なんて早く忘れようよ! どうせ死んじゃうよ!>

 エリーゼの言う事はもっともだ、とメルの頭は理解していた。
 彼の事を忘れたくない、とメルの心は叫んでいた。
 何故だろう――

<ねぇ、メルったら!>

 孤独を覚えた井戸の底。最初に見つけた暖かな光。
 できるならば――彼女を傷付けたくはないと、メルは思う。

「……エリーゼ」
<何? メル>
「……僕は」

 まだ、人を愛す事ができるだろうか?

 どこか懐かしい面影を湛えた彼女を抱きながらでは、メルはその言葉を口にはできなかった。















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