ノイズ混じりの感情を その日、レイシが帰ってから、メルは1人物思いに耽った。 <ねぇ、どうしたの? メルなんか変よ> 「……うん」 <本当にどうしちゃったの?> メルの腕の中で可愛らしい人形が言う。 しかしメルの心の中を占めているのは、先程まで話していた可愛らしい少年の事だった。 <さっきの子の事考えてるの? あんな子なんて早く忘れようよ! どうせ死んじゃうよ!> エリーゼの言う事はもっともだ、とメルの頭は理解していた。 彼の事を忘れたくない、とメルの心は叫んでいた。 何故だろう―― <ねぇ、メルったら!> 孤独を覚えた井戸の底。最初に見つけた暖かな光。 できるならば――彼女を傷付けたくはないと、メルは思う。 「……エリーゼ」 <何? メル> 「……僕は」 まだ、人を愛す事ができるだろうか? どこか懐かしい面影を湛えた彼女を抱きながらでは、メルはその言葉を口にはできなかった。 11-1/2 戻る |